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プロeスポーツチームを運営するREJECTの事業戦略発表会をレポート。新拠点施設「REJECT GAMING BASE」もお披露目に
REJECT 代表取締役 甲山翔也氏は,最初に「Road to Clutch」を同社の新コンセプトとして掲げたことを紹介した。甲山氏は“Clutch”という言葉に惹かれているとのことで,eスポーツ業界ではチーム戦で1vs.5のような状況になったとき,その圧倒的不利を覆してラウンドを獲ったタイミングなどに使われると説明。「そうしたCluchのシーンは,ちょっとすごいのではなく,圧倒的にすごくて息を呑むような,見る者にまばたきをさせない瞬間。そうした強いインパクトのあることを展開していく」と意気込みを見せた。
新拠点のREJECT GAMING BASEは,もともと防音設備だった地下1階を大改装して選手達がトレーニングやミーティングに使えるゲームスペースにした。これは選手達が集まり,互いに声を出して練習できるようにという配慮からとのこと。また以前は一軒家を使ったゲーミングハウスを利用していたのだが,東京都内ではどうしてもネット回線がネックになりがちという課題もあったという。
そこで海外チームの事例を参考に,生活とトレーニングを切り離した専用施設を用意することに決めたそうだ。なおネット回線は,ATMなど絶対に落ちてはいけない公共施設に使われるものと同等のものを採用したのだとか。
このゲームスペースのコンセプトは「RGB」。これはREJECT GAMING BASEの略称であると同時に光の三原色を意味しており,照明を赤,緑,青と自在に変更できるとのこと。例えば攻撃的な戦術の練習をするときは赤,クールダウンしたいときは青といったような使い分けを想定しているという。
施設の1階にはコミュニティスペースがあり,アパレルブランド「REJECT」の商品を展示したり,大型ディスプレイを設けて選手やコーチ,スタッフが交流したりする場となっている。甲山氏はREJECTを「コロナ禍の中で成長した会社」とし,「この1年で選手やスタッフも増えたが,実はまだ一度もリアルで顔を合わせたことのない人達がいる。オンラインだけの関係と,実際に会ったことのある関係は結構違うので,選手とスタッフのコミュニケーションを円滑にするべく,この場を作った」と説明した。
続いて,筑波大学 体育系 助教/スポーツイノベーション開発研究センター(SIRC) スポーツIT分野長 松井 崇氏が,同大学とREJECTが一緒に取り組んでいる共同研究を紹介した。
松井氏の所属するSIRCでは,2020年1月より「eスポーツ科学プロジェクト」を発足し,eスポーツをスポーツ科学の視点から理解し,ハイパフォーマンスと健康の両立について研究している。すなわち「eスポーツはスポーツか?」というテーマから脱却し,「eスポーツはどのようなスポーツか?」ということを明らかにするわけである。
松井氏は,スポーツの発達がeスポーツの誕生と密接に関係しているという説を紹介。その説によると,もともと争うことの好きだった人類が,命の奪い合いをすることなく,バーチャルに敵味方を分けて,競い合いを楽しむためにスポーツが生まれたという。以降,さまざまな競技が生まれ,産業革命以降にはモータースポーツが生まれた。そしてIT革命によってスポーツはコンピュータやネットワーク上でも行われるようになり,よりバーチャルな側面を持つeスポーツとして認知されるようになったのは宿命であるというのが,その説の主張だ。
一方,eスポーツには“不健康”というネガティブなイメージが根強くある。松井氏は「eスポーツが悪いわけではなく,長時間練習することに伴って栄養や睡眠の管理が疎かになることが問題であると考えられる」とし,「そこにスポーツ科学を応用できるのではないか」という議論がなされていると説明した。
松井氏らがREJECTと共同で進めようとしているのは,「スポーツ科学で選手のハイパフォーマンスを引き出す」ための研究とのこと。テーマは「eスポーツ選手のハイパフォーマンスと健康の両立の実現」で,具体的には選手達の「生活(睡眠)・健康における課題とその対策の検討」および「長時間プレイ時の生理・心理的特性の検討」を進めていくそうだ。
「REJECT」公式サイト
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