連載
「そうだ アニメ,見よう」第62回は吉田秋生氏原作の「BANANA FISH」。24年の時を経て傑作コミックがアニメ化
2015年に公開された映画「海街diary」をはじめ,「桜の園」や「吉祥天女」など数多くの名作を世に送り出した漫画家・吉田秋生(よしだ あきみ)氏。昨年デビュー40周年を迎えた,吉田氏の代表作ともいえる作品が「BANANA FISH」だ。1985年から1994年まで「別冊少女コミック」で連載された本作は,少女系のレーベルに似合わないハードな内容が話題を呼び,当時大ヒットしたタイトルで,これまで映像化されていなかったのが不思議といえる作品である。
「そうだ アニメ,見よう」第62回は,吉田氏の原作コミックをアニメ化した「BANANA FISH」。制作をMAPPA,シリーズ構成を「ダーリン・イン・ザ・フランキス」(関連記事)の瀬古浩司氏,監督は「けいおん!」や「Free!」などの内海紘子氏が務めている。
「BANANA FISH」
ある夜,アッシュは銃撃で死にかけた男から,ある住所とともに「バナナフィッシュ」という言葉を伝えられる。それは廃人同然の兄・グリフィンがしばしば口にする言葉だった。アッシュは,その襲撃を指示したマフィアのボス・ゴルツィネ(CV:石塚運昇)の調査を開始する。
そんな折,アッシュはカメラマンのアシスタントとしてやってきた日本人の大学生・奥村英二(CV:野島健児)と出会う。お互い別の世界の人間だと意識する2人だったが,アッシュに恨みを抱くオーサー(CV:細谷佳正)の仲間に,英二とアッシュの仲間・スキップが連れ去られてしまう。2人を助けに向かったアッシュは,オーサーと手を組んだゴルツィネの部下・マービンに捕まるが,英二の機転で脱出。アッシュと英二は「バナナフィッシュ」を巡る陰謀に巻き込まれていく。
1994年に物語が完結して以来,舞台やラジオドラマ化はされても,映像化されることのなかった本作。1977年にデビューした吉田氏の40周年記念プロジェクトの一環ということと,本作の大ファンという担当プロデューサー・瓜生恭子氏の熱意で今回アニメーション化が実現したとのことだ。
物語は,アッシュと英二を中心に「バナナフィッシュ」という言葉の謎を追って,ジェットコースターのように目まぐるしく展開していく。その過程で,さまざまな苦難がアッシュに降りかかるが,彼はそれを持ち前の強靭な精神力で跳ね除ける。
しかし,アッシュも17歳の少年。身も心もボロボロになっていく彼を,英二は心の支えになろうと献身的に振舞う。ハリウッド映画のようなストーリー展開の裏で描かれる,2人の心の交流が物語の軸となっているのだ。
ちなみに,本作に登場する「バナナフィシュ」とは,「ライ麦畑でつかまえて」で知られるJ・D・サリンジャーの短編集「ナイン・ストーリーズ」に収録されている「バナナフィッシュにうってつけの日」という短編がモチーフになっている。
現代版にアレンジされたストーリー
筆者も当時,本作にハマったクチだが,今回のアニメ化には期待と不安が入り混じる複雑な心境だった。吉田氏のセンシティブなストーリー展開と,マフィアやストリートギャングといったアメリカの負の部分を取り上げた内容が,うまく映像化されるかどうか。祈るような気持ちで第1話を視聴したが,そんな不安は杞憂だったようだ。
ジェットコースターのような展開はそのまま。先の読めないストーリーが本作の醍醐味だ |
アニメ版のストーリーは,原作を準拠しながらも,舞台を現代に置き換えて大胆にアレンジ。グリフィンが従軍したのはベトナム戦争ではなく,イラク戦争となり,作中には原作にはなかったスマートフォンが登場している。そのほかにも複数の点が変更されているが,どれも違和感なく調理され,物語にぐいぐい引き込まれた。
服装も現代風のものにアレンジされている |
「この作品でBANANA FISHを知った新しいお客さんがお話に入りやすくするために,今の時代に合わせた変更を行って,現在の事実と齟齬がないようにしています」と瓜生氏。服装なども今風にアレンジされ,アッシュのデザインもフラワーコミックス版の中盤あたりのものが採用されているという。
現地取材でニューヨークをリアルに再現
