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カプコンが描くeスポーツ事業の展望とは? 「ストリートファイター」を活用した今後の取り組みが語られた「eスポーツ記者説明会」をレポート
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印刷2019/07/16 16:25

イベント

カプコンが描くeスポーツ事業の展望とは? 「ストリートファイター」を活用した今後の取り組みが語られた「eスポーツ記者説明会」をレポート

 2019年7月12日,カプコンは,大阪のカプコン本社にて,同社のeスポーツへの取り組みや今後の戦略について説明する「eスポーツ記者説明会」を実施した。

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 本説明会には,カプコン常務執行役員 経営戦略室長 荒木重則氏と,「ストリートファイター」シリーズプロモーションプロデューサー兼,eスポーツ プロデューサーの綾野智章氏が登壇。同社が行うeスポーツの今後の取り組みを語った。

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荒木重則氏
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綾野智章氏

 説明会の冒頭では,カプコンが2018年度に行ったeスポーツの取り組みについて荒木氏が語った。カプコンはこれまで同社を代表するIPである「ストリートファイター」シリーズを活用したさまざまな取り組みを行っており,毎年強豪プレイヤーが戦う「カプコンプロツアー」や年末に開催される「カプコンカップ」のような個人戦の大会を実施している。そして,2018年度には新たな取り組みとしてチーム戦にフォーカスしたイベントを多数開催し,「ルーキーズキャラバン」と題した「ストリートファイター」の新人プレイヤー発掘を目的とした大会を全国6都市で行った。

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会場では2018年度にカプコンが取り組んだeスポーツイベントの模様も流れた
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 実際にこのルーキーズキャラバンで頭角を現した選手がその後テレビ番組や,東京ゲームショウ2018での「カプコンツアー ジャパンプレミア」で活躍し,最終的にカプコン主催のストリートファイターリーグのグランドファイナルで優勝するということも起きているそうで,荒木氏は新たな取り組みに手ごたえを感じているようだ。
 2019年度は引き続き6都市で「ルーキーズキャラバン」を実施するとともに,ストリートファイターシリーズの原点ともいえるアーケードにフォーカスした「アーケードリーグ」や,若年層に向けた「学生リーグ」を開催し,プロリーグへのすそ野を広げていく予定だという。

2019年度のストリートファイターリーグは,ルーキーズキャラバンに加えて,アーケードリーグや学生リーグを開催。優秀者はトライアウトやドラフト会議を通じて,JeSUのプロライセンス保有の選手と共にチームリーグを戦う。最終的には日米リーグの上位チームが集うグランドファイナルでの優勝を目指すことになる
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東京ゲームショウ2018で行われた「カプコンプロツアー ジャパンプレミア」は,「カプコンプロツアー アジアプレミア」へとリニューアルし,日本を含めたアジア5か国でのトーナメントが開催される
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 続いて,綾野氏からは,カプコンがeスポーツへの活動を通して見えてきた課題の提示や,インナーコミュニケーションツールとしてeスポーツを活用する提案がなされた。
 1991年に稼働し大ブームを巻き起こした「ストリートファイターII」は,翌年に国技館で全国大会が実施されるなど大きな盛り上がりを見せた。2000年代に入ってからも「ストリートファイターIV」を使用した全国大会が開催されており,2013年にはシリーズ15周年を記念し「カプコンカップ」を実施。翌年の2014年からは「カプコンプロツアー」としてリニューアルし,世界に認知されるeスポーツ大会のブランドを確立した。

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 このような活動が花開き,近年では各所から「我が町でもeスポーツのイベントをやりたい」と多数の問い合わせをもらうことになったのだという。綾野氏によると,eスポーツイベントは,ほぼ東京でやっているというイメージがあると思うが,地方でもeスポーツの活動をやっていきたいという声が多数存在するのだという。こういった声に応え,今後も地方に根差した草の根運動を支援していきたいと綾野氏は語った。

カプコンに寄せられたeスポーツに関する問い合わせ件数の分布。関東に続いて多いのが九州・沖縄,次いで関西,中部と続く
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 一方で,そういった取り組みを行ううえで見えてきた課題として,綾野氏は「イベント自体の健全性」「第三者から見た『カプコン公認』である視認性」の2点を挙げた。
 現在eスポーツ大会は,法律により簡単に賞金つき大会が開ける状態ではなく,大会を実施するうえでも各社が慎重に進めている状態なのが現状だという。カプコンとしても風営法や景表法といった法律を遵守し,イベントの健全性を担保することは重要だと見解を示した。
 さらに,イベントの健全性を担保するためには,“選手が安心安全に参加できるカプコンの公認イベントである”ということを誰からも視認できることが重要だという。今後は参入障壁の低い申請フォームを運用していくと共に,視認性・安全性の高い公認証を発行していくことで,これらの課題を解決していくと綾野氏は語った。

会場で語られた2つの課題と解決策。何が法に抵触するのかといった,カプコンの具体的な法解釈についての言及はここでは避けられた
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 また綾野氏からは,賞金つきの大会だけでなく,社内や企業間のインナーコミュニケーションツールとしてeスポーツを活用する提案もなされた。
 会場では,社内でのインナーコミュニケーションの事例として,カプコンで実際に行った社内大会の取り組みが紹介された。この大会には41チーム141名の社員が参加し,参加者からも「予想以上に熱くなった」と大盛況だったという。さらに,部署内でチームを組むだけにとどまらず,部署をまたいでチーム結成している人もいたそうで,大会を通じて社内のコミュニケーションも活性化したそうだ。

