お気に入りタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

最近記事を読んだタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

LINEで4Gamerアカウントを登録
ゲーマーに向いているのはどんな部屋? 理想のゲーム環境を物件から考えてみる
特集記事一覧
注目のレビュー
注目のムービー

メディアパートナー

印刷2019/05/25 00:00

インタビュー

ゲーマーに向いているのはどんな部屋? 理想のゲーム環境を物件から考えてみる

 昨今,プロゲームチームが専用のゲーミングハウスを用意したり,プロゲーマーを目指す人向けのシェアハウスが登場したりと,ゲームのための物件のニュースを見かけるようになってきた。
 プロゲーマーであれば,より良い環境で腕を磨きたいと考えるのは当然として,我々のような一般ゲーマーであっても,ゲームを遊ぶための住居や生活環境は,なかなかに悩ましい。時間帯によってネット回線が遅く対戦に支障が出る,配信や通話をしたくても深夜に声が響いてしまう,コンポーネントの多いボードゲームを自宅で広げるにはスペースが足りない,ルームスケールのVRを楽しむ場所なんてない……といった具合である。

 しかし,こうした問題を解決し,理想のゲーム環境を整えたいと思っても,そもそも「ゲーマーに向いた部屋」をどうやって探せばいいのだろうか。さすがに引っ越しの際,不動産屋に「ゲームがしやすい部屋がいいです」と伝えて,あっさりそれが出てくるとも思えない。

 そこで今回,「ゲーマーに向いた部屋」を探るため,東京都・新宿に店舗を構える不動産サービス「おたくのやどかり」にインタビューを行ってみた。グランツアセットが展開するこのサービスは,「社員も社長も全員オタク,ゲーマーの引っ越しはおたくのやどかりへ」を謳っている。果たして,ゲーマーはどのような物件に引っ越すと幸せになれるのだろうか。

画像集 No.001のサムネイル画像 / ゲーマーに向いているのはどんな部屋? 理想のゲーム環境を物件から考えてみる

「おたくのやどかり」公式サイト



ゲーマー向けの物件として要望が多いのは「ネットの回線速度」と「防音」


4Gamer:
 今回は,インタビューを受けていただきありがとうございます。
 まずは,平田さんとおたくのやどかりさんの紹介からお願いします。

グランツアセット 代表取締役 平田知彬氏
画像集 No.002のサムネイル画像 / ゲーマーに向いているのはどんな部屋? 理想のゲーム環境を物件から考えてみる
平田知彬氏:
 グランツアセット代表取締役の平田です。もともとは新宿の不動産会社で,分譲物件売買のセールスマンを3年ほどやっていました。そこから独立して作った会社がグランツアセットになります。
 不動産屋には,売買と賃貸の2種類があるんですが,最初は前職同様に売買をやっていたんです。ただ,ゲーム仲間からの要望で賃貸もやることになりまして。

4Gamer:
 どういうことでしょう?

平田氏:
 そもそも僕は,ゲームセンターでアーケードゲームばかりやっているゲーマーです。主に格闘ゲームと音楽ゲームをやっていて,とくにやりこんだ「MELTY BLOOD」では全国大会に出たこともあります。
 で,会社を作ってから,ゲーム仲間から「賃貸もやってよ」と言われることがすごく多くなったんです。どうやら,不動産屋でぼったくられたり,対応が雑だったり,ゲーマーに対して優しくない経験をした人がいて,分かってるやつに相談したいと。

4Gamer:
 「ゲーマーならここで物件を探そう」みたいなサービスって,ほかで見たことがないですね。

平田氏:
 そう,なかったんです。それなら需要はあるんじゃないかと,最初はアーケードゲームの知り合いだけに賃貸物件の紹介をしていきました。そうしたら,「ゲーマーがやってる不動産屋があるらしい」と口コミで広がって,捌ききれなくなってしまったので,改めて窓口として立ち上げたのがおたくのやどかりになります。

4Gamer:
 公式サイトを拝見したのですが,おたくのやどかりさんは単純に社員がゲーマーというだけでなく,「リーグ・オブ・レジェンド」のプロチームをスポンサードしていたりもしますよね。

