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バーチャルリアリティの可能性を,SCE吉田修平氏とバンダイナムコ原田勝弘氏,そして“GOROman”こと近藤義仁氏が語る。「黒川塾(二十壱)」聴講レポート
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印刷2014/11/14 19:43

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バーチャルリアリティの可能性を,SCE吉田修平氏とバンダイナムコ原田勝弘氏,そして“GOROman”こと近藤義仁氏が語る。「黒川塾(二十壱)」聴講レポート

PlayStation VR本体
 2014年11月12日,トークイベント「エンタテインメントの未来を考える会 黒川塾(二十壱)」が,東京都内で開催された。このイベントシリーズは,メディアコンテンツ研究家の黒川文雄氏が,ゲストを招いて,ゲームを含むエンターテイメントのあるべき姿をポジティブに考えるというものである。

 今回のテーマは,「バーチャルリアリティの未来へ」。ソニー・コンピュータエンタテインメントの「Project Morpheus」(開発コードネーム)と,Oculus VRの「Rift」という2つの仮想現実対応ヘッドマウントディスプレイの話題を中心に,ソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデントである吉田修平氏と,バンダイナムコゲームスの原田勝弘氏,そしてエクシヴィの近藤義仁氏が,バーチャルリアリティ(VR)の未来や可能性についてトークセッションを行った。

メディアコンテンツ研究家 黒川文雄氏
PlayStation VR本体

ソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデント 吉田修平氏。Project Morpheusの開発メンバーでもある
PlayStation VR本体

バンダイナムコゲームス 第1事業本部 ゲームディレクター/チーフプロデューサー 原田勝弘氏。代表作は「鉄拳」シリーズなどで,Project Morpheus向けコンテンツ「サマーレッスン」もプロデュースしている
PlayStation VR本体

エクシヴィ 代表取締役社長 近藤義仁氏。Riftで楽しめる「Mikulus」「Miku Miku Akushu」などを手がけた。Riftのエヴァンジェリスト“GOROman”としても活躍中
PlayStation VR本体


 冒頭では,VR技術が日進月歩で進化を遂げている現状について,吉田氏が「かつて初代PlayStationの時代に,リアルタイム3Dグラフィックスが来る! と思ったときと同じような気持ち」「過去20年は3Dグラフィックスで楽しませてもらったが,これから20年はVRで楽しめる。今は楽しくてしょうがない」と心境を語った。
 また近藤氏は,VRが注目されるようになった理由として,かつては膨大な知識と高価な機材が必要だったが,今はUnityやUnreal Engineといったゲームエンジンが手軽に入手可能になるなど,個人レベルで扱える環境が整ってきていることを挙げた。

 なお,Project MorpheusとRiftはライバル関係にあるとされることもあるが,吉田氏は「技術者同士が互いに切磋琢磨するので,実はいいこと」と表現。また「Riftは個人での開発が比較的容易なので,VRを体験する機会が大きく広がり,また何ができるのか,何をすればいいのかといったノウハウの習熟度も高まる」と,同じVRを手がける立場として非常に助かっていることを説明した。
 さらに一介のベンチャー企業だったOculus VRが,2014年3月にFacebookに買収されたことによって一気に知名度を上げたことに触れ,結果として,VRそのものに「ソニーとFacebookが着目している最先端技術」という注目が集まったと語っていた。

 一方,原田氏は,昨今のVR技術の進歩は素晴らしいとしたうえで,「どんなに優れていても“一般化”がなされなければ意味がない」という持論を展開。すなわち,かつては「いいものを作れば売れる」という傾向があったが,最近では誰もが普通の会話の中で「あれ,すごいよね」と話題にするようなブレイクスルーがないと,なかなか広まらないというわけである。

 たとえば原田氏は,近藤氏の開発した「Miku Miku Akushu」を体験したとき,初音ミクと握手できることに大きな感動と衝撃を受けた一方で,「何年も先を行き過ぎている」とも感じたという。すなわち,一般化という観点から見たときに,あまりにも最先端を行き過ぎているため,一部の人にしか理解できないコアなニュースになってしまうのだ。

PlayStation VR本体

 そこで世間にVRとはどういうものかを知らしめる方法を考えた結果,原田氏の取ったアプローチが,VRで女子高生とコミュニケーションを図る「サマーレッスン」である。原田氏によれば,リアル寄りの女の子キャラクターを登場させたのは,コアな人から普通の人,老若男女誰もが話題にできることを重視したという。「それこそ“女の子の部屋に入れるらしい”というレベルでもいいから,多くの人が話題にするようなものにしたかった」と,原田氏は説明した。

