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なぜ今,人狼がブームなのか――人狼ゲームの魅力に迫る集中連載「特集:人狼」。第2回はキーマン達に聞く,流行のきっかけと広がりの理由
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印刷2014/04/05 00:00

インタビュー

なぜ今,人狼がブームなのか――人狼ゲームの魅力に迫る集中連載「特集:人狼」。第2回はキーマン達に聞く,流行のきっかけと広がりの理由


 人狼ゲームの魅力に迫る集中連載「特集:人狼」の第2回は,人狼ブームを一番近い場所から見守ってきたキーマンの4名――ドロッセルマイヤーズ渡辺範明氏真城七子氏「ドイツゲームスペース@Shibuya」を運営する児玉 健氏「ワンナイト人狼」の作者である奥井晶久氏へのインタビューをお届けする。

 前回の記事では,人狼ゲームの概要と歴史,そして現在入手できるさまざまな形の人狼ゲームを紹介したのだが,それに続く今回のテーマは,「なぜ今,人狼がブームなのか」。前回も少し触れたとおり,人狼ゲームは2012〜2013年にかけて大きく広がりを見せ,ブームと言って過言ではない人気を博すようになった。その理由には「ニコニコ動画などの動画サイトでの人気」「人狼関連イベントが増えた」「入門用のカードセットなどが広く出回るようになった」「テレビ番組による知名度の上昇」などを挙げることはできるものの,その実態はというと,分からないことが多々あるのもまた事実である。そこで,人狼ブームを一番近い場所から見守ってきたキーマンの4名にお集まりいただき,このテーマで話を聞いてみよう,というのが今回の趣旨というわけだ。
 またそれだけではなく,人狼ゲームがどんな場所で,どんな人が遊んでいるのか,そしてブームは今後どうなっていくのかなど,興味深い話題についてもうかがっている。ちなみに今回のインタビューの収録場所は「ドイツゲームスペース@Shibuya」の人狼ルームという,夜な夜な白熱した対戦が行われている,まさに人狼ゲームの最前線である。いったいどんな話が飛び出すのか,ぜひご一読いただきたい。

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なぜ人狼はブームになったのか


4Gamer:
 本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。今回は,昨今の人狼ブームの立役者の皆さんに,その人気の秘密についてうかがって行きたいと思っています。まず,一番古くから人狼を見てきたであろう渡辺さんにお聞きしたいのですが,渡辺さんが「人狼が来てるな」と感じ始めたのは,いつ頃だったのでしょうか。

渡辺範明氏
ドロッセルマイヤー商會代表取締役。輸入ボードゲームのネットショップ「ドロッセルマイヤーズ」を運営するかたわら,メーカーとしてオリジナルのボードゲーム制作を手がける。人狼ゲームでは「嘘つき村の人狼」など,人狼を題材としたイベントを早くから展開
渡辺範明氏(以下,渡辺氏)
 爆発的に伸びたのは去年(2013年)からじゃないでしょうか。直接のきっかけは,やっぱりテレビ番組として取り上げられたことが大きかったんだと思いますよ。

奥井晶久氏(以下,奥井氏):
 お,それには異議申し立てをしたい。ニコニコ生放送の公式企画で人狼番組をやったことがあったんですね。僕も出演させてもらったんですが,それが2012年の5月でした。だからその時にはもう,ニコニコでのブームは始まってたんじゃないかと思います。テレビに取り上げられたのは,そういうネット層の声がようやく届いた,ということなんじゃないですか。

4Gamer:
 公式企画として人狼を取り上げることになったのは,どういう経緯だったんですか?

