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北米No.1のゲーム機向けヘッドセットブランドは本物か。Turtle Beachの“PS3向け”ワイヤレスモデル「Ear Force PX5」レビュー
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印刷2011/10/11 00:00

レビュー

北米No.1のゲーム機向けヘッドセットブランドは本物か

Ear Force PX5

Text by 榎本 涼


Ear Force PX5
メーカー:Voyetra Turtle Beach
問い合わせ先:シネックス(販売代理店)
予想実売価格:2万4980円(2011年10月11日現在)
Turtle Beach,Ear Force
 東京ゲームショウ2011で国内市場への参入を発表した米Voyetra Turtle Beach(以下,Turtle Beach)。ゲーマー向けヘッドセットメーカーとして,PlayStation 3(以下,PS3)とXbox 360,PCそれぞれに向けた製品ラインナップを用意しているというのはインタビュー記事でお伝えしているとおりだが,今回はそのなかから,PS3向けの現行最上位モデルとなる「Ear Force PX5」(以下,PX5)を取りあげたいと思う。
 北米のゲーム機向けヘッドセット市場で9割のシェアを持つメーカーのハイエンドモデルは,ワイヤレス対応と,「PS3向け」ながらXbox 360やPCにも対応するという点がユニークだが,完成度はどれほどのものだろうか。


PS3向けを謳うだけあり,接続性は抜群

Xbox 360とも良好だが,PCでは制約あり


PX5の製品ボックス。「PS3」の文字が躍っている
Turtle Beach,Ear Force
 最初に,製品ボックスの内容物を確認しておこう。
 ワイヤレスヘッドセット製品ということもあり,製品ボックスには,PX5本体のほか,「Digital RF」と呼ばれるトランスミッタが用意されている。PX5用のスタンドも兼ねるトランスミッタは,5.1chサラウンド機能「Dolby Digital」とマトリックスデコード機能「Dolby Pro Logic IIx」,そしてバーチャルサラウンドヘッドフォン機能「Dolby Headphone」に対応しており,光角形のデジタル,もしくはアナログRCA×2からサウンド信号を入力すると,2chや5.1ch信号はDolby Pro Logic IIxで7.1chへ拡張され,最終段でDolby Headphone準拠の2ch信号へとダウンミックスされて,PX5へ伝送される仕掛けになっている。

同梱品一覧。ステッカーのほかには,トランスミッタ給電用のUSBケーブルと,PX5用のUSBケーブル(※詳細は後述),光デジタルさウンドケーブルに,PS3向けヘッドセットらしからぬXbox 360用マイク入力ケーブル(しかもインラインリモコン付き)が用意されている
Turtle Beach,Ear Force
 ここで,「ヘッドセットなのにトランスミッタだけなの?」と疑問に思った読者は鋭いが,PS3用ヘッドセットということもあり,PX5のマイク部はA2DPプロファイルを使用してPS3とBluetooth接続される。なので,Digital RFにレシーバ機能は不要なのだ。
 また,冒頭で紹介したとおり,PX5は「PS3向け」ながらXbox 360にも対応しているが,Xbox 360との接続時も,トランスミッタ周りの仕様は共通。なら,Xbox 360用コントローラ側に用意されたマイク入力端子とはどう接続するかといえば答えは簡単で,PX5には,Xbox 360用コントローラと接続するためのマイク出力端子がちゃんと用意され,「Xbox 360 Talkback Cable」というケーブルも付属しているのである。“PS3向けヘッドセット”としては,相当に思い切った仕様といえるだろう。

Turtle Beach,Ear Force
PS3との接続イメージ。トランスミッタとPS3をつなげば,あとはワイヤレスで利用できる。非常にスマートだ。詳細は後述するが,トランスミッタはUSB給電。トランスミッタのUSB給電は,PS3から行わなくてもかまわない
Turtle Beach,Ear Force
Xbox 360との接続イメージ。ここでは例示のためにあえてアナログケーブルでつないでいるが,もちろん光デジタル接続も可能だ。マイクの利用にあたっては,Xbox 360用コントローラとPX5をつなぐ必要がある

 で,ここからがゲーム機優先のTurtle Beachらしいところなのだが,PCとは,ヘッドフォン部分こそPS3やXbox 360と同じ手順で接続できるものの,マイクは,「PCとのBluetooth接続は可能だがサポートしない」と,非対応扱いになっているのだ。
今回テストに用いたバッファロー製Bluetooth 3.0ドライバのプロパティウインドウ。ヘッドフォンモードとヘッドセットモードがあり,ヘッドセットモードに設定しておかないとマイクは使えない
Turtle Beach,Ear Force
 この文言はTurtle Beachのナレッジベースにあるもので,なら非公式にはどうかというと,PCから,Bluetoothアダプタ側の設定を「ヘッドセット接続」モードを選択すれば,PX5をPCと接続すること自体は可能。ただし,サンプルレートは8kHzになってしまい,4kHzより高い周波数が再生されないという,いわゆる携帯電話品質になってしまった。(ひょっとすると,“相性のいい”Bluetoothアダプタを使えば上手くいくのかもしれないが)このようにマイク品質が著しく低下するため,公式に非対応ということになっているのだろう。非公式でも,PC接続時にマイクを使うのはお勧めしない。

■PS3&Xbox 360側の設定
 PX5とPS3やXbox 360を接続するにあたって,ゲーム機側で何をすべきかは,付属のマニュアルだけ読んでも分かりにくい。そこで,「接続後にどうすればいいのか」を簡単にまとめておこう。

●PS3
 光デジタルケーブルで接続が済んだら,PS3側の音声出力設定を「光デジタル→Dolby Digital 5.1ch」に指定しておく。
 次に,初回のみマイクをPS3とBluetoothペアリングしなければならない。PS3の「設定→周辺機器設定→Bluetooth機器管理」を選ぶと,Bluetoothデバイスを登録するかどうか聞かれるので,[はい]を選択。PS3がBluetoothデバイスを探索する状態にしたうえで,PX-5の[BT MFB]ボタン(※詳細は後述)を長押しする。すると,ヘッドフォン部から「Bluetooth Pairing Start」というアナウンスが流れ,その後すぐにPS3側で「TURTLE BEACH PX5」が見つかったという説明が表示されるはずだ。
 ここで[はい]をクリックすると「パスキー」を求められるから,「0000」と入力後[確定]で,ペアリング完了。さらに,「設定→周辺機器設定→音声機器設定」を選び,入力機器および出力機器で「TURTLE BEACH PX5」を選ぶと,マイク入力とヘッドフォンモニタリングが可能になる。

●Xbox 360
 光デジタルケーブルで接続したら,Xbox 360側のサウンド出力設定を「Dolby Digital」に指定。マイクは,付属のXbox 360 Talkback CableでXbox 360用コントローラと接続するだけだ。


非常に作りのいいPX5本体だが

用意されたボタン群は押し分けにくい


マネキンに取り付けた状態で正面から
Turtle Beach,Ear Force
 PX5本体は,ツヤ消しされた黒を基調としつつ,エンクロージャ部分には「Turtle BeachのPS3用製品」の色でもある赤いラインがセンスよくあしらわれた外観になっていて,第一印象はよい。エンクロージャは楕円形で,大きくもなく小さくもないといったところだ。
 エンクロージャの“頂上”部分にはTurtle Beachのロゴが入り,右エンクロージャにはそれに加え,PX5のロゴもプリントされている。

こちらはマネキンに取り付けた状態で後方からと左右から。不自然に大きかったり小さかったりせず,バランスのいいサイズになっている
Turtle Beach,Ear Force Turtle Beach,Ear Force Turtle Beach,Ear Force

Turtle Beach,Ear Force
 エンクロージャは背面方向に最大90°回転し,平たく広げて置くことも可能。一方,前面方向への可動範囲は狭い。ヘッドバンドとの接合部分は,割と軽いクリック感のある,バンド長調整可能なタイプだが,プラスチックできちんとモールドされており,安っぽさとは無縁だ。
 ヘッドバンドは太くも細くもない,“普通”の太さ。外側は,Turtle Beachの文字がエンボス加工された合皮製になっており,頭頂部と接触する内側は,メッシュ加工の布製で肌触りはいい。

Turtle Beach,Ear Force Turtle Beach,Ear Force
バンド長調整機能周りの作りはしっかりしている
Turtle Beach,Ear Force Turtle Beach,Ear Force
ヘッドバンドは“普通”と述べたが,クッションは意外に薄い。ただ,クッションとしての機能は十分だ

Turtle Beach,Ear Force
 イヤーパッドのクッションも同様にメッシュ加工されており,耳あたりよく,蒸れにくいので筆者の好みだ。ドライバー部分は黒い布で覆われており,Turtle Beachのロゴがさりげなくあしらわれている。

 全体の装着感はかちっとしており,きつすぎず緩すぎず,ほどほどよりもやや軽めの強さで締めてくれる。それでいて,よほど頭を激しく振ったりしない限りはズレる心配もない。ヘッドバンドが太くない割にはかなりしっかりしていると述べていいだろう。

Turtle Beach,Ear Force
電池は右耳用エンクロージャ部に収める仕様。ちなみに重量は公称233gで,左右の重量バランスは気にならない。「ひょっとしたら右が少し重いかも?」くらいだ
Turtle Beach,Ear Force
左耳用エンクロージャ部に用意された電源ボタン。電源オン/オフの長押し時に点灯し,利用時はゆっくり点滅する
 ワイヤレスモデルということで気になるバッテリーは単3形乾電池×2で,PX5ロゴの入った右エンクロージャ部を持って,赤いラインの内側を下方向へスライドさせると電池ボックスへアクセスできる。バッテリー駆動時間は公称最大15時間だが,製品ボックス付属の電池だと,それよりもっと短い印象だった。充電池を別途用意したほうがいいかもしれない。
 ……その場合でも,PX5単体で充電できるわけではないから,いちいち電池を入れ替える作業は必要で,正直,けっこう面倒だが。

 ちなみに,左耳用エンクロージャの外側中央部には電源ボタンがあり,これを長押しすると電源がオンになる。オーディオ信号が入力されない状態が5分続いた場合には自動的に電源がオフとなるため,その後は再度の電源投入が必要だ。
 面白いのは,電源オン時に軽く押すと,PS3とXbox 360,どちらの動作モードなのかを,英語音声で教えてくれるようになっていること。さらに,ダブルクリックよろしく連打すると,PS3→Xbox 360→PS3→……といった具合で,順繰りに切り替わるようにもなっている。「あ,モード間違えた」という場合にも,頭にかけたまま,簡単に切り替えられるようになっているというわけである。

左耳用エンクロージャ部のインタフェース&ボタン群。PS3向けでありながらXbox 360コントローラがプリントされているのがTurtle Beachらしいところ
Turtle Beach,Ear Force
 ところでこのエンクロージャ,よく見ると,左右それぞれの下部に,ところ狭しとボタンや端子が並んでいるのが分かる。
 まず左耳用エンクロージャだが,こちらには装着時に前のほうからMicro USBポート,Xbox 360用コントローラとの接続用2.5mmミニピン端子,[PRESETS]ボタン,「GAME VOL」ダイヤルが並ぶ。右耳用エンクロージャ側には順に[MAIN][MIC MUTE][BT MFB]ボタンと,[BT VOL]シーソーボタンといった並びだ。[BT MFB]ボタンの隣に見える“ぽっち”は,Bluetooth接続のインジケータLEDである。
 [PRESET]ボタンあたりでピンと来た人もいるだろうが,PX5では,搭載するDSP(Digital Signal Processor)により,音響設定を変更できるようになっている。プリセット周りの詳細は後述するが,とりあえずは,「どんなプリセット設定になっていても,[MAIN]ボタンを押すと,Turtle Beachの第一推奨プリセットに戻る」ことを憶えておいてほしい。Micro USBポートは,このプリセットを編集するとき,PCとPX5を直接つなぐためのもので,USBケーブルに差しても,USB接続のヘッドセットとして使えるようになったり,USBケーブル経由で充電できるようになったりはしないのでご注意を。

 というわけでプリセット以外の話をすると,まず「GAME VOL」ダイヤルは,ゲームサウンド全般のボリュームをコントロールするものだ。フレンドなどの音声もヘッドフォン部経由で聞くことになる仕様上,ここで音量を絞ると,ゲームサウンドだけでなく,チャット相手のボイスも相対的に下がる。
 次に[MIC MUTE]ボタンだが,これは文字どおりマイクミュートのオン/オフを切り替えるもの。Xbox 360モードでは,Xbox 360用コントローラとのマイク接続ケーブル側のインラインリモコンにもマイクのオン/オフスイッチとボリュームダイヤルが用意され,どちらを使ってもミュートは機能する。

PX5の付属品中,これだけアイボリーで,最近の黒いXbox 360 Controllerとは色のマッチングがよろしくないXbox 360 Talkback Cable。実測全長は1.09m(※端子部分除く)あり,マイクミュートと音声入力レベル調整用ボリュームダイヤルが用意されたインラインリモコンはヘッドセットから約0.8m離れたところにある。インラインリモコンには衣服に取り付けたりするクリップがなく,これはマイナス材料か。ただ,リモコンそれ自体の使い勝手は悪くない
Turtle Beach,Ear Force Turtle Beach,Ear Force Turtle Beach,Ear Force

右耳用エンクロージャ部のインタフェース&ボタン群
Turtle Beach,Ear Force
 [BT MFB]ボタンのBT MFBとは「Bluetooth Multi Function Button」の略とされているが,簡単にいうと,Bluetoothデバイスの切り替えボタンだ。
 PX5には,最大2台のBluetoothデバイスとペアリングできるようになっており,たとえばPS3とBluetooth対応の携帯電話をペアリングしておけば,どちらか片方を使っているときに,もう1台のデバイスから割り込みをかけられる。この場合,PS3のゲームをプレイしている最中に携帯電話へ着信があると,PX5がそれを着信音で知らせてくれるようになっており,そこで[BT MFB]ボタンを押すと,PX5を携帯電話用のワイヤレスヘッドセットとして利用できるようになるのだ。
 もちろん,「2台のうち1台はPS3でなければならない」という決まりはないため,PCとPS3といった組み合わせや,PCと携帯電話なんていう組み合わせも行える。Xbox 360はBluetooth接続に対応していないが,携帯電話をペアリングさせておけば,Xbox 360に対しても割り込みは可能だ。

 さらに,携帯電話側が対応していれば,番号を音声入力したり,リダイアルしたり,マイクをミュートしたり,着信拒否したりもできる。その仕様上,携帯電話のヘッドセットとして利用している間,ゲーム側のサウンドは一切再生されなくなるものの,ヘッドセットやヘッドフォンを使ってゲームをプレイしているときの最大のネックともいえる「携帯電話が鳴っていても気づきにくい」問題が解決できそうなのは,人によっては相当に魅力的だろう。
 なお,[BT VOL]シーソーボタンは,Bluetooth接続時(≒PS3接続時)におけるマイク入力音量の調整用。言うまでもなく,Xbox 360接続時は機能しない。

マイクの設置自由度は相当に高い。根元が回転するうえ,ブームもかなり融通が利く。マイクは口のすぐ下くらいに置くのがお勧めだ
Turtle Beach,Ear Force
 ……と,ここまで説明するとなんとなく想像できると思うが,瞬時にボタンを押し分けたりするのはかなり難しい。一応,ボタンの形状や,ボタン上のエンボス加工によって,触感的に区別できるようにはなっているのだが,個人的には,100%慣れきるのは難しいように思う。

 最後にマイクブームだが,ブームは細く柔らかく,狙ったところにぴたりと設置できる,取り回しのよいものだ。
 マイクスポンジを外してみると,穴は1か所にのみ用意されており,シンプルなモノラルマイクであることが分かる。公式な仕様は「コンデンサーマイク,周波数50Hz〜15kHz」だが,まあ,これ以上に書くことがないのだろう。

マイクからマイクスポンジを外したところ
Turtle Beach,Ear Force Turtle Beach,Ear Force


外付け機器はUSB給電で動作

光デジタル/アナログRCA入力に対応


PX5をトランスミッタに載せたところ
Turtle Beach,Ear Force
 PX5本体のスタンドも兼ねるトランスミッタは,一言で小型。ただ,場所を取らないながらも,ヘッドセット本体のサイズを超えない程度に幅広の台座も用意されており,安定感は相当なものだ。

 前面には,デジタル入力やDolby Pro Logic IIx,Dolby Digitalが有効かどうかを確認できるLEDインジケータと,Dolby Laboratoriesの各種機能を無効化するボタン[BYPASS],ヘッドフォンボリューム調整用ノブ,ミニピンのアナログヘッドフォン出力端子が用意されている。

Turtle Beach,Ear Force
 ここで注意が必要なのは,[BYPASS]ボタンのところに描かれているのはDolby Headphoneのロゴだが,実際にはDolby DigitalやDolby Pro Logic IIxもまとめて有効/無効化するボタンであるということと,ヘッドフォンボリューム調整用ノブとヘッドフォン出力端子はいずれもミニピンのヘッドフォン出力端子用であるということ。少なくとも後者は,PX5の利用にあたって使う必要がまったくない。
 もちろん,ミニピン接続のヘッドフォンは接続できるうえ,Dolby Laboratoriesが提供する各種効果も得られるのだが,ここにボリュームコントローラがあるのは,いたずらに混乱を招くだけではなかろうか。接続の多様性を謳いたいのは分かるが,ことPX5においては混乱の元にしかならないように思う。

Turtle Beach,Ear Force
 背面に目を移すと,上から順に,「IN」と書かれたデジタルサウンド入力用光角形端子,「OUT」と書かれたデジタルサウンド出力用光角形端子,「L/R」と書かれたアナログサウンド入力用ステレオRCAピン端子×2,「LINE IN VOLUME」と書かれたアナログ入力時の入力レベルコントローラ,そして給電用のコネクタと電源ボタンが用意されているのが見て取れる。
 デジタルサウンド出力は入力されたデジタル信号をそのままスルー出力するものなので,PX5以外のサウンド出力デバイスを使いたいときにつなぎ替える必要がなく,便利だ。アナログ入力は,少なくともPS3やXbox 360をどちらか片方しかつながないなら使わないと思われるが,使う人には,入力レベルをやや低めにしておくことを勧めておきたい。出力デバイス側との組み合わせ次第で,歪みの発生することがあったからだ。

 給電はUSBベースなので,PS3やXbox 360,あるいはPCのUSBポートに接続すれば動作する。別途電源コネクタを確保しなくていいのは便利である。


プリセットエディタのダウンロードで

オリジナルプリセット作成が可能


[PRESET]ボタンは左耳用エンクロージャ部に用意されている
Turtle Beach,Ear Force
 さて,先ほどボタン類を説明しているときに後述するとしたが,PX5ではさまざまなサウンド設定プリセットが用意されており,それを,PX5に用意された[PRESETS]ボタンから切り替えられる。[MAIN]ボタンで戻る規定プリセットのほかに8つ登録されており,[PRESETS]ボタンを押すごとに1→2→3→……8→1→……といった具合で順繰りに入れ替わり,入れ替わるときにはヘッドフォン部から「何番に切り替わったか」を音声で通知してくれる設計だ。

 また,Turtle Beach公式サイトの「CUSTOMIZE」ページでメンバー登録を行うと,プリセットエディタのダウンロードが可能になる。本アプリケーションをPCにインストールした状態でPX5をUSB接続すれば,規定プリセットを除く8プリセットすべての編集が可能になるのである。

Turtle Beach公式サイトから入手できるプリセットエディタ
Turtle Beach,Ear Force
 「オーディオプロセッサ」というものをきちんと理解しないまま設定しても期待した効果は得られないため,設定方法についてあまり深くは触れないが,これを使えば,Turtle Beachが用意している追加プリセットをダウンロードして,入れ替えたりすることもできる。むしろこちらのほうが使いではあるかもしれない。


フラットと言えばフラットな周波数特性

豊富なプリセットで別製品のような音質傾向に


 ようやくという感じだが,テストに入ろう。前述のとおり,PC接続時のマイク入力はそもそも公式に非対応で,無理矢理使う場合にも大きな制約が入るため,その結果をいつものようにグラフで示すのはフェアではないと判断し,今回はヘッドフォン部,マイク部とも試聴テストのみを行う。

 ヘッドフォン出力品質のテストでは,「iTunes」によるステレオ音楽ファイルの再生と,PCでは「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)マルチプレイのリプレイ再生,PS3では「Call of Duty: Black Ops」(以下,Black Ops),Xbox 360では「Halo: Reach」のそれぞれマルチプレイを判断基準とした。
 電源ボタンから切り替えられる動作モードは,試した限り,マイク入力の切り替えや入力レベルの最適化など,音質傾向とは関係ない部分を処理しているようなので,今回は,PS3とPCではPS3モード,Xbox 360ではXbox 360モードでのみテストを行うことにしている。

 PC接続時に用いたPCの構成はのとおりで,PC接続時は,「PCI Express Sound Blaster X-Fi Titanium HD」(以下,X-Fi Titanium HD)の光デジタル出力端子を用いることとなる。


 まずは音楽を用いた試聴。前述のとおり,プリセットは標準状態だけで[MAIN]+8の計9つ存在するが,音楽ソースということで,プリセット1の「Flat」を選択した。Flat選択時はDolbyの機能がすべて無効化されるので,Turtle Beachが考えるフラット,つまり“素の”ステレオ再生能力をチェックできるはずだからである。

製品に紙で付属するほか,公式サイトから「PX5_PresetCard_FINAL.pdf」としてダウンロードできるドキュメントより,標準のプリセット。MAINとFlatのほかには「Dynamic Bass Boost」「Dynamic Treble Boost」「Bass Boost+Treble Boost」「Stereo Expander」「Mid-Boost」「Footstep Focus」「Superhuman Hearing」が用意されている
Turtle Beach,Ear Force
 で,その結果だが,よくも悪くも文字どおり「フラット」に近く,2kHz〜4kHzあたりのプレゼンスが多少強めといったところ。「よくも悪くも」と書いたのは,50mmドライバーを使用したときに出てきがちな迫力ある重低音が感じられず,(たしかに重低域まで再生されてはいるものの)低音が前に出てこない印象だからである。そのため,プレゼンス帯域がややけばだった音質傾向に感じられてしまう。個人的には,「ここまでフラットなら,プレゼンスも不要」というのが正直な感想だ。2kHz〜4kHzの山は,端的に言って邪魔である。

 また,そもそも論として,人間の耳は一直線にフラットな音質傾向を,「よい音」とは感じにくい。筆者のレビューで繰り返してきているように,やや“右肩下がり”な低強高低のほうが,(もちろん程度にはよるものの)かえってフラットに感じられ,よい音に感じられるものなのだ。「周波数特性で見たときフラットなのが最高」なのではなく,「聴感上フラットに感じられる程度の低強高低がよい」のである。

PX5のマニュアルより,ゲームサウンドやチャット相手の音声,ユーザーの音声にそれぞれ適用されるDSP効果の一覧。これもすべてではなく,プリセットエディタを使って初めて有効化できる効果も用意されている
Turtle Beach,Ear Force
 ちなみに,プリセット1以外を選択すると,Dolbyの機能以外にも,さまざまなプロセッサ(≒DSP効果)がかかってくる。マニュアルのa17ページを見ると,ゲームサウンドには「Noise Gate」「Sonic Lens」「Multi-Band EQ」「Sound Field Expander」「Blast Limiter」,そして最終段の「Ear Gurad」などといったプロセッサが用意されていると分かるが,要するにプリセットというのは,目的に合わせてプロセッサ群からいくつか見繕い,適切な値を設定したうえで適用するもの,ということになる。

 Noise GateとMulti-Band EQに関してはマイク入力テストの段で語ったほうが分かりやすいので,ここではそれ以外を簡単に紹介しておくと,まずSonic Lensは,適用するバンド幅を制限しつつ,自動でダイナミックレンジ補正を行うツールだ。AGC(Auto Gain Control。声の音量差を緩やかに補正していくダイナミックレンジコントローラで,携帯電話などの民生機器で必須のプロセッサ)の帯域制限バージョンといったところだろうか。個人での設定は難しいので,設定変更は勧めない。
 Sound Field Expanderは,おそらくプリセット5「Stereo Expander」で適用されているステレオエンハンサのこと。サラウンドでは動作しないステレオ入力用プロセッサなので,サラウンドタイトルで使用するのは厳禁だ。
 Blast Limiterはいわゆるトータルリミッタ――ダイナミクスレンジ補正プロセッサの一種――で,「最大音量を下げつつ,それ以外はそのまま保持することで,結果としてダイナミックレンジが圧縮される」という,CDマスタリングに使われるプロセッサのようなものであろう。筆者の予想に過ぎないことを断ったうえで続けると,Sonic Lensが全体の音量を上げ下げするのに対し,Blast Limiterは音量のピークだけを下げるものとして区別されているように思われる。

左耳用エンクロージャと付属のUSBケーブルを接続し,PCとつなげば,プリセットエディタからプリセットやDPS効果をカスタマイズできるようになる。ついでに充電もできればよかったのだが,前述のとおり不可能だ
Turtle Beach,Ear Force
 最後に,最終段で適用されるEar Gurad。通常Ear Guradというと,一定音量以上にボリュームが上がらないようにする機能のことなのだが,PX5では,ボリュームを大きく上げると,耳が痛くなるくらいにまで音量も上がる。なので,PX5におけるEar Guradというのは,音が歪まないようにするピークリミッターのことではないかと思われる。正直なところ,Blast Limiterと棲み分ける理由が分からない。

 プリセットの話に戻ると,広く勧められそうなのはプリセット4の「Bass Boost+Treble Boost」。プレゼンス帯域が少し強く感じられる欠点はそのままながら,重低音の迫力が十分にあり,2万円台半ばで販売されているヘッドセットを使っている実感を得やすい。
 プリセット6〜8はゲーム用途に特化したプリセットなので,音楽やムービーなどには不向きだ。

 では,そのゲーム用途ではどうなのか。
 ゲーム用途では,プリセット1のFlatをベースに,Dolbyの各機能がすべて有効化されており,Turtle Beachもゲーム用として最初はこれを使うよう推奨しているMAINプリセットを使ってテストする。

Turtle Beach,Ear Force
 言うまでもなく,周波数特性はプリセット1と同じ傾向だが,ゲームだと,2kHz〜4kHz付近のやや強いプレゼンスも,「自分の銃声が多少強くなる」程度なので,さほど気にならない。もっとも,低域の迫力に乏しいのも音楽ソース試聴時と同じであり,今1つ面白みに欠ける点は否めないが。

 後方の効果音はきちんと後方に定位にする一方,音の空間が横に広がるという“Dolbyらしさ”は健在。4Gamerのインタビューに対して,Turtle BeachのFred Romano(フレッド・ロマノ)上級副社長は「ゲームに特化した音づくりをDolby Laboratoriesに依頼している」という旨の発言をしていたが,PX5の音を聞く限り,Dolby Headphoneの効果は他社製品と大きく異なるものではない。
 やや気になったのは,全体的にエコー感が強く,「タッタッ」という足音が「ダララ,ダララ」とモジュレーションがかかって聞こえること。ちょっと後ろが広がり過ぎの感じもする。

 で,プリセットはゲームでも4の「Bass Boost+Treble Boost」がオススメ。高域が多少強めに聞こえるものの,高域をロストせず「さすが50mmドライバー」という重低音を楽しめるのはプリセット4であり,これは「2万円台半ばという投資に見合った音質傾向」といってよさそうだ。
 もっとも,このあたりは好みなので,ゲームで使う場合は,MAINとプリセット4を聞き比べて,気に入ったほうを使うのが恐らく正解だろう。

 面白かったというか興味深かったのは,先ほど「ゲーム用途に特化した」と紹介したプリセット6〜8。例えばBlack Opsのゾンビモードなどは,プリセット6や7を選択しておくと,相当にわずかな音量でもガンガン持ち上がってくるため,「あ,何か来たぞ」とすぐ気づけるようになる。

Turtle Beach,Ear Force
 また,プリセット8は,全体的にダイナミックレンジを圧縮していて,音楽だとまさに聞くに堪えないチューニングなのだが,意外とBlack Opsなら聞けてしまう。なんというか,プリセット名の「Super Human Hearing」の名前の通り,むやみに派手な音質傾向なのだが,プレーヤーによってはこのモードで得られる妙な高揚感を気に入るのかもしれない(というか,アメリカ人の多くはこういうかっとんだチューニングが嫌いではないのかも)。

 ただ,プリセット6&7でも,近い足音と遠い足音は区別なく大きくなってしまうので,Black Opsにおける通常のマルチプレイだと遠近感が分かりにくくなってしまう。また,Halo: Reachの場合は,プリセット6&7だと,低音感溢れるアンビエントなどが全部削られてしまって,なんだか損をした気分になるし,8もコンプレッション設定がマッチしない印象で,少なくとも筆者はこれらを使ってHalo: Reachをプレイしたいとは思わない。
 要するに,プリセットの音質傾向はゲームによってはまったりはまらなかったりするので,一度試してみるのがいいということになる。


マイク入力にはさまざまなプロセッサが

こっそりかかっている模様


 マイクのテストに移ろう。
 前述したとおり,今回,PC接続時の周波数&位相特性のグラフ掲載は見送り,PS3およびXbox 360接続時に実際に担当編集とボイスチャットを行っての評価となる。
 両動作モードでは,Bluetoothかコントローラ経由の2.4GHz帯かという伝送方式の違いはあるものの,PlayStation NetworkやXbox LIVEに接続した時点で「携帯電話よりはいくらかマシ」という程度の品質になってしまうため,接続方式による音質の違いのようなものはないといっていい(※テスト時は筆者も担当編集もFTTH接続しているので,この部分のロスは考えにくい)。

Turtle Beach,Ear Force
 ちなみに,どちらの動作モードにおいても,ネットワーク越しにPX5ユーザー側へ届く声には,Noise GateとChat Boost,Multi-Band EQの3プロセッサがいずれも適用されているようだ。
 Noise Gateはそのままノイズゲートで,先方がしゃべっていないとき,オーディオ信号自体をミュートして聞こえなくするプロセッサ。ボイス入力用としては極めて一般的な機能だ。Chat Boostは,Turtle Beachが「Dynamic Chat Boost」としてとくに推しているプロセッサで,端的にいうと,ゲームサウンドの音量に応じてチャット音声の音量も大きくするというものなのだが,今回試した限り,そうは聞こえなかった。動的ではなく,常に+何dBかブーストされている(≒音量が上げられている)印象である。
 最後のMulti-Band EQは,複数の周波数帯域を増減するイコライザーだと思われる。こちらもボイス品質向上には必須の機能だ。

 一方,PX5のユーザーがしゃべって,ネットワーク越しに自分の声を相手へ伝える場合は,Chat Boostが無効になり,代わりに「Level Control」「Voice Morph」「MIC Monitor」が有効になる。
 といっても,声の高さを変えてくれるプロセッサで,モンスターのような声や,ヘリウムガスを吸ったような声にできる,いわゆるピッチシフター機能を提供するVoice Morphは初期値のMAIN+8プリセットでは無効。プリセットエディタを使って有効化して初めて利用可能になる。
 また,Level Controlは,常識的に考えればAGCなのだろうが,情報がないので何ともいえない。

 最後にMIC Monitorはマイク有効時,常に自分の声を小さくヘッドフォンに返す機能である。レイテンシは感じられないので,これを聞く限り,マイク自体の品質は非常に高いような印象を受ける。計測できないので,あくまでも印象レベルでしかないが。

Turtle Beach,Ear Force
 ……と,機能面を厚めに解説してきたが,結論をいうと,PS3,Xbox 360問わず,ボイスチャット周りの品質は高いレベルにあるといっていいだろう。とくに,チャット相手が(お世辞にも品質が高いとはいえない)Xbox 360純正ヘッドセットを使っている場合でも,別段聞こえづらくはなかったので,この点は特筆していいように思われる。

 ただ,PS3,Xbox 360接続時のどちらも,しゃべりはじめとしゃべり終わりで音が切れることがあるのは少々気になった。ネットワーク品質とか,ゲーム機側の仕様という部分もあるので,完全にPX5のせいというわけではないのだが,他社製品と比べるとノイズゲートのかかり方に明らかな違いがあるので,PX5のノイズゲートがやや効き過ぎているのではなかろうか。


正しいプリセット選択が幸せの秘訣

自分でいろいろ試せる人向け


 びっくりするほど長くなってしまった。
 PX5は,プリセットの選択次第で,ダイナミックレンジはおろか,聞こえる音質傾向をもがらりと変えてしまうヘッドセットだ。なので,プリセットの選択を前提にすると,プレゼンスがやや強い以外は,プリセットでどうにもでなる。ある意味,非常に便利な製品である。音楽試聴時には「あり得ない」ような音質傾向が,Black Opsのゾンビモードではアリだったりしたあたりは,今さらながら「ゲームだけに向くチューニングというのはあるのだなあ」と感嘆させられる。

Turtle Beach,Ear Force
 個人的には,ゲームならプリセット4が一押し。フラット好きならMAINも有力な選択肢になる。自分がプレイするゲームで,1と5以外のプリセットをMAINともどもひととおり試し――2Dゲームなら1と5を試してもいいが――て,ゲームと相性がいいと感じたプリセットを選択するのが,PX5の無難な使い方になると思われる。相性のよくないプリセットのままだと残念なことになりかねないので,英語マニュアルやTurtle Beachのサポートページを熟読して,プリセットという概念に慣れるのが先決だ。

 ただ,これは,「日本語の説明がほとんどないまま放り出されたような状態になる」のと同義でもある。Turtle Beachは,将来的な日本語サポートの拡充を予告しているが,少なくとも現時点で日本語サポートは皆無に近く,そういうのを不親切だと思う人には向かない。そして,その場合には,イマドキのワイヤレスヘッドセット,しかも高級品であるにもかかわらずバッテリーが充電式でないとか,マイクの周波数特性や聞こえ方は十分なのだが,ノイズゲーティングがやや強すぎるとか,そういった細かい部分も気になってくるだろう。
 また,音楽をメインに考えている場合,2万5000円も払うなら,もっといい製品が多くある。PX5はあくまでもゲーム特化型ヘッドセットである考えておいたほうがいい。

 その意味でPX5は,英文ドキュメントをじっくり読みながら設定を追い込んでいくような作業を,「自分でいろいろ試せる」とプラスに捉えられる人に向いた製品だといえる。Bluetooth 2台同時ペアリング機能も含め,使い勝手は非常に高いので,いま挙げた条件をクリアできる人なら,購入して後悔することはないはずだ。

Turtle Beach公式サイト

  • 関連タイトル:

    Turtle Beach,Ear Force

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2019年05月〜2019年11月