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[インタビュー]インディーゲームの現場の声から設計されたMIXIの海外支援。「LVLZero Tokyo」が後押しする“世界への最初の一歩”
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印刷2026/04/04 12:00

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[インタビュー]インディーゲームの現場の声から設計されたMIXIの海外支援。「LVLZero Tokyo」が後押しする“世界への最初の一歩”

 2026年4月2日に発表された「LVLZero Tokyo」は,MIXI Global Investmentsによるインディーゲームの海外展開支援プログラムだ。

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 日本のインディーゲームを世界市場へ送り出すことを目的に,ローカライズや情報発信,海外パブリッシャとの接点づくりなどを,約3か月・100日間のメンタリングで支援する。グローバルに挑戦したい開発者やスタートアップを対象に,現在第I期プログラムのエントリーを受付中だ(2026年4月25日まで)。

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 MIXIの投資子会社・MIXI Global Investmentsは本日(2026年4月2日),インディーゲーム開発者の海外展開を支援する「LVLZero Tokyo」を発表した。100日間のメンタリングを通じてグローバル市場への挑戦をサポートする実践的な施策で,発表に合わせて第I期プログラムのエントリー受付が始まっている。

[2026/04/02 15:06]

 MIXIの100%子会社として,海外投資を担うコーポレートベンチャーキャピタルであるMIXI Global Investmentsが行う同プログラムだが,特徴的なのは,そんな投資子会社による取り組みでありながら支援の内容が投資“ではない”点だろう。
 株式取得やパブリッシング権の取得は行わず,中立的な立場で開発者の主体性を尊重した支援を掲げている。

 とはいえ,インディーゲームのコミュニティでは,外部からの支援やビジネス的関与に慎重な見方も根強くある。
 「支援」と言いつつ,コントロールされることはないのか。どこまでインディーとしての自主性が守られるのか――気になる人たちもいるはずだ。

 そんな疑問を本プログラムの責任者にぶつけたところ,「インディーゲームの現場の声を反映して設計している」という答えが返ってきた。
 「LVLZero Tokyo」設立の経緯は。そして“現場の声”とは? 本プログラムの責任者であるMIXI Global Investmentsの占部友春氏,インディーゲームの現場感覚を届けるMIXIの社内公認サークル“インディーゲーム開発部”のメンバーに話を聞いた。

左から,MIXI / MIXI Global Investmentsの占部友春氏,MIXIの菱田志保氏と岩野成利氏
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投資では届かないインディーをどうサポートするか。日本版「LVLZero」の始まり


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。
まずは自己紹介を兼ねて,「LVLZero Tokyo」を立ち上げた占部さんご自身についてうかがってもよいでしょうか。

占部友春氏(以下,占部氏):
画像ギャラリー No.010のサムネイル画像 / [インタビュー]インディーゲームの現場の声から設計されたMIXIの海外支援。「LVLZero Tokyo」が後押しする“世界への最初の一歩”
 私はMIXIのコーポレートデベロップメント本部に所属していまして,その中の投資事業部で海外とエンタメ領域の投資を担当しています。
 また,2023年に設立した海外投資子会社・MIXI Global Investmentsでは,取締役 投資責任者を務めています。

 ちょっとややこしいんですが,本社の投資部門と海外投資子会社の両方を担当しているという形です。

4Gamer:
 「LVLZero Tokyo」はMIXI Global Investments側のプロジェクトですね。
 海外投資を専門にしている会社が,なぜ日本のインディーゲーム開発者の海外展開をサポートするプログラムを始めたのか,というところがまず気になります。

占部氏:
 これについては,MIXI Global Investmentsのインドでの活動から話したほうが分かりやすいかと思います。

 MIXI Global Investmentsは以前からインド市場に注目していて,インドのゲームスタジオやパブリッシャ,ゲームテック企業への投資をしてきました。私自身,年の半分くらいインドにいて,多くのゲームに関わる人たちの話を聞いてきました。

4Gamer:
 インドは2020年代に入り,市場としての注目度がさらに高まった印象がありますね。

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[2022/03/26 17:04]

占部氏:
 ええ。そしてインディーゲームコミュニティも育っていて,現地のゲームイベントに行くと多くの開発者に声をかけてもらうことがあります。本当に熱量の高い人たちがたくさんいるんですよ。

 ただ,ベンチャーキャピタルのモデルって,個人開発者や小規模スタジオには合わないんですね。
 投資家側としては「この会社に投資することで,成長して、いつ株式売却が可能か」というエクイティストーリーが見えないと動きづらく,分配を組み合わせる手法もあるとはいえ,総じてインディーゲームは出資の対象になりにくいわけです。