奥井氏:
 2012年のお正月頃なんですが,有名ゲーム実況者さんたちが集まって,ボイスチャットで人狼ゲームをやるという動画が,当時たくさん作られていたんですよね。再生数もガンガン伸びていて,すでに人気のシリーズでした。その流れを受けたのか,ひろゆきさん(西村博之氏)達が番組を企画して,川上さん(ドワンゴの川上量生氏)も出演することになった,という経緯だと思います。そこに僕も一緒に出ることになったんです。

渡辺氏:
 それはまったく奥井さんの言う通りですね。段階的に広まっていったものなので,アンテナの高い人の間では,そのぐらいの時期からすでに兆しはあったと思います。同時多発的ではありますが,ドロッセルマイヤーズが,国内初の商業人狼イベント「嘘つき村の人狼」をスタートしたのも2012年3月だったので,タイミング的にはその辺りがブームの口火だったんじゃないでしょうか。

奥井晶久氏
3人からという少人数ででき,ルールも簡単で1回10分で遊べる「ワンナイト人狼」(関連記事)の作者。ドワンゴでニコニコ関連の仕事もしているが,会社と関係なしにゲームを作っていたらいつの間にかバレていたというのが実情らしい
奥井氏:
 僕が初めて「ワンナイト人狼」をゲームマーケットに持ち込んだのが2012年の秋で,そのときにはすでに,「人狼が超多い」って言われたんですよね。別に示し合わせたわけでもなんでもないんですけど(笑)。

渡辺氏:
 つまり,それまで水面下でファンを増やしてきた人狼ゲームが表舞台に出てきたのが2012年で,一気に拡散と多様化が進んだのが2013年ということでしょうね。

4Gamer:
 ちなみに,皆さんが人狼ゲームと出会ったのは,いつ頃だったのですか?

渡辺氏:
 僕は学生の時にネットで知ったクチですが,その当時はカードゲームとして流通しているイメージではなかったですね。聞きかじりのあやふやなルールを元に,仲間内で自作して遊んでみた,という感じです。2000年くらいかな?

4Gamer:
 それは相当に初期の段階ですね。

真城七子氏(以下,真城氏):
 私は2004年ごろでしょうか,中学時代の同窓会で人がたくさん集まったときにプレイしたのですが,もともとお互いの性格を知っているメンバーで遊んだので,「この人は裏でこういうこと考えてそう」とか,そういう心理戦がすごく面白かったです。

4Gamer:
 同窓会でボードゲームというのも,かなりコアですね(笑)。

真城七子氏
「ドロッセルマイヤーズ」ショップマネージャー。ほかに商品開発やイベント企画などにも関わり,西洋文化をテーマとした作家活動も行う。2013年には「今夜はじめる人狼ゲーム」(スモール出版)が出版されている
真城氏:
 とくにゲーム好きの集まりというわけでもなかったですが,結局,皆すっかりハマってしまって,同窓会のたびに恒例イベントになって,一晩かけて何回もやりましたね。二次会でカラオケに行ったときに,一室を人狼ルームにしてしまったりとか。

児玉 健氏(以下,児玉氏):
 僕は3,4年くらい前だから,この中では遅い方だと思います。そもそもドイツゲームというジャンルを知って,片っ端から遊んでいたのがその時期で,人狼ゲームはその中の一つという感じでした。最初は変なゲームだなあと思っていて,でも人数を集めてやってみたらすごく面白かった。

4Gamer:
 それが現在の「ドイツゲームスペース@Shibuya」につながっているわけですね。ドイツゲームとは,どんな風に出会ったのですか?

児玉氏:
 僕の親戚にあたる人が,ボードゲーム界では有名な人で,その人に教えてもらったんです。僕の姉の義父にあたる人で,安田 均という方なんですが……。

※安田 均氏……関西を拠点として活動するアナログゲーム制作集団・グループSNE代表。小説家兼ゲームライターとして,日本におけるテーブルトークRPGの普及に尽力したことで知られる。翻訳家でもあり,日本のSF黎明期において数多くの海外作品を日本に紹介し,多くの貢献を残した。

4Gamer:
 ええっ? まさかの安田先生の御親戚!?

