イベント
流れるパールを受け止めろ! 奇抜なビジュアルとシンプルかつ堅実なルールが同居したボードゲーム「12 Rivers」日本語版を紹介
2022年に発売された「12 Rivers」は,その後クラウドファンディングサイトのMakuakeにて,日本語版の発売に向けたキャンペーンが行われ,目標額を大幅に超える421万円以上の支援を達成するなど,ボードゲームファンの間で密かに注目されていたタイトルでもある。
ゲームデザイナーは,「Dive」などを手掛けたRomain Caterdjian氏。氏はちょっと珍しいコンポーネントの使い方をするデザイナーとして知られており,本作の中核となるメカニクスもまた,非常に独創的なものだった。
CAMPFIRE「12 Rivers」プロジェクトページ
待ち構えるのもタダじゃない。流れるパールをどこで受け止めるか
本作のコンポーネントの中でもとくに目を引くのは,細かに枝分かれした河川を表したメインボードだ。ボードはウレタン樹脂を厚紙で挟んだような形状をしていて,一般的なゲームボードと比較するとけっこうな厚みがある。
河川の上流は“仕切り”を挿せる形状になっていて,この仕切りでせき止めるようにして,ゲーム開始時に小さなパール(球状のプラスチック)を配置する。仕切りを外せば,ちょうど河川を下るように,パールが動き出す仕組みだ。パールには色ごとに勝利点が設定されており,これらを収集していくのがプレイヤーの目的となる。
パールが流れる道筋には複数のくぼみが用意されていて,ここにトークンを挿すことでパールを受け止められる。そして挿したトークンを所持するプレイヤーは,せき止めたパールの中から1個を選んで獲得できる。
余ったパールはさらに下流へと流され,その先でまたトークンに止められて得点になる。これを繰り返し,余ったパールがすべて河口へと辿り着くとラウンドが終了。全5ラウンドで得られた勝利点で勝敗が競うのが,本作の基本ルールとなっている。
仕組みはかなりシンプルだが,とはいえボードゲームに慣れた人なら,すぐにいくつかの疑問が浮かぶはず。そうした問題点を,非常にスマートな形で解決しているのが本作の注目ポイントといえる。
まず,先にトークンを配置できる先手プレイヤーが圧倒的に有利に見える点について。パールの色が勝利点に直結する以上,妨害されにくい上流にトークンを置ける先手プレイヤーに大きなアドバンテージがあるのは間違いない。
その差を埋めているのが,トークンを配置するときのコストだ。各プレイヤーは「テント」と呼ばれるリソースを持っており,トークンを上流に置くほど多くのテントが必要になるのである。
新たにテントを得る手段は非常に限られており,河口付近にトークンを配置するか,パール獲得機会を放棄して,トークンを「村」のエリアに配置するかのどちらかでしか補充できない。どこかで下流に手を伸ばさなければ,テントは必ず枯渇する。
さらに点数が低いパールにも,使い道が用意されているのも面白い。
先ほどはパールを獲得することで勝利点が得られると紹介したが,実際はもうワンクッションあって,獲得後のパールは一度アルパカ(倉庫)にストックされていく。勝利点として計上するには,このストックしたパールを,場から獲得した「村人タイル」に配置する必要があるのだ。
村人タイルを獲得するには,ラウンド中にトークンを「村」に配置する必要があるうえに,配置できるパールは村人タイルごとに決まっている。つまり高得点なパールを獲得したとしても,対応する村人タイルがなければ得点化できないわけだ。
こうしたルールがあってなお,先手番が大きなアドバンテージを持っていることに代わりはない。しかしゲーム序盤は初期リソースの関係で積極的に先手を取るのは難しく,中盤以降は先手を取るのに行動を調整する必要が出てくる。ゆえに先手を重視した動き方は“強力な戦略”の一つ程度に抑えられているように感じられた。
村人タイルまで含めた読み合いは奥深く,それでいて基本ルールはシンプルかつ軽量にまとめられた本作は,直感的で遊びやすいタイトルと感じられた。すべてのメカニクスが「どのパールを,どうやって取るべきか」というジレンマに集約されていることもあって,ゲーム全体の見通しがいいのも,その大きな理由だろう。
単純にパールが流れ落ちていくアトラクション感も楽しくて,テキストを読み解くような要素もほとんどない。見栄えのいいコンポーネントは子供ウケもよさそうで,中量級のボードゲームを求めているコミュニティには,とくに刺さる一本になりそうだった。
ちなみに日本語版は今のところ一般販売が行われておらず,現時点ではCAMPFIREにおけるクラウドファンディング第2弾のリターンとしての製造と販売に限られている。すでに支援者の募集は終了しているものの,気になった人はプロジェクトページをチェックしてみよう。
CAMPFIRE「12 Rivers」プロジェクトページ
- 関連タイトル:
12 Rivers
- この記事のURL: