
プレイレポート
「電車でGO!! はしろう山手線」PS4版プレイレポート。リアルな風景が思い出を甦らせてくれる大人のゲーム
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「電車でGO」シリーズは,1997年から展開されている電車運転シミュレーションゲームだ。プレイヤーは電車を運転し,定刻通りの到着と正確な停車を目指す。電車の運転台を模した筐体,実在路線の風景を再現したグラフィックスが話題となり,いわゆる“職業体験ゲーム”ブームの火付け役となった。
現在アーケードでは,2017年からサービスが続く「電車でGO!!」が稼動している。筐体は運転台だけでなく運転席を再現したルーム型となり,パネルの計器をタッチして「指差確認」することでゲームを進めるなど,臨場感を増した仕様となった。
そして,この「電車でGO!!」をベースに,都心の電車にフォーカスしたのが,今回の「電車でGO!! はしろう山手線」である。山手線30駅を内回りで走れるのに加え,埼京線,京浜東北線,上野東京ライン,成田エクスプレスといった,山手線と併走する路線やアーケード版にも収録されている総武線も楽しめる。
本作のメインモード「運転士の道」ではさまざまな条件で運転を行っていき,新しい路線や電車を解放していく。また,アーケード版の一部ミッションを再現した「アーケード」モードや,ノンビリと電車に乗れる「フリー走行」といったモードも充実。さらに,PS4版はPlayStation VRがあれば,運転席を見回しつつプレイできる「VRモード」も楽しめるのだ。
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リアルな沿線風景から思い出が甦る
本作の見どころは多いが,中でも目を惹くのがリアルな風景だ。駅だけでなく沿線の地形や建物が忠実に再現されており,思わず目を見張ってしまう。東京駅の赤い駅舎。原宿駅の線路に沿った土手と,オシャレな欄干がついた橋。品川駅近くの開けた光景。渋谷駅からは3月に営業終了した東急百貨店の懐かしい姿が見える。水道橋駅からは巨大な学校のような建物(東京都教職員研修センター)が建ち,恵比寿駅の近くには清掃工場の煙突がそびえ,秋葉原駅に近づくと秋葉原UDXが見えてくる。日常的に山手線を使っている人であってもテンションが上がること間違いなしだ。運転する必要のない「展望走行」にして景色を楽しむのもいいだろう。
![]() 東京駅の駅舎 |
![]() 原宿駅近くのオシャレな橋 |
![]() 開けた光景が印象的な品川駅近く |
![]() 渋谷では東急百貨店が見える |
![]() 水道橋の東京都教職員研修センター |
![]() 秋葉原駅からは特徴的な秋葉原UDXの姿が |
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そして,鉄道からの風景には思い出を呼び起こす力がある。筆者も運転しながら「新宿から終電に乗ったら,他路線の事故が重なってものすごい混雑になったことがあったな」「忘年会シーズン,具合を悪くした人が車内で倒れて大騒ぎになったな」「遅刻ギリギリで山手線に乗り,身を焼かれるような気持ちで焦っていたな」「秋葉原でゲーム機を買って帰った時は,夕方になってしまい,混んだ電車の中で大きな箱を運ぶのが申し訳なく思えたな」といった具合にいろいろな記憶が蘇ってきて,ちょっと素敵な体験をさせてもらえた。
車内アナウンスも現実に近いものが流れるのだが,普段の習慣と結びついて反応してしまうのが面白い。「次は秋葉原,秋葉原」とアナウンスされるとテンションが上がるし,これが「次は池袋」なら(ああ,そろそろ降りなきゃ……)と身構えてしまう。まるでパブロフの犬のようだ。もちろん,英語版アナウンスも再現されている。駅番号や路線名を読み上げる際の「ジェイワァーーイ(JY)」とか「ラアィィン(LINE)」といった,印象的な伸ばし方を聞いていると,自分は今電車に乗っているんだ……という実感が高まるのだ。
夢の電車運転体験。速度を競うのではなく,安全と快適を目指す
もちろん,“電車を運転する”というレアな体験ができるのも大きな魅力である。
本作はタイムを競うレースゲームではない。できるだけ速くゴールへ着くのではなく,定刻通りに駅に到着することが基本となる。そして,お客さんのことを考えて急な加速やブレーキを慎みつつ,乗り降りしやすいように駅の定位置に停車することを心がけなければならない。こうしたセオリーから外れた運転をすると,「ミッションゲージ」が減少していき,0になるとゲームオーバーになってしまう。要するに,普段自分たちが利用している電車の如く,安全・快適・正確に運転しなければならないわけだ。
