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新CPUコア「Zen」は2016年,広帯域のHBM DRAM採用GPUはまもなく! AMD,積極果敢な製品ロードマップを披露
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印刷2015/05/08 00:00

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新CPUコア「Zen」は2016年,広帯域のHBM DRAM採用GPUはまもなく! AMD,積極果敢な製品ロードマップを披露

AMDの新製品について説明するLisa Su氏(CEO,AMD)
 既報のとおり,北米時間2015年5月6日,AMDはニューヨークにて,投資家向け説明会「2015 Financial Analyst Day」を開催し,2015年から2016年にかけて展開を予定している製品の新情報を多数公開した。説明の対象が投資家向けということもあって,技術的に踏み込んだ内容はないものの,AMDが進もうとしている方向が見えてくる重要なイベントである。そこで本稿では,説明会の中から注目のポイントを取り上げて説明していこう。


新CPUアーキテクチャ「Zen」でSMTを初採用

クロックあたりの命令実行数を40%向上させる


 新情報の中でまず注目したいのは,2016年の製品投入が予告された新CPUマイクロアーキテクチャ「Zen」だ。概要は速報でもレポートしているが,2015年後半にリリース予定の次世代APU「Carrizo」(カリーゾ,開発コードネーム)で採用されるCPUコア「Excavator」(エクスカベータ,開発コードネーム)と比べて,クロックあたりの命令実行数(Instructions Per Clock,IPC)を40%も向上させるという処理性能の高さがウリの新アーキテクチャである。

 さて,Zenの概要を示したのが下に掲載したスライドだが,「Simultaneous Multithreading (SMT) for High Throughput」(高スループットのSMT)という一文を見て,「おや?」と思った人もいるのではなかろうか。SMTといえば,1つのCPUコアで2つ以上のスレッドを実行する仕組みのこと。つまり,Intelが「Hyper-Threading Technology」(以下,HTT)と呼んでいる技術だ。

Zenでは,AMDがこれまで採用してこなかったSMTが取り入れられるという。また,低レイテンシで広帯域を持つ新しいキャッシュシステムが採用されることも明らかになった
Ryzen

 Intelが初めてHTTを実装したCPUは,Netburstマイクロアーキテクチャを採用して2000年にリリースされた「Pentium 4」だ。それ以降,Intelのマイクロアーキテクチャは,一部を除いてHTTを採用し続けてきた。一方,ライバルたるAMDは,Pentium 4から15年の歳月が経過するまで,SMTを採用してこなかった。
 それもそのはず,AMDが投入したBulldozerマイクロアーキテクチャは,SMTを不要とする,あるいはSMTに対抗するアーキテクチャに位置づけられていたからである。

 そもそものBulldozerマイクロアーキテクチャは,比較的シンプルなパイプライン構成のCPUコアでコア数を増やしたうえで,それを高い動作クロックで駆動することで高性能を実現するという設計だった(関連記事)。AMDはこれを「Clustered Multi-Thread」(CMT)と呼んでいたことを覚えている人もいるだろう。
 Intelが採用していたSMTは,大規模なスーパースカラ(Superscalar,スーパースケーラともいう)型CPUコアが持つリソースを,複数スレッドの同時実行によって効率良く利用できることが利点なのだが,そんな大規模なスーパースカラ型プロセッサに対抗する技術こそ,AMDのCMTだったのである。
 だが,残念ながらBulldozerマイクロアーキテクチャは,成功したとはいいがたい。そこでAMDは新しいZenアーキテクチャを設計するにあたって,CMTを捨てSMTを採用する決断を下したのだろう。SMTの採用は,CMTの事実上の敗北宣言,といったら言い過ぎだろうか。

 さて,ここからは筆者の推測だが,SMTを採用することになったZenは,ある程度の規模を持つ,一般的なスーパースカラ型のマイクロアーキテクチャになるはずだ。「IPCを40%向上させる」という謳い文句も,規模の大きなマイクロアーキテクチャになることを予想させる。

Excavatorと比べて,ZenではIPCを40%も向上させるという。2016年以降も,Zenを改良した「Zen+」なるマイクロアーキテクチャが計画されているようだ
Ryzen

 ちなみに,AMDの将来技術について説明を担当した同社CTOのMark Papermaster氏は,Zenにおいて低レイテンシで広帯域の新しいキャッシュシステムを採用し,メモリサブシステムを一新すると話していた。詳細は説明されていないのだが,AMDのCEOであるLisa Su氏の説明では,DDR4メモリをメインメモリとして採用することだけは明言されている。Zenではメモリ関連にも注目しておく必要がありそうだ。

 さて,先述したように,Zenが採用される最初の製品となるAMD FXは,2016年の登場予定となっている。ただ,Su氏やPapermaster氏らは,リリース時期が2016年のいつ頃になるのかまでは言及していない。
 Zenの製造に使われるとされるFinFETプロセス――3次元的にトランジスタを形成するプロセス技術――は,AMDが製造を委託しているGLOBALFOUNDRIESがSamsung Electronicsと共同で2015年中に量産の前段階に入るとしている14nm FinFETプロセスのことだろう。この14nm FinFETプロセスが順調に立ち上がるのか,現時点ではなんともいえない。Zen版AMD FXのスケジュールが順調に進むかそれとも後にずれ込むかは,GLOBALFOUNDRIESのFinFETプロセスによるプロセッサの量産とリンクしてくるに違いない。

