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2026年8月にROOM6のインディーゲームレーベル・ヨカゼからPCとNintendo Switch向けにリリースされた「プラトニカ・スペース」は,KAMITSUBAKI STUDIOとKazuhide Oka氏による音楽×インディーゲームプロジェクト・ANMC(アノマチ)の第3作となる一人称視点の探索アドベンチャーだ。そんな本作を,PC版のプレイを通して紹介しよう。
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夢のなかのような空間で“失われた記憶”を読み解く
国際的な会合にも使えそうなお堅めの会議室のすぐ隣に,なぜか生活感漂う書斎が接続され,その奥は静まり返った電車内に続いている。本作の舞台はまるで脈絡のない複数の場所がつなぎ合わされたような,どこか夢のなかで彷徨っているかのような奇妙な世界だ。
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そんな静かな空間に,アコースティックギターとピアノ中心の静かなBGMがそっと寄り添う。agehasprings Partyのサウンドが創り出すチルいムードのなか,プレイヤーは無数の部屋を巡り,落ちているアイテムと「記憶の断片」を組み合わせながら,失われた記憶をひとつずつ読み解いていく。
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集まったのは記憶を失った5人
本作の舞台は,タイトル画面から想像できるとおり,宇宙船の中らしい。主要な登場人物は5人だが,みな記憶を失っており,誰がクルーで誰が乗客なのかも判然としない。
そんな彼ら/彼女らと言葉を交わし,記憶の断片を探索していくうちに,それぞれの背景や人となりが少しずつ見えてくる。
・エララ
NASA風のクラシックな宇宙服に身を包んだ少女。おそらく地球で育ったであろうことがうかがえる。
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・ゾーイ
ガスマスクを首から下げ,ジャンプスーツを着た人物。どこか世話好きな面が見え隠れする。
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・カトリーナ
スーツ姿の妙齢の女性。家族がいたような雰囲気も漂わせるが……。
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・ウォルター
どこか人を寄せ付けない雰囲気の壮年の男性。ほかのメンバーに対してもどこか距離を保つ。
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そしてあと一人が,プレイヤーの分身となる主人公・リアム。この宇宙船の船員のようだが……。
自分たちは誰なのか,そしてなぜこの無数の部屋が連なる世界に囚われているのか。記憶を探り,それらを共有していくプロセスの中で,彼らが抱える過去や複雑な人間関係が浮き彫りになっていく。
「意識」をやりくりし,より深い階層へと潜っていく
探索に際してはちょっとしたシステムがあり,移動やアイテムの取得といった「行動」を取るたびに主人公の「意識」が消費されていく。ゲームっぽく言ってしまえば,行動力の管理が必要となるイメージだ。意識がゼロになれば,その日の探索は終了となり,また新たな1日が始まる。
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1日のうちに「記憶の断片」を3つ読み解くことができれば,次の領域へと続く出口が出現。より深い階層へと潜っていくことができ,これがひとつの目標となる。とはいえ,初回のプレイではシビアに考えすぎなくても大丈夫。そのことでストーリー体験が大きく壊れてしまう心配はないので,まずは気の向くままに歩き回ってみてほしい。
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また,記憶の断片を読むたびに,「因子」という便利要素をランダムで手に入れられる。場所を移動するたび,所持している「因子」の中からひとつが抽選され,さまざまなサポート効果が発動する仕組みだ。
一応,有効な因子を持っていれば目的を達成しやすくはなるのだが,こちらも初回は「助けになればラッキー」程度で考えておけばいいだろう。少なくとも筆者はあまり気負わず遊ぶことができた。
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そうして集めた記憶の断片を読み込み,状況を総合して,「この記憶は本来誰のものなのか」を当てはめていく要素もある。断片的な情報がパズルのピースのようにハマり,持ち主を特定できたときはうれしいだけでなく,どこか複雑な思いになるかもしれない。
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アイテムは思考を呼び覚ますキーワード
本作における記憶の断片とアイテムの関係は,いわゆる「スペードの扉にはスペードの鍵」というような対応関係にはなっていない。むしろ,登場人物たちが何かを思い出すための「キーワード」として機能していると捉えたほうが,実際のプレイ感に近いかと思う。
「このシチュエーションなら,あのアイテムが関係するのではないか」「記憶の断片のタイトルからすると,これかな?」などと,プレイヤーの連想や直感がうまく働けば,それだけ早く正解にたどり着ける。
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因子の効能か,あるいは神の采配か。ときには記憶の断片のすぐそばで必要なアイテムが「手に入ってしまう」こともある。こうした絶妙なおもてなしのおかげで,進行が長く停滞してしまうことは少なかった。
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そして記憶の整理が進んでいくと,それまでどこか他人行儀だったキャラクターたちがぽつり,ぽつりと語り始めたり,隠されていた過去を垣間見たために対立するようになったりと,記憶と記憶がつながって,ドラマが少しずつ動き始める。
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中盤からのドライブ感と静かな幕引き
全体を通してみると,本作のゲームシステムは「ストーリー体験を阻害しない」絶妙なラインに整えられているように感じた。「意識」の消費や「因子」の取捨選択といったリソース管理は,決してシビアなものではなく,まったりリラックスした気分で楽しめる。
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ただ,ゲーム序盤から中盤にかけては,手に入る記憶の断片が文字通り断片的であるため,全体の状況を把握・整理するまでに少し時間を要するかもしれない。しかし,この手探りの時間が,物語における「溜め」としても機能している。
記憶が少しずつ結びつき,キャラクターたちの抱える背景や関係性がはっきりしてくる中盤以降は,物語が一気に加速していく。そこからは途中で手を止めることなく,エンディングまで一気に突っ走れるはずだ。
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中盤,不確かな6人目(?)の存在が仄めかされ,それがどのように結末へ結びつくのかも含めて,本作はSFとしてとても綺麗にまとめられている。SF的な枠組みを借りつつも,描かれているものは「人と人との相互理解の形」という,今を生きる我々にとっても身近な問いかけだった。
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大がかりな衝撃やスペクタクルより,肩の力を抜いて浸れる上質なゲーム体験を求めている人にとって,「プラトニカ・スペース」は「こういうのがちょうどいい」と思える1本となるはずだ。
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