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小学生から社会人まで。学びの場で活用されているゲーミフィケーションの事例が紹介された「eラーニングアワード 2019 フォーラム」のセッションをレポート
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印刷2019/11/18 15:59

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小学生から社会人まで。学びの場で活用されているゲーミフィケーションの事例が紹介された「eラーニングアワード 2019 フォーラム」のセッションをレポート

 e-Learning Initiative Japanは,2019年11月13日から15日の3日間,eラーニングを取り巻く現状と未来について,事例とともに紹介・発表・議論する総合フォーラム「eラーニングアワード 2019 フォーラム」を開催した。
 本稿では,会場にて行われたセッションのうち,ゲーミフィケーションの手法と事例が紹介された「学びのゲーミフィケーション活用法 2019最前線」の模様をお伝えしよう。

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 セッションの冒頭では,日本ゲーミフィケーション協会 代表理事 岸本好弘氏が,ゲーミフィケーションの定義とこれまでの歴史を改めて紹介した。ゲーミフィケーションが「身の回りのこと(学び)にゲーム要素を入れて,人を楽しくやる気にさせるもの」であることや,「若い世代との親和性が高い」こと,「ゲームそのものではない」ことを,岸本氏はアピールした。

岸本好弘氏
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 また,岸本氏の掲げるゲーミフィケーションの6つの要素「能動的参加」「称賛演出」「即時フィードバック」「独自性の歓迎」「成長の可視化」「達成可能な目標設定」が,ゲームを面白くするためのゲームデザインのそれを応用したものであることが説明された。

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 このパートの詳細については,「eラーニングアワード 2018 フォーラム」にて行われたゲーミフィケーションに関するセッションのレポート(関連記事)に今回とほぼ同じ内容が記されているので,興味のある人はそちらを参照してほしい。

 続いて,実際に企業研修や学校教育にゲーミフィケーションを取り入れた4つの事例が示された。
 まず紹介されたのは,子ども向け教育から企業研修まで幅広い世代を対象とした教育事業を展開するプロキッズの事例だ。プロキッズ 代表取締役 原 正幸氏は最初に小中高生(1000名)を対象にした「授業への不満」に関するアンケートの結果を示した。それによると「授業が分かりにくい」「授業の進捗が自分と合わない」などを押しのけて1位になったのは,「そもそも授業がつまらない」ということだった。

原 正幸氏
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 それでは,なぜ授業がつまらないのか。原氏は「学ぶ理由が分からない」「指示どおりにしか学べない」からではないかという仮説を挙げた。そこで「ワクワクする課題」を提示することで子ども達のモチベーションを高め,「自由に選べるようにする」ことで主体性を高め,楽しく学べるようにすることが大切なのではないかと原氏は考えたという。

 現在展開している「CODE LAND」は,「学びと創造が共存する世界」をコンセプトにした教育コンテンツなのだという。一般的な教育では,1つの課題に対して1つの作品(解答)が求められるケースが大半だが,CODE LANDでは1つの課題に対し,子ども達それぞれがオリジナリティを発揮して,異なる作品(解答)を作り出せるような仕組みとなっている。

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 CODE LANDのコンテンツ制作にあたっては,まず子ども達を惹きつける“ワクワクするコンセプト”を考案し,それに合わせて“カリキュラム設計”をし,さらに“ゲーミフィケーション”を採り入れていったという。

 まず,具体的な“ワクワクするコンセプト作り”では,「プログラミングを仮に江戸時代の人に見せたら魔法だと思うだろう」という子ども達との話をヒントにして,「魔法のプログラミング腕輪」に決定したという。ここにはゲーミフィケーションの6要素のうち,子ども達の「能動的参加」が含まれている。

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 続いての“カリキュラム設計”では基礎,練習,応用と段階を分けて課題を作っていった。基礎課題は全員解ける,練習課題は何%が解ける……といったように一般的な課題作りと同じようなプロセスを経たとのこと。ここにはゲーミフィケーションの6要素のうち,「達成可能な目標設定」が含まれている。
 
