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印刷2015/08/10 17:16

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ゲームは今後,学校のカリキュラムを改革する存在に? 「Minecraft × Education 2015」の基調講演「ゲームが変える未来の教育」をレポート

 2015年8月8日および9日の両日,イベント「Minecraft × Education 2015 〜こどもとおとなのためのMinecraft〜」が,東京都内で開催された。このイベントでは,「コンピュータゲームを使った教育を考える」ことをコンセプトに,会場では「Minecraft」を用いたワークショップや,ゲームと教育に関するカンファレンスが行われた。本稿では,8月9日に行われた基調講演の中から,東京大学助教の藤本 徹氏による「ゲームが変える未来の教育」の模様をレポートしよう。

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会場には多くの「Minecraft」ファンの親子連れが集まっていた
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東京大学助教 藤本 徹氏


 最初に藤本氏が説明したのは,ゲームを使った教育が「新しい試み」とされがちな反面,実はかなりの歴史を持っているということだ。たとえば有名なボードゲーム「モノポリー」は,徴税や土地などの財産占有の概念を学ぶためのゲームだった「The Landlord's Game」を,よりエンターテイメント向きにしたもの。つまり「The Landlord's Game」が誕生した1900年代初頭には,すでにゲームを教育に使おうという動きがあったというわけだ。

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 近年でも1990年代以前には,軍事演習やビジネス研修でボードゲームのようなものを使う「シミュレーション&ゲーミング」や,ゲームを含めコミックやテレビ番組などのエンターテイメントを通じて教育を試みる「エンターテインメントエデュケーション」といった形で,研究が進められてきた。

 また,一般家庭にPCやゲーム機が普及し始めた1990年代には,「エデュテイメント」という言葉が登場し,CD-ROMなどを使って学習要素を持つコンテンツに対する取り組みが活発に。2000年代には,軍事や医療,ビジネスなどさまざまな分野で使われていた教育用ゲームを,ひとくくりに「シリアスゲーム」とする動きが見られた。

 そしてここ数年では,世の中のさまざまなサービスにゲームの要素を組み込もうという概念のもと,「ゲーミフィケーション」の取り組みが盛んになっている。これは従来の取り組みとは異なるアプローチで,たとえばシリアスゲームなら最終的な形はあくまでもゲームだが,ゲーミフィケーションではまったく異なるサービスの形にゲーム的な要素を取り入れているのである。

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 こうしたゲームを使った教育に関する研究は,海外では非常に進展しており,各分野で多くの論文や書籍が発表されている。
 そういった動向がなかなか伝わってこない日本ではあるが,それでもこの10年でゲームに対する認識は変わりつつあると藤本氏。その一例として紹介されたのが,2002年の書籍「ゲーム脳の恐怖」と,2012年の書籍「ゲームにすればうまくいく」だ。前者ではゲームが子どもに与える悪影響が取り上げられ社会的にも注目を集めたが,その10年後にはゲームの持つ側面がビジネスに役立つ要素として紹介されており,世の中の風潮が変化していることが見て取れる。

同じ出版社が正反対のキャッチコピーを打っているところも,この10年程度でゲームに対する認識が変わったことを示していると言えるかもしれない
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北米にて,ゲーム開発者がさまざまな形で起用され活躍している事例も紹介された
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 続いて,ゲームを教育に取り入れている事例がいくつか紹介された。その一つが,書籍「テレビゲーム教育論」の著者であるMarc Prensky氏の息子Sky君のケースである。彼は「Minecraft」のコアプレイヤーで,11歳にしてほかのプレイヤーをサポートするサーバー管理者を務めているという。また映像編集ソフトの使い方を学び,チュートリアル動画を作成してYouTubeの自身のチャンネルで公開するなど,積極的に情報の発信や共有を試みているとのことである。

