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Lucasfilmが語る,映画制作におけるGPUコンピューティングと,そのゲーム開発への応用
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印刷2009/10/06 12:54

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Lucasfilmが語る,映画制作におけるGPUコンピューティングと,そのゲーム開発への応用

最終日の基調講演をするLucasfilmのChief Technology Officer,Richard Kerris氏

 NVIDIAが主催する開発者会議「GPU Technology Conference」最終日の基調講演に登場したのは,LucasfilmのChief Technology Officer,Richard Kerris(リチャード・ケリス)氏だ。同氏は,映画制作におけるGPUコンピューティングへの移行と,グループ会社であるLucasArtsの,ゲーム開発における映画技術の導入などの話題を披露した。

Lucasfilmは,映画の特殊効果を制作するILM,ゲームなどの制作を担当するLucasArts,アニメ制作のLucasfilm Animation,そしてオンラインコンテンツ制作/サービスのLucas Onlineといった関連会社を持つ。ちなみに,ILMは「Star Wars」の特殊効果を実現するため,1975年に設立された
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 1975年にジョージ・ルーカス氏が映画「Star Wars」(スター・ウォーズ)制作のために特撮技術スタジオ「Industrial Light & Magic」(以下,ILM)を設立。スタジオを率いるJohn Dykstra(ジョン・ダイクストラ)氏らが開発したコンピュータ制御のモーションコントロールカメラ,「Dykstra Flex Camera」(ダイクストラフレックス カメラ)でミニチュアの戦闘機や戦艦を撮影することにより,従来にはなかった映像表現を実現した。

「Young Sherlock Holmes」に登場したCGキャラクター
Lucasfilmが語る,映画制作におけるGPUコンピューティングと,そのゲーム開発への応用
 ILMが,初めてCGキャラクターを手がけたのは,1985年(※公開時期は北米でのもの。以下同)の「Young Sherlock Holmes」(ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎)においてのこと。作品中,ステンドグラスに描かれた騎士が抜け出し,神父を襲うシーンが描かれたのだが,きわめて平面的なキャラクターで,立体化された絵が動いている程度のものだった。

 フルCGによるキャラクターを映画史上初めてスクリーンに登場させ,当時のコンピュータグラフィックス業界にも大きなインパクトを与えたのは,1992年に公開された「Terminator 2: Judgment Day」(ターミネーター2)だ。液体金属の身体を持つアンドロイドのビジュアルに息を呑んだことを,記憶している人も多いだろう。

(左)「Terminator 2」に登場した液体金属の身体を持つターミネーター。商業映画としてほぼ初となるフルCGキャラクターが話題となった。(右)竜巻の描画とシミュレーションなどをすべてコンピュータ処理した「Twister」
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Lucasfilmが語る,映画制作におけるGPUコンピューティングと,そのゲーム開発への応用
オフィスの一角にCG制作用ワークステーションを据えた,ILM初のコンピュータルーム
Lucasfilmが語る,映画制作におけるGPUコンピューティングと,そのゲーム開発への応用
1998年にオフィス移転とともに新設されたコンピュータルーム。7000基のCPUと1PB(ペタバイト)のストレージを収める
 同社はこの時期から自社内にコンピュータルームを整備し始め,1989年に500平方フィート(約46平方メートル)にすぎなかった同設備は,ターミネーター2の制作時には1000平方フィート(約92平方メートル)に拡張され,その後も継続的に強化されていったとRichard氏はいう。

 しかし,ILMにおけるコンピュータグラフィックスはやがて大きな転換期を迎えることになる。1996年に公開された「Twister」(ツイスター)において,巨大な竜巻やそれに巻き込まれて砕け散る家屋を再現しようとしたとき,よりリアルな映像表現を実現するには,見た目(=グラフィックス)もさることながら,複雑な動きを正確に再現することがなにより不可欠だと分かったのだ。
 これを機に,同社のCG制作ではシミュレーションにより多くのリソースを割くこととなり,1998年にはコンピュータルームがついに1万平方フィート(約929平方メートル)に拡大,そこに7万基のCPUと1PB(ペタバイト)のストレージを収めるまでに拡大した。
 つまり,グラフィックス処理の効率化を促進するには,ワークステーションの台数を増やす以外に方法がなかったということだ。現在は世界各国の制作スタジオとコンピュータルームが高速回線で結ばれ,24時間稼働の体制を実現するに至っている。