舞台となるニューヨークの背景は,アッシュ達が生きている世界をリアルに描くため,スタッフが現地でロケハンして仕上げているとのこと。言われてみると,ダウンタウンの猥雑さやビルの壁面のペインティングなど,見逃してしまいがちな細かい部分がしっかりと作り込まれているのに驚かされる。原作版で登場するロケーションは20年以上も前のものなので,かなり様変わりしているようだが,アニメ版ならばファンが聖地巡礼で訪れても問題なさそう。
また,本作では外せない要素となるガンアクションも詳しい担当者が監修しているという。細部にまでこだわったスタッフによってアニメ版は生み出されているわけだ。
本作は,原作の全19巻分を2クール(全24話)で網羅すると明言されている。どのエピソードも削れない作品だけに,シナリオの取捨選択でスタッフはかなり頭を悩ませていることが容易に想像できるが,第8話まで進行した現在,原作をかなりテンポよく消化していると感じた。
ストーリーには,アッシュの仇敵とも言えるユーシス(CV:福山 潤)が登場し,暗躍を始めている。作品の性質上,ネタバレになるので多くは語れないが,今後彼が物語のキーとなってくるのは間違いない。アッシュと英二の運命がどうなるのか,今後も目が離せない展開となりそうだ。
なお,公式サイトでは第1〜6話をダイジェストで紹介する動画が公開されている。見逃してしまった人や興味があるという人は,こちらを視聴してみてはいかがだろう。
TVアニメ「BANANA FISH」公式サイト
TVアニメ「BANANA FISH」公式Twitter
放映データ |
---|
2018年7月〜 |
全24話 |
キャスト | |
---|---|
アッシュ・リンクス:内田雄馬 | 奥村英二:野島健児 |
マックス・ロボ:平田広明 | ディノ・F・ゴルツィネ:石塚運昇 |
ショーター・ウォン:古川 慎 | フレデリック・オーサー:細谷佳正 |
伊部俊一:川田紳司 | ユーシス:福山 潤 |
シン・スウ・リン:千葉翔也 | ラオ・イェン・タイ:斉藤壮馬 |
ブランカ:森川智之 |
スタッフ |
---|
原作:吉田秋生「BANANA FISH」(小学館 フラワーコミックス刊) |
監督:内海紘子 |
シリーズ構成:瀬古浩司 |
キャラクターデザイン:林 明美 |
総作画監督:山田 歩,鎌田晋平,岸 友洋 |
メインアニメーター:久木晃嗣 |
色彩設計:鎌田千賀子 |
美術監督:水谷利春 |
撮影監督:淡輪雄介 |
編集:奥田浩史 |
音楽:大沢伸一 |
音響監督:山田 陽 |
アニメーション制作:MAPPA |
■Blu-ray Disc BOX/DVD BOX情報
■BANANA FISH Blu-ray Disc BOX/DVD BOX vol.1
2018.10.24(wed) Release
価格/品番
完全生産限定版 Blu-ray:¥16,000+税 / ANZX-14871〜14873
完全生産限定版 DVD:¥14,000+税 / ANZB-14871〜14873
収録話
第1話〜第6話 収録
完全生産限定版特典
・特典 CD
・キャラクターデザイン・林明美描き下ろし三方背BOX&デジケース仕様
・BANANA FISH Journal(収録話数紹介)
・BANANA FISH Animation Guide vol.1
アニメの資料やインタビューを掲載した大ボリュームのブックレット。
・EIJI’s Snapshot(フォトカード)
・ジャケットイラストカード
※商品の仕様は予告なく変更になる場合がございます。
■BANANA FISH Blu-ray Disc BOX/DVD BOX vol.2
2018.12.26(wed) Release
■BANANA FISH Blu-ray Disc BOX/DVD BOX vol.3
2019.3.27(wed) Release
■BANANA FISH Blu-ray Disc BOX/DVD BOX vol.4
2019.5.29(wed) Release
※商品の仕様は予告なく変更になる場合がございます。
(C)吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH
- この記事のURL:
キーワード