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製品版「Rift」の部品点数はなんと300!? Oculus VRハードウェア部門のマネージャーが明かす製品版Rift開発秘話
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セッションを担当したのは,同社ハードウェア部門担当マネージャーであるCaitlin Kalinowski(ケイトリン・カリノウスキ)氏とStephanie Lue(ステファニー・ルー)氏だ。スタンフォード大学の卒業後,AppleやMicrosoftなどで腕を磨いてきたという女性エンジニア2名によるセッションの概要をレポートしよう。
![]() Caitlin Kalinowski氏(Product Design Engineering Manager,Oculus VR) |
![]() Stephanie Luesi氏(Hardware Program Management Manager,Oculus VR) |
ちなみに現在,Kalinowski氏は,POculus VRの製品デザイン部門を統括しており,Lue氏はハードウェア開発のロジスティクス(logistics,ここでは「計画」くらいの意味)周りを管理しているという。
左右2枚の有機ELディスプレイパネルを動かすギミックを搭載
そんな2人がセッションの最初に披露したのは,CV1の分解図である。スライド左端に見えるフロントカバーがなければ何かの大型機械に見えてしまうほど,複雑な部品で構成されているのが分かるだろう。全体を構成する部品数は,なんと300にも及ぶという。カリノウスキ氏は「コンピュータやゲーム機のデザインとは異なり,Riftはささいなハードウェアの変更が,ソフトウェアのデザインにも影響してしまうので,常にさまざまな部門と連絡を取りつつデザインしていかなければならなかった」と話している。
開発者向けバージョンである「DK1」を非常に早い時期からリリースしていたのは,ソフトウェア開発者からユーザビリティのフィードバックを得るために,それが不可欠だったからとのことだ。
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今回のセッションでは,CV1で新たに導入された「Inter Pupillary Distance」(IPD,瞳孔距離)の調整機能と「布製の外装」,「ストラップ」,そして「サウンド」という4つのポイントに焦点を当てての説明が行われた。
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そこでCV1は,右目と左目それぞれの前に,個別の小型有機ELディスプレイパネルが配置された構造を採用し,パネル同士の距離を機械的に調整できるようになっているそうだ。
IPDに合わせて両パネル間の距離を調整するという仕組みは,ユーザーが1人だと仮定した場合,基本的に,一度調整したら二度と触らなくてもいい部分だ。そこにかなりのコストを投下することに疑問を覚える人がいるかもしれないが,Riftの開発においては,IPDの最適化機構は「かなり早い段階からの必須項目だった」(カリノウスキ氏)という。
IPDを調整する機能だけを取り出した図も公開されたが,プロトタイプのデザインに比べると,CV1では随分と仕組みが変化しているのが分かる。CV1に到達するまでに辿った進化の過程は,デザインチームの試行錯誤の成果でもあろう。
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布製の外装には日本の繊維も使われている
別記事でもお伝えしているように,第3世代試作機である「Crescent Bay」(開発コードネーム)までは,外装がプラスチック剥き出しだったのに対し,CV1では布製の外装が採用された。それはなぜかという話が,セッションにおける第2の話題だ。
いわく,外装に布が選ばれたのは,軽量化のためだけでなく,ヘッドトラッキング用となる赤外線LEDの配置を,本体の最前部から側面へと変更させる過程において,側面からの光をセンサーカメラがキャッチできるよう透過させるためだそうだ。その目的のための最適な選択肢が布だったということらしい。
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「完成した布を,しっかりとした張力を保持したまま,製造ロボットでどのように本体へ巻き付けるかも,大きな課題だった」とルー氏は述懐している。
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映画鑑賞において,ヘッドフォンの片側が破損して聞こえなくなっても,それほど不都合なく映画を見終えることができるとしたルー氏は,「VRで3Dサウンドは不可欠であり,それなしでは成立しない」と述べていた。たとえば,右後方にモンスターがいるようなとき,音でその気配を感じとれないと,ホラーゲームやシューティングゲームとして成り立たないというわけだ。
カリノウスキ氏によると,Riftのヘッドフォンは頭を締め付けないようなデザインでありながら,しっかりと耳に密着できるデザインにするための試行錯誤の結果,トラップからエンクロージャ部分が独立してグリグリと動くような形状に落ち着いたのだそうだ。
しかも,「ユーザーが付属のヘッドフォンを取り外して,好みのヘッドフォンやイヤフォンを利用できるようにする」ための設計にも,相当なデザイン期間を要したとのことだった。
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こうして完成したCV1は,まさにOculus VRに集ったエンジニアたちの,アイデアと技術の結晶ともいえるものだ。まだ製品が発売されていない段階で,これだけの情報を開示するというOculus VRの姿勢は相当に太っ腹といえるが,それだけ自信があるということなのだろう。
今後,そう遠くない時期に価格や予約開始日といった情報も発表されていくと思われるが,製品版のでき栄えには,大いに期待してよさそうだ。
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Occulus connect 2 公式Webページ
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