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eスポーツを広告に活用するために必要な3つのポイントとは。「RAGE」「OPENREC.tv」を手がけるCyberZの青村陽介氏によるセッションをレポート
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印刷2019/04/04 19:46

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eスポーツを広告に活用するために必要な3つのポイントとは。「RAGE」「OPENREC.tv」を手がけるCyberZの青村陽介氏によるセッションをレポート

 2019年4月3日から5日までの3日間,東京ビッグサイトにてコンテンツビジネスの総合展示会「コンテンツ東京 2019」が開催されている。本稿では,CyberZ 役員 メディア事業・eSports事業管轄取締役 青村陽介氏によるセッション「国内最大級のeスポーツ事業『RAGE』『OPENREC.tv』トップが語る、新たな広告プラットフォームとしてのeスポーツとは?」の模様をレポートしよう。

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「コンテンツ東京 2019」公式サイト


 CyberZは現在,ゲームに特化した動画配信サイト「OPENREC.tv」およびeスポーツイベント「RAGE」を運営している。青村氏によると,CyberZがeスポーツ事業を始めた理由は,同社がもともと手がけていた広告事業の顧客の6割前後がゲームメーカーだったこと,代表取締役社長の山内隆裕氏が無類のゲーマーだったこと,そして市場が大きく成長しそうな予感があったことの3つだったという。

 またCyberZには,普通のことをやってもそれなりの成果しか上げられないため,「リスクを取ってチャレンジする」ことを大切にする企業風土があるそうだ。新しい市場にいち早く参入してトップを取れば,その市場が成長した暁には人材や資金などが必然的に集まってくると考え,ゲームやeスポーツに関わる事業に参入したというわけである。

CyberZ 役員 メディア事業・eSports事業管轄取締役 青村陽介氏
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 CyberZがOPENREC.tvを開設したのは2014年のことだが,投稿された動画を配信するプラットフォームとしてサービスを開始したのは翌2015年。また,RAGEは2016年にスタートしているが,当初はOPENREC.tvのコンテンツの1つに過ぎなかった。
 2017年には,配信者が収益を得られる仕組みを導入したことにより,OPENREC.tvの配信者が増加。加えてRAGEも単なるOPENREC.tvのコンテンツではなく,単体で収益化できるイベントとして展開していくこととなり,現在に至っている。

 その後,CyberZは2019年3月にeスポーツに特化した広告マーケティング事業会社,CyberEを設立している。青村氏は「日本におけるeスポーツ市場は,スポンサー収入が7割近くを占めている。つまり広告事業を展開している我々には大きな機会である」と前置きしつつ,その理由を「その一方で,eスポーツのコンテンツを作ることと,そのコンテンツを使って顧客である企業のマーケティングを支援するのは別物。考え方も優先する仕事も違うので,組織を分けたほうが提供できる価値を高められると考えた」と,説明していた。

 CyberZがeスポーツに取り組み始めた頃は,「アメリカの真似をしても無駄」「eスポーツ元年は来ない」といったように,周囲の反応はことごとく否定的だったという。そうしたネガティブな状況の中,同社がeスポーツ事業を続けて来られたのは,代表である山内氏の決断があったからとのことで,青村氏は「決裁者の腹決めにより,長く事業に取り組めるかどうかが決まる」と語った。

 CyberZの代表的なeスポーツを介した広告事業の事例は,「RAGE Shadowverse Pro League」の展開である。このリーグでは,2018年度にau,日本テレビ放送網,横浜F・マリノス,おやつカンパニー,サッポロビール,吉本興業をそれぞれスポンサーとする6チームが腕を競ったが,2019年5月からは「GIANTS」ブランドを活用した読売新聞社のチームも参戦する。
 青村氏は「当初から企業にスポンサードされたチームでリーグを構成することに決めていた」とし,そのために1年以上の準備期間を要したことを明かした。

