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全国の小学校,約2割に導入されている「桃鉄 教育版」が社会貢献賞を受賞。「第17回FOST賞授賞式」レポート
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印刷2024/03/07 18:40

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全国の小学校,約2割に導入されている「桃鉄 教育版」が社会貢献賞を受賞。「第17回FOST賞授賞式」レポート

 公益財団法人 科学技術融合振興財団(foundation for the Fusion Of Science and Technology。以下,FOST)は本日(2024年3月7日),「第17回FOST賞授賞式」を東京都内で開催した。

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 FOSTは,シミュレーションやゲーミングといった技術の利用を,社会や文化の中で促進させる研究課題への助成事業と,その成果を広く還元する普及啓発事業を活動の柱とする財団である。
 会場では2023年度にFOSTが支援・助成した研究の中から,最も優れたものを表彰するFOST賞をはじめ,若手研究者を対象とするFOST新人賞,ゲームの研究・開発・応用に関連して社会貢献した人物,または人材を対象とするFOST社会貢献賞が発表された。

主催者を代表して開会の挨拶を行ったFOST 理事長 襟川陽一氏。財団が設立30周年を迎えたこと,それを記念するカンファレンスの開催を予定していることを紹介した
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東海大学名誉教授 白鳥 令氏は,受賞した研究の講評を述べた
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 第17回FOST賞に選出されたのは,北海道大学大学院 農学研究院 小山田 晋氏による「異文化間ホスピタリティ・ゲーミングの実践によるローカルな社会規範の更新」。この研究は,アメリカの心理学者であるローレンス・コールバーグの道徳性発達段階理論をベースに,日本の伝統的な社会や異文化が混ざっている社会の中で,倫理規範や法規範がどのように更新されていくのかを,ゲーミングを用いて確認するというものだ。

小山田 晋氏
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 小山田氏は,「ゲームは基本的に競争したり,相手を倒したりすることが目的だが,そうではなく異文化や世代の違いなどの価値観が違う相手が何を求めているか察して,『これはどうですか』と提案するゲームができるのではないかと考えた」と説明する。さらに「学術的にそれが実証できているかというと,かなり心もとないので,もっと理論の研究を深めて,より学術的なゲーミングとして発展させたい」と展望を語った。

 第17回FOST新人賞に選出されたのは,東京大学大学院 総合文化研究科 博士課程2年 高田亮介氏による「本能と学習による価値を併せ持つことでスリルを味わうNPC」の開発である。これは,ゲームをプレイ中に「人は,より高いリスクを選ぶ」という非合理的な行動を取って,スリルを楽しむケースがあるが,進化計算と強化学習によって,コンピュータやAIが操るNPCにも,そうした行動を取らせるモデルの実現を目指した研究だ。

高田亮介氏
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 高田氏は,自身の研究がフランスの哲学者であるロジェ・カイヨワの「遊びの中で何かを表現しようとする観念がしみ込んできた。それは生きることの観念だ」という言葉に着想を得たものであると説明し,「プレイヤーとNPCのコミュニケーションを考えたとき,NPCにも人と同じようにスリルを味わうような認知モデルを持たせたほうがいいのではないかと考え,進化計算と強化学習という最適化手法によって実現した」と語る。
 また「スリルを味わうことは,ある意味で生きていることを自覚すること。そのような信念のもと,これからも生きるコンピュータやエージェントの実現を目指す」と意気込みを語っていた。

 FOST社会貢献賞に選出されたのは,KONAMIの「桃太郎電鉄 教育版 Lite 〜日本っておもしろい!〜」である。本作は,教育現場のカリキュラムを意識して学習機能を追加した桃太郎電鉄シリーズの派生作品であり,2023年1月に本格的な稼働を開始して以来,本日時点で全国の小学校の約20%以上に導入されているとのこと。

岡村憲明氏
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 開発チームを代表して登壇したプロデューサーの岡村憲明氏は,原作者であるさくまあきら氏が「『桃鉄で日本の地理を覚えた』という話が昔からあるので,全国の児童のために何か役に立てないか」と常々発言していたことを紹介し,それに応える形で本作を実現したと述べた。
 「ゲームと言えば,親御さんから隠れてコソコソやるものといったイメージがあったが,多くの方にご理解いただいて,こうしてゲーム以外のところでも使っていただける事例となった」と成果を示し,「私自身,30年間ゲームを作っているので,こうした形で社会に貢献できることに誇りを感じる」と話していた。

公益財団法人 科学技術融合振興財団(FOST)公式サイト

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