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印刷2026/03/13 17:51

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MMO内に「TikTok」を作ったらどうなったか。「逆水寒」が実践した,プレイヤーをクリエイターに変える仕組み[GDC 2026]

 「GDC Festival of Gaming 2026」の講演「Short Form Futures: How AI Turned MMO Players into TikTok Creators」で,NetEaseのゲームAIデザイナーChang Liu氏が,MMORPG「逆水寒」における“ゲーム内TikTok”の構築事例を語った。縦型ショート動画フィードと制作ツールをMMO内に組み込み,プレイヤーをクリエイターへと変貌させた取り組みを紹介しよう。

Chang Liu氏
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 TikTokに代表されるショート動画の1日あたりの平均視聴時間は,2019年の27分から2025年には97分にまで急増している。いわゆる「アテンション・エコノミー」(注意力の奪い合い)の時代において,ゲームもまた可処分時間を巡る競争にさらされているわけだ。

TikTokの1日あたり平均視聴時間の推移。2019年の約27分から2025年には97分へと急増している
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 Liu氏はこの状況を「彼らに勝てないなら,仲間になれ」という言葉で表現した。ショート動画に対抗するのではなく,MMOの内側にショート動画の仕組みを取り込んでしまおうという発想だ。

 そもそもの問題意識は,2023年のローンチ後に顕在化した。「逆水寒」のプレイヤーには,ゲーム内で美しい映像を撮影し,中国版TikTokである「Douyin」(抖音)に投稿する層が一定数いた。しかしそれを見たほかのプレイヤーが真似しようとしても,キャラクター,アニメーション,カメラの管理に加えて外部ソフトへの書き出しが必要で,プロの映像制作パイプラインのような複雑さだったという。コメント欄には「やってみたいけどできない」という声があふれていたそうだ。

 ゲーム外に用意されていたシネマティックエディターも,高機能すぎるがゆえに大多数のプレイヤーにはハードルが高く,「一度開いて,複雑さを確認して,そっと閉じる」というのが実態だったという。

 そこで開発チームが構築したのが,「Stage Hub」(ステージハブ)と「Troop Mode」(トループモード)からなるシステムである。Stage Hubはゲーム内に実装された縦型の3Dフィード,Troop Modeは実際にコンテンツを制作するためのツールだ。プレイヤーたちはすぐにこれを「3D TikTok」と呼び始めた。

「3D TikTokは,なんとなくスクロールしている時間を,一緒に遊ぶ時間に変換する」。AIアシスタント付きの制作,見るだけでなくリミックス,エンターテインメントをソーシャルプレイへ,という3つの柱が示された
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 通常のTikTokでは視聴者は受動的だが,「逆水寒」のシステムではフィード上で見たあらゆる動画を1クリックで再現できる。見るだけでなく,自分がコンテンツの一部になれるわけだ。

 Stage Hubに供給されるコンテンツは3種類ある。1つはTroop Mode上でAIアシスタントを使って生成されたもの,もう1つは公式制作のムービー,3つめは外部エディターで制作されたUGC(ユーザー生成コンテンツ)だ。これらがプレイヤーによって再生/編集/アップロードされ,さらにDouyinにもシェアされることで,プラットフォームをまたいだフィードバックループが生まれている。

システム全体の構造図
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 プレイヤーの目的やスキルレベルに合わせた4つの制作タイプが存在するのも特徴的だ。

 最も手軽なのがソロパフォーマンスで,「表情」「モーション」「カメラ」「音楽」の4要素を組み合わせるだけで,わずか10秒ほどで完成する。自由度こそ低いものの,いつでもどこでも発動できるため,ミーム的な模倣動画として爆発的に拡散しやすい。同じモーションを同じカメラと音楽で一緒に踊る行為自体がソーシャルな体験であり,結果として最も拡散しやすい形式だとLiu氏は分析した。

ソロパフォーマンスの実例。4つの要素(表情・モーション・カメラ・音楽)を組み合わせるだけで,オープンワールド上で複数プレイヤーが同じテンプレートを使ってパフォーマンスできる
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 アンサンブルパフォーマンスでは,複数のプレイヤーがそれぞれ異なる演技を披露できる。タイムライン編集や移動パスの設定といったツールが追加され,制作にかかる時間は約5分。オープンワールド内のどこにでも移動できるほか,衣装や環境,照明,ペットを差し替えるだけで仕上がりが劇的に変わる。