児玉氏:
 そのときは,僕は知らなかったんですけどね。
 親戚が集まったときに,一緒にご飯を食べたりするじゃないですか。そのあとに,安田さんがニコニコしながらボードゲームを積み上げ始めて,なんだなんだと思っているうちにインスト(ルール説明)が始まっちゃった(笑)。でも,紹介してくれたゲームをやってみたらすごく面白くて,食いついちゃいましたね。
 そのとき面白いゲームを教えてくれたのが,僕にとってはすごくありがたくて,今度は僕が,それをお客さんにしてあげたいと思って始めたのが,ドイツゲームスペースなんです。

4Gamer:
 おお,なるほど。しかしすごいご縁ですね。

児玉 健氏
2年半前に始めた「ドイツゲームスペース@Shibuya」と,半年前に増設した「人狼ルーム@Shibuya」を運営し,ゲームマスター(ゲームの紹介と司会進行)を務める。1人で来ても人狼が遊べ,ルール説明や進行もしてくれるという点でお客さんから好評を得ている
児玉氏:
 ドイツゲームって面白いんだけど,そもそも普通のサラリーマンが遊べるような場所が,日本にはないじゃないですか。売ってるところはすでにあるわけだから,僕が売る必要はない。だから,あとは気軽に遊べる場所――ゲームがたくさん置いてあって,その中からオススメと遊び方を教えてくれるような人がいる――そんな場所が作りたくて始めました。

4Gamer:
 その中で,人狼ゲームがとくに人気だったと。

児玉氏:
 人狼ゲームって司会(GM)役が必要だし,人数が集まらないと遊べないですよね。それに大勢が集まれる場所がないと,なかなか始められない。でもドイツゲームスペースなら,それをすべてカバーできるわけで。そういう意味では,ぴったりのゲームだったと思います。
 人狼ゲームは2年半くらい前から紹介し始めたんですが,今ではこの専用ルームが予約でいっぱいになるくらいの人気です。最初は「4人とかしか集まらなかったらどうしよう」って言ってたのにね。今は「ワンナイト人狼」があるからいいですけど(笑)。

4Gamer:
 では,その「ワンナイト人狼」の生みの親である奥井さんはいかがですか。

奥井氏:
 僕はさっき話した,ニコニコ生放送の公式企画に出演したのがきっかけなんですが,その当時はなんだか怖そう,というイメージが強かったんですよね。だから,出演が決まってから慌てて前日に2回プレイした程度でした。でも,本番はかなり盛り上がって,面白かった。で,もう次の日には「人狼っていう面白い遊びを教えてやるぜ!」って,社内の友人を呼び集めてました。それで集まったのは,僕も含めて3人だけでしたけど(笑)。

(一同笑)

奥井氏:
 社内での僕の人徳がありありと分かるエピソードでしょう(笑)。「じゃあ,この3人でできる人狼を作ってみよう」と考え出したのが,「ワンナイト人狼」です。会社の前のフレッシュネスなハンバーガー屋であれこれ考えて,テストプレイをしてたんですけど,付き合ってくれた2人も,そのうち去ってしまって。

4Gamer:
 あらら。

奥井氏:
 でも,会社の目の前なので,次々に社員が休憩に来るんです。その人達を無理やり呼びこんで,テストプレイを繰り返して,なんとか完成したのが2時間後。その時は,ボードゲームを作っているという意識はなかったですね。

4Gamer:
 面白い遊びを考えてみた,って感じだった?

奥井氏:
 そうそう。しばらくは友達と遊んでいただけだったんですけど,どうやらゲームマーケットというところで,皆がゲーム作って売ってるらしいと,後から知りまして。それで「ボードゲーム 自作」と検索したら,どうも実際に作れるらしいということが分かった。それでゲームマーケットに参加することにしたんですけど……その前にドロッセルマイヤーズさんにお会いしたんですよね。

渡辺氏:
 奥井さんから突然メールをもらったんです。「こういうゲーム考えたんですけど,どう思いますか」って。「いやいや,これはなかなか画期的ですよ!」と返事した記憶があります。人狼のバリエーションって,それまでにもいろいろ考案されてはきましたが,ここまで短時間・少人数というアイデアを突き詰めたものはなかった。どんどんマニアックに複雑化していく路線が世界的にも主流だったので。

奥井氏:
 新しいコンセプトとかを狙って作ったわけではなく,友達がいない僕が作ったら,結果的にこうなったというだけなんですけど(笑)。あ,でも川上さんが「ルールを変える思考法」って本を出しているので,ここは「知らず知らずのうちに,その思考法を学んでいた」って言ったほうがステキかな?

