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[TGS 2012]面白いゲームは,世界中どこに行っても面白い。Iran National Foundation of Computer Gamesで聞いた,イランのゲームの現在とこれから
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印刷2012/09/24 16:46

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[TGS 2012]面白いゲームは,世界中どこに行っても面白い。Iran National Foundation of Computer Gamesで聞いた,イランのゲームの現在とこれから

INFCGのAhmad Ahmadi氏
画像集#004のサムネイル/[TGS 2012]面白いゲームは,世界中どこに行っても面白い。Iran National Foundation of Computer Gamesで聞いた,イランのゲームの現在とこれから
 東京ゲームショウ2012では,アジア圏で存在感を増しているベンチャーや開発会社にスポットをあてる「アジアニュースターズコーナー」が設置された。その一角を占めた「Iran National Foundation of Computer Games」(以下INFCG)は,イランのNGOだ。
 INFCGは,イランにおけるコンピュータゲーム産業と文化の支援を目的として,2007年に設立された。イランのゲーム開発会社の資金サポートや技術サポート,教育分野での支援など,多角的な活動を行っている。2009年からは国際的なゲームショウにも出展,これまでGamescomやGDCといった大型ゲームショウにも出展してきた。東京ゲームショウは今年が初めての出展となる。

 イランのゲームと言うと,そもそも大多数の読者にとっては「イランにゲーム産業なんてあるの? っていうかイランにゲーマーっているの?」というところから話が始まるのではないだろうか。また多少知っているという人でも,日本ではいささか政治色の強いゲームが紹介されてきたこともあって,「そういうものが多い」という印象を持ったりしているのではないだろうか。
 INFCGのAhmad Ahmadi氏に,イランのゲームシーンやゲーム産業についてを聞いてみたので,ここに掲載しよう。


総国民数に対するゲームユーザー比率は,日本とほぼ同等


 Ahmadi氏の話によると,イランのインターネットユーザーは3800万人で,ゲーム人口は2000万人という。イランの総人口が約7500万人なので,インターネット普及率は50%を越え,人口の27%程度がゲームを楽しんでいるということになる(ちなみに日本のゲーム人口は3142万人(2011年CESA調べ),人口比率的には若干イランのほうが多いということになる)。
 またイランは国民の平均年齢が若く,学生が500万人を占める。このこともあって,イランのゲーム産業はこの5〜6年で勃興した新興産業でありながら,すでに100社近いデベロッパーがゲームを制作し,年に125〜150本のゲームをリリースしている。ゲーム制作を学ぶための学校も活発に活動しており,学生数は年率25%で増加中だ。
 好まれるゲームとしては,FPSやレースゲーム,スポーツゲームなど,比較的アクション寄りのゲームに人気が集まっている。人気タイトルとしてはKONAMIの「ウイニングイレブン」をはじめ,「Call of Duty」シリーズ「Medal of Honor」シリーズ「Age of Empire」シリーズなど,「世界的に人気のあるタイトルはだいたいイランでも人気がある」という。

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 一方でオンラインゲームはそれほどメジャーではなく,100万ユーザー程度に収まる。ただしこの人口は今後増加する兆しがあるようだ。
 利用されるゲームプラットフォームはPCがトップ,ついでXbox,PS2,PS3の順番。「ゲーム産業のグローバル化」で必ずといっていいほどセットで語られるスマートフォンやタブレットは,まだプラットフォームとしては一般的ではないようだ。しかしスマートフォンとタブレットがイランでも急激に普及しているのは事実であり,「1年後にはスマートデバイスが主流になる可能性が高い。このためイラン国内のデベロッパは,カジュアルゲームやソーシャルゲームの開発にシフトしている」とのこと。


MMOやTPSのハイエンドゲームから,パズルなどのカジュアルゲームまで


 実際にブースでいくつかイランのゲームのデモを見せてもらった(YouTubeにアップされているPVをiPadから見せてもらった)ので,日本でも手に入る作品を中心にいくつか紹介したい。

 まずは「Shaban」。パズルゲームが中心のカジュアルなアドベンチャーゲームだが,グラフィックスのセンスは独特だ。Big Fish Gamesで提供されており,ダウンロードで購入できる。14か国語に対応し,ロシアとドイツで人気があるとのこと。

