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[TGS 2012]GREEビジネスセッション「ゲームの進化は止まらない」。カードバトルの未来からコンプガチャ問題の影響まで,赤裸々すぎるトークをレポート
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印刷2012/09/24 00:00

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[TGS 2012]GREEビジネスセッション「ゲームの進化は止まらない」。カードバトルの未来からコンプガチャ問題の影響まで,赤裸々すぎるトークをレポート

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 東京ゲームショウ2012初日となる2012年9月20日,GREEブースでは「ゲームの進化は止まらない」と題したパネルディスカッションが開催された。スマートフォンの高機能化と急激な普及,本格化するグローバル展開を前に,ソーシャルゲームはどのように変わっていくのだろうか。

 パネリストは,GREEで数々のヒット作を展開するgumiから今泉 潤氏。カプコンからは「モンスターハンター フロンティア オンライン」などのオンラインゲームからソーシャルゲームまで担当する杉浦一徳氏,さらにグリーから,かつてスクウェア・エニックスで「フロントミッション」などを作ってきた土田俊郎氏と,ソーシャルからPCオンラインゲーム,コンシューマゲームまで,幅広い経験と実績を持つメンバーが揃えられた。モデレーターはゲームジャーナリストの新 清士氏である。

モデレーターの新 清士氏(左),左から順番に,グリー 土田俊郎氏,カプコン 杉浦一徳氏,gumi 今泉 潤氏(右)
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カードバトルの今後


 最初に,議題として取り上げられたのは以下のようなものだった。

 現在のソーシャルゲームで主流となっている「カードバトル+ガチャ」というゲームシステムが今後どれくらい続くのか,また,これ以外のシステムは登場するのか? 

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 今泉氏は,これから日本のソーシャルゲームがどうなるかは「分からない」とざっくり前置きしながら,「パズル&ドラゴンズ」のヒットなどに見られるように,カードゲームもまた進化し続けていることを指摘する。
 また,プレイヤーのニーズはまだまだ衰えておらず,同じようなシステムのカードゲームであってもプレイヤー属性の差は出るので,それに応じた施策が必要となるという。モチーフの違いによる差,見た目の違い,リッチ化による差別化など,「二歩先を目指すのではなく,一歩先を試しては退き,試しては退き」を繰り返した先にソーシャルゲームの未来があるのではないかと語った。

 杉浦氏はまず,ソーシャルゲームが持つソーシャル機能は,オンラインゲームより優秀であると指摘する。しかし,オンラインゲームに比べてソーシャルゲームはゲーム自体が非常にシンプルなため,複雑なゲームを作ってきた立場からすると「この内容で飽きられないだろうか?」という作り手としての不安は拭えないのだという。このため,開発現場では,優れたソーシャル性に対する憧れと,ゲームへの不安がないまぜとなり,ソーシャル機能一つとっても議論が尽きないという。
 また,杉浦氏は,ソーシャルゲームの持つ各種機能はさまざまなゲームに応用可能であるため,「これがソーシャルゲームだ」という決定版が出てこなければ,ソーシャル機能を取り入れたオンラインゲームや家庭用ゲーム機ゲームを「ソーシャルゲーム」と判断する人も出るだろうし,同じものを見て,それはオンラインゲームまたはコンシューマゲームだと判断する人も出てくるだろうと語る。
 同時に,よりカジュアルなプレイヤーの視点に立てば,ソーシャルゲーム=カードゲームという図式は確かに成立しているが,クリエイターの視点に立てば,また違った定義が出てくることになる。ソーシャルゲームというジャンルをどう捉えるかということそのものが,奥深い問題になっていると氏は語った。

 そんななかで,カードゲームという形式がどれくらい続くかという点については,アナログのカードゲームを業務でも趣味でも扱ってきたという杉浦氏は,「例えば,ブシロードさんのように頑張ってやっていけば長い年数続く。しかし『はやっているからやってみよう』程度の軽いノリで参入したのでは,長続きしない」と指摘。そして,この「長続きしないケース」がジャンルの寿命に影響を与える可能氏はあると語る。ブームとともに類似品が増えるのは必然の動きであり,そこで淘汰も起こっていく。だが「カードゲームが完全になくなってしまう,ということはないだろう」と予測した。