「GIANTS」ブランドを活用した読売新聞社のプロeスポーツチーム「G×G」(公式サイト
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 またチームのスポンサー以外にも,何らかの形でeスポーツに参入したいという企業は増えているという。青村氏は,ネスレがRAGEの会場に自社製品である「キットカット」を置き,誰でも自由に食べられるようにしておいたところ,試合中に選手が食べているところが配信されて宣伝になった事例や,シャープのゲーム対応スマートフォンを使った体験会の事例を紹介した。

 青村氏によると,このように企業がeスポーツへの参入を希望する理由は,ゲームやインターネットに親しんでいる若年層との接点を求めていることにあるという。実際,青村氏はRAGEの取り組みを通じて,eスポーツが今の日本で最も若年層と接触できるコンテンツの1つであると実感しているそうだ。

 その一方で,企業がeスポーツを使ったマーケティングを成功させるためには,ターゲットとなる若年層がどのような人達であるかをきちんと把握しなければならないと青村氏は指摘する。つまり,eスポーツを介して接触できるのは基本的にゲーマーなので,彼らの特性を知るところから始めるべきというわけだ。

 ゲーマーは「外に出ない」「人と接触するのが苦手」「ゲーム以外に興味がない」と思われがちだ。実際,青村氏自身も,RAGEを通じてゲーマーと接するまでは,そんなイメージを抱いていたそうだ。
 しかし,トップレベルのプレイヤーを筆頭に多くのゲーマーとコミュニケーションを図った今では,もちろん人による部分はあるものの,ゲーマーは「ゲーム以外でも,興味を持ったことならとことん追求する」「思考の整理がうまく,話も上手で,SNSでの情報発信も多い」「イベントがあれば積極的に参加するなど,意外にアクティブ」というイメージに変わったとのこと。

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 話はプロゲーマーの広告効果にも及んだ。青村氏によると,CyberZが擁するプロチーム・GGBOYZのメンバー4名のSNS(Twitter,OPENREC.tv,YouTube)におけるフォロワー数は延べ50万アカウントになるという。一方,とあるプロ野球チームのスターティングメンバー9名のSNSにおけるフォロワー数は,延べ67万アカウントだ。
 単純な合計値ではプロ野球チームが勝っているように見えるが,メンバー1人あたりの平均フォロワー数で見るとGGBOYZのほうが多く,青村氏は「SNSにおける1人1人の発信量やリーチ量でいえば,eスポーツはプロ野球に劣っていないのではないか」と分析した。

 そうした特徴を持つゲーマーと接触するにあたり,企業は何に留意すればいいのか。青村氏は,ゲーマーは上記のとおり,自分の興味があることに関してSNSを介した発信・拡散力を持つが,裏を返すと「嫌いなものがハッキリしている。一度嫌いになったものはずっと嫌い」「嫌いであることもSNSで発信する」「興味がない人には会いたくないし,興味がない場所には行きたくない」という特徴も持っていると説明。それらの特徴に対応するためのキーワードとして,「共感」「愛着」「信頼」の3つを挙げた。

 実際,ゲーマーの特徴をきちんと把握できていなかった頃のCyberZは何度も失敗してしまったと青村氏は語る。例えば,eスポーツの番組に,有名人だがゲームが好きではないタレントを起用したところ,ゲーマーから共感を得られず,拡散につながらなかったそうだ。
 その一方で,それまではゲームにあまり関心がなかったタレントでも,一生懸命勉強して番組内でプロゲーマーとプレイに関する話ができるまでに成長したケースでは,ゲーマーから共感と愛着が得られ,信頼されるに至ったこともあるという。

 セッションの最後に,青村氏は改めて「eスポーツで接触できる若年層は,単なる若者ではなくゲーマー」であり,その特徴に合わせた対応が必要になることを強調した。そして広告プラットフォームとしてのeスポーツについて,その魅力は間違いなく若年層との接点にあること,ゲーマーには情報の発信・拡散力という価値があること,そうしたゲーマーと接するには共感・愛着・信頼を得られるよう寄り添うことが重要であるとまとめ,セッションを締めくくった。

「コンテンツ東京 2019」公式サイト

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