 なお,Zenを採用する最初の製品がAMD FXになることは間違いないようだが,今後,APU製品にもこれを採用するのかについては,今回明言されなかった。将来的にノートPC分野にもZenを投入することを匂わせる発言はいくつかあったが,筆者の予想どおりなら,Zenはある程度の規模を持つCPUコアになるはずで,ノートPC向けAPUに転用するには難しい面もあるだろう。
 そこで,マイクロアーキテクチャの進化が止まっていたAMD FXシリーズでZenの採用を先行させたうえで,将来のAPU製品にも広げていくという考えなのだろうか。そうなると,Zenを採用するAPU製品が登場するのは,2017年以降になるのかもしれない。


APUとAMD FXのプラットフォームを統合


 プラットフォームのロードマップについても,興味深い情報があった。
 まず,Zenベースの単体CPUであるAMD FXと,2016年に登場予定の第7世代デスクトップ向けAPUでは,「AM4」と呼ばれる共通のプラットフォームが採用されることが明らかにされた。
 また,ノートPC分野では,第6世代のノートPC向けAPUであるCarrizo,およびCarrizo-Lで「FP4」という新プラットフォームが登場する予定で,2016年予定に登場予定の第7世代ノートPC向けAPUにも継続して使われることも発表されている。第6〜第7世代APUで互換性のあるプラットフォームを維持することにより,PCメーカーはスムーズに新世代に移行できるとSu氏はアピールしていた。

ノートPCおよびデスクトップPC向けCPU・APUとプラットフォームのロードマップ
Ryzen

第6世代APUとなるCarrizoの説明スライド。ブランドを示すバッジに「6TH GENERATION」の文字が入っている点に注目してほしい
Ryzen

 一方で,AMDのARM関連プラットフォームとして2014年5月に発表された「Project SkyBridge」(開発コードネーム,以下,SkyBridge)については,今回まったく言及されなかった。
 AMDは当時,ARMとx86という2つのプロセッサアーキテクチャを融合させる「Ambidextrous Computing」(アンビデクストラス・コンピューティング)という構想を発表している。そして,ARMとx86の双方に対応するピン互換のプラットフォームとして発表されたのが,SkyBridgeだった。だが,今回のロードマップにSkyBridgeの名前はまったく出てこない。このタイミングで言及がない以上,SkyBridgeはAMDのロードマップから消えたということなのだろう。

これは2014年5月にSkyBridgeが発表されたときのロードマップ。2015年内に登場予定だったが,今回の説明会ではまったく言及されなかった
Ryzen


ARMコアのOpteron A1100は2015年第2四半期に投入

独自設計の64bit ARMコア「K12」は2017年に


 SkyBridgeの名はロードマップから消えてしまったものの,AMDがARMアーキテクチャ製品を諦めたというわけではない。まず,サーバー向けとされるARMコアベースのCPUで,開発コードネーム「Seattle」こと「Opteron A1100」については,2015年第2半期の市場投入があらためて告知されている。

AMD初となる64bit ARMベースのSoCであるOpteron A1100は,2015年第2半期にサーバー市場に向けて投入される
Ryzen

 また,独自設計の64bit ARMコアとして2016年にリリースが予告されていた開発コードネーム「K12」は,2017年リリースに先送りされたものの,開発は継続しているそうだ。

独自設計の64bit ARMベースCPUとなるK12は,2016年から2017年へと先送りされた
Ryzen

一方,2016年以降にはZenを採用したサーバー向けOpteronも投入される予定。説明会では「サーバー市場への再参入」が強調されており,ZenやOpteron A1100,K12を武器にデータセンター市場での躍進を狙っているようだ
Ryzen

 このように,ARMアーキテクチャに向けたAMDの意欲は衰えていない。ただ,AMDが持つ製品ポートフォリオを見直したうえで,ARMアーキテクチャへの関与を少し緩める一方で,競合他社に対して競争力を持つx86ベースのZenを先行させたのではないか,と筆者は推測している。


GCNアーキテクチャでは広帯域メモリ技術を採用


 CPUに関する話題が多かった一方で,GPU製品に関する話題はあまり出てこなかった。とはいえ,興味深い情報もいくつかあり,現行のGraphics Core Next(GCN)アーキテクチャを維持しつつアグレッシブな改良を加えると,AMDは明らかにしている。
 なかでも注目すべきは,「High Bandwidth Memory」(広帯域メモリ,以下 HBM)を採用した業界初のGPUを2015年中頃に投入すると予告したことだろう。

