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[GDC 2011]PSPの次世代機こと「Next Generation Portable」のレクチャーには欧米ゲーム開発者達も注目。NGPのカメラを使ったAR機能のデモも実施
SCEの北米法人であるSony Computer Entertainment America(SCEA)が行った講演のタイトルは,そのまま「Next Generation Portable Platform」。レクチャーを行ったのは,SCEAのDeveloper SupportでPlatform Research Managerを務めるデビッド・クームス(David Coombes)氏だ。
ちなみに同時刻,向かいの部屋では任天堂がニンテンドー3DSに関するレクチャーを行っており,両部屋の間の廊下はいずれかのレクチャーに出席する人々で一杯という,かなりの混雑ぶりだった。やはり開発者達にとって,新しいハードウェアに対する興味は大きいのだろう。
また今回のレクチャーでは,2011年1月27日に日本で開催された「PlayStation Meeting 2011」で明らかにされた内容以上の情報はあまり出てこなかった。
ともあれここからは,レクチャーの中身を紹介していこう。
関連記事:
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・各パブリッシャ,デベロッパのキーマン達が語る,NGPの意義とは。「PlayStation Meeting 2011」詳報(後編)
NGPは,PSPと同様の丸みを基調とした持ちやすいデザインで,タッチスクリーンの5インチ有機ELディスプレイ(960×544ドット)を採用している。これは2011年3月1日現在,携帯ゲーム機の中では最も大きく,かつ最も高解像度のパネルとなる。ハイコントラストで見やすく,解像度はPSPの約4倍だ。
入力デバイスには,PSPと同様のボタンが配置されるのに加え,アナログスティックが二つに増えた。さらに,ディスプレイがマルチタッチスクリーンになっていることに加え,本体背面にもマルチタッチパッドが用意され,さまざまな操作方法でゲームを楽しむことが可能だ。
また,6軸のモーションセンサー(加速度/ジャイロで3軸ずつ)を搭載し,NGPの動きや傾きを正確に認識できる。通信機能には,Wi-Fiと3G回線を使った通信機能を持つと発表されているが,具体的にどのようなものになるのかは,現在開発中とのこと。ただ,Skyhook Positioning Serviceを使ったGPS機能を持つことは間違いないようだ。
NGPのCPUは,Cortex-A9コアを4つ対称に集積したもので,非対称なマルチコアCPUがメインであるコンシューマ機より,PCのCPUに近い構成だという。GPUは,PowerVR SGX543MP4+が搭載されており,こちらもマルチコア(コア数は不明)で,ロードバランスをダイナミックに変更できる機構や,PlayStation 3のようなタイルベースのDeferredレンダリング機能を持っている。
クロック数については依然として未発表だが,「PlayStation 3ほど高くはない」とのこと。これは,高クロックは消費電力の上昇につながるため,バッテリ駆動の携帯ゲーム機には向いていないという理由だ。
実演に使われたゲームは,マップ上の玉をあちこちに移動させるというシンプルなものだが,土地を指でつまむようにして持ち上げたり,玉を弾くジェスチャーで画面の中の玉を転がしたりと,タッチスクリーン/背面タッチパッドの特徴を生かしたデモが行われた。これらの操作については,PlayStation Meeting 2011でのNGP実機デモの記事(関連記事1/関連記事2)に詳しいので,そちらも参照してほしい。
クームス氏は,ボタンとタッチパッドのそれぞれの特徴について述べた。
氏曰く,ボタンはメニューのオープンやジャンプやリロードなど,抽象的な指示を出すのに向いているとし,1つのボタンが1つの動作に的確に対応していることが基本となる。
対してタッチパッドは,直感的な操作が可能で,ポインティングデバイスとしても有効。タップやドラッグなどのジェスチャーを使ってさまざまな操作が可能だが,ボタンと違って操作に失敗することもある。
続けて,NGPの特徴の1つである背面タッチパッドでは,「自分の手に隠れて画面が見えなくなる」ということがない。そのため,ゲームの指示に合わせて操作することができるという利点を挙げた。
クームス氏は,いずれにせよ,ボタンとタッチパネルをゲームの内容に適切に対応させていくことが重要だと開発者達に訴えた。
NGPでは,本体前面/背面それぞれにカメラが搭載されている。
前面のカメラは「Passive Camera」と呼ばれているようで,プレイヤーの顔を取り込んで画像処理ソフトで手を加えたり,ゲームで使いたいテクスチャを撮影したりといった使い方ができる。
堀川氏がデモンストレーションしたのは,背面のActive Cameraを使ったもの。堀川氏は,ゲームソフトのパッケージ(おそらくはPS3の「フリフリ! サルゲッチュ」)を取り出して机の上に置いた。それをNGP背面のカメラを通すと,NGPの画面ではソフトの上にピポサルが立っているように見える。ピポサルは常にパッケージの上に立っているように見え,NGP本体を左右に動かすとピポサルも左右に動き,パッケージの向きを変えるとピポサルも向きを変えていた。
それまでビジネスライクに進んでいたレクチャーだったが,このデモには会場から拍手が飛んだ。
ちなみに堀川氏によれば,1995年にPlayStationがGDCに初登場したとき,CGの恐竜をリアルタイムで動かすという,当時としては驚異的なデモを行って拍手喝采をあびたとのこと。今回のレクチャーで恐竜を使ったのは,そのことに対するオマージュだとも語っていた。
このデモでは,NGPの持つハイレベルなグラフィックスと,さまざまな入力方法が実際のゲームをとおして紹介された。背面タッチパッドでジェスチャー入力をするとライフルのスコープがズームアップしたり,画面をタップすると主人公がジャンプしたり障害物を避けたり,さらには岩場を登ったりといったことをスムーズに行えることがアピールされ,再び会場からは拍手が沸き起こった。
今回のNGPのレクチャーは,日本では「PlayStation Meeting 2011」で発表済みだった内容が多く,新鮮味という点は少し薄かったが,会場に集まったゲーム関係者の多くは,今回のレクチャーによってNGPという新しいハードウェアの可能性を感じられたのではないだろうか。
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