4Gamer:
 4Gamerでの連載をまとめた本ですね。なんか,ちょっといい話風になっちゃいましたけど(笑)。

児玉氏:
 でも,そこはやっぱり思考法の違いだよね。僕だったら,もしお客さんが4人しか集まらない状態だったら,友達に電話かけまくってあと5人調達したと思います。「いいから来て! 知らない女の子とゲームできるから」って(笑)。

奥井氏:
 人狼のルールに則るなら,それが正解なんです。そこでルールの方を変えようと考えたからこそ,「ワンナイト人狼」が生まれたと。川上さんありがとー! と,まとめておいてください(笑)。



人狼を遊んでいるのはどんな人?


4Gamer:
 ここにお集まりいただいた皆さんは,なんだかんだ言ってもコア層だと思うので,今度はもう少しライトな,まさに現在の人狼ブームを形作っている人達について聞いてみたいと思います。児玉さんは,ドイツゲームスペースでさまざまなお客さんと人狼をプレイされていると思うのですが,どんな層が多いのでしょうか。

児玉氏:
 年齢層で言えば,ドイツゲームスペース自体がサラリーマンをターゲットにしていることもあって,やっぱり20〜30代が7〜8割を占めていますね。男女比なら女性4:男性6くらいでしょうか。ああ,でも人狼ルームに限って言えば,男性が少し減って,五分五分くらいかな。女性のほうが,リピート率は高い気がします。

奥井氏:
 僕の感覚でも,男女比はそれくらい。ただ「ワンナイト人狼」は,ニコニコ動画ではやっていることもあって,年齢層はもう少し下かもしれません。ニコニコモンズでワンナイト人狼のルールを公開しているので,某人気ゲーム実況者さんが取り上げてくれて,その動画がまたヒットしたりとか。ゲーム実況者さんのファンって,中高生とか女子も多かったりするので,その影響もあるのかな。Twitterとかを見ると,ノートの切れ端に役職を書いたりして,休み時間に遊んでくれてるみたいです。

4Gamer:
 個人的に不思議なのが,皆さんおっしゃる人狼ファンの女性比率の高さなんです。人狼って,実際にプレイしてみると,かなりストレスフルなゲームじゃないですか。にもかかわらず,これだけ広く受け入れられている理由って,どこにあるのでしょうか。

児玉氏:
 うちのお客さんを見ていると,女子会みたいな感覚で楽しんでいる女性ファンが多いですね。デパ地下でお菓子買ってきて,貸切で3時間ぐらいみっちり遊ぶみたいな。その日だけは仕事を絶対終わらせて集まったりとか。

4Gamer:
 自分なんか,1回プレイしただけでヘトヘトになってしまうくらいなのに。3時間もやったら,もう立ち上がれないかも(笑)。

児玉氏:
 女性の場合,負けたことを悔しいと思うよりも,勝って嬉しいという感情を重視する人が多い気がするんです。3回負けても,1回勝ったら今日は楽しかった,みたいな。男性だと,3回勝っても1回負けたら,「あそこはどうすればよかったんだ」って,どうしても考えるじゃないですか。

真城氏:
 一般的に,アナログゲームって論理的な思考力が求められるものが多いですよね。人狼ゲームの場合は,もちろん論理も必要ですが,それ以外に人間観察力とか,言語化できない直感こそが大事だったりもするじゃないですか。そういうところが女性に受け入れられているのではないでしょうか。