 HBMとは,積層したDRAMチップをGPUと同じパッケージ上に実装して,GPUとグラフィックスメモリの間を極めて広帯域なバスで結ぶ技術だ。
 AMDは,CGNアーキテクチャで512bitの広帯域メモリインタフェースを採用するなど,グラフィックスメモリのメモリバス帯域幅を重視してきた。そんなCGNアーキテクチャが目指してきた究極のメモリバス帯域幅を実現する技術が,HBMというわけだ。ライバルであるNVIDIAも,HBMと同じ技術を採用する次世代GPUコアの「Pascal」を開発中だが,こちらの登場は2016年の予定で,AMDのほうが先行している。
 AMDでは,現行のGDDR5メモリと比べて,HBMでは消費電力あたりの性能が3倍以上に達すると謳っており,登場すれば極めて高い競争力を持つGPUになりそうだ。

業界初のDRAM積層技術によるHBMを,2015年中頃に投入するGPU製品に採用する。消費電力あたりの性能はGDDR5の3倍に達するという
Ryzen

 一方,GCNアーキテクチャそのものは,今後も改良を続けながら維持される。2016年にはFinFETプロセス技術を採用することで,GCNアーキテクチャにおける消費電力あたりの性能を2倍に引き上げるとのことだ。当面は,新技術を投入しながらGCNアーキテクチャを維持していく方針を継続するようである。

GPUアーキテクチャの今後を説明したスライド。2016年にはFinFETの採用により,GCNアーキテクチャの性能を2倍に引き上げるという
Ryzen

 ちなみに,消費電力あたりの性能を重視する路線は,APU製品でも強調されている。長期的には,省電力技術と新しいプロセス技術の投入により,将来のAPUでは,現行のKaveriと比べ,消費電力あたりの性能で25倍の性能を達成するという目標も示されている。

APUにおける消費電力あたりの性能は,現行のKaveriと比べて2020年には25倍に達するという見通しを示したスライド
Ryzen

 APUをベースにした組み込み製品向けSoC(System-on-a-Chip)分野では,新しい話題の発表こそなかったものの,メーカーの注文に応じてカスタマイズ可能なAPUをSoCビジネスの軸に据えていくことが明らかにされた。カスタムAPUの分野ではPlayStation 4やXbox One用APUという成功例がすでにあることもあって,AMDは2014年以降,この事業を重要なビジネスと主張してきたが,それを今年から来年にかけては,組み込み向けSoC分野における中核事業として推進していくという。

 とくにPapermaster氏は,GPUとCPU,その他のハードウェアアクセラレーション技術,さらにはARMコアを用いたセキュリティ技術など,メーカーの注文に応じてカスタムSoCを作るために必要なすべての技術を,AMDが持っていると強調していた。

AMDはカスタムSoCに必要なすべての技術を持っており,応用分野に応じたカスタム化が可能であるとPapermaster氏は強調していた
Ryzen

 カスタムAPUを使った具体的な製品の計画は,メーカーが発表を許可しない限り,AMDが公にできないわけで具体性の乏しい話になってしまうのは致し方ないところだが,いずれにしても,AMDがAPUベースのカスタムSoCに本腰を入れていることは明確になったといえよう。


数は追わず,自社の強みを生かせる分野に注力していくAMD


 次世代のマイクロアーキテクチャであるZenの発表や,HBMを採用する新しいGPU製品の年内投入など重要なトピックが目白押しだった今回の説明会だが,最後に,AMDが今後のビジネスで注力していく分野と,逆に力を入れるべきではない分野をどう捉えているのかという,興味深い話題を示して本稿をまとめてみよう。

 Su氏は,AMDが注力していく分野として,同社の製品が強みをみせている据え置き型ゲーム機やカジノ向け業務用ゲーム機といったゲーム市場のほか,PCとグラフィックスカードに仮想現実対応デバイスを加えた伝統的なPC市場,そしてデータセンターやHPC,あるいはネットワークデバイスといったサーバー市場や組み込み機器市場といったジャンルを挙げていた。同社の強みを考えれば,納得できる選択といえよう。

AMDが注力していく市場を示したスライド。ちなみに,据え置き型ゲーム機(Game Consoles)やカジノ向けゲーム機(Casino Gaming),シンクライアント市場では現在シェア1位にあるとのこと
Ryzen

 一方,注力しない分野として列挙されている中で,IoT(Internet of Things)やスマートフォン,低価格タブレット端末といったモバイル市場が挙げられているのは興味深い。これらは急拡大した巨大な市場ではあるものの,ARM系SoCが非常に強いうえに,Intelが強力に推進している激戦区でもある。強力なライバルがひしめき合っている市場に戦いを挑むには,現在のAMDが抱える製品では強みを生かせないため,ビジネスとして得策ではないという判断だろう。

AMDが注力する分野(左)と,注力しない分野(右)を示したスライド。IoTやスマートフォン市場といった,現在の花形分野に背を向けているのが興味深い
Ryzen

 拡大する市場にあえて背を向けてでも,自社の強みを生かせる分野で利益をあげようという堅実なビジネス戦略が,今後のAMDが取るべき道である,というのがSu氏らAMD経営陣の判断というわけだ。その判断が功を奏するのか,今後のAMDにも引き続き注目していきたい。

2015 Financial Analyst Day 公式Webページ(英語)

  • 関連タイトル:

    Ryzen(Zen,Zen+)

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