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[インタビュー]アニメ第2期「アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】」,黒沢ともよさんが傷つきながらも前に進むアーミヤに寄せる思い
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印刷2023/11/03 07:00

インタビュー

[インタビュー]アニメ第2期「アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】」,黒沢ともよさんが傷つきながらも前に進むアーミヤに寄せる思い

 現在,「アークナイツ」iOS / Android)のTVアニメ第2期となる「アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】」が放送中だ。第1期は鉱石病感染者の悲壮な戦いを描き,衝撃のラストを迎えたが,第2期もまた見る者の心を揺さぶるようなストーリーと激しい戦いを展開している。
 今回,4Gamerでは主人公・アーミヤを演じる黒沢ともよさんの合同インタビューに参加する機会を得た。黒沢さんはアーミヤ,そして「アークナイツ」にどのように向き合っているのだろうか。

※11月5日14:00追記。初出時,甲斐田ゆきさんのお名前に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

黒沢ともよさん
画像集 No.001のサムネイル画像 / [インタビュー]アニメ第2期「アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】」,黒沢ともよさんが傷つきながらも前に進むアーミヤに寄せる思い

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 現在放送中の「アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】」は,Yostarがサービス中のスマホゲーム「アークナイツ」のアニメ第2期にあたる。新シーズンどのように作られているのか。そして制作陣にとって「アークナイツ」はどのような意味を持つ作品なのか。合同インタビューにて話を聞いた。

[2023/11/03 07:00]

「アークナイツ」アニメシリーズ公式サイト



アーミヤの解像度は上がり続けている


――本日はよろしくお願いします。まずは第2期でも引き続きアーミヤを演じるうえで,第1期から変化した部分はありますか。

黒沢さん:
 第1期は衝撃的な終わりをしていて,(アーミヤは)新たな課題と言うか,自分の中に問いを1つ立てた状態でエンディングを迎えた感じだったんです。第2期はその問いに対して思い悩むところから始まり,自分の中で方向性を見つけて試運転の期間を経て,生き方を模索する時期に入っていく状態だと思っています。
 ドクターに対しても気持ちの揺れ動くシーンがあったんですが,今は「理想的であろう」と努めるステージに入っていますね。

――ドクターに対する気持ちとは?

黒沢さん:
 アニメから見ている方には,アーミヤがドクターに対する気持ちは愛情にも見えるし,友情にも見えると思うんですが,その理由は第1話のドクター救出の前に,TVシリーズ2クール分くらいの物語が存在しているからなんです。作り手にしかシェアされていない,表に出ていない部分がこの作品の核にはあるので,それがミステリアスなところにつながってるんじゃないかと。いろんな側面を楽しんでもらいたいですね。

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――世界設定にこだわりがある作品ですが,どの程度の資料を渡されたのでしょうか。

黒沢さん:
 ゲームの収録のときは,アーミヤに関する資料は紙1枚しかありませんでした(笑)。好きなものはバイオリンみたいな(笑)。(アーミヤの情報は)ストーリーの中に入っているので,資料をいただいて読み解く形ですね。

――第2期の収録現場で印象的だったことを教えてください。

黒沢さん:
 今回はロドスはロドスといったように,チームごとに分かれて収録しています。ブレイズやフロストリーフ,メテオリーテといった第2期から登場するキャラクターがたくさんいるんですが,第1期のときは質問してくる側だった(ドクター役の)甲斐田ゆきさんが,新キャラクターの声優さんたちに対して「これはこういう意味でね」「こういうことがあったんだよ」と説明していたのが新鮮でした(笑)。

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 たまに私のところに「これで合ってるよね」と,確認しに来られたりもして。甲斐田さんはとても温かくて,「おかん!」みたいな方なんですよ(笑)。お菓子も「お食べ!」とたくさん持ってきてくれるんです。

――収録がチーム別ということは,チェン役の石上静香さんとは会っていないのでしょうか。

黒沢さん:
 第2期では石上さんには会ってないです(笑)。

――キャラクター同士が絡むシーンは多かったですよね。

黒沢さん:
 電話や通信で話をしていることが多かったですね。直接話すシーンはあまりなかったんじゃないかな。あちこちでバラバラに戦ってるんですよね。
 ブレイズの中原麻衣さん,フロストノヴァの高垣彩陽さん,ドクターの甲斐田さん,あとはメテオリーテ役の種田梨沙さん,ジェシカ役の広橋 涼さんは一緒だった回があります。今回はいろんなキャラが出てきて面白いですね。


アーミヤは個人と組織のCEO,2つの側面を持つ


――第1期では監督の世界観講座があったそうですね。それは第2期でも?