4Gamer:
 ああ,なるほど。確かに女性のほうが,その辺りの勝負勘には長けている気がします。「あの娘は嘘つくとき,そんな言い方はしない」とか,論理じゃない部分で戦っていて,しかもそれが結果的に正しかったりもする。

奥井氏:
 そうそう。表情とか,ちょっとしたところからほころびを見つけてくるんですよね。あと男性だと,できるだけ感情を殺して情報だけで推理を進めようとすることが多いんだけど,女性は違うんですよ。自分がこう出ると,相手はこう思うはずだから……みたいな感情操作を積み重ねていって,男性がコロっと騙されるパターンを多々見てきました(笑)。

児玉氏:
 「あなた人狼でしょ」って疑われたときなんかも,男性だったら理屈で反論しようとして,逆にボロを出してしまうところを,女性の場合は「なんでですか〜違いますよ〜」みたいにサッっと流しちゃったりとか。そういうところウマいんだ。

真城氏:
 多くの女性は,たぶんその場その時の心理戦を楽しんでるんだと思うんですよ。だから,負けた理由を後から分析してもしょうがない。それと女性には,「嘘をついてみたい」とか「演技してみたい」,あと「直感で嘘を暴きたい」っていう潜在欲があるのかも。人狼というフィクションの役を演じるのではなくて,嘘で塗り固めた自分自身を演じる快感,とでも言えばいいのかな。

児玉氏:
 お客さんと話していても,それはちょっと感じます。日常の枠から外れて,のびのびと嘘をついたり,人を騙すのが楽しいんじゃないですか。もしかすると,普段は女性の方が,日常の中で気を使って生活しているのかもしれない。

奥井氏:
 女子社会のタブーを,そのときだけ崩しても許される,みたいな。

児玉氏:
 初対面の人に反論するなんてまずできない世の中で,「そういうゲームだから」って免罪符のもとで,言いたいことを言ってスッキリする。そういう楽しみ方ができるのが,人狼ゲームがこれだけ広まった理由の一つかもしれないですね。


のめり込む人狼と,居酒屋の人狼


渡辺氏:
 どんな人が人狼ゲームを遊んでいるのか,というところに話を戻すと,今はプレイヤーがかなり多層化してきていると思うんです。時系列で言えば,熱心な海外ゲームファンが人狼ゲームに注目し,日本に持ち込んだのが恐らく最初で。そこから2000年代になって「人狼BBS」のようなネット人狼を通じてファンが拡大して,さらに2010年代に,奥井さんのおっしゃったような,ニコニコ動画などで人狼を知った,もっと広い意味でのネットユーザー達が出現した。そしてここ1〜2年に,テレビ番組で人狼を知った一番新しい層がいる。彼らがリアルの友達コミュニティに紹介するかたちで,今もプレイヤーは増え続けている,という感じで。

真城氏:
 あと,ここ数年でいうと,リアル脱出ゲームなどの謎解きイベントから来た人達もいますね。皆,違う入口から入って来て,人狼のファンになった人達です。でも,遊ばれ方はちょっとずつ違う。

児玉氏:
 自分が主人公になれる参加型イベントという意味では,リアル脱出ゲームと人狼ゲームは似た部分がありますね。ドイツゲームスペースが定期的に開催してるイベントで「大人狼村」というのがあるんですが,これは勝ち負けよりも,自分が主人公になることに主眼を置いたイベントになっているんです。

4Gamer:
 というと?

児玉氏:
 例えば村人を6回も7回も引き続けて,さらに全敗した人を表彰したりとか。それって実は結構難しくて,100人に1人いるかいないか,みたいな確率なんです。それってもう,ある意味主役みたいなものじゃないですか。

4Gamer:
 ずっと騙され続けた善人ってことですよね。すべての村で負け続けるというのも,確かに物語の主人公っぽいかも。

渡辺氏:
 僕らがやっている「嘘つき村の人狼」も,体験に主眼を置くという部分はコンセプトが近いですね。嘘つき村は参加型演劇のような考え方で,世界観と演出を作り込むことで,その中にどっぷりつかってもらおうというのが狙いになっています。