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 そして“ゲーミフィケーション”に関しては,学ぶ側の子ども達が「行動を決める人=プレイヤー」になるように組み立てていったそうだ。一般的な教育の場合,学ぶ側は課題を与えられて,それを解いていく。すなわち学ぶ側の子ども達は,行動を決める人(プレイヤー)ではないのである。
 しかし,CODE LANDでは,子ども達が主体的に考えて必要なものに気づき,子ども達が探しに行き,見事アイテムを獲得する。ここにはゲーミフィケーションの6要素のうち,「即時フィードバック」と「称賛演出」が含まれている。

 さらにCODE LANDでは,応用課題の先に自由にカスタマイズできる「Open Land」を設け,子ども達の独自性を歓迎している。子ども達は,宝箱を開けるための仕組み作りを極める,プログラミングに集中する,デザインに夢中になる,といったように,それぞれ異なるポイントにこだわりを見せたという。
 結果として,CODE LANDを体験した子ども達のアンケート結果は満点だったそうだ。

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 原氏は以上をまとめて,ゲーミフィケーションを採り入れるには,失敗することさえも体験できる「学ぶ側(プレイヤー)ファースト」,子ども達が主体的に動いているように思わせておいて,実は課題を提供する側が主導権を握っているような「学ぶ側が自然に動くような設計」が重要であるとした。
 また目的とゲーム要素のバランスも大切とのことで,「ラジオ体操のスタンプカードもゲーミフィケーションだが,誰もゲームだとは思っていない」と例を挙げ,CODE LANDではゲームっぽさをかなり打ち出したと説明していた。

 次に学習コンテンツおよび学習サービスの開発・提供を行うザワッグルの代表 中尾瑛佑氏が,ゲーミフィケーションを活用した高校生のプログラミング教育の事例を紹介した。
 中尾氏はこの事例において,アナログ的なゲーミフィケーションとデジタル的なゲーミフィケーションの双方を用いたという。

中尾瑛佑氏
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 中尾氏は現在,高校生のプログラミング教育に取り組み始めてから3年めとのこと。1年めは,プログラミング講座を始めて半年経過したとき,学ぶモチベーションが残っていた受講生は50名のうち,わずか3名だったそうだ。残りの47名は,ゲームが作りたいのであって,必ずしもプログラミングがやりたいわけではなかったのである。

 そのため中尾氏は,受講生のプログラミングを学ぶためのモチベーションを上げるべく,ゲーミフィケーションの6要素を採り入れることにした。しかし,先ほどのCODE LANDのようなコンテンツを作るには,時間を含めてコストがかかりすぎてしまう。
 そこで中尾氏は,世界観を演出することに決め,受講生を社会人として扱うことにしたのである。

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 具体的には,「周囲から認められるまでには,1000時間をその勉強に費やす必要がある」という「1000時間の法則」を受講生に示し,1000時間に1年めで到達するのか2年めで到達するのか,それとも3年かけるのかを各自に選ばせた(「能動的な参加」)。

 そして評価に関しては,コミットした目標に対して行動したかどうかを,プログラミングの勉強時間という定量データのみの絶対評価で測定した(「達成可能な目標設定」)。

 さらにその評価を「即時フィードバック」するべく,どれだけ勉強したか自己申告制にしてスプレッドシート化し,全受講生が閲覧できるようにした。もし勉強時間が目標に対して不足している場合は,どうリカバリーするのかも受講生自身に考えさせたとのこと。

 これにより,人と競争してモチベーションを上げるタイプの受講生は,スプレッドシートを見て他人と競争を始め,そうでない受講生もスプレッドシートに記された自分の積み上げているものを見て,モチベーションを上げていったという。中尾氏は「競争を強要しているわけではないから,軋轢は生まれない。可視化してあげることは重要」と説明した。
 こうした施策の結果,受講生50名のうち17名がプログラミングに対するモチベーションを持つようになったそうだ。

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 1年めの反省を踏まえた2年めは,新たな受講生50名中32名がプログラミングを学ぶモチベーションを持った状態でスタート。「成長の可視化」ができるよう,カリキュラムから考えたとのことで,具体的には学習の成果がアウトプットされるまでの時間を難度として設定し,受講生が自信の成長を感じられるような成果物を作り続けられるよう設計した。
 また「称賛の演出」を実現するべく,とにかく褒めて伸ばすことを徹底した。ここまでが,アナログ的なゲーミフィケーションの活用である。