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電車の運転なんてどういうものかなかなか想像もできないうえ,駅に着くまでの時間も細かく決められているとなると,プレイする前に身構えてしまう人もいるかもしれないが,心配はご無用。「運転士の道」モードでは,走行区間ごとに決められた制限速度が運転を助けてくれるからだ。
車の道路と違い,本作の制限速度は区間ごとに結構細かく上下する。駅から出たばかりは35km,もう少し進むと50km,さらに先へ行けば70km,そろそろ次の駅が近くなってきたので55km……という感じで,頻繁に速度を変えなければならない。この辺りは現実の電車も同様だが,「運転士の道」モードでは特に細かく制限速度が設定されており,指示通りに速度を合わせていけば間に合うようになっている。
また,状況にもよるが,難易度を「イージー」にすれば,よほど無茶苦茶なことをやらない限りゲームオーバーにならない。制限速度をオーバーしようが,駅の構内に高速で突っ込もうが,その都度ATS(自動列車停止装置)などの安全装置がはたらき,いい感じに事を収めてくれる。ミッションゲージがなくなるとゲームオーバーということは,逆にいえばミッションゲージさえ残っていればクリアにはなるということでもある。あまり身構えずにプレイしてみるといいだろう。
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そして,「指差確認」や「警笛」「減光スイッチ」「ホームの決められた場所への停車」などの要素で,運転士気分に浸れるのもワクワクできるポイントだ。
計器に指をさして確認するのが指差確認で,PS4版では[△]ボタンを使う。まずはホームで停車中,お客さんが乗り降りを終えて扉が閉まったことを示す「戸閉灯(とじめとう)」が点いたのを見て指差確認。発車してからは,走行区間の変わり目が近づく度に指差確認。決める度に「とじめ,てん!(戸閉灯が点灯しているのを確認しました)」とか「せいげん,きゅうじゅう,よし!(この先の区画では,制限速度が90kmになることを確認しました)」といった,業界用語のボイスも流れてテンションが上がる。
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警笛も忘れてはならない。路線に作業員がいるときや,鉄橋に近づいたとき,そしてホームで怪しげな動きをしているお客さんがいるときなどに「プァーン!」と鳴らしてやるのだ。普段耳にするのと同じ“あの音”が鳴るのが嬉しいところ。もちろん車種によって音が微妙に異なる。陸橋やベランダに「鉄道ファン」がいる時に鳴らすと「サービス警笛」となってボーナスがもらえる辺り,運転士さんの人間味が感じられてホンワカ和む。
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電車同士がすれ違う際は減光スイッチの出番だ。相手が眩しくないようにライトを暗くするという,思いやり機能である。要は車のロービームのようなものだが,電車の場合は例え昼間であっても,ライトを暗くしたままだと減点になってしまうため,すれちがった後は元に戻さなければならない。
ミッションによっては,これらの作業が入り乱れることもある。走行区間の変わり目が近づいてきたかと思えば,前から何両かの列車が走ってきて,さらに鉄橋まで見えてきた……なんてこともあり,あちらこちらと操作しなければならないが,その忙しさが運転士っぽくてたまらない。
そして,一番の腕の見せどころとなるのがホームへの停車だ。ただホームの近くであればいいというわけではなく,停車すべき位置からできるだけ誤差がないようにしなければならない。最大5mズレていても停車扱いとなるが,計測はなんとミリ単位なので,どこまでも精度を追求できる。ズレなく停車できたことを本作では「ゼロピタ」というが,実現への道は厳しいのだ。
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ここで重要になるのが列車の速度である。列車は,いわば巨大な鉄の塊。それだけに,ブレーキを掛けたからといってすぐに止まれるわけではない。急ブレーキやオーバーランにならないよう,計画的な操作が必要だ。だからといって,ブレーキを利かせすぎると停車位置の手前で止まってしまう。また,乗車率が高いとブレーキの利きも悪くなるため,注意が必要だ。「急ブレーキをかけない」「駅の構内で再度加速しない」「ブレーキをかけ直さない」といった運転ができれば,得点もアップするので心がけていこう。
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停車の様子はリプレイで再生される。スムーズかつ誤差も小さく停車できれば気持ちがいいし,リプレイも誇らしい気持ちで見られる。逆に,自分の電車が大幅にホーム端を行き過ぎたり,一度止まったはずがノロノロと再加速したりといったミスが再生されると,顔から火が出る位に恥ずかしい。現実のホームでこうした情景を目撃したとき「おいおい,あの運転士さん,やっちゃったよ」などと気楽に笑っていたのだが,今度は自分が笑われる側だ。これもゲームならではの体験といえるだろう。
