インタビュー
[インタビュー]10周年を迎えた「チェインクロニクル」のキーマンが語る,プレイヤーやキャラクターとの向き合い方
7月15日には,オフラインイベント「チェインクロニクル 10th Anniversary ユグド祭 Fanmeeting 2023」が開催され,最新情報などが発表されたばかりだが,今回,本作の総合ディレクターを務める松永 純氏にあらためて,チェンクロの10年と今後の展望を聞いた。
「チェインクロニクル 10th Anniversary ユグド祭 Fanmeeting 2023」レポート。公開生放送では新要素やコラボ情報を多数発表
セガは2023年7月15日,東京・秋葉原エンタスにて「チェインクロニクル」の10周年アニバーサリーイベント「チェインクロニクル 10th Anniversary ユグド祭 Fanmeeting 2023」を開催した。会場の様子と公開生放送をレポートする。
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作る側と遊ぶ側,双方が熱量を高め続けたチェンクロの10年
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。さっそくですが,チェンクロが10周年を迎えたことについて,率直な感想をお願いします。
本当に長かったなと感じています。よく,「長いようで短かった」という表現がありますが,まったくそんなことはなく,本当に長かったです(笑)。10年もサービスを続けられるなんて,自分でも想像していませんでした。これはひとえに,チェンクロを楽しみ続けてくださったファンの皆さん,そしてこの10年,チェンクロに関わってくださった本当に大勢の方達のおかげだと思っています。とにかく皆さんに,感謝をお伝えしたいです。
4Gamer:
この10年の間に,ハードウェアの高性能化も含め,スマホゲームを取り巻く環境も変化しました。そうした部分について,何か記憶に残る出来事などはありますか?
松永氏:
そういう意味では,チェンクロは10年前から基本的なスペックはずっと同じですから,ハードの変化にそれほど振り回されることもなかったように思います。
逆に言うと,ハイクオリティなグラフィックスでバリバリ動く最新のスマホゲームがたくさんある中で,チェンクロを10年間ずっと楽しんでくださっている方達がたくさんいるということが,何よりありがたいですね。
4Gamer:
例えば長期間運営しているタイトルだと,どうしてもOSのアップデートや古い端末の足切りによって,それまで使っていた環境では遊べなくなるプレイヤーも出てくると思いますが,そこも大きな枷にはなりませんでした?
松永氏:
振り返ってみると,配信開始当時はそういうこともありましたね。というのも,チェンクロは配信開始当時,バトルが3Dで動くという非常に要求スペックの高いゲームだったんです。それもあって,アップデートのタイミングで端末の足切りが発生したこともあります。
でもある時期からは,見た目をリッチにしていくより,コンテンツのボリュームを増やそうという方針で開発を進め,要求スペックをさほど上げることなくここまで来ました。結果,同じ端末で長く遊び続けている方も大勢いらっしゃると捉えています。長く遊んでいただけるということは,習慣化されているということですから,ご自身が長く親しんでいる端末を使い続けられるかどうかは,かなり大事なことなんですよね。
4Gamer:
実際,配信開始当時からチェンクロをプレイし続けているとプレイヤーは,どれぐらいいるのでしょう?
松永氏:
先日,10周年記念のオフラインイベントを開催したときに,連続ログイン日数を見せてくださった方が複数いらっしゃいました。なんと,3500日以上連続ログインされている方が何人もいらっしゃったんですよ。
4Gamer:
すごい……!
松永氏:
アリーナがあるとか,日課になるタイプのエンドコンテンツがあるゲームではないので,そのログインは純粋にゲームに対する愛着から来てるものです。なので本当にありがたいです。
メンテナンスをしたときに,こちらの都合で連続ログインが途切れてしまうケースも発生したんですが,サーバー担当者が1人1人のプレイヤーに対応して,途切れない形に調整するということもやってきました。
チーム全員が,皆さんに毎日ログインしてもらえていることのありがたさを重々理解して,運営してきたつもりです。
4Gamer:
プレイヤーの比率としては,何年も遊び続けている方のほうが多いのでしょうか。
松永氏:
そうですね。オフラインイベントでは,直接感謝を伝えられる機会を設けさせてもらって,来場した皆さんとお話しもしたんですが,初期から遊んでくださる方が8割くらいと圧倒的に多かったですね。その一方では,最近始めたばかりという方もけっこう来てくださいました。あとは,一時期止めていたけれども再び遊び始めたという方もいらっしゃって,そういった皆さんに向けてあらためてチェンクロを広げていきたいなとすごく感じましたね。
4Gamer:
プレイヤーと直接話してみて,印象に残ったことはありましたか。
松永氏:
第2部や第3部から始めてくださった方が,けっこういて,そうすると「第2部からなんですけど……」なんてちょっと申し訳なさそうに話してくれるのですが,「いやいや,それでも9年も前からですよ!」と(笑)。
あとその長い期間の間に,プレイヤー同士でご結婚された方や,生まれた子供に遊ばせてくれている方なんかもいて。皆さん,楽しそうに話してくれるのが本当に嬉しかったです。
4Gamer:
そのゲームに対する熱量が高くないと,オフラインイベントにまではなかなか足を運べないと思うんですが,10年経ってもその熱を維持している人達がたくさんいるというのはすごいことですよね。
松永氏:
それは外部の皆さんを含めて,開発運営に携わる関係者全員がひとつひとつコンテンツを届けてきたことの結果だと思います。そしてそれ以上に,プレイヤーの皆さんに熱を盛り上げ続けていただけているからこそだと捉えています。作る側と遊ぶ側の双方で,ずっと熱を高め合ってきた感じですね。チェンクロという世界を巡って,一緒にキャッチボールをしてきたというか。
4Gamer:
冒頭のお話だと,10年前はこんなことになるとは想像していなかったわけですよね。
松永氏:
たまに話すんですが,私は配信開始当初,第2部すら考えてなかったんですよね。でも配信開始から間もなく,当時のプロデューサーが「10年を目指す」と言ってしまって。それに対して私は「できもしないことをプレイヤーの皆さんと約束しないでくれ!」とすごく怒った記憶があって。
4Gamer:
裏切りたくないからこそ,慎重になりたいところですよね。
松永氏:
そうなんですよ。例えば,対戦ゲームや落ちものパズルなど,長くサービスしやすいゲーム性というのはあると思うんですよ。対戦や協力など,人との関わりによって長く楽しめたり,ランダムの面白さがベースにあったりすると,繰り返し遊んでも飽きませんから。「パズル&ドラゴンズ」なんかは,まさにそうですよね。
4Gamer:
一方,チェンクロはそういうゲームではないと。
松永氏:
ストーリーRPGですからね。確かにバトルにはアクション性があるけれど,ランダムでいろんなパターンが遊べるものではない。そうなると長く楽しんでもらうには,ストーリーやキャラクター,クエストなどを毎日のように更新し続けないと飽きられてしまうわけです。更新ペースで言うなら週刊漫画の連載と同じか,それ以上のペースで続けなければなりません。そして,毎日小さな変化をつけているだけでは足りなくて,どこかで大きな変化もつけないと飽きられてしまう。それが前提なのに「10年とか何言ってるの?」と(笑)。
4Gamer:
でも結果として,こうして10年続きました。
松永氏:
ストーリーRPGという形だからこそ,長く続いてほしいと共感を示してくれたプレイヤーの方がたくさんいらっしゃったからですね。「じゃあ10年に向けて頑張ろう」と,私含めチーム一同が熱を持って注力できるようになりました。
4Gamer:
つまり,プレイヤーの声が力になったと。
松永氏:
そうですね。やはりこの10年,順調だったということはまったくなく,本当に苦労した人,大変な目に遭った人がたくさんいるんですが。それも,すべてこうして10周年を迎えたことで報われたと思います。ただ,オフラインイベントでは,「次は20年を目指してください」と結構言われて。「20年か……」と思ってしまいました(笑)。
4Gamer:
なかなか20年は断言できませんよね。
松永氏:
「やります」とは言えませんでしたが,「頑張ります」とはお伝えしたので,そこは力の限り実現を目指していきます。
1000人のキャラクターキャラクターを掘り下げて描かれるのはチェンクロだけ
4Gamer:
この10年間を振り返って,チェンクロを続けるにあたって大きな変化やターニングポイントなどはありましたか?