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 そして3年めの途中である現在は,これまでのアナログ的なゲーミフィケーションをデジタルに置き換え,とくに「独自性の歓迎」に焦点を当てた。具体的には教材をWebで共有可能にし,受講生各自が自分のペースで学べるようにした。さらに教材の中には,メインで扱っているものとは別のものも用意しておき,受講生が「難しい」と壁を感じたときに選択可能にしている。

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 さらに「Googleアナリティクス」などのマーケティングツールを駆使して,受講生がWeb上でどのように学習しているかを可視化できるようにした。これにより,教材の特定の部分が受講生にとって理解しにくい内容になっていることなどを把握できるようになったという。

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 以上をまとめて中尾氏は,コンテンツに頼らずともゲーミフィケーションは活用できるとし,そのためにはコミュニケーションが重要であると話していた。

 武蔵野学院大学 EdTech研究所 所長 坂井裕紀氏は,教育のゲーミフィケーションが学習者におよぼす影響について,2つの事例を示した。このうち「従業員の働き方への影響」に関しては,「eラーニングアワード 2018 フォーラム」にて行われたゲーミフィケーションに関するセッションのレポート(関連記事)と同内容なので,興味のある人はぜひチェックしてほしい。

坂井裕紀氏
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 2つめの事例「生徒の学級信頼への影響」は,“アクティブラーニング型授業にゲーミフィケーションを用いると,生徒は積極的に取り組むか,それとも消極的になるか”というテーマで行われた事例だ。対象となったのは,大学進学を目指す特別進学コースと,専門学校や就職なども進路とする普通進学コースの2つだ。
 授業に使用した主たるゲーム要素は「競争」「挑戦」「協力」の3つで,それらを活かすために「ゴール」「ポイント」「ストーリー」も用意した。

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 結果としてゲーミフィケーションを施した授業に対して,生徒達は以前よりも楽しく感じ,かつ信頼も増したことが判明した。
 しかしゲーミフィケーションそのものに関しては,数字は上がっているものの,有意差が認められなかったという。

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 さらに坂井氏らが分析を進め,施策前後のゲーミフィケーションと信頼,楽しさの因果関係を調べたところ,ゲーミフィケーションは普通進学コースには効果を発揮したが,特別進学コースでは効果がない,もしくは邪魔なことが分かったという。

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 坂井氏は「ゲーミフィケーションは従業員の生産性を高めたり,生徒に対する授業の効果を高めたりできるかもしれない」としつつ,「一部の従業員や生徒にとっては効果がない可能性もある」と語った。
 特別進学コースの生徒は明確に大学に進学するという目標を持っており,その達成手段として授業に意欲的に取り組んでいたため,ゲーミフィケーションの影響がなかった,もしくは逆効果だった可能性があると説明。心理学者のエドワード・L・デシによる「外的な報酬は内発的動機付けを低下させることがある」という提唱を引用しまとめた。実際,生徒自身が「志望大学に入るための勉強は,もともとゲームをやっているようなものだから」と発言することもあったという。

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 続いては,再び岸本氏が登壇し,デジタル学習コンテンツのゲーミフィケーションを紹介した。
 まず岸本氏は,「楽しく継続できる学習コンテンツ」を制作するコツとして,「ゲーミフィケーション6要素を実装する」「楽しいはあくまで手段であり,目的は本人の自発的な学習意欲の喚起」「ゲームにするのではなくゲーム化する」の3つを挙げた。

 岸本氏は2012年から2017年まで東京工科大学のメディア学部にてゲーミフィケーションおよびゲームデザインを教えていた。学生達は当初,うまく学習コンテンツを作れなかったのだが,それはゲーム化ではなくゲームを作っていたからだという。しかしベネッセの協力により,次第にゲーム化ができるようになっていき,2015年には学習ゲーム制作のノウハウを学会で発表するまでになったそうだ。

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 そんな岸本氏は現在,SRJが2020年3月にリリース予定の自律学習型能力開発ポータル「TERRACE」(テラス)のゲーミフィケーションを監修している。このコンテンツにも,もちろんゲーミフィケーションの6要素が採用されており,キャラクターが登場することにより,現実世界とは異なる子ども達がコントロールできる世界を作り出し,「能動的な参加」を促している。
 また,いわゆるホーム画面を楽しそうなデザインにすることでも「能動的な参加」を促しているという。さらに,幼児向けにはキャラクターが多く登場し,小学生向けは本棚を立体的に描き大きな図書館風に演出し,大人向けはシンプルにまとめているなど,年齢層に応じてデザインを変えることもしているそうだ。

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 ユーザーが素早く正解を出すなど大きな成果を出したときには,「Excellent!」などと表示され,「称賛の演出」と「即時フィードバック」が得られるようになっている。
 さらに連続して正解していくと効果音などの演出が変わっていき,「成長の可視化」も実現している。岸本氏は「教師の皆さんに説明しても分かってもらえないかもしれないが,子ども達はここに大きな関心を示すはず」と話していた。

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 またTERRACEにはストーリーがあり,進行に応じて世界が変化し謎が解き明かされていくのだが,この先世界がどうなるのかという部分でユーザーの「能動的な参加」を促し,また本棚にどんどん本が増えていくことでユーザーの「成長の可視化」をしている。

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 その一方では,繰り返しになるが,目的は本人の自発的な学習意欲の喚起であるため,過度にゲーム要素を入れることはしていないとのこと。岸本氏は「大事なのは,子ども達が長期的に学び続けるデザインだ」と話していた。

 会場では,岸本氏が携わったもう1つの事例として英単語学習アプリ「まなみ〜」も紹介された。こちらもキャラクターの成長や効果音,レアアイテム,マイルーム,復習キャラクターなどによって,ゲーミフィケーション6要素を実現している。
 なお現在開発中の新たな英語学習アプリでは,「独自性の歓迎」をより強化するために,アバターのカスタマイズ要素を導入する予定だそうだ。

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日本ゲーミフィケーション協会の活動も紹介された
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 セッションの終盤には,聴講者の有志と登壇者によるゲーミフィケーション活用の未来を考えるディスカッションが行われた。以下にその一部を抜粋して掲載しよう。

 「授業の大半を占める教師の話を生徒に面白く感じさせるための工夫に,ゲーミフィケーション的なアプローチはあるのか」という質問には,中尾氏が,「そもそもゲーミフィケーションは先生の話を長くしないために活用すべき」とし,生徒が主体的にアウトプットするところに早く持っていくよう設計すると語った。

 また原氏も「企業研修は能動的に参加していない人も多いので,最終的に何を目標にするのか,最初に時間をかけて決める。そうしないと,うまくいったのかそうでないのか判断できないし,報酬もない」とし,自身も授業中はできるだけ話さず,受講者自身に気づかせることを重視していると明かした。

 さらに岸本氏は,角川ドワンゴ学園 N高等学校の通信教育用教材を例に挙げ「教師がずっとしゃべっているのも,それはそれでいい。生徒は分からないところがあれば,巻き戻して繰り返し聞くことができる」とし,「つまらない話であれば,N高の教材みたいにしてしまえばいい。私自身,学校とは同じ志を持った人達が競い合ったり協力したりして,どうしても分からないときに教師に質問や相談をする場だと考えている」と持論を示した。

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 話題は,坂井氏の示した,ゲーミフィケーションが必ずしも効果を発揮するわけではないということにも集中した。岸本氏は,「検証結果はないが,経験則から言うとゲーミフィケーションが学習に効果をもたらすのは,学力が中くらいから低い人達」とし,「人には得意不得意がある。多くの人は苦手なことはギリギリまでやらず,できればやりたくないと思っているが,おそらくゲーミフィケーションは苦手なことに対して有効なのではないか」と見解を示した。
 逆に,ゲーミフィケーションを邪魔だと思う層に対しては「君はモチベーションが高くて素晴らしいが,このクラスは君みたいな人ばかりじゃない。ほかの人達のモチベーションを上げるにはどうすればいいか,一緒に考えてくれないか」と,称賛と独自性の歓迎をもってアプローチすればいいのではないかと提案していた。

 また岸本氏が掲げるゲーミフィケーション6要素に,なぜコミュニケーションに関するものがないのかという質問もなされた。岸本氏は「忘れていました。素晴らしいご指摘です」と質問者を称賛したのち,「コミュニケーションはすごく大事です。それはネット上もそうだし,授業の中でも競ったり称えたりという使い方ができます。今の時代は,コミュニケーションも入れて7要素にしたほうがいいかもしれませんね」と話していた。
 
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日本ゲーミフィケーション協会 公式サイト

eラーニングアワード 2019 フォーラム 公式サイト

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