黒沢さん:
 「この人は時間がある限りしゃべる」ことに,みんな気づいてしまったんですよ(笑)。なので,第2期では制限時間をお伝えするという対策を取られてましたね(笑)。優先順位が高いものから,監督がお話ししてくれるようになりました。

――具体的にはどんなお話をされましたか。

黒沢さん:
 アーツの特性は生まれ持ったアイデンティティや,その出力も段階によって違うというお話がありました。人格も絡んでくるので,どういう環境で育ったのか,「今の日本で言うとこういう立場と同じ状況だよ」といった現代社会に置き換えて,私たちに分かりやすく教えてくれる時間でしたね。

――ゲームでもアーミヤを演じていますが,アニメシリーズを経て印象が変化した部分はありますか。

黒沢さん:
 最初にゲームの収録をしたときには,シナリオはありませんでした。「はぁ!」「やぁ!」のような掛け声や,「ケルシー先生が言ってました」「ロドスは通常航行モードです」という断片的なセリフだったので,何も分からなかったんです。
 「可愛げはあるけど可愛いだけじゃない,ロリでも成人でもない真ん中くらいの年齢の女の子」というオーダーで演じていたので,アニメの第1期で初めて「ああ,こういう子なんだ」と理解できました。印象の変化と言うよりも,どんどん解像度が上がっていく感じですね。
 第1期から第2期までの間に過去の話の共有が進んでいて,全貌が明らかになってきたことで,最近になって「こういう経緯でアーミヤはこうなってるんだ」と分かってきたんです。それまでは,分からないまま進んでいたというのが近いですかね(笑)。

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――黒沢さんにとって,アーミヤらしさとはどんなものでしょう。

黒沢さん:
 私は,理想論を掲げた過激派の正義だと思っています。みんなが共感しやすいタイプの正義ではないんですよ。聖書や神話に出てくる神様たちって,こうと決めたらそこに向かって突き進むけど,犠牲を厭わないですよね。
 アーミヤは犠牲を厭わないわけじゃないし,ミーシャのようなことがあったら人間らしく傷つくんですけど,普通だったら方向性を変えて改めるところでも変えない。
 人間らしい感情が運命みたいなレールの上に乗っかっちゃっているので,走るしかない。ずっといろいろ傷ついているんですけど,前に進まされてる感覚があります。「突き進め!」と過激な命令を出しますけど,本人の感情は違うところにあって,(心と言葉が)乖離しているところがあると思います。

――アーミヤは相反する感情を内に抱えたキャラクターということですね。どのように表現しているのでしょうか。

黒沢さん:
 「この子は絶対こうだ!」と思わずに,目的に向かって全精力を捧げるように演じています。監督がクレバーかつ情熱的な方なので,毎回明確に決められている道筋に従っていく感じです。

――キャラクター性が目的達成に向けられている感じでしょうか。

黒沢さん:
 アーミヤの中に反発し合うエネルギーがあって,組み合わせると無限のエネルギーが発生して,すべてをなぎ倒していく。そんな感じの子なんです。

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――監督から演技に関してディレクションはありましたか。

黒沢さん:
 ちょっとハスキーめ,キー高めの女の子というオーダーはありました。あとはCEOとして組織を背負ってることを判断材料に,「この場面は組織のために発言している」「ここは1人の少女として発言している」といったように一言ずつ,相手の言葉によって変わっていくというのがしっかりあっていいという話はありました。
 なので,本人の意見と会社のトップとしての意見がそれこそ反対になったり,重なったりもしています。支離滅裂に見えるけど,違う立場の発言を両方とも本気で言っていることが多いです。

――アークナイツはロドスやレユニオンといった組織だけでなく,さまざまな要素が絡み合っている作品ですからね。

黒沢さん:
 ロドスだけでなく,どこもそうなんですけど,自分の組織のほかに国家もあり,さらに鉱石病に感染しているかしていないか,仲のいい人が感染しているかいないかで,気持ちにグラデーションがあるんですよ。味方でも感染者と未感染者の意見が違っていたり,感染者同士だと敵でも共感できたりすることがあります。


フロストノヴァとの対峙


――第2期ではフロストノヴァとの対決が描かれますね。

黒沢さん:
 フロストノヴァはめちゃくちゃ強いんです! 昔,タルラと遭遇したときには,火の玉がドーンと来たので話してる暇もありませんでした。だから,あそこまで強い人とアーミヤが話すのは今回が初めてで,けっこう構えているというか,小国の長が大国の軍団長のような人に初めて会う瞬間のようなものです。何をされるか分からないけど,同じ人間だと思いたいみたいなところもあり,ぐっとお腹に力を入れてしゃべっています。

――確かに強敵との会話は初めてですね。

黒沢さん:
 そうなんですよ。メフィストくんとかWはよくしゃべってくれるんですけど(笑)。

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――最後に,第2期の全体的な印象をお願いします。

黒沢さん:
 第1期はミーシャのような普通の子が感染をして,最終的にはレユニオンに入って武力行使に関わるお話でした。そこに現代社会に生きる無力な私たちを重ね合わせて,没入していったんです。
 第2期は没入したことが前提になって話が進んでいくので,この世界のリアルがより当たり前として描かれていて,自分の価値観を真に問われるストーリーだと思います。
 第1期よりも「この子についてきてくださいね」という対象がいないので,自分の価値観が試される構成です。第2期の後半では手綱をパッと離されて,ここが正解だと思っていたところの視野が倍以上に広がるような感覚がありました。限りある話数の中で「その側面も見せるの?」と驚くような構成になっていて,全体としては監督が仕掛けた罠にまんまとハマった感じでしたね。
 それから,スーお嬢様の「知ってる? 命って大事なんだよ?」という台詞があるんですけど,この言葉が忘れられないシーズンだと思います。

――本日はありがとうございました。

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