松永氏:
10年間,すごく濃い運営と言うか,すごく濃い時間をプレイヤーの皆さんと一緒に過ごした結果,ゲーム自体が比類なき世界観を持つゲームに成長したなと感じています。今回,10周年記念でキャラクターの人気投票を行ったんですが,今のチェンクロにはバージョン違いを含めると1500くらいキャラクターがいるんですね。バージョン違いを除外して,本当の意味での「キャラ」として数えても1000人近くいる。そのキャラクター一人一人に,「パッと見はこうだけど,掘り下げると実はこういう側面があって」とか「昔こういう話があったので,こういう時思わず言っちゃうんだよ」といったバックボーンやドラマがきちんとあるんです。
4Gamer:
1000人分も!
松永氏:
一般的なゲームだと,キャラの掘下げというと,10〜20人くらいのキャラクターに対してされるものだと思うんですが,1000人のキャラクターを深く掘り下げているゲームは,世界でもおそらくチェンクロだけではないかと自負しています。さらに言えば,ゲーム以外のコンテンツを含めても,チェンクロだけなんじゃないかと。
4Gamer:
10年間で,世界に類を見ないコンテンツに成長したわけですね。
松永氏:
これこそが,プレイヤーの皆さんと一緒にここまで来られた成果だと思います。
4Gamer:
最初から,全部のキャラクターを掘り下げようと考えていたのでしょうか。
松永氏:
まったく考えていませんでした。繰り返しになりますが,第2部すら作ろうとは考えていませんでしたからね。でも,とにかく走り続けてストーリーを更新していかないと,皆さんにずっと楽しんでもらえません。10年続けるためには,すごいペースでストーリーを出していく必要があったわけです。そして,そうやって続けていくうちに,5〜6年過ぎたあたりから,すごく面白い変化が見られたんです。
4Gamer:
それはどんな変化でしょう。
松永氏:
例えば,このキャラクターの新しいバージョンを出す,あるいはこのイベントにこのキャラクターを出そうと決めるとします。昔だったら,このキャラクターを出すと決めたら,そのキャラクターをどう描くかはライティングする人間が判断したり,それでOKかどうかを私が判断したりしていたんです。
4Gamer:
そうなりますよね。
松永氏:
ところが5〜6年過ぎたぐらいから,「いや,このキャラクターはそうじゃない」みたいな意見が出るようになって。もう私やライティングする人間の判断じゃ決まらないんですよ。「このキャラクターは,昔こういうことを言っていたわけだから,こんな行動をしたらダメ」といったような,すごく細かい制約が全キャラクターに対して生まれていて,それと照らし合わせたり,プレイヤーの皆さんの反響を反映したりしながらキャラクターを掘り下げる必要が出てきたんです。そして,それを繰り返し10年が経って,私達がキャラクターを考えて物語を作るのではなく,このキャラクターが動きやすいのはどんな物語かを考えるようになりました。
4Gamer:
キャラクターが自立してしまった,と。
松永氏:
そうなんです。「このキャラクターだったら,こうしなきゃダメ」「こういう立ち回りを,このキャラクターならするはず」という事実が先にあって,そこに対してキャラクターに活躍してもらえる場をどう考えていくか。よく作家さんや漫画家さんが話す「キャラクターが勝手に動く」という状況。あれがチェンクロでは全キャラクターに対して起きているんです。それぞれのキャラクターらしさは,プレイヤーの皆さんが面白いと思ってくださったか,楽しんでくださったかが大きな判断の軸になっているので,皆さんと一緒に1000人を育ててきたということですよね。これもまた,チェンクロを10年続けてきたからこそだと思います。
4Gamer:
発端は「整合性が求められるから」といったような理由だとは思いますが,すごく面白い傾向ですね。
松永氏:
私はずっとメインストーリーの監修をしているので,「このキャラクターが,もう少しこういう形で動いてほしい」みたいなリクエストを出すんですけど,このキャラクターの過去を考えるとその行動はできないとか,それは前回ユーザーからちょっと違うという反響がありました,と言われたら「分かった」とすぐ諦めています(笑)。
逆に,「このキャラだったら,ここで飛び出さないと嘘じゃない?」みたいな監修を返すと,「たしかにそうですね」とスタッフも返してくれて。
そうやって皆がキャラクターを見つめながら制作を続けた結果,1人1人のキャラクターがあたかも生きているような存在に成長してくれたなぁと。
4Gamer:
きっとそのあたりが,チェンクロならではの魅力につながっているんでしょうね。
松永氏:
そうですね。それをおそらく今遊んでいる方達は常に感じ続けてくださっているし,これから遊んでくれる方にも「キャラクターがたくさんいるのに,それぞれしっかりキャラが立っているゲームだな」と思っていただけるんじゃないかなと。
元々チェンクロを作りたかった理由は,「生きているキャラクターが活躍するRPGを作りたい」ということだったんですよ。でも当時自分が思い描いた“生きているキャラクター”よりも,この10年でずっと“生きている”ところまで来たと感じています。
4Gamer:
なぜ,そう考えたのでしょう。
松永氏:
当時のスマホゲームの多くは,キャラクターがカードやユニットとして使われていて,イラストとパラメータがあって,申し訳程度に設定があるくらいのタイトルが多かったんです。そうではなく,ストーリー性やキャラクター性を前面に打ち出すことで,キャラクターがキャラとして活躍できるゲームを作ろうというところから,チェンクロの企画がスタートしたんです。なので生きているキャラクターというのが,大きな目標でした。
4Gamer:
それが今では,別の意味で生きているキャラクターに育った……と。
松永氏:
はい。私達が考えた「生きているキャラクター」ではなく,10年間,関わる人全員で育てていったからこそ,誰のものでもない「生きているキャラクター」になったなと。それって本当にすごいことだと思うんです。
走り抜けた第1部と第2部,開発体制が変わった第3部,キャラが動き出した第4部
4Gamer:
それでは,この機会にぜひ,チェンクロの第1部から第4部までの振り返りをお願いします。
松永氏:
第1部は,「スマホゲームで,ストーリーRPGをしっかり感じてほしい」「スマホゲーム特有のキャラクターをたくさん集める楽しさを,きちんと物語に紐付けて見せたい」「キャラクター一人一人に対し,しっかりそのキャラクターらしさを感じてほしい」といったテーマを掲げて企画開発を進めて,それらがきちんと皆さんに伝わって楽しんでいただけたかなと捉えています。物語も,勇者となって魔王を打倒するという超王道の物語ながら,その熱さをしっかりと味わってもらえたなと思います。
4Gamer:
第2部はいかがでしたか?
松永氏:
第2部は,第1部で喜んでいただけた内容を,さらに拡張する方向で取り組みました。正統な続編と言うか,パワーアップ版という感覚で作ってます。
第1部が完結したとき,プレイヤーの皆さんから「しっかりクライマックスやエンディングがあって感動しました」という感想をいただけたんですね。当たり前のことなんですが,確かに当時までのスマホゲームでは珍しかったかもしれない。そこで,第2部ではもっともっと感動してもらえるものを目指そうと,物語の比重がさらに強くなりました。
4Gamer:
第1部〜第2部は,今振り返ってみると期間的には短いですよね。
松永氏:
そのあとの第3部や第4部と比べると,あっという間に駆け抜けた感がありますね。第1部が9か月くらい,第2部は2年くらいで終わっているので,倍の期間がかかっているんですが。10年という期間で考えると,やっぱり早いですよね。
ちなみに第2部は,新大陸という形でいろんな大陸を巡っていくストーリーで,途中で大陸を増やして当初の計画よりも長く展開できるように設計していたので,もう1年くらい第2部を続けることもできたんです。でも結局,予定どおり完結させました。今振り返ると,第2部って勢いで作っていたところが大きいなと。
4Gamer:
勢い,ですか。
松永氏:
第1部が完結したとき,プレイヤーの皆さんから「第2部をぜひやってほしい」とたくさんの声を頂いて。会社も「ぜひやって」という感じだったので,我々は「じゃあ,やりましょう」と。でもそのタイミングからスタートしたので「第2部はどうする? 何やる?」という最初の相談が,第2部が始まる3か月前とかなんですよね。
そんなスピード感の中で,「物語のゴールはこうしよう」と決めたので,熱量が途切れる前に,そこまで走り切るしかなかったようにも感じます。
4Gamer:
間延びさせるより,ちゃんと熱量が高いままに終わらせよう,と。
松永氏:
はい。第2部は,各大陸を通して出てくる謎の敵や,ヒロインの家族との再会など,進むごとに明かされる謎なども分かりやすく入れていって,それが明かされるワクワクも,運営を盛り上げる大きな力になったので,走り切ったことはひとつの正解だったなと思います。
そして,クライマックスとエンディングの物語に一番たくさんの反響をいただけたのも第2部だったと思います。全部読み切れないくらいたくさんの感想をいただきました。第1部から2部の物語は,今またプレイしてもらっても,しっかりその熱さを感じてもらえると思います。
4Gamer:
では,第3部はいかがですか。
松永氏:
第3部では,大きくやり方を変えました。主人公が変わって,物語も五つのメインストーリーを用意して,それが順に更新されていくという形式を採用しました。これには賛否あったんですが,第2部が終わったときに,我々の中では「もうこれ以上,同じ主人公が冒険の場所を変えて広がっていくような物語は描けない」というところまで行っていたんですね。ひとつの大陸での冒険から,海を越えて世界中を巡り切って。真の魔王的なものも倒して,じゃあ次は? という。宇宙編や異次元編みたいな話もあったんですけど,どっちにしても「また広がったよ」といった形にしかならないだろうと。
4Gamer:
それで5人の主人公と,彼らの物語を描く形にしたと。
松永氏:
少し時が流れて……という時間の経過を入れることで既存キャラクターの成長を見せたり,新しいキャラクターを出したりして,少し流れを置き換える必要がある時期だったと思います。また,主人公を5人にしたのは,それまでの主人公を超えるキャラクターはおそらく作れないと考えていたからです。ひとりでは無理だから5人がかりで対抗しようという。
あとは開発体制の問題もありましたね。第1部と第2部を走り抜けたことで限界が来て,倒れるメンバーも出ていたので,同じ体制,同じペースで走り続けるのは難しかった。そこで第3部では,チェンクロという一つのゲームの中でラインをいくつか立てて,並行して開発を進めて交互に実装していくという形でやらせてもらいました。
4Gamer:
賛否あったとのことですが,具体的にはどんな声があったのでしょう。
松永氏:
やはり当初は,メインのキャラクターが変わることに対して懸念の声やネガティブな反応をいただきました。しかし,成長したメインキャラクター達が新しい主人公を助ける形で登場するという展開にして,そういうところでプレイヤーの皆さんにも一定納得していただけたのかなと思います。第1部,第2部のように主人公がただ真っすぐに旅をしていくだけの手法では無理だったキャラクターの広げ方も実現できました。結果として,さきほど話した「キャラが深まった」のは,この第3部という場があったおかげだとも思っています。
4Gamer:
それでは,第4部についても振り返りをお願いします。
松永氏:
第4部では,主役を第1部と第2部の主人公に戻して,立て付けは第2部に近い感じです。新大陸ならぬ新世界──ユグドという世界を超えた場所で冒険をしていくというストーリーラインに戻しています。これは,第3部を経たからこそ,以前のやり方があらためて新鮮に見えるんじゃないかというところを狙っています。
4Gamer:
立て付けが近いと言うことは,作り方も第2部に近いのでしょうか。
松永氏:
そうですね。ですが,圧倒的に違うのは先ほどお話ししたとおり,第4部ではキャラクターが自らの意思で動くようになっているんです。第2部だと,新しい大陸があって新しいいろんなキャラクターがいて,それとどう出会うかみたいなところをドラマとして描くことを一番大事にしていました。それに対して第4部は,主人公以外も仲間のキャラクターがたくさんいて,彼らが新しい世界で一緒に冒険するとなったら,きっとこう動くだろうという部分がもう明確にあるので,登場させるキャラクター達が勝手に動くことに期待してストーリーが作られています。
4Gamer:
チェンクロは運営型のスマホゲームでありながらストーリードリブンなタイトルですよね。こういうタイトルを開発し続け,プレイヤーも楽しみ続けているというのは,なかなか希有な例だと思います。
松永氏:
それは本当に思います。作り続けるのは大変ですけど,付いてきてくださっているのもすごいです。たぶん,ふつうのRPGの続編を遊ぶ感覚とは違うと思うんですよ。続編ってどうしても「別の作品」という見え方ですから,続編の同じキャラクターってだいぶ時間の空いた「別のキャラ」という印象もあるのではと思うんです。
ですがチェンクロの場合,「最近,先輩感が板に付いてきたな」「あんなにツンツンしてたのに最近はデレるのが早い」」とか,キャラクター達をすごく近い存在として──それこそ長く見てきたタレントさんの成長を話すように話をしてくださっているように感じてくれていて,これはずっと更新し続けているからこその,すごく特殊で特別なことなんだろうなと捉えています。
4Gamer:
それこそキャラクター達がプレイヤーの人生と併走しているわけですよね。
松永氏:
「併走している」はいい表現ですね。ありがとうございます。実際,オフイベで話した時に「チェンクロは人生です」とおっしゃってくださる方が何人もいらっしゃいました。毎日ログインしてくださっているということはもちろんですが,各コンテンツでキャラクター達が並走している感覚がきちんとあったからこそ,そこまで言ってくださるのかなと思います。
4Gamer:
「人生」とまで言われてしまうと,今後の責任が重大になってきますね。
松永氏:
そうですね,皆さんから「20年」と何回も言われましたし。毎年イベントのたびに声優の石田 彰さんがビデオメッセージをくださるんですが,先日のメッセージでは「15年行きましょう」と言ってくださっていて。プレイヤーの皆さんもキャストの皆さんも,この先を望んでくださっているので,頑張らないといけないですね。
10年を経て,さらに多くの人に向けてアピールしていく
4Gamer:
それでは今後の展開をあらためて教えてください。
松永氏:
先日のオフラインイベントでもお話ししましたが,今後1年間にわたって,三つの方針を掲げていきます。
一つめが「もっと皆で楽しめる」というものです。もともとソロを強く意識して作ったので,マルチプレイみたいなモードはあえて入れていません。また,皆さんが「PvPは止めてくれよ」と思っていらっしゃるのも重々承知しています。一方で10年も経つとフレンド同士で知っている,お世話になっているプレイヤーもたくさんいる状況になっているので,薄いコミュニケーションみたいなものは,もう少しあったほうがいいんじゃないかと考えたんですよね。「この人,今もやっていて,こういう感じなんだ」といった,近況を知れるくらいの。オフラインイベントにしてもそうですし,今度のアップデートでは「称号システム」という形で,一言メッセージの一歩進んだようなものを実装します。
二つめは「遊びやすく」という方針で,読んで字のごとく,毎年やっていることではあるんですが,あらためて遊びやすくする改修をやっていきます。
4Gamer:
三つめはどのようなコンセプトでしょう。
松永氏:
「広げる」です。お話ししてきたとおりチェンクロは10年経ってすごいコンテンツになったので,これをあらためて幅広い層に向けて知っていただく機会を作っていきたいと考えています。現在,10周年記念の意味も含めてゲーム外での展開も計画していまして,まだ発表はできないんですが,今チェンクロを遊んでいる皆さんがあらためて楽しめる機会にもなるし,今までチェンクロを知らなかった皆さんも「チェンクロってスゲーいいじゃん」とって思ってもらえるような展開にもなるという,両方を狙った企画を仕込んでいるので,期待していただきたいです。
4Gamer:
これまで展開してきた,コラボカフェのようなものではないわけですね。
松永氏:
そうですね。チームのメンバーとは,これまでやってきたようなことだけでなく,もっといろんな展開を考えていきたいと話しています。たとえばコラボカフェは確かにチェンクロファンにとっては楽しい場所ですが,チェンクロを知らない人が知るきっかけにはなりづらいですよね。既存のファンの皆さんに楽しんでもらうことをどんどんやっていくのはもちろんなんですけれども,それと同じくらい今まで知らなかった人が「これ楽しそう」と知るきっかけをどう作っていくかを,すごく大事にしていきたいです。
新しいファンが入ってくること自体は,10年続けてくださっているファンの皆さんにも喜んでいただけることだと思っているので,それを実現するアイデアには積極的にチャレンジしていきます。
4Gamer:
長期間運営しているタイトルにとって,そのあたりはけっこう悩みの種になりがちですよね。
松永氏:
そうですね。コンテンツのボリュームが増えていること自体がネックになることもあるんですよね。私自身,100巻を超えているコミックのシリーズを読み始められるかというと,「100巻か……」と躊躇しますからね。「このドラマ,シーズン10まで行ってる」と言われたら,同じくらい面白いと言われているシーズン1完結のドラマを選んじゃいます(笑)。そこをどうすればいいのかについては大きな課題ですけれども,「これだったら既存のファンも新規の人も楽しめる」というものを今は一つ進めていて,それ以外のアイデアも何か実現したいといろいろ画策していますので,ぜひご期待いただけたらと思います
4Gamer:
そうした展開の中で,重視していることはありますか。
松永氏:
大切にするべきところは,「たくさんのキャラクターが生き生きと動いているところを,皆さんにどうやって魅力として感じていただけるか」ということと,あとは原点回帰と言うか「10年続けられた,もともとのゲームの面白さ」を感じてもらうことだと捉えています。
そのあたりをファンの皆さんにも,新規の皆さんにも,あるいは久しぶりに触ってみるという皆さんにも感じていただけるようなものを提供したいと考えています。これはゲームの外だけでなく,ゲーム内のエンドコンテンツでもチャレンジしようと話しているところです。10年経って,いい意味で煮詰まっているゲームの原点的な楽しさやキャラクターの良さを,もう1回新鮮に感じていただけるコンテンツに落とし込みたいですね。
4Gamer:
おそらくプレイヤーもみんな,チェンクロが守りに入るのではなく,チャレンジする姿勢を見せてくれたほうが安心して遊び続けられそうです。
松永氏:
ええ。「広げていくんだ」とチャレンジを考えていること自体に,期待感を抱いていただけると嬉しいです。だからと言って,「つまらなくても許して」とかは思っていないので,頑張りますけれども。
4Gamer:
そこは裏切れないですよね。
松永氏:
面白いことは,絶対に大事ですし,長く続けたことを面白さに変えていきたいです。
例えば2023年春からやっていたメインストーリー「ifの世界」シリーズが好評だったんですよ。これまで登場していたキャラクターのifの姿──「もしもこうだったら」というキャラクターがたくさん登場して,本来のキャラクター達とドラマを繰り広げるような内容になっているんですが,これがここ数年で一番反響をいただいて。アクティブプレイヤー数やプレイ時間が大きく伸びるくらいの好評を頂きました。私達も作っているときに「これは,ここ数年で一番の出来だな」という手応えを感じていたんですが,それはまさに「キャラクターがどう動いたら面白いか」という話なんですよね。設定も相当凝ったので合わせ技ではあるんですけれども,「皆が本当に何年もキャラクターのことを追いかけてくれたからこその面白さがある」という内容になっているんです。
言ってみれば,これからプレイされる方が100巻を目の前にして「うっ……」となったとしても,99巻まで読んだからこその100巻の面白さが作れたんですね。「もしよかったら,1巻から読んでみませんか。100巻めっちゃ面白いんで!」と胸をはって言える状態になっています。それが何より,新しく遊んでもらうために大事だなと。
4Gamer:
それが理想ですよね。
松永氏:
当初は,「何年も経ったら,さすがに飽きるしダレるよな」と思っていたんですよね。でも全部のキャラクターを皆が知っているからこその面白さを,こんなに強く出せるんだと。今のチェンクロはものすごいボリュームですけれども,追いかけた先に損がなく,むしろもっと面白い展開が待っているので,初めてチェンクロを知った人も,メインストーリーの途中でお休みしている皆さんも,ぜひまた追いかけていただけたらと思います。そこは自信あります!
10年経った,その面白さをぜひたくさんの人に楽しんでいただきたいです。
4Gamer:
10年を経て,なお広がり続けていくチェンクロの今後に期待しています。ありがとうございました。
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