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eスポーツリーグ「League of Professional Esports」の運営が語る,eスポーツのビジョン。「eスポーツの現在を紐解く」聴講レポート
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印刷2018/09/18 14:04

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eスポーツリーグ「League of Professional Esports」の運営が語る,eスポーツのビジョン。「eスポーツの現在を紐解く」聴講レポート

画像集 No.001のサムネイル画像 / eスポーツリーグ「League of Professional Esports」の運営が語る,eスポーツのビジョン。「eスポーツの現在を紐解く」聴講レポート
 2018年9月17日,東京都・渋谷区のEdge Ofにおいて,「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2018」の一環となるトークセッション「eスポーツの現在を紐解く」が開催された。プロスポーツチームのみが参加できるeスポーツリーグ「League of Professional Esports」(以下,LPE)を運営するPROFESSIONAL ESPORTS LEAGUE, S.L.(以下,PEL)のCEOである,チャビ・コルテス・トゥビオ氏が登壇し,LPEのビジョンや,eスポーツに必要となる透明性や平等性について語った。

 「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2018」は,日本財団「SOCIAL INNOVATION FORUM」と渋谷区が開催した複合カンファレンスイベントだ。「多様な未来を考える」をキーワードに,“エンタテインメント”や“アイデア”“ボランティア”“幸福”“都市”などさまざまなテーマについて語るセッションが行われた。そうしたセッションの一つが,本稿で取り上げる「eスポーツの現在を紐解く」だ。

PROFESSIONAL ESPORTS LEAGUE, S.L.のCEOであるチャビ・コルテス・トゥビオ氏
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 まず,講演レポートの前にeスポーツリーグLPEについて整理しておこう。LPEのCEOであるトゥビオ氏が,なぜスポーツ的な透明性や平等性に重きを置くかが理解できるからだ。

 LPEとはプロスポーツチームのみが参加できるeスポーツリーグ。すでにFCバルセロナ(スペイン),アヤックス(オランダ),ガラタサライ(トルコ),サントスFC(ブラジル)など,世界各国のスポーツチームが参加を表明しており,日本からは東京ヴェルディが参加予定だ。

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 LPEを運営する会社がPELで,今年8月には「新テニスの王子様 RisingBeat」「アイドルマスター SideM LIVE ON ST@GE!」「ドラゴンボールZ ドッカンバトル」などのモバイルゲームで知られるアカツキによって子会社化されている(関連記事)。今後アカツキはLPEの運営をサポートし,アジアにおけるPELの事業パートナーとして活動していくという。

 このように,LPEはスポーツをバックボーンとしており,既存のeスポーツ団体とは性質を異にしている。ルールの透明性や,性別や人種に関わらず参加できる平等性はスポーツが重視するものであり,それゆえにトゥビオ氏もLPEにおいてこうした部分に重きを置くというわけだ。

 トゥビオ氏は「性別・年齢・人種を越え,誰もが同じ条件で競える,完全なる平等性の元でリーグを開催したい」と今後のビジョンを語る。“歴史があるプロスポーツクラブがeスポーツというジャンルで戦う”のがLPEであり,そこでは複数のゲームが使用されるが,ジャンルとしてはスポーツゲームに限定されないのだという。eスポーツとして人気のあるゲームを使ってプロスポーツクラブが戦うことが大切であり,これにより若い世代へ訴求していきたいという考えだ。

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 ここで浮上してくるのがeスポーツリーグにおけるタイトル選定,要するに「暴力表現のあるゲームはe“スポーツ”にふさわしいのか?」という問題である。国際オリンピック委員会の会長であるThomas Bach氏は,ビデオゲームにおける暴力表現を問題視し「オリンピックの価値観に矛盾している」と語っているし,eスポーツトーナメントを運営するAlisportsのCEO,Zhang Dazhong氏も,次回のアジア大会では一般的に暴力的だと見なされるゲームを減らしていくという方針を明らかにしている。トゥビオ氏も本講演で「ゲームの選定においては非暴力のタイトルを選び,リーグの継続開催に繋げていきたい」とLPEのスタンスを明らかにした。今後,オリンピックでの正式種目化を視野に入れていくうえで,トゥビオ氏のような非暴力ゲーム派が1つの勢力となっていきそうだ。

