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シミュレーション・ゲーミング技術を政策プロセスなどへ活用。第3回FOST賞授与式で見たゲームの学術的側面
本日(3月18日),財団法人科学技術融合振興財団(FOST,foundation for the Fusion Of Science and Technology)は,東京の帝国ホテルにおいて「第3回FOST賞授与式」を開催した。
なおFOSTは,「シミュレーション&ゲーミングの研究など、社会や文化の文脈のなかで科学技術の融合を促進させる研究課題に対する助成事業と、その成果を広く還元する普及啓発事業」を活動の柱としている財団法人。
FOST賞は,FOSTが支援/助成する研究のなかから,優れた研究者を表彰するものだ。また2008年度の第2回からは,とくに若手研究者を対象に,地域と暮らしの金融研究所代表の熊田節郎氏が出資した「FOST熊田賞」も設けられている。
財団法人科学技術融合振興財団(FOST)公式サイト
受賞した出口氏によれば,伊豆大島における季節性インフルエンザの統計が研究の発端で,現在はベトナムやインドネシアなどの地域で政策の意思決定に役立つモデルを構築中とのこと。また出口氏は,将来的には統計のうえに“推計”という形でシミュレーションが加わり,さらに人による議論というコミュニケーションプロセスが加わった意思決定が当たり前になるだろうと展望を述べた。なお,この研究には,出口氏の研究グループが開発したエージェントベースドモデル言語「SOARS」が採用されている。
藤川氏は,対象が非常に大きく,また複雑であることから,モデル化の妥当性の検証が難しい研究だったが,あえて計量化にチャレンジしたと説明した。なお藤川氏は,東京工業大学の大学院生時代には上記の出口氏の研究室のメンバーだったそうだ。
中村氏は研究の発端について,さまざまな研究者達の“気づき”を可視化したいという思いがあったと述べた。研究を進めていくなかで,中村氏は“言葉の多義性”の組み合わせによってアイデアが湧くのではないかという考えにたどり着いたという。そこで,ゲームというハードルの低いスタイルで被験者のより自由な発想を助長し,その一方でルールなどの制約で被験者が“のめり込みやすく”なるよう,アナロジーゲームの仕掛けを考えたと説明した。
今回受賞したそれぞれの研究は,ただちにゲームに採用されるという性質のものではないが,こうした取り組みが将来のゲーム技術にさまざまな影響を与えていく可能性は高そうだ。
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