4Gamer:
 インディーはまず作りたいものがあって,そこに人が集まって動き出すものですよね。
 最初からビジネスとして設計されているものではないので,投資の前提になるような評価には当てはまりにくい部分もありそうです。

占部氏:
 ええ。では熱量の高い人たちの話を聞いて「頑張ってね」で終わるのかというと,それも違う。
 投資という形ではカバーできない層に向けた,別の形での支援プログラムができないかと考えて始めたのが,インドのゲーム系ベンチャーキャピタル・Chimera VCと,インドゲーム産業の大手企業・Nazara Technologiesとの3社で立ち上げた「LVLZero」です。

4Gamer:
 なるほど。今回の「LVLZero Tokyo」はその“日本版”みたいなものなわけですね。
 ではなぜそれを日本でも,となったのでしょう?

占部氏:
 インドでの活動をしながら,日本でも個人や小規模開発チームから話を聞くことが増えていました。
 そこで「海外にも出たい。でもどこから手をつければいいか分からない」という開発者が日本にもたくさんいると感じたんですね。「それなら,日本でも同じことができないか」と。

 ただ,私は海外投資の責任者ですし,日本で,しかも利益目的ではない取り組みについて,社内で通すのは難しい状況でした。
 そんなことを考えていたときにちょうど東京都のスタートアップ支援プログラム「TOKYO SUTEAM」の募集があるのを知って,応募したら9月に採択していただいた。それが動き出したきっかけです。

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「教える」のではなく「つなぐ」。100日で海外展開の“準備”を整える仕組み


4Gamer:
 では,「LVLZero Tokyo」とは,具体的にはどんなことをされるのでしょうか。
 応募要項(リンク)にも詳しく記載されていますが,どういった人たちが対象になるのでしょう。

占部氏:
  海外市場への展開に関心があり,パブリッシングを見据えた開発段階にある個人開発者や小規模チームが対象です。
 応募時には,プレイアブルなビルド,またはそれに準ずるゲームプレイ動画や資料などの提出をお願いしています。

4Gamer:
 ある程度形になっていて外に見せられるものがあり,それを海外に出したいと考えている開発者に合いそうですね。
 実際プログラムではどのようなことが行われるのでしょうか。

占部氏:
 プログラムは「100日間メンタリング」と名付けていまして,約3か月で全10回のセッションを,MIXIのオフィスでのオンサイトとオンラインのハイブリッドで行います。

 内容としては,海外販促の手法や成功事例の概論から始まって,ローカライズの課題への取り組み方,実際にトレイラーを作って,それを英語でどう伝えるかという実践的なところまで。セッションを通して一緒に準備を進めていくイメージです。

画像は特設サイト(リンク)に記載されている第I期のスケジュール
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4Gamer:
 それらをMIXIの知見を通してレクチャーすると。

占部氏:
 いえ,MIXIが10回すべてを担当するわけではなく,協力企業や外部の方にも入ってもらいながら,さまざまな視点を取り入れて進めていく想定です。

 セッションの内容も「教える」というよりは,海外のパブリッシャや投資家との壁打ちやフィードバックの場にしたいと考えています。「自分のゲームを海外の人に実際に見てもらい,意見をもらう」機会を増やしていくことが目的です。

4Gamer:
 MIXIが答えを教えるというよりは,外の人とつなぐ場を作る。
 そこで自分自身がやり取りする感覚を身につけていく,というような。

占部氏:
 そうです。交渉や進め方は相手によって全然違いますから,手取り足取り正攻法を教えるみたいなことはできないんですが,一緒に実践的に学んでいくようなプログラムにしたいと。

 海外のパブリッシャと実際に契約を取り付けるのはハードルが高いですし,ウィッシュリストがたくさんついているとか,SNSでグローバルなファンがついているとか,一定の実績がないとなかなか前に進まないこともあります。
 なのでまずは「自分のゲームが今どのくらいの位置にあって,パブリッシャと話せるレベルになるには何が必要か」という現在地の確認から始めて,やり方を整理していくのも大事だと思っています。

4Gamer:
 現在募集中の第I期は,8月開催のドイツのゲームイベント「gamescom 2026」への参加が大きな取り組みのひとつになっているんですね。

写真はgamescom 2025
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占部氏:
 gamescomは渡航をサポートして参加してもらうだけでなく,事前にパブリッシャや投資家,メディアとの商談アポを我々のほうで設定します。
 そこで契約まではいかなくても,またはセルフパブリッシングでいくという決断をするにしても,海外のパブリッシャやメディア,インフルエンサー,インディーゲームコミュニティとの接点ができて,こういう場でどうやっていけばいいのかという流れを体で知ることができる。一人で行くより体験価値が全然違うものになると思っています。