トゥビオ氏もほかのeスポーツ関係者と同様「eスポーツとはスポーツなのか?」と聞かれることが多いそうだが「スポーツに関する価値観はeスポーツにも含まれている。eスポーツにもチームワークや努力,パッションなどプロスポーツと同様のものがあるため,eスポーツ=スポーツであると考えています」と持論を語った
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 LPEの活動においてもう1つ重要になるのが,スポーツファンにeスポーツを紹介すること。トゥビオ氏は「LPEは,eスポーツとスポーツを融合する初めてのリーグになる」と語る。すでに大きなベースを持つスポーツ関連のチャンネルに,プロスポーツクラブが競い合うeスポーツの試合を放映することにより,“今までになかったマーケティング効果”と“ブランドとしてのバリュー”をもたらしていきたいという考えだ。MLBやオリンピック,NBAといったスポーツのテレビ視聴者も平均年齢が40〜50歳代に突入しており,20〜30歳代が関心を持つeスポーツのコンテンツは大きな力を持つというわけである。そのうえで,これまでeスポーツコンテンツを見ている視聴者だけでなく,通常のスポーツファンも取り込んでいきたいという。自分が応援するプロスポーツクラブがLPEに参加しているというところから関心を持ってもらい,そこからeスポーツの継続的な視聴に繋げていきたいというわけで,LPEならではの強みと言えるだろう。

eスポーツと主要スポーツリーグの視聴者数比較(左写真)と,平均年齢層の調査結果(右写真)。この調査結果では,eスポーツの視聴者がほかのスポーツに比べてかなり若いことが分かる
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 講演終了後,トゥビオ氏は,アカツキのe-sports事業における責任者でシリアルアントレプレナーの熊谷祐二氏を加え,来場者からの質問に答えた。中でも興味深いものをピックアップして,本稿の締めくくりとしたい。

アカツキのe-sports事業における責任者で,シリアルアントレプレナーの熊谷祐二氏
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――トゥビオ氏にお聞きしたいのですが,日本のeスポーツ界に対して何か希望はありますか。

チャビ・コルテス・トゥビオ氏(以下,トゥビオ氏):
 もっとeスポーツのトーナメントを活発に開催してほしいということ。そして,選手の男女比における平等性について考えてほしいということでしょうか。ほかの国では男性選手の進出だけが進んでしまい,女性選手の数が少なくなるような現象が起きてしまいましたので,男女合わせて盛りあげていくことが大切だと思います。

――欧米のeスポーツ界において,女性を選手として呼び込む取り組みをしていますか。

トゥビオ氏:
 女性の才能を積極的に発掘しています。また,ゲームタイトルやコンテンツが男性に偏ったものになると女性の参加が難しくなりますから,そうしたバランスにも配慮しています。

――LPEでは女性選手枠のようなものを設ける考えはありますか。

トゥビオ氏:
 LPEから各プロスポーツクラブに対し,女性選手枠を設けるようなアプローチをしています。

熊谷祐二氏:
 弊社でも女性のプロeスポーツ選手に協力してもらい,意見を取り入れています。また,スポーツ界はサッカーのユース制度など,優れた選手育成の仕組みを持っているので,こうした部分もeスポーツにも取り入れていきたいですね。

――海外のeスポーツ大会では,競技が始まる前から観客が盛り上がっており,日本の大会と対照的だと思います。こうした違いが生まれる理由はどこにあると思いますか。

トゥビオ氏:
 海外は,見ている側が楽しめるショーとしての演出で大会を盛りあげているので,日本でもこうした取り組みをすればいいのではないでしょうか。また,日本の選手は個人で活躍しており,強いeスポーツチームがないことも理由にあると思います。皆が応援したくなるチームがあれば,自然に大会も盛り上がっていくものですから。

――プロスポーツクラブでは選手が移籍したりしますが,LPEでもこうした状況は想定していますか。

トゥビオ氏:
 大きなクラブがeスポーツをやるのであればもちろん勝ちたいし,そのためにはいい選手がほしいでしょう。なので,移籍に関するビジネスなど,スポーツと似たような状況になると考えています。

――LPEにはプロサッカークラブが参加していますが,ほかのスポーツでも参加できるのでしょうか。

トゥビオ氏:
 歴史があり,グローバルなスポーツ団体であれば受け入れる予定があります。プロのリーグ戦なのでいい選手を集めたいのは確かですが,我々は文化を創りたいと考えていて,そのためには才能の育成や確保,そして地元の人との繋がりが大事だと思っているんです。どこかの地域に属するチームであれば,地元の人が選手にいなければいけません。しかし,現在のeスポーツチームの多くは,強さを優先していろいろな国籍の人を集めているので,“地元のチーム”として応援しづらいところがあると思います。我々は,サッカークラブのように,地元の人にチャンスを与えるような働きかけを始めています。

 年齢・性別・人種を問わず参加できる,平等性のあるスポーツとしてのゲームで競い合い,そのうえで文化として根付かせるために地元との繋がりを大切にしていく。サッカーや野球の世界で行われているスポーツとしての取り組みを,eスポーツに取り入れていくという意味で興味深い講演だった。個人的には,地元感のあるeスポーツイベントと聞くと「RedBull5G」の“東西対抗戦”という,感情移入が容易な枠組みを思い出す。サッカーや野球のチームがそうであるように,「おらが町のeスポーツチーム」があり,地元の人間にチャンスが与えられるのであれば,eスポーツ振興の大きな力になるのではないかと感じられた。
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