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 土田氏は,コンシューマゲームの世界からソーシャルゲームの世界に移動したこの1年を振り返り,「コンシューマゲームは発売日に向けてゲーム作ると同時に話題性や期待も煽っていく。ソーシャルゲームはリリース後もログデータを見ながらプレイヤーの動向を予測し,コンテンツをどんどん改良していく」といった違いがあると語った。
 この「リリースしてからが勝負」というのはオンラインゲームにも共通することだが,ソーシャルゲームのアップデート頻度は非常に多い。1年の経験を踏まえて「なかなかしんどい」と語る氏の言葉には,会場に詰めかけた開発者達も共感の笑いを漏らしていた。
 そのうえで氏は,ソーシャルのカードゲームは「バトルで勝つ・強くなるというプレイヤーの能力と,特定のカードがほしい・カードを育てたいという欲求を上手につなげている」ところが強いと分析。なので,カードを集める楽しさ,育てる楽しさは引き継いでいきたいというのが氏の考えだ。

 一方,ソーシャルゲームが爆発的人気を得てから数年が経過したいま,ゲームに対し世界観やストーリーの奥深さ,あるいはゲーム攻略に対するやりがいといったものを求めるプレイヤーは徐々に増加しており,そういったプレイヤーに楽しんでもらえる「こだわり」をプラスするため,コンシューマの要素をソーシャルゲームに加えたような,ハイブリッドなものを作っていく――これがソーシャルゲームにおける一つの進化の道であろう,と土田氏は語った。


基本無料がもたらしたもの


 続いて,日本では「基本無料」と表現されることの多い“Free to Play”というシステムについて議論された。

 5年前には「広まらない」と思われていた(編注:そうなのか?)Free to Playシステムは,今では多くのソーシャルゲームプレイヤーにとって当然の前提となっている。この変化はどのように理解すべきなのだろうか?

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 杉浦氏は,「コンシューマゲームは買うまでにどれくらい魅力があるかを伝えられるかが勝負で,悪く言えば『買わせれば勝ち』」であるとした。
 一方で,Free to Playという方法は「まずタダで遊んでもらって,このゲームにはお金を払う価値があると判断してもらってから,支払いが発生する」方式である。このことを杉浦氏は「お客様とクリエイターの,ガチンコの勝負」と表現する。Free to Playにおいては,課金コンテンツが購入されたということはゲームが評価されたということであり,お金を払ってもらえないということは払う価値がないものだった,ということになるからだ。
 このため,カプコン内部でもクリエイターの考え方が変わってきたと氏は語る。かつては,あまり売り上げのことを意識しなかったクリエイター達が,売り上げが向上すると喜ぶようになったというのだ。また,アイテム課金ということもあり,その個々のアイテムをデザインした担当者にも一喜一憂がある。このことは,クリエイターの技術向上に大きく寄与したという。

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 今泉氏は,もともと映像産業にいた立場からFree to Playを分析する。
 氏は,映画には「『この映画はクソ』だと思うものが多い」と指摘。これはマスメディアでの宣伝によって,知っている映画=面白い映画というイメージの刷り込みがあるため,名前だけで選んでハズレを掴んでしまうことが増えたことによるものだという。一方で,面白い映画であっても,知名度が低いと観客は限定され,評価にも限界が出る。
 だが,無料であれば,「タダだから一度見てほしい」というスタンスで挑むことが可能だ。結果として「面白い作品が,面白いという評価を得る」チャンスも広がっていると氏は語った。

 また,面白さというものは数値化が難しい。映像は視聴率で面白さが評価されがちだが,ゴールデンタイムと深夜帯とで比較となると,基準として適切とは言いがたい。
 ところがソーシャルゲームでは,面白さが数値として表れてくる。スタッフやディレクターはしばしば「売り上げ売り上げと言うけれど,面白ければそれでいい」という方向に陥りがちだが,それは「歪んでいる」と氏は評価する。Free to Playでは,面白いという評価が,売り上げに直結するのだ。
 今泉氏は,「面白いものが作りたいなら,そこにある100円・200円のニーズを取りに行け!」と檄を飛ばすこともしばしばだという。