4Gamer:
 自分たちのゲームの見せ方と考え方を一連の流れでつかんで,それを自分のものにしていくという。

占部氏:
 自分でネットで調べ続けても情報は断片的で時間だけが過ぎていく。少人数の開発現場でその時間を使ってしまうのはもったいないですし,そこを開発にあててほしいですよね。
 そこでノウハウを持った人たちと話せる場を作って,「これが正解」ではなくても一つの事例として伝えていく,というのが重要なポイントだと思っています。

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作れるが,その先が分からない。日本のインディーが止まる理由に向き合う


4Gamer:
 「LVLZero Tokyo」を進めていく上で,日本の開発者が海外に出ようとするとき,どこがつまずきポイントだと見ていますか?

占部氏:
 特に日本は顕著だと思うんですが,インディーゲームのチームは代表の方がゲーム開発側の出身が多いと思います。
 海外展開したいという意思自体はあるけど,マーケティングやビジネスのキャリアの方ではなく,どこから始めていいか分からないまま止まってしまう。そういう方が多いのではないかというのが私の認識です。

4Gamer:
 インディーゲームの開発者のスタンスはそれぞれ違いますが,売るためというより,まずは作ったものを多くの人に見てもらいたいという気持ちはありますよね。
 制作の過程で「もっといろいろな人に遊んでほしい」と考えるようになるケースも多いのではないかと思います。

占部氏:
 まさにそれで,ゲームを作る人たちは,商業的な理由だけじゃなく純粋に「世界中の人に遊んでもらいたい」という気持ちが大きいと思うんです。

 応援する側としても,名作として広まる可能性があるもの,大きなIPになりえるものが「出し方が分からない」という理由で止まってしまうというのは,やはりもったいないと感じます。

4Gamer:
 分かります。これはインディーゲームに関わるパブリッシャやメディアも共通していると思うんですが,仕事としてまずあるけど,それ以上に「このゲームをもっと知ってほしい,埋もれさせたくない」という気持ちが強い。インディーゲームに関わる人たちに共通する感覚ですよね。

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インディーの現場の声を反映した“コントロールしない支援”


4Gamer:
 「LVLZero Tokyo」についてちゃんと聞いておきたいのが,インディー開発者との向き合い方の部分です。

 インディーカルチャー的に,作家性を大事にしてほしい,“コントロールされたくない”という気持ちが強い人が多いと思うんです。
 収益化をするにしても譲れない部分はあって,ビジネス的な関与には拒否感情や警戒感がある人もいます。

占部氏:
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 そういう見方はあると思います。
 「LVLZero Tokyo」は投資会社のプログラムというところで,「ビジネス的な話を持ち込まれるんじゃないか」と警戒されるのは当然だという認識です。

 だからこそ,参加者の自主性を尊重し,パブリッシャとの席は用意するけど「ここと契約しなさい」とはもちろん言わない。株式も権利も取らないということをしっかり伝えたいと考えています。

4Gamer:
 そういった発信やプログラムの実施するうえで,“現場感”みたいなものが大事だと思っていて。そのあたりのところで出てくるのが,今回同席いただいた“インディーゲーム開発部”なわけですね。

占部氏:
 はい。今日参加してくれた菱田と岩野が関わっていて,インディーゲームコミュニティの感覚でプログラムの設計から確認してもらっています。

4Gamer:
 そもそもインディーゲーム開発部というのはどういうものか,というところから聞かせてもらえますか?

菱田志保氏(以下,菱田氏):
 MIXI社内の公認サークルで,会社と別に個人でもゲーム開発をしている社内の人間が集まっています。
 会社の編成の都合などでゲーム開発の現場を離れた人も,会社でゲーム作りや話をできる場として,お互いに助け合える場所を維持しておきたい。あとは「ここにこれだけゲームを作れる人間がいる」というアピールも兼ねて立ち上げました。

 ……というのが建前の話で。

4Gamer:
 建前?