炎や煙などのシミュレーションでは,奥行き方向に“スライス”と呼ぶ分割を行い,各スライスごとに独自にシミュレーション処理を施すことで効率化を実現する。さらに高速化を実現するため,GPUのパラレルコンピューティングが使われる。(右下)各スライスを合成して,リアルな炎を表現している
Lucasfilmが語る,映画制作におけるGPUコンピューティングと,そのゲーム開発への応用 Lucasfilmが語る,映画制作におけるGPUコンピューティングと,そのゲーム開発への応用
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 同社がCPUベースのコンピュータグラフィックス制作からGPUベースのそれへ切り替えたのはごく最近のことなのだが,そのきっかけになったのは2000年に公開された「The Perfect Storm」(パーフェクトストーム)だったという。
 同作では,高さ100フィートの波に飲み込まれる漁船や,救助に向かうヘリコプター,そして,波そのものがコンピュータグラフィックスで制作されたが,1フレーム描画するのに数日を要する状態で,ヘリの位置決めやアングルは,「リアルタイムでシミュレーション結果を反映させられる唯一の手段である,ワイヤフレーム画面を使って確認するしかなく,効率が悪かった」とRichard氏は当時を振り返る。

(左)「The Perfect Storm」では,100フィートの波や漁船などがすべてCGで描かれたが,(右)ヘリコプターの位置やアングル決めなどは,処理時間の問題からワイヤフレームで行うしかなかった
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「The Perfect Storm」の波のシミュレーション
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 その6年後,ILMが「Pirates of the Caribbean: Dead Man's Chest」(パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト)の特殊効果を担当したときには,CPUの性能もさすがにかなり向上していたのだが,それでも1フレームを描画し終えるのに20時間を要したとのこと。

Lucasfilmが数か月前にスタートさせた「Project GPU」。GPUの処理能力を,グラフィックス処理だけでなく,シミュレーションにも積極的に使おうという試みだ
Lucasfilmが語る,映画制作におけるGPUコンピューティングと,そのゲーム開発への応用
 それを受けた同社は2009年,「Project GPU」と呼ばれるプロジェクトをスタートさせた。これは,GPUベースのコンピューティング機能をシミュレーションや物理演算に用いるというもので,2009年に公開された「Harry Potter and the Half-Blood Prince」(ハリー・ポッターと謎のプリンス),「Transformers: Revenge of the Fallen」(トランスフォーマー: リベンジ)の二作では,プロジェクトの成果がさっそく活用されることになったという。
 Richard氏によれば,GPUコンピューティングに切り替えることで,ワークステーション1台当たりの処理能力が4倍近く向上したという。同社はこの処理性能の高さを,さらにリアルな映像表現に活かしていきたいとしている。


 ……と,ここまで駆け足で映画の話をしてきたが,よくご存じのとおり,Lucasfilmの関連会社として,ゲームデベロッパとして有名なLucasArtsがある。
 Richard氏は,今後,ILMとLucasArtsのリソースを活かし,ゲームに映画のリアルさや,今までの以上のインタラクティブ性を持ち込みたいと語る。LucasArtsは2009年11月,「Star Wars: The Force Unleashed」PlayStation 3/Xbox 360/iPhone)のアナザーストーリーとなる「Ultimate Sith Edition」(を発売する予定だ。

 映画で使われたセットデータなどがゲームに利用されたことで有名なThe Force Unleashedだが,物理演算の積極的な採用も特徴の一つ。視覚的な物理効果だけでなく,橋が崩れて同じルートがたどれなくなるといった,物理演算を使ったインタラクティブ性を実現している。とはいえ,同作はコンシューマ機向けということもあり,PCゲームのようなアグレッシブな物理演算の実装はされていないのも事実だが。

映画で使われたデータをゲームにも利用した「Star Wars: The Force Unleashed Ultimate Sith Edition」の開発環境
Lucasfilmが語る,映画制作におけるGPUコンピューティングと,そのゲーム開発への応用
「Star Wars: The Force Unleashed Ultimate Sith Edition」の一シーン
Lucasfilmが語る,映画制作におけるGPUコンピューティングと,そのゲーム開発への応用
Lucasfilmが語る,映画制作におけるGPUコンピューティングと,そのゲーム開発への応用

 そのLucasArtsが,映画的な手法をさらにゲームに取り入れるために開発したのが,独自ゲーム開発ツール「zViz」(ジービズ)だ。基調講演で公開されたビデオでは,戦闘機の飛行ルートや,爆撃,被弾といったイベント,キャラクターの動き,影の移動などを,映画と同じように作り込めるとシーンが紹介された。
 zVizを使ったタイトルがいつ頃市場投入されるかなど,詳細は明らかにされなかったが,同社の現状から見て,映画制作やゲーム開発にGPUが大きな衝撃を与えていることだけは確かだと思われる。今後,映画同様,GPUコンピューティングによるリアルな世界がゲームにもたらされることに期待したい。

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