 ちなみに「サマーレッスン」を体験した20代などの若い層からは,「なぜアニメ調のキャラクターにしなかったのか」「アニメの世界に入りたかった」という感想が寄せられるという。しかし,原田氏は「アニメは,観る人に知識や想像力を要求する高次な存在で,最初のニュースにするには早過ぎる」と語る。たとえば初音ミクのような人気キャラを使えば喜ぶ人がいるのは分かるが,年配の人の中にはボーカロイドを知らない人も多い。そうなると,「ボーカロイドとは」といったような余計な説明が多くなり過ぎて,肝心のVRに対する求心力が薄れてしまう可能性があるというのである。
 なお原田氏は,VRがきちんと世間に普及した暁には,ぜひアニメの世界を使ったVRにチャレンジしたいとしていた。

PlayStation VR本体

 そうした一般化については,吉田氏も同意する。実際,Project Morpheus用デモタイトルの一つである「The Deep」は体験者がサメの檻に閉じ込められるという設定で,ゲーム性は皆無に等しいが,そこには誰にでも体験できるようにする狙いがあったとのこと。「放っておいてもVRのゲームを作ってくださる開発者はいる。そこで私達はVRの広がりを示すため,敢えて誰でも楽しめる内容のものを作った」と吉田氏は話していた。

 さらに原田氏は「サマーレッスン」のプラットフォームにProject Morpheusを選択した理由について,PS4というコンシューマ機を介して,誰でも画一化したVR体験ができることを挙げる。
 そうした思想について,吉田氏は,これまでPlayStationが掲げてきた「誰にとっても同じユーザー体験を提供する」という方針と合致するとし,「とりあえずMorpheusを買ってきてPS4とつなげれば遊べるという扱いやすさを重視している」とした。

 一方,RiftのVR開発に関しては,PCスペックなど環境に左右される部分もあるが,原田氏と吉田氏はともに,日進月歩で常に最先端を行く技術や,誰でも開発環境を利用できることなどのメリットがあることを挙げた。
 また吉田氏は,モバイルの展開も今後の一般化には重要となると予想。それを受けて近藤氏は,Oculus VRとSamsung Electronicsが共同開発したスマートフォン連携型ヘッドマウントディスプレイ「GearVR」に言及した。吉田氏は,GearVRが「GALAXY Note4」の専用デバイスとなっていることに触れ,「Project Morpheusと同じく,誰もが同じ体験ができるところがいい」と感想を述べていた。

 近藤氏は,上記のように環境が整ってきた状況を生かし,VRの作り手を増やすというアプローチで,一般化を進めたいと語る。吉田氏も,VRの研究を20年来進めている人から学生まで,多くの人達がVR開発に関心を示しているとし,「世界的なインディーブームとも相まって,環境はパーフェクトになりつつある」と表現した。
 加えて吉田氏は,VRだと開発側も体験する側もまだ日が浅いため,アイデア次第という側面が強く,大規模開発では海外に後れを取っている日本のゲーム開発者も勝負できるチャンスがあるとした。

PlayStation VR本体

 VRを使ったコンテンツの例として,トークの焦点は「サマーレッスン」に移った。原田氏によると,実はこのコンテンツ,バンダイナムコゲームス社内ではなかなか理解されなかったという。氏は,将来のゲーム事情をにらんで「VRには今から取り組んでおくべき」と熱心に主張したが,コストの話になると「デバイスの普及率はどのくらいなのか」「普及率の低い中,先陣を切るのはリスクが高い」といった反応が多く,なかなか承認されなかったという。とくに副社長の鵜之澤 伸氏からは,「原田,部活でやれ」と言われたこともあったそうだ。
 そういった状況を受けて,「サマーレッスン」は,キャラクター一人,部屋一つというあまり予算をかけない形で,実質2か月程度という短い期間で開発された。しかし発表直後,世間から大きな反響があったことで,社内では“掌返し”が発生し,他社を巻き込んだものも含めてさまざまな企画が持ち上がっているという。

 もともと原田氏は,ゲーム業界へのアピールのために「サマーレッスン」を作ろうと考えていたとのことで,その狙いは見事に当たったわけだが,一般への反響がここまで大きくなるとは予想していなかったとのこと。ちなみに,TGS 2014への出展キャンセルは,3日間で150人程度しか体験できないことが判明し,会場で対応不可能になることが予想されたからだそうである。

 また女性とのコミュニケーションをモチーフにしていることで,議論を呼ぶこともある「サマーレッスン」だが,事前に異を唱えていた人であっても実際に体験すると絶賛することが多いという。その理由を原田氏は,「臨場感や他人との距離感を軸とした内容だから」と説明。とくに相手が自分を認識していることについて「緊張する」という感想を得ているが,その感覚を実現するには,男性よりも表情が豊かな女性のほうが望ましいのだという。
 ちなみに「鉄拳」シリーズの三島一八で試してみたこともあるそうだが,体験者が誰一人喜ばなかったとのこと。原田氏によると,強面のイケメンは表情が乏しくなってしまうことが理由らしい。