菱田氏:
 本音を言えば,好きなゲームを皆で集まって作りたかっただけです(笑)。

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4Gamer:
 (笑)。菱田さんをはじめインディーゲーム開発部の皆さんとは,以前に「ゲムダンもくもく百宴祭」やインディーゲームのイベントでお会いしたこともあって。個人でのゲーム出展もですけど,部としてインディーコミュニティと一緒にイベントをされているのも印象的でした。

菱田氏:
 公認サークルとして認められると,MIXI協賛という形で会社の施設を使ったイベントを開催できるんです。
 それで岩崎さんがやられている「インディーゲームもくもく会」のいち会場として,MIXIの渋谷オフィスを使って開いています。

※東京ゲームダンジョンやインディーゲームもくもく会の運営でも知られる,個人ゲーム開発者の岩崎匠史氏(関連記事

岩野成利氏(以下,岩野氏):
 2024年6月から毎月やっていて,毎回40人くらいのゲーム開発者の皆さんに参加いただいています。

写真はゲムダンもくもく百宴祭
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 年の瀬の足音が近づく12月6日。東京・渋谷でインディーゲーム開発者向けイベント「ゲムダンもくもく百宴祭」が開催された。参加者は100人近くの個人/小規模チーム開発者。“作る人”が披露した開発中のゲームを“作る人”が遊び,情報を共有する――そんな,クローズドだけど大きなイベントに密着した。

[2025/12/26 10:00]

4Gamer:
 東京ゲームダンジョン主催でもおなじみの岩崎さんや,社外のインディーゲーム開発者という,まさにインディーの現場にいる人たちと活動されているわけですね。
 そのインディーゲーム開発部と「LVLZero Tokyo」は,どういう形でつながったんですか?

占部氏:
 私がインディーゲーム開発部を“発見”したのが去年の12月なんですよ。
 ある日,私のチームの新卒メンバーから「社内にインディーゲーム開発部というサークルがありますよ」って聞いて。

4Gamer:
 そんな“部活”あったっけ? と。

占部氏:
 ええ。さらに聞いたら,そのメンバーがゲーム領域の投資の勉強がしたいという理由で,インディーゲーム開発部のチャンネルにこっそり参加していたらしくて。
 一方の私は「TOKYO SUTEAM」採択後もずっと,インディーゲームの人たちに本当にいいものを届けるにはどうすればいいかと企画を練り直していたところで。だから……もっと早く教えてよ,と(笑)。

4Gamer:
 (笑)。

占部氏:
 そんなきっかけですが,私としてもちょうど「これは投資部門だけで話してもだめだ。実際にゲーム開発をしている人たちと一緒にやりたい」と思っていたタイミングだったので,すぐに菱田と岩野に声をかけて。

4Gamer:
 その話があったとき,お二人はどう思いましたか?

菱田氏:
 その動き自体はなんとなく知ってはいました。
 ただ最初に声をかけてもらったときは,さっきの“コントロールされることへの警戒感”じゃないですが,投資部の方からの話だったので「何か利益が絡むんじゃないか。そういう話だったら断ろうかな」とは正直思いました。

4Gamer:
 そこはいちインディーゲーム開発者としての感覚として。

菱田氏:
 そうですね。ただ,占部が本当に楽しそうに話してくれて。純粋にインディー支援のためだけに動いているんだというのが伝わってきて,これは面白いなと。力になれることがあればと思って。

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岩野氏:
 私はゲーム業界に20年くらいいて,それこそ呼吸のように当たり前のこととして個人でのゲーム開発もしているんですね。
 それだけ長い経験があるので,国内向けにどう動くか,どう情報を出すかは分かるんですが,では海外でどうするかとなるとやはり見えない,分からないことが多くて。

 その分からない部分に対して,海外のパブリッシャやゲーム関係者と接点ややりとりがある投資チームがサポートする。それで何かが形になれば,それはインディーゲーム開発者にとって一つのよい事例になると思い,関わることにしました。

4Gamer:
 自分たちのインディーコミュニティの感覚と,海外への投資や知見を持っている人たちが組み合わさることでできることがありそうだ。プログラムとして納得がいったと。

 実際にインディー開発者として活動していて,「海外に出ていく」ということについてはどう感じていますか?

菱田氏:
 日本国内のイベント出展やコミュニティ活動はもう何度もやってきていて,海外の方と接することもあります。
 でも,いざ出展したゲームに興味を持ってもらっても,「Thank You」しか言えないというか,そのあとどうフォローしていいか分からないということはありますね。

4Gamer:
 連絡先をもらって「keep in touchで!」と伝えるところまではできても,そこからどう動けばいいか,という。

菱田氏:
 そうなんです。「じゃあメールを送ってみよう」となっても,どうやりとりをしていけばいいのか分からない。そもそも,まず何をどう書けばいいのかも分からないという人は多いと思います。

岩野氏:
 たとえば海外のパブリッシャとつながって,ネットで調べてそこそこの規模の会社だと分かったとしても,どうアプローチすればいいか困ってしまう。

 インディー開発者のなかには,市場の数字やKPIなどをすごく研究して海外展開を目指している人もいます。ただ,個人で調べられることの限界というのはどうしてもありますよね。
 だから市場の見方が身につく「LVLZero Tokyo」のような形のサポートは,ありがたいと思う人も多いのではないかと思います。