真城氏:
 さっき児玉さんがおっしゃっていたように,人狼ゲームって楽しみ方の幅がすごく広いんですよ。これまでに出た,論理ゲームとしての側面,それからコミュニケーションゲームの側面のほかに,“ごっこ遊び”としての側面もある。「嘘つき村の人狼」では,このごっこ遊び=“なりきり”の楽しさを推すことにして,それをできるだけ体感しやすい世界観を考えました。

渡辺氏:
 ここが真城の独特なところなんですが,人狼ゲームをイベント化して世界観を作り込むというと,普通はゴシックホラーテイストとかが案として出てきやすいと思うんです。でも真城が考えた世界観は,もっと原始的な村祭りで,暗さとハイテンションを両立したものでした。なにせその日に処刑する人をステージに上げて,参加者みんなで太鼓を叩くんです。

カラフルな帽子をかぶって太鼓を叩き,チームが村の家族になりきって行動する「嘘つき村の人狼」

4Gamer:
 それは,ちょっと怖いですね(笑)。

渡辺氏:
 実際にやってみたら,想像以上でしたね。50人が叩く太鼓の音の迫力ってすごいんですよ。なんというか,とくに凝ったセットがあるわけでもないのに,会場が非日常な空間に変わって,本能に訴えかけるような祝祭感もある。

奥井氏:
 人狼ゲームのモチーフって,たぶん魔女狩りだと思うんで,それはある意味正しいんじゃないですか。

児玉氏:
 僕は「人狼 ザ・ライブプレイングシアター」という舞台版の人狼にも,役者として出演しているんですが,あれは感情移入という意味では究極形です。お芝居ではあるんですが,ゲームの部分は台本無しのガチの対戦なので,役者さんの中には,「信じてもらえて本当に良かった!」って,泣きそうになる人までいて。

渡辺氏:
 今いるこの部屋も,そういう“なりきり”を即すような舞台装置ですよね。

児玉氏:
 そうです。この部屋で人狼ゲームをやってると,自分がどこに居るのかをいっとき忘れられるんです。怪しいマンションの一室で,「殺さないで」とか「私を信じて!」とか,初対面の人と言い合ってるのって,すごく非日常じゃないですか。狭い空間で真剣に騙し合った後,ドアを開けて初めて「あっ,ここ渋谷だった」って思い出す。そういう不思議な体験を味わってもらいたかった。


奥井氏:
 閉じた空間のなかで,ロールプレイを楽しむのってすごく面白いと思うんですけど,僕の場合はちょっと方向が違ってて。もっと気軽にパーティーゲームとして遊んでもらいたいという思いがあるんですよね。例えば,僕は「ワンナイト人狼」を居酒屋で遊んだことがあるんですけど,端から見るとけっこう怪しい集団なわけですよ。

4Gamer:
 居酒屋で全員顔を伏せて,テーブルをトントン叩いてたら(※夜のターン,物音で正体がバレてしまわないようにする行動),そりゃあ怪しいです(笑)。

奥井氏:
 店員さんがやってきたとき,「あ,すいません……」みたいな感じになるんですけど(笑)。でも,それを見た隣のテーブルのOLさん達に「それって何やってるんですか?」って声かけられて,その場で説明して遊んでもらったこともあるんです。

4Gamer:
 なんと。

奥井氏:
 密室とかじゃなく,飲み屋でだって人狼は遊べる。遊んでる光景が,横から見て楽しそうで,すぐに教えることだってできちゃう。こういう入口のハードルの低さだって,僕は重要だと思うんだ。

渡辺氏:
 世界観に浸ってのめり込む人狼と,居酒屋でのカジュアルな人狼,そのどっちの楽しみ方もできる。やっぱりこの振れ幅の広さが,人狼ゲームの魅力なんじゃないですか。

児玉氏:
 ここに居る4人だけでもこれだけ楽しみ方が違うわけで,遊ぶ人は自分の好みに合わせて選んでくれればいいと思うんです。先に話にでたテレビ番組だって,方向性はかなり違っていますし。

