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[GDC 2017]GDC初開催の「UX Summit」で垣間見えた,ユーザー体験を重視する欧米企業の基本姿勢とは
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印刷2017/02/28 20:47

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[GDC 2017]GDC初開催の「UX Summit」で垣間見えた,ユーザー体験を重視する欧米企業の基本姿勢とは

 現在,アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコにて開催中のGame Developers Conference 2017では,ユーザー体験について議論を行う「UX Summit」が新たに採用された。その第1回セッションとなる「Playing the Middle: Balancing Trust, Creativity, and Business in the Science of Experience」(中心で遊ぶ:体験の科学における信頼とクリエイティビティとビジネスのバランスについて)を取材してきたので,パネルディスカッションの内容をまとめてみたい。

 このパネルディスカッションに参加したのは,Electronic Artsのシニア・ユーザーエクスペリエンス・リサーチャーを務めるイアン・リビングストン(Ian Livingston)氏を始め,2K Gamesのシニア・ナラティブ・ディレクターであるコリー・メイ(Corey May)氏,Bungieのネットワーク担当プロデューサーであるクリス・ラング(Chris Lang)氏,Ubisoft Entertainmentのクリエイティブ・ディレクターであるアレックス・ハッチンソン(Alex Hutchinson)氏,そしてWB Games Montrealのユーザーエクスペリエンス・リサーチャーであるジョナサン・ダンコフ(Jonathan Dankoff)氏だ。

右から,モデレーターを務めたイアン・リビングストン氏,ジョナサン・ダンコフ氏,コリー・メイ氏,アレックス・ハッチンソン氏,そしてクリス・ラング氏

 そもそも,“ユーザー体験”(User Experience/略してUX)とは何だろうか? アメリカのゲーム産業では2014年頃から注目され始め,ここしばらく盛んに議論されているホットトピックである。前述のように「ユーザーエクスペリエンス」を冠した肩書を持つ専門職も登場しており,今回のパネルディスカッションに参加した大企業であれば,ゲーム開発の現場で大きな役割を担っている存在だ。
 その土台となるのは,これまでにも存在した品質管理(Quality Assurance)である。しかし,オンラインモードやダウンロードコンテンツの登場により,ゲームのリリース以降も“サービスとしてのゲーム”が長期化する昨今では,テスターやゲームコミュニティから継続的に意見を汲み取りながら,ゲームデザインに反映していく役割が必要になってきた。
 ゲームデザイナーが自分のビジョンを作品に投影するのが職務であるならば,UXデザイナーはユーザーのビジョンをゲームに投影する(もしくはそれが可能なのかをデザイナーと論議する)という橋渡し的な役回りを担う。

 今回のセッションに登壇したハッチンソン氏,ダンコフ氏,メイ氏はもともと,Ubisoft Entertainmentで「アサシン クリード」の開発に従事していた間柄だ。
 ダンコフ氏は「アサシン クリード III」(2012年)をもって,ゲームテスターを管理するプロジェクトマネージャーから「ユーザーリサーチ・プロジェクトマネージャー」へと昇格しており,UX分野を開拓した同社における専門家と言える。
 同じくハッチンソン氏はクリエイティブ・ディレクター,メイ氏はナラティブ・デザイナーとして,長らく「アサシン クリード」開発チームに携わっている。2015年にリリースされた「アサシン クリード シンジケート」がファンからの大きな批判を受け,翌年のプロジェクト延期を余儀なくされたことを考えると,その責任者でもある3人が登壇しているというのは興味深い。
 セッションの冒頭,3人の中で唯一,現在もUbisoftに在籍しているハッチンソン氏が目の前に座っている聴講者を指して,「しっかり監視されているので,言いたいことが言えません」と笑いを取っていたが,そうしたバックグランドを知っていると,今回の内容がよく分かってくる。

 例えば,「ゲームが大失敗した場合,誰の責任になるのか」という質問に対し,「本当ならクリエイティブ・ディレクターが責任を取るべきだと思うけど……」と語り始めるメイ氏に,ハッチンソン氏がすかさずブーイングするといったような展開だ。もっとも,メイ氏は「UXリサーチャーの意見を汲み取るのは,最終的には開発チームだから,チーム全体の責任と考えるしかない」と続けて,丸く収めようとしていた。
 しかし,「アサシンが海賊船に乗るわけないのに,ファンが納得できるストーリーを書けるわけない」として,「アサシン クリード」というタイトルを出さないまでも,会場の笑いを誘い,チクチクと挑発を続ける。

 また,「ゲームテスターにストーリーの感想を聞いても,断片的にしか体験していなかったり,歴史的な背景が分かっていなかったりで,良い意見が返ってこない。同じ職場で別のプロジェクトに関わっているプロの脚本家に意見を聞くのが,“ナラティブ・テスティング”においては効果的」というメイ氏の意見に対し,ダンコフ氏が「そうやって仲間うちでおしゃべりする口実を作るから解決しないんだ」と横槍を入れる一幕も。
 ときに笑いを誘い,ときに顔を赤らめながら議論するといった展開は,わりと静かに進行しがちなGDCのパネルディスカッションのなかでも面白いものだった。現在の職場は違えど,同じ釜の飯を食べて苦楽を共にしてきた戦友といった雰囲気で,UXリサーチやUXデザインという職務の難しさが伝わってくる。


 実際,ダンコフ氏は「以前は『ユーザー評価(5点満点)を3.9から4.1に上げよう』といったことを,開発チームに要求することが多かったが,より詳しいユーザーデータを入手できるようになったので,それでは根本的な解決にならないのは明らか」と述べている。
 また,ラング氏が「ユーザー1人1人の意見を聞いていてもダメ。どの議題を開発チームに届けるのか,取捨選択をするのが我々の役目」と発言すると,メイ氏らも「情報の“オーバーシェアリング”は混乱を招くだけ」と同意。そしてリビングストン氏が「デザイナーの役目は自分のビジョンを作品に投影すること。我々の役目はそのビジョンが成功しているか,失敗しているかを率直に彼らに話してあげることです」として,UXリサーチャー/UXデザイナーとしての職責を定義した。

 まだ新しい分野と言える「UX」だが,「ユーザーの視点に立ってゲームプロジェクトを考える」という意味では,ゲームジャーナリストとの共通項もあって親近感が沸いた。そもそも,UXリサーチャーやUXデザイナーという肩書の人員を抱えられる規模のゲーム企業はそれほど多くないだろう。UX Summitの参加者もマーケティング担当者やプロデューサーといった人が多かったようだが,こうした場を通じて彼らの重要性がさらに認知されていくはずだ。

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