アンサンブルパフォーマンスの例。タイムライン編集や移動パスの設定が可能で,ミニステージパフォーマンスやグループ撮影などの中規模な制作に対応している
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テンプレートからカスタムへ。左がテンプレートを使ったクイックスタート,右がカスタムシーンでの再撮影。同じモーションでもシーンを変えるだけで印象がまったく異なる
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衣装やペットを差し替えるだけでも結果は大きく変わる。左が衣装違い,右がペットとの撮影例
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 シーン再現は,公式カットシーンや他プレイヤーの動画を素材にできる機能で,俳優の入れ替え,セリフの変更,スマートフォンのカメラを使ったリアルタイムフェイスキャプチャにまで対応する。リミックスされた動画には元のクリエイターの透かし(ウォーターマーク)が自動挿入されるため,拡散するほど原作者の知名度も上がる設計になっている。

 この仕組みのおかげで,数時間に及ぶ長編ストーリーを制作し,それをショートドラマとしてTikTokに分割配信するプロフェッショナルなコミュニティまで育っており,Liu氏によれば昨年だけで1億人民元(約20億円)以上の収益を生むエコシステムに成長したという。

 そしてAIネイティブ・クリエイションでは,テキストから画像,画像から画像,画像から動画を生成するAIモデルがゲーム内に統合されている。自由度は4タイプ中最も高いが,ソーシャル機能は「Not yet」(まだ)とのこと。生成のたびにゲーム内アイテムを消費するトークンベースの仕組みを採用し,サーバーコストとのバランスを確保している。

4つの制作タイプの比較表。制作時間,自由度,バイラル性などが一覧でまとめられている
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 Liu氏は,このシステム全体を支えるAIインフラとして3つの領域を挙げた。

AIインフラの3領域。パフォーマンスAI(モーションキャプチャ処理,音声からアニメーション変換,カメラパス生成,音楽同期振付),アクターAI(NPC行動制御,LLMベースの性格付け),アセットAI(3Dプロップ生成,シーン構成,テキスト/画像からのキャラクター生成)
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 1つめは「パフォーマンスAI」で,モーションキャプチャの処理や音声からアニメーションへの変換に加え,カメラパスの自動生成や音楽に同期した振付生成も担っている。

 2つめは「アクターAI」で,LLM(大規模言語モデル)をベースにしたNPCの性格付けと行動制御を司るものだ。ソロプレイヤーでもテキストや画像を入力するだけで独自のAI共演者を作成でき,ゲーム内のシステムと連動している。

AI生成NPCアクターの機能。テキストまたは画像を入力してAI共演者を作成でき,名前・性格・外見・声・バックストーリーまでカスタマイズ可能
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 3つめは「アセットAI」で,テキストや画像から3Dの小道具を生成する。スライダーで大きさや回転を調整してアバターにフィットさせられるため,プレイヤーが開発チームによる新規3Dモデルの制作を待つ必要はなくなった。

AI生成アセットの例。テキストプロンプトや参照画像から3Dプロップを生成し,スライダーでスケールや回転を調整してアバターにフィットさせる
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 もっとも,AIの生成は常に完璧というわけではない。「魔法の空飛ぶほうき」をリクエストしたら「小さな掃除用ほうき」が出てきた,といった例も紹介されたが,こうした偶然の産物がむしろ面白いバイラル動画につながることもあると,Liu氏は楽しそうに語っていた。

 エコシステムの威力を示す好例として紹介されたのが,「The Prince Walk」(王子の歩き方)というトレンドだ。

ケーススタディ「The Prince Walk」。Stage Hub内のゲーム画面(左)から,リアルのコスプレイヤーによるDouyin上での再現(右)へと発展した
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 始まりはStage Hub内のただの歩行アニメーションだった。しかしあるプレイヤーが,特定の衣装とカメラアングルを組み合わせると驚くほどクールに見えることを発見し,ゲーム内で爆発的に広まった。やがて女性版の「Queen Walk」も作られ,最終的にはリアルのコスプレイヤーがTikTokでゲーム内アニメーションを模倣するまでに発展。1万件以上のリプリントと,Douyin上で1億回以上の再生回数を記録する一大トレンドとなったそうだ。