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4Gamer:
 開発に専念したいのに,海外展開の方法を調べることに時間が削られてしまうと考えても,そのあたりの時間が短縮できるのもいいですよね。
 それにこのプログラム自体も,インディーゲームの現場にいる人たちが設計から入っているというのは信頼の担保になると思います。

占部氏:
 おっしゃる通りで,それは意識しています。インディーで活動している方たちが不安になるところは,設計の段階からつぶしておきたい。
 実際に開発をしている方々に深く入ってもらって,「それはいいね」と共感してもらえるかどうかをちゃんとチェックしてもらっています。

 伝えておきたいのが,インディーゲーム開発部の協力も「会社の人間だから手伝いなさい」という話は社内でも一切していなくて。コンセプトをちゃんと説明したうえで,共感してくれた人が有志で集まっている形です。

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止まっているところから,一歩先へ――海外展開の“きっかけ”を作りたい


4Gamer:
 いいお時間となりました。
 あらためて「LVLZero Tokyo」についてまとめると,プログラムはおよそ3か月・全10回のセッションで海外販促やパブリッシャーとの向き合い方を実践的に学んでいく。第I期のゴールはgamescom 2026で,渡航のサポートや現地でのアポの設定もしてもらえる。
 設計や運営にはインディーゲームの現場にいる人たちが関わっていて,参加者の主体性は尊重される,という形で行われるんですね。

占部氏:
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 はい。とくに伝えたいのが,参加者の主体性の尊重――具体的な話で言えば株式取得やパブリッシング権の取得をしないというのは,インドの「LVLZero」から一貫した理念です。

 そもそもベンチャーキャピタルモデルでは届かない人たちを支援したいというのが出発点なので,株式を取るモデルとは根本的に合わない。パブリッシャや投資家との接点は作りますが,「この会社と必ず話しなさい」という誘導は一切しません。

 開発者の主体性を尊重し,中立的な立場でネットワークをつないでいくということをしっかりと行っていきます。

4Gamer:
 東京都のプログラムという点でなにか“縛り”みたいなものはありますか?

占部氏:
 基本的に制約はないんですが,募集要項にひとつ,法人化についての記載が含まれています。
 といっても,「東京都での法人登記も検討してもらえますか」という意思確認で,これはゲームがうまくいったら法人化もオプションとして考えてみてください,というくらいのニュアンスです。

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4Gamer:
 作品が成功してスタジオとして次の作品,またその次と作っていくならご検討を……というような話ですね。プログラム参加中,または終了後に法人化を促されることはないと。

占部氏:
 ありません。法人化は事業のタイミングもあるかと思いますので。
 あと第I期の参加者については,渋谷のMIXIへの行き来ができるかという条件はあります。ただこれも東京都のプログラムだからではなく,全10回のうち5回は渋谷のオフィスでセッションをやりたいということで,自然とこれに通える方が対象になるという話ですね。

 初めての開催なので参加者の方々と密に関われるようにしたいですし,8月のgamescomの現地で「初めまして」になるのも避けたい。今後も継続し,より多くの地域の人が参加できる形にするため,初回は堅実に行いたいという理由によるものです。

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4Gamer:
 最後に,「LVLZero Tokyo」にかける思いを聞かせてください。

占部氏:
 率直に言うと,このプログラムはほとんど私の“パッションプロジェクト”なんですよ。
 社内のインディーゲーム開発部もですが,パートナーとして参画してくださっている方々もそれに共感してくれる仲間が集まってきている。「ここから収益が上がるわけじゃないですよ」と説明したうえでも協力してくれています。
 あくまで業界への貢献の一環として取り組んでいくというのが基本的なスタンスです。

 もちろん大きな商業的成功を収めるロールモデルが生まれたら理想ではあるんですが,まずは「まだ一歩を踏み出せていない開発者を後押しする」というのが何より大事なことだと考えています。
 面白い日本のゲームを世界に届ける。その入り口の一つになれればと思っています。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。
 メディアとしても,いちインディーゲーム好きとしても,この取り組みが言葉通りに,きちんと適切に運営されていくのかは見ていきたいと思っています。
 そのうえで,日本の面白いゲームが海外に届くきっかけの一つになるのなら,やはり期待したいところです。

占部氏:
 参加を検討している開発者の方だけでなく,ゲームファンの方々にもそういう目線で見ていただけるのはありがたいです。
 広く見られていることも意識しながら,きちんと形にしていきたいと思っています。

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