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恥ずかしい思いをしないためにも,シリーズに慣れていない人は「運転士の道」モードから始めるといい。乗車率や時間帯が異なるミッションがたくさん用意されており,徐々にステップアップできるからだ。高評価を重ねていけば「シークレットミッション」が出現し,クリアできれば新たな電車や路線が解禁される。
電車ごとに操縦法が少し違うのが面白い。例えば新しい「E235系」なら左スティックを上下させるだけで加速とブレーキを操作できるが,少し昔の「205系」は左スティックを下で加速,右スティックを右でブレーキをかける……というように,操作が異なっているのだ。
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PS4版には「VRモード」が搭載されており,PS VRがあれば一部のミッションをVRでプレイできる。「電車でGO!!」の初期段階ではVRの使用も検討されたものの,年齢制限から通常の筐体が使用されることになったそうだから,幻のモードが復活したともいえるだろう。
こちらはVR空間に運転席が再現されており,あちこちを見回せる。足元をのぞき込むと謎の電話機があったり,天井を見上げれば「直通予備ブレーキ」なる小箱と赤いスイッチがあったりと,普段ではできないような発見がある。前述した指差確認も,戸閉灯や速度計といった計器に視線を向けてから[△]ボタンを押すというVR的な操作になっているのが面白い。
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VRモードで印象深いのが,運転中でも視線を動かせることだ。運転席の空間を意識でき,電車という乗り物を動かしている感覚が強まるのに加え,横を向いて車窓を流れる景色を堪能できるため,ほかの列車とすれ違うときは迫力がある。電車が駅に着いてブレーキを掛けたときなどは,ないはずのGが感じられ,本当に電車に乗っているかのように思えた。すべてのミッションをVRで遊べないのは残念だが,PS VRを持っている人であれば一見の価値はあるだろう。
![]() 首を横に巡らせれば,車窓を流れる景色を楽しめる |
![]() モードセレクト画面の左側には,アシスタントの二葉さんが佇んでおり,出発前に敬礼してくれる |
電車という,身近だけれど誰もが運転できるわけではない乗り物を題材とし,夢の乗務体験ができる本作。リアルに再現された沿線の景色や,実車そのままのアナウンスからは,電車にまつわる様々な思い出が蘇ってくる。そうした意味で本作は大人のゲームといえるだろう。
乗務中も,ありえないアクシデントが起こるわけではなく,ただひたすらに安全と快適を願い,少しでも誤差を減らしてのスムーズな停車を心がける。良い意味での“作業ゲー”であり,ストイックに記録を追求するのが好きな人にも刺さるはずだ。
これはシリーズ全般の特徴でもあるのだが,普段は何気なく乗っている電車も,運転士さんの職人芸があってこそ安全・快適に運行されている,という事実に改めて気づかされる。ダイヤ通りに電車が着くのはもちろんのこと,ホームの乗車位置から寸分違わぬ位置に停まるということがどれだけすごいことなのかが体験できる。電車に乗る時の気持ちも変わるのではないだろうか。
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なお,4Gamerではアーケード版「電車でGO!!」のスタッフにインタビューを行っている。運転台を目測で再現して筐体を作った話や,新しい路線が実装されると沿線のゲームセンターの売上が増えた話など,興味深いエピソードが盛りだくさんなので,ぜひ一読してほしい。
「電車でGO!! はしろう山手線」公式サイト
- 関連タイトル:
電車でGO!! はしろう山手線
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電車でGO!! はしろう山手線
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(C)TAITO CORPORATION 1996, 2020 ALL RIGHTS RESERVED.
(C)2020 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
JR 東日本商品化許諾申請中
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