平田氏:
 はい,今年の初めに「Unsold Stuff Gaming」のスポンサーになりました。

4Gamer:
 プロゲーマーへの物件の紹介実績はあったりするんでしょうか。

平田氏:
 ありますよ。公式サイトで一部名前を出していますが,実はいろいろな方に紹介しています。

4Gamer:
 プロゲーマーが求める部屋って,どういったものなのでしょう。

平田氏:
 要望で多いのは「ネットの回線速度」と「防音」が優れている部屋ですね。これはプロに限らず,一般のゲーマーでもそうです。
 とくにネット回線は,対戦格闘ゲームなどのジャンルのみならず,ターン制のゲームなどのプレイヤーであっても,こだわる方は多いです。安定して速度の出る回線が確保された部屋は,ゲーマー向けの物件と言えるでしょうね。

4Gamer:
 ネット回線の善し悪しというのは,どのような基準で判断するんですか?

平田氏:
 我々が認識している中で最もゲームに向いているのが,「NURO 光」をはじめとする「戸建て」向けの回線です。戸建て向けの回線は,標準的な回線よりも接続が安定するので,ゲームの接続不良などで困る可能性が低くなります。ただ通信業者によっては,海外サーバーへの接続が苦手なものもあります。
 また,戸建て向けの回線を引くには,壁に穴を開ける必要があり,賃貸となると物件の数がかなり絞られます。物件を決める条件は回線以外にもいろいろありますから,お客様の都合との兼ね合いを考えると,結果的に標準的な回線の物件を提案することの方が多くなりますね。

4Gamer:
 戸建て向けの回線でないのなら,どこを選んでも変わらないのでしょうか。

平田氏:
 そんなことはないです。弊社ではどの通信業者を使っているかを基準に選んでいます。通信業者によって,善し悪しがはっきり分かれるんですよ。

4Gamer:
 悪い回線に当たった場合ってどのくらい不安定なんでしょう。

平田氏:
 酷いと,標準的な回線の1/10ぐらいの速度しか出ません。

4Gamer:
 え?

平田氏:
 いや,本当にそのぐらいになってしまうんです。以前,格闘ゲーマーの方が,ほかの不動産会社から紹介された物件でそうした回線を引き当てて,遅延がひどくてゲームにならないと相談に来たこともあります。

4Gamer:
 そういったトラブルは,引っ越し時に「良いネット環境が使いたいです」とか伝えて,回避できないものなのでしょうか。

平田氏:
 その格闘ゲーマーの方は,まさに伝えたのにダメだった例なんです。なぜこんな不幸なことが起きてしまうのかというと,不動産会社,もしくは担当者によっては,「まともなネット環境」の基準が「Googleで検索ができる」みたいなレベルだからです。ネット回線速さに対する知識がない人が担当になってしまうと,分かっていないので対処してもらえません。
 さらに通信業者によっては,特定の回線を入れたときの不動産会社へのバックが大きいところもあって,それを理由にその業者が入った物件を優先して紹介してくるケースもあるんです。

4Gamer:
 そのお話から察するに,バックが大きい回線業者は,速度が速いところではないですよね。

平田氏:
 その通りです。

4Gamer:
 怖すぎる……。ちなみに,その遅い通信業者の回線が入っている物件って,全体のどのぐらいなんですか?

平田氏:
 4割ぐらいですね。

4Gamer:
 そんなにですか!?

平田氏:
 なので,弊社でゲーマーに紹介する場合は,その4割は最初に選択肢から除外してしまいます。
 標準的な回線の中でもある程度の違いはありますが,その差は大きなものではありません。標準的な回線なのに遅い場合は,同じマンション内にヘビーユーザーが複数いてゴールデンタイムに混み合うですとか,そういったことが原因だと思います。

画像集 No.003のサムネイル画像 / ゲーマーに向いているのはどんな部屋? 理想のゲーム環境を物件から考えてみる


防音を求めるなら鉄筋の建物,できれば角部屋を


4Gamer:
 「防音」についても教えてください。

平田氏:
 音に関しては,まずはその建物が鉄筋であることが重要ですね。建物には大きく分けて木造と鉄筋がありますが,鉄筋は遮音性が高いんです。
 木造は,正直ゲーマーに向いていません。僕は格闘ゲーマーですけど,アーケードコントローラを使うのも難しい。下の階にも音が響きますし,ボタン音もすごいんです。
 さらに言えば,角部屋を選べるとよいですね。

4Gamer:
 角部屋だと音が漏れにくいんですか?

平田氏:
 いえ,隣接する部屋が少ないことがポイントです。夜に声を出す場合などは,近隣のクレームがどこから来るか分かりません。極端な話,どれだけちゃんと打ち合わせをして物件を選んでも,運悪くお隣さんが音に敏感でクレーマー体質な方だったりすると,どうにもなりませんから。

4Gamer:
 そこは引っ越してみないと分からないところですよね。

平田氏:
 ええ。ですから角部屋にしておくと,トラブルになる可能性が減らせるわけです。

4Gamer:
 もし隣人から怒られてしまった場合,引っ越した後でも対策できるものなのでしょうか。

平田氏:
 音を発する方向を変えてお隣に響かないようにしたり,あるいは大きなスポンジ状の吸音材を部屋に置いたりすると効果があります。
 あとは,もし予算がある場合,楽器などを演奏する人のための完全防音のマンションを選ぶというのも手です。実際,けっこう有名な実況者の方に紹介して,選ばれたこともありますよ。

4Gamer:
 ゲームに没入するにあたって,人によっては外からの音も気になると思うのですが,そちらもどうにかなるものなんですか?

平田氏:
 手っ取り早いのは,都心から少し離れた郊外の物件を選ぶことですね。都心は近隣に限らず,建物周囲の音がうるさい場合も多いですから。漫画家さんなど,周りの音を気にせず仕事をしたいというお客様には,よく郊外を紹介します。


いい条件の物件を探すなら,5月〜6月が狙い目。ローカル線沿線ならなおよし


4Gamer:
 物件を探すにあたり,向いている時期などはあるのでしょうか。

画像集 No.004のサムネイル画像 / ゲーマーに向いているのはどんな部屋? 理想のゲーム環境を物件から考えてみる
平田氏:
 2月〜3月は避けてください。この時期は,新生活が始まる前に一斉に引っ越す関係で,物件を持っている大家さんが入居者に困っていないんですよ。そのため,家賃や敷金,礼金が高くなり,審査も厳しくなります。
 それを越えた時期,とくに5月や6月が,引っ越しするならオススメです。繁忙期に入居がなかった大家さんが,価格を下げる傾向がありますから。

4Gamer:
 大家さんが焦り始める時期が狙い目と。

平田氏:
 入居者が来なければ,家賃収入がなくなりますからね。
 また9月になると,専門学校の卒業や転職の時期になってくるので,ここもちょっとした繁忙期です。とはいえ,2〜3月でさえなければ,それほど大きな差にはなりません。

4Gamer:
 地域的にはどのあたりの物件を紹介することが多いのでしょう。

平田氏:
 池袋などはオタクなお客様にも人気の地域ですが,高い物件が多いので,そこに直結するローカル線上を紹介することが多いです。西武池袋線や東武東上線などの少し離れた駅にすると,物件の質が一気によくなります。

4Gamer:
 やはり都心から離れるほど物件が見つかりやすいんですか?

平田氏:
 はい。都心から離れるだけでなく,同じローカル線でも急行や快速が止まらない駅,駅から離れたところにある物件などは,条件が揃ったものを見つけられる確率が高いです。

4Gamer:
 駅から離れたところというのは,実際にはどのぐらいの距離になるのでしょう。

平田氏:
 個人的な感覚ですが,駅から10分以上のところですね。ちなみに,不動産では徒歩1分が約80mという基準で駅からの距離が表記されますが,これは信号や坂道などを考慮していません。ですので,実際にはプラス2〜3分と考えてください。「徒歩15分」とあったら,自転車を使うレベルだと思ったほうが安全です。
 交通の便を許容すると,安い物件はもちろん,広い物件なども探しやすくなります。プロゲーマーの場合,自宅に籠って練習するので,場所を妥協してもらって郊外の物件を紹介することも多いんです。