「Prince Walk」トレンドの拡散過程。女性版「Queen Walk」の派生(左),コスプレイヤーによるリアル再現(中央),1万件以上のリプリントと1億回以上の再生を記録した最終的な広がり(右)
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 ここでLiu氏は,聴講者の多くが抱いているであろう疑問をあえて自ら投げかけた。「踊ったり動画を撮ったりすることは,本当にゲームプレイなのか? ただの“映え”に過ぎないのではないか」と。

 しかしLiu氏はこれに正面から反論した。グループで動画を撮るとき,プレイヤーは自発的に「主演」「エキストラ」「カメラマン」といった役割を分担するようになる。Liu氏はこの現象を「必要とする/必要とされるという深いつながり」と表現した。特定のルールのもとで繰り返し集まり,それぞれが役割を持ち,共通の目標に向かって協力する――それはまさにMMOのコアなゲームループそのものではないか,というのがLiu氏の主張だ。

 そしてこの主張を,データが裏づける。

主要指標の一覧。Stage Hub内で1日500万スワイプ,Douyinでの外部視聴100億回以上。リテンションはDay 1が52%,Day 3が49%,Day 7が45%
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 まずシステム全体の規模感だが,Stage Hub内では1日あたり500万再生されている。Douyinでの外部視聴は累計100億回以上に達しており,Douyin上の「逆水寒」関連ハッシュタグの総再生回数は数百億回規模に及ぶ。

 UGC機能としては異例なのが継続率の高さだ。Day 1リテンションが52%,Day 3が49%,Day 7でも45%を維持している。クリエイターの内訳は,オリジナルコンテンツ制作者が10%,リミックス制作者が70%,残り20%が視聴者だ。大多数のプレイヤーは「ゼロから作る」のではなく「既存の作品をアレンジする」形で参加している。

左のグラフはフレンドベースのチーム結成率(%),右はバディ間の1日あたりチャット数。いずれもTroupe(Troop Mode)がPvEやPvPを大きく上回っている
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 そして先ほどの「これはゲームプレイか」という問いへの回答が,ソーシャルデータに表れている。Troop Modeを通じたソーシャルインタラクションは,PvEやPvPよりも高い値を記録しているのだ。フレンドベースのチーム結成率は約62%でトップ,バディ間の1日あたりチャット数も14.27メッセージと,ほかのゲームモードを大きく引き離している。ランダムパーティでのチャット率は46.73%で,これも戦闘系コンテンツを上回る数値だという。

 さらに注目すべきは,こうした関係の持続性の高さだ。一度きりの共同プレイで終わるのではなく,何週間にもわたって会話が続く長期的な友人関係の形成に,このシステムが劇的な効果を発揮しているとLiu氏は強調した。

 戦闘ではなく「一緒に作る」行為のほうが,より深い社会的つながりを生む。それがデータとして明確に示されているわけだ。

 このエコシステムを回し続けるエンジンとして紹介されたのが,「T+1パイプライン」と呼ばれる仕組みだ。

 毎朝TikTokのトレンドをスキャンし,昼までに最適なものを承認。夕方にはAIがモーションを抽出してテンプレートを作成し,翌朝にはStage Hubに公開される。開発チームがモーションを制作しない場合は,優秀なプレイヤーの作品をレコメンデーションシステムで増幅させることもある。

 Liu氏が強調したのは,この仕組みがプレイヤーに「開発チームはトレンドを絶対に見逃さない」という“錯覚”を与える効果だ。実際にすべてのトレンドをカバーしているわけではないが,高速なパイプラインがその印象を作り出している。

 講演の最後にLiu氏が提示したのは,以下の4つのポイントだった。

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 1つめは「AIアニメーション・パイプラインの構築」。外部のトレンドから遊べるテンプレートへ,1クリックで変換できる仕組みが必要だとする。2つめは「3Dスワイプフィードの実装」で,ゲーム内にスムーズな閲覧・発見の場を作ること。3つめは「バッジとトレンドプッシュの活用」で,クリエイターをアクティブに保つ承認・評価システムの重要性を説いた。そして4つめは「共同プレイと共有の優先」。ゲーム内で簡単にチームを組める仕組みが極めて重要だと強調した。

 「AIは単なるコスト削減のツールではなく,ゲームの可能性を広げ,まったく新しい体験を生み出すものだ」というLiu氏の言葉で,講演は締めくくられた。

 ショート動画がエンターテインメントの中心に居座る時代に,それと敵対するのではなく内側に取り込んでしまう発想は,MMOに限らず,多くのゲームにとって示唆に富むものだったのではないだろうか。

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