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新たな観客参加企画も登場した「ファイナルファンタジー」の吹奏楽コンサートツアー「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO 2016」東京公演レポート
本稿では,5月7日に東京文化会館 大ホールにて行われた昼公演のレポートと,公演終了後に行われた作曲家の植松伸夫氏へのメディア合同インタビューの模様をお届けしよう。
「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO 2016 with Siena Wind Orchestra」公式サイト
演奏はシエナ・ウインド・オーケストラ。またセットリストは,3月23日に発売されたFFシリーズの吹奏楽アレンジCD「BRA★BRA FINAL FANTASY / BRASS de BRAVO 2」に収録された楽曲を中心に本編15曲,アンコール2曲が披露された。
●セットリスト
※『』内はメドレー構成楽曲名,【】内は出典元ゲームタイトル
<第一部>
1.FFバトル2メドレー
『バトル2』【FINAL FANTASY IV】〜『バトル2』【FINAL FANTASY V】〜『死闘』【FINAL FANTASY VI】〜『バトル2』【FINAL FANTASY IX】〜『勝利のファンファーレ』【FINAL FANTASY シリーズ】
2.星降る峡谷【FINAL FANTASY VII】
3.FFI/II/III フィールド・メドレー
『メイン・テーマ』【FINAL FANTASY I】〜『メインテーマ』【FINAL FANTASY II】〜『悠久の風』【FINAL FANTASY III】
4.守るべきもの【FINAL FANTASY IX】
5.FFモーグリのテーマ【FINAL FANTASY V】
※ボディーパーカッション:ティンパニ奏者 荻原松美
6.ゴールドソーサー【FINAL FANTASY VII】
7.FFメインテーマ【FINAL FANTASY シリーズ】
※リコーダー演奏(観客参加)
8.ハンターチャンス【FINAL FANTASY IX】
<第二部>
9.ビッグブリッヂの死闘【FINAL FANTASY V】
10.ファイナルファンタジーIV メインテーマ【FINAL FANTASY IV】
※トークコーナー「あなたにとっての『大切な一曲』は?」 ハープBGM:ハープ奏者 操美穂子
11.魔導士ケフカ【FINAL FANTASY VI】
12.ザナルカンドにて【FINAL FANTASY X】
13.Fragments of Memories【FINAL FANTASY VIII】
14.シーモアバトル【FINAL FANTASY X】
15.片翼の天使【FINAL FANTASY VII】
<アンコール>
16.The Man with the Machine Gun【FINAL FANTASY VIII】
17.マンボ de チョコボ【FINAL FANTASY V】
※みんなで吹こう BRA★BRA FINAL FANTASY(観客参加)
コンサート中は,演奏の合間に植松氏が各楽曲にまつわるエピソードなどを披露した。
最初に披露されたのは,今回のツアーが実現した経緯について。それによると植松氏は,前回ツアーの公演に観客として来場していたスクウェア・エニックスの代表取締役社長 松田洋祐氏に,本番中のステージ上から「もう1枚CDを作って,またツアーをやっていいですか?」と交渉したとのこと。もちろん返事が「OK」だったからこそ,こうして今年もツアーが行われているわけだが,植松氏は「大勢の観客がいる前じゃ断れないよね」と当時の松田氏の心境を笑いながら分析していた。
FFシリーズの楽曲を吹奏楽にアレンジするにあたっては,さまざまなチャレンジがなされている。今回のセットリストの中では,「FFI/II/III フィールド・メドレー」が木管楽器のアンサンブルを中心としたアレンジとなっていたのだが,植松氏は「ファミコンの電子音で作った曲だけど,木管楽器の温かみが意外とマッチする」と話していた。
「ゴールドソーサー」は,ステージ上のシエナ・ウインド・オーケストラのメンバー全員が,リコーダーを手に演奏を披露。このアレンジはCDにも収録されているのだが,全員が楽器をリコーダーに持ち替えたときは,さすがに客席もざわついていた。
ほかにも会場では,カスタネットによるリズムをアクセントにした「守るべきもの」や,ニューオーリンズ・ジャズ風の「魔導士ケフカ」などの新鮮なアレンジが楽しめた。
また植松氏は「ハンターチャンス」と「シーモアバトル」について,「吹奏楽にアレンジしたことで,より迫力が出た」と語っていた。
前回ツアー同様,観客が演奏に参加する企画も行われた。今回,新たに加わったのは,観客が着席したままリコーダーで「FFメインテーマ」の演奏に参加するというもの。ステージ上で,MCの山下まみさんと共にリコーダーを演奏した植松氏は,「小学校の授業で演奏したとき以来の緊張感」としつつも,「楽しかった。客席の皆さんの音もちゃんと聞こえました」と感想を述べていた。