4Gamer:
 確かに毎日の通勤がなければ,交通の便は妥協しやすいですね。

平田氏:
 というか,オタクという時点で家賃を妥協するのは難しいじゃないですか。趣味に使うお金は減らせませんから。

4Gamer:
 そこを減らすわけにはいきません。

平田氏:
 もちろん回線や防音も外せない。築年数なんかも,ユニットバスが苦手な方だと妥協できない。そうなると,場所を妥協するしかないんですよね。
 格闘ゲーマーのお客様だと,「このゲーセンから〇分以内じゃないと嫌だ」とか,特定の場所への優先度が高いこともあったりしますが(笑)。

4Gamer:
 ゲーセン基準で決める人もいるんですね(笑)。
 ほかにも,要望の多い条件があれば教えてください。

平田氏:
 部屋の広さはよく言われます。例えばサバイバルゲームが趣味の方の場合,装備品がかさばるので居住スペース以外に大きめの収納がほしいとか。弊社のサイトで漫画を描かれているやしろあずき先生もそうでした。
 ゲームからは離れてしまいますけど,コスプレイヤーの方から,衣装や武器類の収納場所と製作スペースがほしいというお話をいただくこともあります。あとは,女性のお客様だとセキュリティ面での要望をいただくことが多くなります。


信頼できる担当者を見つけることが大事


4Gamer:
 関東圏でゲーマー向けの物件を探すなら,おたくのやどかりさんに頼るのは選択肢の1つだと思うのですが,地方で探すときに,何かコツはあったりするんでしょうか。

平田氏:
 ゲームに理解があるかどうかよりも,信頼できる担当者を見つけることですね。自分がゲーマーだということを隠さずに,「格闘ゲームでフレーム単位の勝負をしているから速い回線が必要だ」みたいなことでも,まずは伝えてみましょう。相手が信頼できる担当者なら,本人がゲームのことをあまり分からなくても,調べるなり同業者に聞くなりして,合う物件を探してくれると思うんです。こればかりは当たり外れが激しい業界ですし,なかなか難しいことではあるんですが……。

4Gamer:
 尻込みせずに,ハッキリ希望を伝えてみることが大事なんですね。

画像集 No.005のサムネイル画像 / ゲーマーに向いているのはどんな部屋? 理想のゲーム環境を物件から考えてみる
平田氏:
 話してみると,明らかに自分のことを下に見ている人は,なんとなく分かります。そのような場合は,最初のヒアリングの段階で見切りをつけて,次を当たってみるのがいいかもしれません。
 また,これは手前味噌になってしまいますが,弊社のサイトには部屋探しをするときの基礎知識的な漫画を載せているので,参考にしてみてください。けっこう攻撃的な暴露記事ですが,悪質な相手に対する予防策になると思います。別に,これを読んで弊社を使ってくださいとは言いません。騙されずに住みやすい部屋を探してもらえれば,それでいいですから。

4Gamer:
 公式の漫画は,これを公開して大丈夫なのかと思う内容なのですが(笑)。

平田氏:
 よく言われますが,今のところ身の危険とかはないです(笑)。
 オタク需要の不動産にしても,我々が独占するつもりはまったくありません。同業が増えてくれば,うちのよさも分かってもらえると思いますし。こうしたサービスがもっと出てきてほしいですね。

4Gamer:
 関西圏などで展開はされないんですか?

平田氏:
 関西圏にはいちおう,うちの支社があるんですが,おたくのやどかりは名乗っていないんです。物件紹介の方針などは東京と同様なんですが,あちらはスタッフがオタクじゃないんですよね。そこは線引きが必要かなと。
 おたくのやどかりは,全員オタクしかいないので,関東圏で物件探しに困っているゲーマーはぜひご相談ください。引っ越しのとき,ゲームやオタク趣味の話を細かく説明しなければならないですとか,そういった余計な工数をかけずに,ご要望の物件が見つけられると思います。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

「おたくのやどかり」公式サイト

  • この記事のURL:
4Gamer.net最新情報
プラットフォーム別新着記事
総合新着記事
企画記事
スペシャルコンテンツ
注目記事ランキング
集計:04月26日〜04月27日