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2023年のハイエンドスマホはレイトレーシング対応に? Armの新型CPUとGPUはこうなる
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印刷2022/08/02 19:01

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2023年のハイエンドスマホはレイトレーシング対応に? Armの新型CPUとGPUはこうなる

 少し前の話となるが,2022年6月28日にArmは,次世代のスマートフォンやPC向けSoC(System-on-a-Chip)に用いられる新型CPU IPとGPU IPを発表した(関連リンク)。製品ラインナップは以下のとおり。これらを採用したSoCは,2022年から2023年にかけて登場するものと思われる。

●CPU IP
  • Cortex-X3
  • Cortex-A715

●GPU IP
  • Immortalis-G715
  • Mali-G715
  • Mali-G615

 Armのプレスリリースでは,“Arm Total Compute Solution”という仰々しい言葉が踊っているのだが,近年のArmは,それぞれの分野で顧客が迅速にシステムを構築するために,さまざまなIPをまとめてパッケージとして提供しており,これを「Total Solutions」と呼んでいる。
 PCやスマートフォンといった分野に向けて,Armは,2021年に「TCS21」(Total Compute Solution 2021)というパッケージを提供した。これを用いて実装されたのが,Qualcommの「Snapdragon 8 Gen 1」や,MediaTekの「Dimensity 9000」といった製品だ。

TCS21を採用したDimensity 9000
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 TCSは毎年更新する予定で,2024年までのロードマップも示されている。今回のテーマであるIP群は,「TCS22」(Total Compute Solution 2022)に属する。

TCSのロードマップ。Intelが毎年"Gen XX Core Processor"といった形でラインナップを更新するのに近い。ただし,チップの形ではなく,IPを提供売る点が異なる
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2017年以降のArm製CPU IPを振り返る


 最新事情を説明する前に,少し昔にさかのぼって,2017年以降のArm製CPUコアの動向を振り返っておきたい。

 図1は,2017年以降に登場したArm製CPU IPのラインナップだ。Armは,2017年に従来の「big.LITTLE」アーキテクチャを発展させた「DynamIQ technology」(以下,DynamIQ)を発表した。これに合わせて,対応CPU IPとして「Cortex-A75」と「Cortex-A55」が登場している。Cortex-A75が高性能コア,Cortex-A55がは低消費電力(≒低性能)コアという位置付けで,ここから2019年まで,高性能コアのライン(図ではBalanced表記)は,毎年新製品を更新してきた。
 
図1 2017年以降のArm製CPU IP
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 大きな変化が起こったのは,2020年だ。Armは,従来の高性能コアを上回る性能を備えたCPU IP「Cortex-X1」を投入した。Cortex-X1は,さまざまな経緯で生まれた製品なのだが,理由を簡単にまとめると,ArmとSamsung Electronics(以下,Samsung)の事情によるものだ。

 Armは,より強力なCPU IPの開発を推進していたが,Samsungでは,ハイエンド市場向けCPUコアの開発にかかるコストが大きな負担となっていた。そのため,Armからアーキテクチャライセンスを受けて開発していた独自CPUコア「Exynos M5」の開発を中止したうえで,Armに対してより高速なCPU IPの開発を要望する。この結果生まれたのがCortex-Xシリーズというわけだ。
 
 Cortex-X1発表時における,既存の高性能コア「Cortex-A78」や「Cortex-A77」との性能比較をみると,機械学習を使った処理性能が2倍となっている。これは,SIMD演算ユニットである「NEON」が倍増しているからだ。

Cortex-X1の整数演算性能は,Cortex-A77と比べて1.3倍なので,Cortex-A78との比較では1.21倍向上している計算だ
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Cortex-X1のフロントエンド。Cortex-A78のデコーダは,4命令/サイクルの処理が可能で,「Mop cache」(Macro Operation:マクロ命令キャッシュ)の速度も4Mops/サイクルであることを踏まえると,かなりデコーダが強化されていることが分かる
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Cortex-X1のバックエンド。バックエンドは,最大8命令/サイクルで,整数側が6命令,FPU側が2命令という形だ。もっとも,Mopで8命令なので,フルに動くと10個の演算ユニットが全て稼働する
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 Cortex-X1は,性能が向上した分,消費電力やエリアサイズ(※SoCの半導体ダイに占めるCPU/GPU部分のサイズ)は,Cortex-A7x系列と比べてかなり増えた。Cortex-X1を採用したSoCの多くは,Cortex-X1×1,Cortex-A78×3,Cortex-A55×4という構成を採っている。高い性能が必要なら,Cortex-X1の数を増やせばよいのだが,そうはなっていない。消費電力やエリアサイズを考えると難しいということだろう。

 また,2020年にArmは,新しい命令セットである「Armv9-A」を発表した。Armv9-Aは,既存の「Armv8-A」と同じ64bitの命令セットであり,互換性がある。普通のプログラムを動かすだけであれば,差はない。何が異なるのかというと大きく分けて2つある。1つはセキュリティ機能である「Confidential Compute Architecture」(CCA)への対応だ。
 もう1つは,拡張命令セットの違いである。Armv8-Aは,NEONにベクトル演算向けの拡張命令セット「SVE」(Scalable Vector Extensions)を組み合わせていた。これがArmv9-Aでは,SVEの後継である「SVE2」に変更となっている。

 このArmv9-Aに準拠したCPU IPとして,2021年5月に登場したのが「Cortex-X2」「Cortex-A710」「Cortex-A510」という3製品だ。2021年12月には,これらを採用したSnapdragon 8 Gen 1やDimensity 9000が,さらに2022年1月には,SamsungからもハイエンドSoC「Exynos 2200」が発表となった。

Cortex-X2と既存製品との性能比較。同一周波数では,10〜35%の性能向上を実現したという。機械学習を利用した処理性能が2倍になったのは,SVE2採用の効果である
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Armv9-Aベースの第2世代CPU IP


 ということで,やっと新型CPU IPの話に移ろう。Cortex-X3とCortex-A715は,Armv9-AベースのCPU製品としては第2世代にあたり,TCS22に属する製品である。Cortex-X3は,Cortex-X2と比べて性能が1.25倍に向上したのが特徴だ。それに対してCortex-A715は,Cortex-A710との比較で,性能は1.05倍とわずかな上昇に留まる一方,消費電力を20%削減したという。
 また,新製品ではないCortex-A510もTCS22の製品で,こちらは従来の同名製品と比べて,10%の消費電力削減を謳っている。詳細な明らかになっていないが,細かな改良とプロセス微細化の効果によるものだろう。

TCS21世代との性能比較
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 なお,これらの数字は,必ずしも同一周波数での比較とは限らない。あくまでも絶対性能として,このくらいの性能向上が見込めるということだ。
 
 また,TCS22世代では,CPUコアをつなぐ「DSU-110」(DynamIQ Shared Unit-110)で管理できるCPUコア数を,これまでの最大8コアから最大12コアまで拡張しているのも見どころと言えよう。現状,ArmベースのPCやスマートフォン向けSoCは,8コア構成の製品がほとんどだが,これはDSU側の制限によるものだ。この制限が緩和されることで,たとえばPCやハイエンドスマートフォン用に12コア構成のSoCが出てくる可能性も出てきた。

 なお,今回はCPU IPのみの発表で,これらを採用した具体的な製品は,明らかになっていない。おそらく,TCS21世代と同じく,12月ごろにQualcommやMediatekから発表となるのではないだろうか。


レイトレーシング対応のGPU IP「Immortalis」


 続いてはGPU IPについて説明しよう。こちらも過去の製品を振り返ると,2016年発表の「Mali-G76」と,2017年発表の「Mali-G72」は,Armの第2世代GPUマイクロアーキテクチャである「Bifrost」を採用した製品であった。
 2019年には,マイクロアーキテクチャを「Valhall」に更新した「Mali-G77」が登場している。Valhallでは,SIMT(Single Instruction Multiple Thread)演算ユニットが,従来の4/8Wide SIMT×3基という構成から,16Wide×2基へ広がり,GPUコアあたりの処理性能を強化したのが特徴だ。
 現行のArm製GPU IPは,このValhallをベースとしたもので,図2にラインナップをまとめている。

図2 ValhallアーキテクチャのGPU IP
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 2020年までは,ハイエンド向けとミドルレンジ向けという2つのラインで製品を展開していたが,2021年にはTCS21の導入と合わせて,4製品が一挙に登場した。最大16コアの「Mali-G710」が最上位モデルであることは明白だが,最大6コアの「Mali-G610」と「Mali-G510」の差がわかりにくいかもしれない。大きな違いはL2キャッシュの容量で,Mali-G710/G610が512〜2048KBなのに対して,Mali-G510/G310は,256〜1024KBと半分しかない。キャッシュ容量が減ったことで性能は低下するが,その分エリアサイズを小さくできるのがポイントだ。

 今回発表になった「Immortalis-G715」と「Mali-G715」「Mali-G615」もValhallベースのGPU IPだ。このうち,Mali-G715とMali-G615は,既存製品の延長にあるもので,L2キャッシュ容量を512〜4096KBに増やすといった小さな改良に留まる。
 
 一方,目玉となるImmortalis-G715は,Maliに続くGPUブランド「Immortalis」の第1弾製品だ。とはいえ,実際はMali-G715をベースとしてレイトレーシング用の演算ユニットを追加しただけだという。さらにレイトレーシングユニットの詳細や性能は,今のところ明らかになっていない。

今回はラインナップの紹介のみで,性能など詳細についての説明はなかった
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 発表会での質疑応答によると,Immortalis-G715は,Valhallベースで実装しており,今後のImmortalis製品は,Maliとは実装が変わる可能性があるという。たとえば,30〜40コアまでコア数を増やせるようなスケーラビリティの確保や,マイクロアーキテクチャをよりレイトレーシング向けに調整するといったことも考えられるそうだ。なお,レイトレーシングのAPIは,「Vulkan Ray Tracing」にしか対応しておらず,DirectX Raytracingをサポートする計画はないとのことだった。

 現状は分かっているのはここまでで,もう少し詳しい話が出てくるには時間がかかりそうだ。新GPUもTCS22世代であるから,先のCortex-X3やCortex-A715/A510と一緒に,採用SoCが2022年末あたりに登場するだろう。

ArmのCortex-Xシリーズ製品情報ページ

ArmのImmortalis-G715製品情報ページ

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    Cortex-A

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    Mali

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