4Gamer:
 ああ,楽しみ方が幅広いだけに,紹介の仕方も多様ですね。フジテレビの「人狼〜嘘つきは誰だ?」は,かなりベーシックなルールによる対戦でしたが……。

児玉氏:
 TBSの「ジンロリアン〜人狼〜」には,そもそも役職がない。実はこっちには,僕もアドバイザーとして参加しているんですが,人狼ゲームって,僕は究極的には役職がなくてもいいと思っているんです。ロジックで考える人に取っては,「そんなの運ゲーじゃん」って思われるのかもしれませんが,本当はこっちのほうが分かりやすい。

4Gamer:
 確かに役職がないと,ロジックによる推理はできなくなってしまいます。

児玉氏:
 でも,なにかブラフをかけて情報を引き出す手法など,感情面での駆け引きは残ります。ましてや,出演者は個性の強い芸能人の方達ですし,忙しくて練習する時間もとれないわけで。逆にロジック上でのセオリーを把握しないまま,あまりスマートでない対戦を見せてしまうくらいなら,こうしたほうが絶対面白くなる。

4Gamer:
 なるほど。そういう考え方もあるんですね。「あの人がこんな嘘を!?」みたいな驚きもあるし,役職やセオリーに頼らなくても人狼は楽しめると。

児玉氏:
 ええ。それは,うちのお客さんにもよく言っていて。例えばネット人狼の経験者って,顔が見えないだけに,プレイスタイルがロジカルな推理に寄りがちな傾向があるんですが,リアル人狼だと,それだけでは勝ちきれないことがままあるわけです。そこでロジック外の要素――感情面の駆け引きを,運と片付けてしまうか,そうでないか。そこで結構差が付くゲームだと思いますね。

■(コラム)音楽でものめりこむ人狼〜人狼伴奏音楽集

菊田裕樹氏
スクウェア時代に「聖剣伝説2」「聖剣伝説3」の音楽を手がけた作曲家。現在はフリーとして,セガのシャイニングシリーズ,ガストのアトリエシリーズなどにも楽曲を提供している
 「聖剣伝説2」「聖剣伝説3」の音楽で知られる作曲家の菊田裕樹氏は,「人狼をプレイしながら流すBGM」というコンセプトで作曲された自主制作CD「人狼伴奏音楽集」を販売している。夜のターンや投票のとき,緊迫感を盛り上げる楽曲や,自己紹介などに適した明るい楽曲など,さまざまなBGMが収録されているので,「嘘つき村の人狼」や「人狼 ザ・ライブプレイングシアター」のように,雰囲気を重視したいときにはオススメの1枚と言えるだろう。

 制作の経緯を菊田氏にうかがってみたところ,そもそもは「嘘つき村の人狼」で流すテーマ曲を,ドロッセルマイヤーズの渡辺さんから依頼されたことがきっかけだったという。菊田さんはゲーム音楽の作り手として,人狼ゲームの「ロジカルな推理とまったくの偶然の組み合わせ,情報と感情のせめぎ合いによって生まれる展開や,知り合い同士でやるときに,その人の性格や考え方,それこそ人生すべてがプレイに乗っかってくるところ」に興味を持ったのだそうだ。
 最初はテーマ曲のみのオファーだったそうだが,せっかく人狼ゲームを大勢で遊べる機会なのだから,できるだけ没入してほしいとのことで,CD1枚分に匹敵する数々の楽曲が生み出されたのだという。菊田氏曰く,「ゲーム屋としては,どうすればお客さんにより楽しんでもらえるかを考えることが,実際に遊ぶよりも楽しい」とのことである。

 なお,このCDに収録されている楽曲は,人狼ゲームに関連した動画であれば,誰でも好きに使っていいことになっている。人狼ゲームのプレイ動画などを作成しようと思っている人は,ぜひ利用してみてはいかがだろうか。


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