カプコン社内大会予選の様子
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 近年は若者の飲みニュケーションや社員旅行離れといった報道がなされているが,eスポーツは若者との親和性が非常に高く,体力的な年齢差も出にくく,ケガもしない。さらにゲーム機があれば実施できるため,社内の結束に効果的ではないかと綾野氏は見解を示した。カプコンとしても社内イベントとしてのeスポーツのノウハウを,さまざまな会社の福利厚生の選択肢の1つとして提供していきたいと考えているようだ。

社内大会だけでなく,企業間のコミュニケーションの活用事例として2019年3月に開催された「e-Sports Festival」の企業対抗戦についての事例も取り上げられた
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 荒木氏は,eスポーツの時代では,ゲームを売ったあとに,ゲームをプレイしてくれる“アマチュア”が生まれ,そこへパブリッシャやコミュニティがサポートを行うことによって,“プロゲーマー”が生まれる。そうすると,次に自身ではゲームを遊ばないがプロゲーマーを応援したいという“視聴者”が登場していくのだと語る。
 そして次のステージとして,プロチームやリーグが登場し,イベント興業や配信を行ううえでいろいろなスポンサーや地方自治体が参入するなど,ゲームの枠にとどまらない新しい形が生まれていくのだという。
 しかし,ただゲームを置いてプレイしてもらうというだけでは,eスポーツイベントは盛り上がらない。そこでカプコンは,集客の仕組みや,情報の拡散,イベントの様子の配信など,これまで培ってきたeスポーツイベントのノウハウをパッケージ化し提供していくことで,地方創生や雇用創出を促していきたいと荒木氏は語った。

 荒木氏は,「今のeスポーツの流れをただのブームとして捉えるのではなく,経済の発展に寄与する形にしていきたい」「eスポーツは見るものというだけはなく,やるものなので,ぜひ報道陣の皆さんも会社で大会を開いてみてほしい」とeスポーツの可能性をアピールし,説明会は終了した。

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 最後に,説明会終了後に行われた荒木氏,綾野氏への質疑応答の模様をお届けして,本稿の締めとさせていただこう。

――綾野さんがおっしゃられた参入障壁の低い申請フォームというのは,具体的にどういう形で運用していくのでしょうか。

綾野氏:
 今は個別に弊社のサポートに直接連絡をいただいているのですが,今後はWebフォームを作って,大会をしたいと思ったときに「ストリートファイターで大会がしたいです」といったことを入れていただくことで,我々が迅速に許諾するといった仕組みを考えています。
 さらに許諾が降りた大会については,番号を割り振った視認性の高い「認証マーク」を発行します。この番号を弊社のサイトで検索・照合できるようにする予定で,これによって誰でも「確かにカプコンが許諾した大会だ」ということが分かるようになります。

――eスポーツのインナーコミュニケーションでの活用についてお話がありましたが,このノウハウはビジネスとして提供していくということでしょうか。

綾野氏:
 ビジネスになるならそれに越したことはないですが,利益というよりは今は拡散していくフェイズなのではないかと思います。ぜひストリートファイターを活用してインナーコミュニケーションを活性させたいと思っている方は,お問い合わせいただければと思います。

荒木氏:
 まだ明確なガイドラインはできていないところがありますが,有償案件,無償案件,学内大会などの項目に分かれていて,それによってフローが変わってくることになると思います。
 弊社がサポートするところがどこまでなのか。例えば,社内大会に綾野を解説者として参加させることもできると思いますが,それは規模によって変わってくると思います。3月に開催した「e-Sports Festival」の企業対抗戦ぐらいになると,綾野にとどまらずさまざまな方がサポートしてくれると思います。

――地方創生の取り組みについて,2020年以降はどのような取り組みをしていく予定ですか。

荒木氏:
 確約できることはありませんが,今年夏に6都市で行う予定のルーキーズキャラバンを47都道府県で行えるようにするといったように,より拡大していくことは考えています。昨年の熊本市でのルーキーズキャラバンは,市役所と現地企業である再春館製薬所,そして弊社が三位一体となって実施し,最大の効果が得られました。
 また,今開催しているカプコンリーグがより地域に根付くようにする施策も検討しております。これについては追って,ご報告する形になるかと思います。

――eスポーツ事業が稼げるようにしていくためには,何が必要だと思われますか。また,カプコンの儲けの柱となるには,あと何年かかると思いますか。

荒木氏:
 まだ投資フェイズです。eスポーツ事業の収益要因はいくつかありますが,1つはスポンサー収入だと思います。見る人が増えれば増えるほど,収入が増加し,リーグや大会の収益性が改善します。2つめは放映権料です。こちらは年々上昇傾向にあります。また,eスポーツ事業を行うことでソフトの売り上げが増加するという効果も見え始めているため,これらを通じて収益に繋げていきたいと思います。ただし,今の投資の回収が何年後になるかというのは分かりません。
 現在は日本とアメリカをメインに事業を展開していますが,2019年のアジアプレミアをきっかけにほかの地域で「ストリートファイター」が2年後3年後に花開くという展開も作っていきたいと考えています。

――2019年度の取り組みとして,新人発掘や草の根運動を広げていく狙いを教えてください。

荒木氏:
 地域的な幅や年齢の幅,プレイヤーの活躍の場を拡大させるというところが理由です。私がこの仕事をしていて感じるんですが,「ストリートファイター」と聞いて,決裁権を持っている40代くらいの方は目をキラキラさせてくれますし,お話もスムーズに進むんですが,10代20代の若い方には,40代の方ほど響いていないというのが現状です。
 現在のeスポーツの勢いにあやかりながら,若い人たちにも「ストリートファイター」の素晴らしさを分かってもらうためには,ショッピングモールで実施しているルーキーズキャラバンのようにいろいろな人たちを巻き込みながら,プレイヤーとしての若い人たちと,視聴者としての若い人たちを生み出していくのが重要だと考えています。

「カプコン」公式サイト

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