 もちろん原田氏は,「サマーレッスン」を踏まえてVRをゲームに活かしていくことを考えているが,第1段階では,ヘッドマウントディスプレイを装着する時間を考慮し,1プレイ15分程度の内容を想定しているという。ほかにもさまざまな企画があるが,「鉄拳」シリーズに関しては,「格闘家が目の前で暴れている光景は,恐ろしくて耐えられない」とのことである。

会場では,「サマーレッスン」のトレイラーが上映された
PlayStation VR本体 PlayStation VR本体

 またヘッドマウントディスプレイを使ったゲームプレイというと,3D酔いなども気になるところだが,吉田氏によれば数世代前と比較するとかなり改善されているという。今でもコンテンツや環境で3D酔いが生じることもあるが,技術の進歩とノウハウの蓄積により,将来的には長時間プレイしていても大丈夫になる見込みだそうだ。
 加えて原田氏も,さまざまな研究結果から,視線だけ傾けようとすると酔ってしまいがちだが,身体ごと傾けるようにすれば酔いにくくなると語っていた。

 ちなみに身体側の適応もあるとのことで,たとえば慣れている近藤氏くらいになると,数時間ヘッドマウントディスプレイを装着したままでも,まったく平気だという。しかし,一度酔ってしまうと,「VRは酔う」という先入観を持たれ,次からは絶対やらなくなってしまう人が多いことから,最初は,ぜひいい環境で体験してほしいと話していた。

 話題はVRのさまざまな応用にも及んだ。会場では,寝たきりになってしまった老人が,VRを使って海外などの綺麗な景色を体験したエピソードや,片眼が弱視であるため視界を立体的に捉えられない人が,Riftを使って見えないほうの眼に刺激を与えた結果,普通にしていても立体的に見えるようになったエピソードなどが披露された。また戦争によるトラウマを克服する研究も進んでいるという。

 なお,Project Morpheusの製品化は,吉田氏によると少し先とのこと。開発機としてはある程度完成しているが,実は「サマーレッスン」が発表されるまで,ゲーム会社からはほとんど反応がなかったという。吉田氏はTGS 2014でOculus VR,Samsung,そしてSCEがVRを出展したことにより,ようやく注目が集まったとし,近藤氏も「それ以前は,どんなに面白いと説明しても,ヘッドマウントディスプレイを被ってくれない人もいた」と振り返っていた。

 また原田氏は「サマーレッスン」が注目を浴びたことにより,個人的な“弊害”があったことを披露。それまで原田氏は,両親に自らの仕事を「『太鼓の達人』を作っている」と説明してきたそうなのだが,大手新聞など一般メディアに「サマーレッスン」が取り上げられ,自身の経歴が書かれたために,その嘘がバレてしまったそうだ。
 逆に言えば,原田氏の両親の世代にも「サマーレッスン」の存在が伝わったということでもあるので,これは狙っていた一般化に成功した証拠と言えるだろう。

 トークセッションの最後には,ゲストの3名から,今後のVRの展望に関するコメントが述べられた。本稿では,そのコメントを掲載して締めくくりとしよう。

近藤氏:
 VR自体は,過去何度かブームになりましたが,今回はついに本当のVRが来ているという直感があります。かつての巨大で高価だったコンピュータがPCとして普及したように,今はVRがパーソナル化するいい機会です。東京オリンピックが開催される2020年頃には,一家に1台,誰もがウォークマンのようにどこでもVRを楽しめるようになっているかもしれません。非常に楽しみです。

原田氏:
 僕は,カメラなどで自分の動きをリンクさせたアバターを使い,ネット上で皆で集まって話をしたり,テーブルゲームをしたりといったことを早く体験したいです。最終的にはゲームにつなげたいのですが,さまざまな人とリンクできるようになり,一緒にいろいろ体験できるようになったらすごいんじゃないかと思います。今のFPSですら,多くの人と世界観を共有すると興奮しますからね。何とか定年前に,そんな未来を実現したいです。

吉田氏:
 今,スマートフォンがそうであるように,いずれは当たり前にVRを使うようになると考えています。無論,そこに至るにはさまざまな障害を乗り越える必要があり,普及する道筋を考えなければなりません。
 現在,PCおよびモバイルではOculusさん,コンシューマ機ではSCEという二つの会社が揃っていることは,多くの人にリーチし,裾野を広げるという意味で非常にいい状況にあります。
 またゲームを作る技術としては,3DもVRも基本的に同じです。ですから,ハードルを越えている人が業界にはいっぱいいるわけですね。まずは,その人達にVRで新しいものを生み出すことができると実感していただきたいです。昨今はなかなか新しいジャンルのゲームは生まれません。しかしVRを使えば,「こんなのなかった」というゲームが出てくるだろうと私は楽観しています。かつての「DOOM」や「リッジレーサー」,あるいは「マリオ64」や「バーチャファイター」のような革新的なタイトルを生み出すチャンスです。それこそ「クラブ活動で作りました」でも構わないと思います。ぜひアイデアとパッションで進めてください。我々は可能な限りサポートします。

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