そしてアンコールの最後を飾った「マンボ de チョコボ」には,観客がギターやリコーダー,タンバリン,木管楽器,金管楽器など自前の楽器を手に,ステージに上がって演奏に参加。また植松氏と山下さんもピアニカを手に参加したほか,前回ツアー同様,客席に残った観客も手拍子やマンボの「ウッ!」という掛け声で演奏に加わり,会場全体が大きく盛り上がった。
終演後には,植松氏へのメディア合同インタビューが行われた。以下にその模様をお届けしよう。
──まずは公演の感想をお願いします。
植松伸夫氏(以下,植松氏):
和歌山公演と大阪公演が盛り上がったので,東京公演もそうなるといいな,と思っていたのですが,無事に終わって良かったです。お客さんもいっぱいでビックリしました。と言うのも,スクエニさんから「チケットがあまり売れていない」と聞かされていたので(笑)。でも,これだけ入って,これだけ盛り上がってくれたから万々歳ですよ。
東京公演は6月にもありますので,飽きられないようにするにはどうすればいいのか,これから考えていかなければなりませんね。
──「ゴールドソーサー」のリコーダーによる演奏では,客席からどよめきが起こりましたが,あれは狙っていたのでしょうか。
植松氏:
CDでもリコーダーで演奏しているので,事前に聴いた方は分かっていたでしょう。でも和歌山も大阪もザワザワしていたので,「皆,CD買ってないんだな」と(笑)。
シエナの皆さんが自分の楽器を脇に置いて,それぞれリコーダーを手にしてくれるのは嬉しいですね。中には小学生以来,久しぶりにリコーダーに触ったという人もいます。しかも皆さん,プロフェッショナルな人達ですから,自分のへたなところは表にさらしたくないわけです。そういう方に無理にやってもらうというのもどうかとは思ったのですが,その一方では50人でリコーダーのアンサンブルをやるとどうなるのか,聴いてみたかったんですよね。
そういった個人的なわがままに付き合っていただいているのですが,リハーサルではシエナの皆さんも意外と楽しそうでしたね。楽屋でもリコーダーを練習していたりして。ツアーの終盤には,皆さんがリコーダーに慣れて,一味違った演奏が聴けるかもしれません。
──それでは,客席の皆さんにリコーダーを演奏してもらうという企画について感想を教えてください。
植松氏:
まだ認知されていないのか,それともやりたくないのか分からないんですけれども,予想より参加人数が少ないんですよ。それでもステージ上では聞こえてくるので,合奏している感じはすごくあります。
──演奏の最後もきちんとそろっていたので,皆さんきちんと指揮を見ているんだなと思いました。
植松氏:
実を言うと,僕はこれまで指揮を見ながら演奏した経験がないので,非常に新鮮でした。指揮者を務める栗田さんの腕の動きや表情で,彼の表現したいことが伝わってくるんですよ。
──今後も観客参加型の企画を続けていくのでしょうか。
植松氏:
参加型のコンサートには,いろんなやり方があると思います。またその一方では,お金を払ってシエナさんの演奏を聴きに来てくださる方が,僕やほかの観客が演奏するのをどう思っているんだろう,という疑問もあります。たぶん「素人の演奏を聴くために代金を払っているわけじゃない」という方もいらっしゃるでしょう。
今は素晴らしい演奏を聴く楽しさと,参加する楽しさを両立する方法を探っている段階ですね。少しずつやっているうちに,何か見えてくるんじゃないでしょうか。完成形がないので,やってみてダメだったら次を考えていくしかないんですよ。今回は参加型の曲を一つ追加してみましたが,評判が良くないようだったら次は削るかもしれません。
──前回のツアーでは,途中でセットリストが変わりましたが,今回もそういった予定はありますか。
植松氏:
1〜2曲変えようかとは考えています。でも6月の東京公演には間に合わないかも。
──まだCDに収録されていない曲を披露する可能性もありますか。
植松氏:
そうですね。どうせやるなら,という思いもありますし。
──今回のツアーでは,台湾でも公演しますよね。FFシリーズの吹奏楽コンサートでは初となる海外公演に向けて,意気込みをお願いします。
植松氏:
台湾ではこれまでにもオーケストラとピアノソロで1回ずつコンサートをやっているんですが,FFに限らずゲームに熱い地域なので,吹奏楽も喜んでもらえるんじゃないかという期待を持っています。ただコンサートは,フタを開けてみるまでどうなるか分かりませんからね。そもそも,台湾で吹奏楽がどういう位置付けなのか,僕自身分かっていませんし……。仮に吹奏楽を知らない,興味がないとしても,シエナさんがFFの楽曲を演奏すれば楽しさは伝わると思いますよ。
──ほかに演奏してみたい国や地域はありますか。
植松氏:
シエナさんもスタッフも,ハワイで演奏したいと言っています。完全に公私混同してますね(笑)。
──今後の展開に期待しています。ありがとうございました。
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Photo by Shinjiro Yamada
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