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 「Garshasp」は,「God of War」系ともいえるTPSアクションで,QTE(クイック・タイム・イベント)が導入されていたりするのが,実にそれらしい。4Gamerにもレビュー記事が掲載されているので参考にしてほしい。ゲームのトータルでの完成度としては,「God of War」のようなAAAタイトルと直接比較するのはちょっと酷というところだが,産業が勃興して5年程度という環境でこれが作られているというのは興味深い。GarshaspはSteamで購入可能だ。

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 「Speed in City」は,都市を舞台にしたオープンワールドのレースゲーム(公式サイト:http://speedincity.com/)だ。トレイラーがペルシア語満載だったため細かなシステムは分からなかったが,オープンワールドとしてしっかりと作り込まれているようだ。これまたAAA級のオープンワールド作品(それこそGTAのような)と比べるのは酷という印象だが,そもそもオープンワールドのゲームを作れるということには注目したい。

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 このほか,ポスト・アポカリプス的な世界を舞台にしたTPS,独自の世界観を背景にしたMMORPGなど,大型タイトルがいくつも見受けられた。
 一方でパンフレットにはカジュアルゲームも多数掲載されており,「ビッグタイトルから小さなゲームまで」と,イランにおけるゲーム産業の盛り上がりを感じさせるラインナップが見て取れる。なお開発者はUDKやUnityといった国際的なゲームエンジンよりも,ゲームエンジンの自力開発を志向する傾向が強いとのことで,このあたりは良くも悪くも若い業界ならではかもしれない。


“イランのCERO”は,お国柄を反映した審査基準が特徴


 さて,イランのようなイスラム圏でゲームというと,どうしてもサウジアラビアで「ポケモン」が禁止されたような事例を思い浮かべざるを得ない。
 イランでは,Entertainment Software Rating Association(ESRA)という団体があり,ここが日本のCEROのようにゲームにレーティングをつけている。レーティングは年齢区分となっており,「3+」「7+」「12+」「15+」「18+」「25+」の6種類。数字がそのまま最低年齢となる。イランではこのESRAマークがついていないゲームは流通させることができない。
 ESRAの審査基準としては,「イスラム教の理念にそぐう」「宗教的価値に対する違反」といった基準はもちろん,ホラー表現や暴力表現,性描写,タバコや薬物の描写,社会的良識に反する描写(いわゆる「Bad Language」)などがある。「希望がなさすぎる」(自殺を助長しかねない)という基準があるのも興味深い。
 ESRAの適用例としては,「F.E.A.R.」をイラン国内でリリースするにあたって,表現に一部修正を求めたことがあるという。またゲームの企画段階からESRAにそぐうかどうか相談が可能ということで,「何がOKで何がアウトか」をクリアにしながらゲーム制作を進められるとのこと。
 INFCGはNGOだが,その内部に公的機関としての機能を果たす部門があり,ESRAに関する相談はINFCGを通じて行えるようだ。こういった窓口が一定の組織としてはっきりしているのは,ビジネスの成長を考えたときに非常に重要だといえる。

基準が明文化されているのはとても重要
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「面白いものは,面白い」という当たり前の真実


 Ahmad Ahmadi氏は,「イランは日本と同じく,長い歴史と固有の文化を有する国です。ゲームを通じてイランの歴史や文化を紹介していきたいし,イランならではのユニークなコンテンツを提供していきたい」と語った。またESRAにおける協力体制にも言えることだが,各国のゲーム開発社と積極的に協力していきたいという強い意気込みも感じられた。

 ビジネス面はさておき,イランにおいても我々が楽しんでいるゲームと同じようなゲームが楽しまれているというのは,考えてみれば当たり前なのだけれど,あまり深く考えたことはないだろうし,意外に見落とされがちなことではないだろうか。
 また個々の表現レベルにおける趣向の差はあるにしても,「面白いものは面白い」と受け入れられているということが,ゲームの世界展開を考えるにあたっても重要なことのように感じられた。同時に,これまでゲーム産業ではあまり目立たなかった地域から傑作が飛び出してくる可能性を秘めた時代であることを,改めて確認させられるブースでもあった。

東京ゲームショウ2012公式サイト

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