 土田氏は,「面白さを数値化するのは非常に大きなテーマ」とする。だが,「それを数値化しないとなると,進化はなくなる」と語る。ただし,「お金を払った」ということと「面白く感じた」ということは,とても似たものではあるが,あくまで近似値ではないか,とも指摘した。
 カードゲームの場合,お金が払われるのは「カードがほしい」という気持ちがプレイヤーにうまく湧き起こった場合である,と氏は分析。ここがうまくいくと,「カードがほしい」と思ったプレイヤーのうち何割かが,実際にお金を払うところまでたどり着く。

 なので,お金=面白さという図式は,確実ではない。しかし「お金を払うことをプレイヤーが厭わないくらい,ゲームの面白さを伝えきった」という指標であることは事実であり,そこに価値があると語った。


スマートフォンとゲームのリッチ化


 さて,話題はスマートフォンにも及んでいる。高性能化するスマートフォンは,ソーシャルゲームにどんな影響を与えていくのだろうか。

 スマートフォンのスペック向上が,ゲームの開発コストを上昇させるのではないかという予測は以前からなされていた。はたして,このコスト上昇に見合うだけのプレイヤーのニーズはあるのだろうか?

 今泉氏は,これを深刻な問題と捉えている。プラットフォームのスペックが上がり,ゲームのリッチ化が進めば,リッチなゲームを作るノウハウを持ったゲーム制作会社がその強さを存分に発揮するからだ。
 だが,ベンチャー企業にはスピード感という武器がある。そしてまた,PlayStation 3のようなハイスペックプラットフォームだけが家庭用ゲーム機ゲーム市場を席巻しているかというとそうでもなく,Wiiが一定のシェアを有しているというのが現実だという(編注:販売台数はWiiのほうが圧倒的に多い。ここ1年くらいのゲーム販売本数に限って言えばPS3のほうが多い)。
 また,フィーチャーフォンでのソーシャルゲームは,「5」ボタンを連打すれば先に進むゲームとしてデザインされ,それがそのままスマートフォンに移行してきている。だが,これに対し今泉氏は,「フィーチャーフォンゲームの本質はノー・ルック・プレイ」だと指摘。そういったライトなプレイヤーにリーチするために,スマートフォンにおいても「画面を見ることなくゲームが進められるシステム」を模索しているのだという。

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 杉浦氏にとっても,この「全体的なスペックの向上」というのはクリティカルな問題であるという。というのも「モンスターハンター フロンティア オンライン」はサービス開始から6年目に入っており,技術ベースがDirectX 9.0cなのだ。競合するゲームはDirectX 10以降のゲームエンジンを起用していることが多く,プレイヤーから「MHFも早くHD化を」といった要望が出されることがあるという(編注:DirectX 10云々に関しては勘違いと思われる)。
 だが杉浦氏は,次期バージョンとなる「モンスターハンター フロンティアG」においても,グラフィックスのリッチ化は志向しないことを表明している。このことに関し,氏は「美人は3日で飽きる。ゲームでも,2週間もすればグラフィックスが綺麗という感動も消えてしまう。それだけのために,何十億という予算が必要になる」と説明した。また,アイテムやモンスターグラフィックスの開発工数も2.5倍以上に増大,今は2週間で作れているものが1か月かかるようになるのだという。コンテンツの消耗戦であるオンラインゲームにとって,これはあまりにハイリスクだ。
 杉浦氏は,「綺麗なグラフィックスは,新規プレイヤーや休眠プレイヤーをゲームに引っ張ってくるときには重要」と認める一方,「実際のゲームが始まったら,グラフィックスが綺麗でも,ゲームが面白くなくては続かない」と語る。グラフィックスの綺麗さは,プレイヤーの継続率には影響しないのだ。継続率を高めるためには,日々のイベント,サービス,コンテンツが楽しいことのほうが重要であるという。

 ただし,スマートフォンのゲームに関して言うと,現在主流となっているゲームと,コンシューマゲームとでは,差がありすぎると氏は語る。そのギャップはもう少し埋められてもいいだろうし,クリエイターのコンテンツ開発の自由度を増すという面でもよい効果が期待できるという。
 もっとも,これは程度問題でもあって,あまりハイエンド方向に動くと,例えばAndroid OSのスマートフォンであれば,古い機種では動かないという問題が発生する可能性がある。こういったことでプレイヤーを大幅に限定してしまうのでは,「広い市場」の意味が失われてしまいかねない。
 また,ソーシャルゲームは,集まってきたプレイヤーにどのようなサービスをしていくのがよいかを日々分析することによって成立しており,「俺の考えた凄いゲーム」を提供するという方式は,杉浦氏自身にも失敗経験があるため「おすすめできない」とのことだ。

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 土田氏は,「METAL GEAR SOLID SOCIAL OPS」が非常にリッチな表現を有することについて,「プレイヤーをがっかりさせないことが重要」なのだと語った。MGSという歴史のあるコンテンツの世界観を再現するにあたって,MGSはこれまで最先端のハードで最もリッチなコンテンツとして提供されてきた以上,その期待を裏切ることはできないと氏は語る。
 しかし,リッチに作ることが可能になったとはいえ,ビジネスにならないとか,ビジネスとして成立させるためにプレイヤーに負担を強いるのでは本末転倒でもあると語る。そこで何かを表現したいとなったとき,どう折り合いをつけていくかが重要であって,METAL GEAR SOLID SOCIAL OPSの場合は「これはMGSだ」という雰囲気を担保するためのリッチ化であったというわけだ。
 ただし,ソーシャルゲームは「サクサクと遊べることが重要」だが,表現のリッチ化はメモリへの読み込み時間などを伴うため,どうしても重くなりがちだ。なので,プレイヤーに重さを感じさせない範囲でのリッチ化が望まれると土田氏は指摘する。これまでにない表現に挑戦するにしても,その表現にとってあまり重要でない部分はオミットするといった工夫が必要というわけだ。
 また,Free to Playである以上,「リッチな表現である」という部分でお金をとっていけるわけではない。あくまでゲームの根幹を損なわない範囲でのリッチ化が求められることになる。

 今後の全体的な傾向予測としては,土田氏自身は,GREEにおける「リッチ化を目指す担当」であるという意識はあるものの,リッチ化は全体的な流れではないとも考えているという。より深い世界観を持つゲーム,より驚きのある表現があるゲームといったものを,プレイヤーの選択肢の一つとして提供していくこと――いろいろなゲームの楽しみ方のどこか一つに特化するのではなく,全部に対応していくことこそが,GREEが示す「ゲームに対する本気」である土田氏は語った。


市場のグローバル化とGREE Platform


 日本のソーシャルゲームにとって大きな課題である世界進出にも話題は及ぶ。

 グローバル化は,日本のソーシャルゲーム業界にとって最も重要な問題の一つである。Mobageが「神撃のバハムート」で世界市場における成功を具体的に示したいま,日本のソーシャルゲームはどのように世界市場に出ていくべきなのだろうか?

 今泉氏は,まず日本国内市場においては,プレイヤーの流入確保が非常に大変になってきていると指摘。gumiはオリジナルタイトルが有名だが,FIFA公認のソーシャルサッカーゲームやモンハンのソーシャルゲームも開発しており,その経験から言うとそういったIPを使ったタイトルでは「事前登録からして,オリジナルタイトルとは比較にならないほど多い」という。
 必然的に,強いIPを持っている企業は自社でソーシャルゲームをサービスするという動きも強めている。かくしてベンチャー側としては,IPでは対抗できないので,海外に行くか,ネイティブアプリに行くかという岐路に立たされている――というのが一般的な認識だろうが,今泉氏は「僕としてはGREE Platformに賭けている。国内のTOP20タイトルの半分を自社タイトルで埋めるのが目標」と宣言した。
 とはいえ,gumiも海外に支社を増やしている。日本のゲームが海外に通用するという認識に関しても,今泉氏は同意する。しかし,海外支社を増やして現地に社員を派遣すると国内が崩れてしまうという難しさを,多くの開発会社が共有しているのも事実だという。
 この問題に対し,今泉氏は,gumiが新しく設立した福岡支社のケースを示した。福岡支社では本社とは違うシリーズを立ち上げ,本社と競争するという意気込みで運営を開始している。組織や開発方針もゼロから立ち上げるのではなく,東京でのノウハウ(および一部スタッフ)を福岡でも利用しながら,まず1本リリースし,それを運営することで現地スタッフに実地で経験を積ませることを目指したという。

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 一方で,GREE Platformについてコメントを求められた杉浦氏は,「正直,ノーコメントかな。GREEさんの今後に期待! これでもだいぶ甘口ですが」と忌憚のない見解を披露。
 海外進出に関しては,カプコンは家庭用ゲーム機時代から海外進出してきたイメージがあり,事実,北米や欧州では実績もあるが,アジアでは苦戦している。アジアを攻めるにあたっては,オンラインゲームやソーシャルゲームがカプコンの主力となる見込みで,開発拠点もアジアの各国に作っているという。
 とはいえ,日本企業はどんなビジネスでも海外展開に失敗していることが多いと杉浦氏は指摘する。ゲームについても同じ失敗は展開されており,そこでぶつかった問題もだいたい共通している。ゆえに,「先人の失敗に学び,それを活用して人や組織を作っていく」ことが重要であると氏は語る。ことソーシャルゲームやオンラインゲームはリリースしてからが本番であり,スピーディで団結力のあるチームを作ることが問われるのだ。

 土田氏は,GREE Platformの意義は,「海外の素晴らしいゲームを日本で遊べる機会を増やし,日本のゲームが各国に出ていけるような機会を増やす」ものであると語る。海外に生産拠点を持たなくとも,GREE Platformを通じて日本を含めた世界の各地域に,同時にゲームをリリース可能なのだ。
 一方,ゲームデベロッパとしてのGREEは,海外をターゲットとしたゲームを作るにあたっては,日本以外で作ることを選んでいる。国によってプレイヤーのプレイスタイルが異なる以上,サービスしてからが勝負となるソーシャルゲームは,各国に合わせたカスタマイズをどこまで丁寧にやれるか,それがゲームを地域に根づかせる決め手になると土田氏は語った。


「自分達のほうに邪な気持ちがあるから,表記できない」


 最後に,ソーシャルゲームで今年最大の話題でとなっていあコンプガチャ問題について議論が交わされた。

 コンプガチャの廃止はソーシャルゲームにどのような影響を与えたのか?

 今泉氏は,クリエイティブの仕事においては,企画は制約から生まれる部分があると語る。自由にやっていいであるとか,300億円渡すから「アバター」のような映画を作れと言われても,困るというわけだ。
 「どんな制約があっても,クリエイティブがそれを解決する」と語る今泉氏は,社会問題は真摯に受け止め,ルールに則った形で最高に面白いものを提供する必要があると述べた。
 また,コンプガチャ廃止の影響に関しては,「影響はなかった」と断言している。

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 杉浦氏は同様に「コンプガチャ廃止の影響は出ていない」と語る。
 杉浦氏は,MHFでもアイテム課金などを展開していたが,ビジネスモデルはほぼ自力で作ってきたという。その見地から言えば,「ゲーム作りの幅が狭まったかどうかというより,それを意地でも乗り越えてやるという気概を持ってビジネスモデルを作っていく必要がある」と述べた。
 氏は「ガチャは,あるべきか,ないべきかで言えば,まだあるべき。収益の採算分岐を考えると,ガチャを全廃してソーシャルゲームを成り立たせるのは厳しい」と指摘。だが同時に,ガチャがゲームの商品寿命を短くしている(とくにカードゲームで顕著)ことにも言及した。
 氏はさらに,ガチャへの依存度を3割〜4割程度に抑えたビジネスモデルを構築することを考えないと「脳みそのシワが増えない」と語気を強めた。定額課金をベースにしたMHFではガチャの比率が低いが,それでも成り立つ工夫を毎回のアップデートごとに考え,「苦しい」作業をしつつ,また1年後のビジョンを立てているという(さらには景表法をはじめとした法律の勉強も欠かせない)。
 だが,ソーシャルゲームでは往々にして,「頭が使われるのはガチャの中身であったり,確率分布であったり」する。
 氏は「運営の基本は,お客さんを納得させること」だと強調する。コンプライアンスや法律の遵守は当然としても,それ以外の点については「納得」に勝るものはないという。納得しないから苦情になるのであり,ガチャの苦情はまさにその「納得できないからこその苦情」である。
 以下,ガチャと「納得」に関する氏の言葉を引用しよう。

 「確率表示しろというのは,もう何年も前から言われているのに,ようやく今になってから皆さんやっているじゃないですか。うちは自社で運営しているものについては,最初から確率表示しています。そんなの当たり前なんです。
 なぜやらないのかというと,0.1%とか書かれたらみんなビビってガチャを回さないからですよね? だから結局,自分達のほうに邪な気持ちがあるから,表記できないわけです。
 お客さんはそこまで馬鹿じゃないんですよ。では,賢いお客さんとどう付き合うか。それは納得させることです。マネタイズも,納得させるマネタイズを作る。そこの部分を,うちのチームにはちゃんと考えなさい,ガチャに依存していると,そこで痛い目にあうよ,ということを1年以上前からずっと言っているので,今の流れを見てると予想通りだなと思っています」

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 土田氏は,「ゲームというものは,今の世の中に必要なものだと思っている。だから,ゲームを作るのは良い仕事だと思っている」と語る。そして「そういうものだからこそ,世の中のいろいろな声に耳を傾け,変わっていかねばならない。ゲームは,楽しく使ってもらえるものでなくてはいけない,そういう使命を負っている」と続けた。
 また,土田氏は,家庭用ゲーム機ゲームを作っていた立場から見ると,ゲームを遊ぶ人が徐々に減り,店頭でのゲームの売り上げも減少していたところ,突如1千万人単位でゲームプレイヤーが増えることになったのがソーシャルゲームであると指摘する。この人数に対して「ゲームを遊ぶ人のことを第一に考えて作っていかなくてはならない」というのは重い十字架であると言えるだろう。


ソーシャルゲームが変化するとき


 最後に,ソーシャルゲームの未来について,パネリストがそれぞれの見解を示していった。

 今泉氏は,「杉浦さんに怒られそうですが」と前置きしつつ,「ガチャは面白い。ガチャの種類を増やすという未来もあると思う」と語った。氏は,ガチャのさまざまな可能性や問題を探るため,「特技欄にUFOキャッチャーと書けるくらいUFOキャッチャーをやり込んだ」のみならず,「BOXガチャとは何なのかを探るために,ドラゴンボールとワンピースのカードダスを1筐体分,全部引ききってみた」という。
 なんとも豪快な話だが,「健全性や社会的立ち位置というところを踏まえてクリエーションしていくことは重要だ。また,制約にひるんで面白いものが作れなくなってもいけない」「エンターテイメントはパッションが大事。自分達が食べていけるのは,プレイヤーがいてこそであり,プレイヤーを知るためにもソーシャルゲームをやり込むことが大事」という氏の言葉には,エンターテイメントに携わるクリエイターの強い意思が感じられた。

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 杉浦氏は,「元々テレビゲームが好きな人間として,テレビゲームは1本6千円,高くて1万円という感覚がある」「だから6千円〜1万円でどこまで楽しませられるかというのが,オンラインないしソーシャルゲームの一つの目線」「世の中には今泉さんみたいな金持ちもいますが(笑),僕みたいに嫁さんからお小遣いをちょっともらっている程度の人もいる。その人たちがどう楽しめるかが大事」だと述べた。
 そしてまた,使う金額の大小だけではなく,レベルの高低,遊んだ時間の差,知識の差といった,プレイヤー間に存在する差に関して,「ゲーム会社は思いやっていく必要がある」と語る。
 だが,その半面,次のゲームを出し,あるいはスタッフが生きていくためには,今のゲームをちゃんと黒字にしていかなければならない。この現実と理想を天秤にかけながら事業を進める必要がある。
 また,ソーシャルゲームの海外展開に関しては,まだノウハウ不足があることを認めつつ,1年から2年後には「大暴れしたい」と展望を語った。

 土田氏は,「ソーシャルゲームが変わっていく時期にきた」と語り,そしてその変化は,進化であるべきだと述べた。そしてその進化は,遊びの広がりや満足度,課金額に関わらずプレイヤーが楽しめる仕組みなど,さまざまな配慮が行き届くことによって得られるとした。
 土田氏は,この進化を突き詰めていくことでソーシャルゲーム業界も発展するのではないかと語り,ディスカッションの締めとした。
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