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 また「もじぴったん」の開発者である中村隆之氏の息子さん達も,「Minecraft」内でキャラクターやゲーム作りを積極的に行っているとのこと。「Minecraft」のキャラクターを,手作りのペーパークラフトで再現するようなこともしているそうだ。
 藤本氏は,これらの子ども達の活動について,自身が楽しいと思うことを取り入れていくことで,生活の中で遊びと学びが展開されているとの見解を述べた。

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ゲーム学習の事例として「Rocksmith」も紹介された。このゲームは,リアルのギターをコントローラとして使うため,やり込むと実際の演奏もできるようになる
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エレメカ「ワニワニパニック」を改良したリハビリマシンが,お年寄りの身体能力向上や,認知症の早期発見に役立っているという事例も紹介された

 最後に,ゲームを教育に取り入れていくにあたっての留意点が示された。まず藤本氏が指摘するのは,「ゲームを教育に取り入れる意味」である。
 その大前提として,ゲームは「意味ある活動」(Meaningful Play)でなければならない。つまり,別にやらなくても生活上まったく困らないことに,あえてプレイヤーを挑戦させる意義を持たせるということである。

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 そしてもう一つ,ゲームに参加する人としない人の境界(マジックサークル)が存在することも重要だ。たとえばスポーツにおいて選手には観客と異なるルールが適用されるように,ゲームのプレイは日常生活とは異なる価値観とルールが存在する世界で行われる。そのため,ゲーム内では失敗が許され,そこから学ぶこともできるし,また普段では絶対できないこと,やらないようなことも試せるのである。

藤本氏がキャリア教育研究のために作ったカードゲーム「ジョブスタ」も紹介された。このゲームでは,将来どのような仕事が登場するか,その中で自分は何に興味があるかを考えることとなり,ひいては自分の強みを知り自信を高める効果があるという
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 しかし,これまで紹介されきたようにゲームが受け入れられている一方で,ゲームを敬遠する人も少なからずいる。その理由としては,まず「これをやれ」と強制されてプレイするゲームは,あまり楽しめないことが挙げられた。
 またゲームで勝った場合には嬉しいし楽しいが,負けた場合につらい思いをするのが嫌だという人もいる。関連して,自分だけルールを把握できていなかったり,あるいは習熟していなかったり,ほかの人と対等に遊べないという状況が起こりがちなのも,ゲームが敬遠される理由の一つだという。さらに,自分が分からないゲームなのに,ほかの人達が楽しんでいるのを見て疎外感を感じることを嫌う人もいる。
 藤本氏は,ゲームを教育に取り入れるにあたり,誰でも参加できるような特別ルールを用意するなど,ゲームを嫌う人達に配慮する必要があると述べる。

 また世間一般の風潮として,まだ「ゲームとは,子どもにとってあまり良くないもの」という意識は根強い。しかし藤本氏は,子ども達はゲームを通して未来への準備を始めており,上記のSky君の事例のように創造的価値が生まれる可能性があるとし,それを親の「よく分からない」「ネットにつながることで何か問題が起きるかもしれない」といった意識によって狭めてはならないと語る。

 そして「子どもがゲームにのめり込んで言うことを聞かない」といった意見については,それが本当にゲームだけのせいなのか,ひょっとして家庭環境や学校でのいじめなど,ゲームに逃避せざるを得ない原因がほかにあるのではないかを問うていく必要があるとした。

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 最後に藤本氏は,今後さらに高まっていくゲームの社会的価値について言及。まずゲームは,従来の小説,映画,コミックがそうであったように,今後も良質なエンターテイメントとして発展していくことに加え,「教育や社会問題解決のためのツール」として,今後は学校が対応できていない課題を解決するものとして活躍する場が増えていくだろうとの見解が示された。

 さらに藤本氏は,「社会の仕組みや活動を支える要素」として,行政の構造や学校のカリキュラムなどに変革をもたらす手段にゲームが活かされるのではないかと述べ,そう遠くない将来には,これまでの教育を「そんな古くさい方法で学んでいたのか」と振り返るような世界が来るのではないか,それを踏まえて子どもの教育を考えていくといいのではないかとして,講演を締めくくった。
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