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男ならこの戦い,負けられぬ……。「放課後ライトノベル」第109回は『彼女たちのメシがマズい100の理由』で食欲の秋!?
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印刷2012/09/15 10:00

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男ならこの戦い,負けられぬ……。「放課後ライトノベル」第109回は『彼女たちのメシがマズい100の理由』で食欲の秋!?



 9月も中盤に入り,気づけばすっかり秋めいてきた。秋といえば読書の秋,そして食欲の秋ということで,今回は料理を扱った作品を紹介したいと思っていたのだが,料理を扱ったライトノベルって意外と少ないのである。

 漫画の世界では,少年誌から青年誌に至るまで,さまざまな雑誌に1つや2つは連載されており,中にはスシ専門やカレー専門の料理漫画まであるぐらいだ。それなのに,ライトノベルでは,なぜあまり姿を見ないのか?

 大きな理由としては,絵を一枚どーんと見せるだけで説得力を出せる漫画に比べ,文章だけでおいしさを表現するのが難しいということがあるだろう。とは言え,食事はあらゆる生活における最重要事項。もっとおいしそうな料理が登場するライトノベルがあってもいいのではないだろうか。

 そんなことを考えていたら,第17回スニーカー大賞で優秀賞を受賞した作品が料理を扱っているではないか! というわけで,今回の「放課後ライトノベル」で紹介するのは食欲の秋にピッタリの作品,『彼女たちのメシがマズい100の理由』だ……って,あれ,あんまりピッタリじゃない気がしてきた。

男ならこの戦い,負けられぬ……。「放課後ライトノベル」第109回は『彼女たちのメシがマズい100の理由』で食欲の秋!?
『彼女たちのメシがマズい100の理由』

著者:高野小鹿
イラストレーター:たいしょう田中
出版社/レーベル:角川書店/角川スニーカー文庫
価格:600円(税込)
ISBN:978-4-04-100497-5-C0193

→この書籍をAmazon.co.jpで購入する


●一見,おいしそうな美少女たちとの共同生活だが……?


 両親のイギリスへの海外赴任が決まったことで,いきなり独り暮らしを余儀なくされた愛内葉介(あいうちようすけ)。最初のうちこそ,家族がいない生活の解放感を満喫していたものの,これまでろくに家事をしたことがない高校2年生男子にとって,突然の単身生活は荷が重かった。うまく行かないことばかりで生活は2週間めで早くも破綻寸前。そんな事態を救ってくれたのが,彼の幼馴染みである香神紅緒(かがみべにお)だった。

 整った外見に加えて,淑やかな性格。学校内では成績優秀で,友人たちからの信頼も厚い。幼馴染みの葉介に対しては大変面倒見が良く,炊事洗濯掃除から家計のやりくりまで,嫌な顔一つせず率先して行ってくれる,パーフェクト幼馴染みだ。ただ,そんな完璧超人である彼女にも,たった一つだけ意外な弱点があった。
 そう,料理が致命的にマズいのである!

 しかし,そこまで尽くしてくれる幼馴染みに対して,お前の料理はマズいから食えないと言うほど,葉介はヒドい男ではない。生活能力は無くとも,それくらいの甲斐性はある。というわけで,毎日朝と夜に紅緒の料理を我慢しながら食べる辛い日々を送ってきたのだが,そんな彼の家に,ある日,ブロンドの美少女がやってきた。

 彼女の名前は,リリィ・アップルガース。イギリス人と結婚した叔父さんの娘であり,葉介の従姉妹に当たる存在だ。彼女は葉介の家にホームステイをするためにやってきたのだという。いきなりの話に混乱する葉介だが,どうやらリリィは料理の腕に自信があるらしい。これはメシマズ生活脱却のチャンス! ……だが,イギリスといえば,料理がアレなことで有名な国なわけで……。

 かくして,羨ましいハーレムに見せかけた,地獄の釜のような生活の蓋が開く――。


●独自に味付けされた,ヒロインたちの恐るべき個性に注目!


 タイトルからも予想がつくように,本作に登場するヒロインたちが作る料理はどれも酷い。しかも,ヒロインごとにその酷さのタイプがバラバラなのである。

 幼馴染みの紅緒は,別に手先が不器用というわけではない。自分の料理が下手であることも自覚している。それなのに,作る料理は毎回大失敗。その秘密は彼女の味覚にある。とはいえ味覚障害というわけではく,むしろその逆で,何を食べてもおいしいと感じてしまうのだ。その結果,さらなるおいしさを求めたり,栄養面や彩りにも気を配ったりして独自のアレンジを加えてしまう。

 例えば,ふりかけ感覚でご飯にパブロンをかけたり,色彩を整えるためレーズンとパイナップルとグリーンピースの炊き込みご飯を作ったり。見ているだけでもゲンナリするのに本人はそれをおいしそうに食べるから,ますます性質(タチ)が悪い。

 一方,イギリス育ちで大胆なスキンシップを得意とするリリィは,料理の味付けもかなり大胆。英国名物フィッシュアンドチップスを作れば,これでもかと言わんばかりに油でギトギト。それに追い討ちをかけるが如く,ヴィネガーをバシャバシャ。同じく英国名物スコーンを作れば,一つで700キロカロリーの超激甘な物体ができあがる。あらゆる味付けが大雑把すぎであり,強Pと強Kのみで格ゲーをやっているようなものである。

 そんな彼女たちの料理に耐えられず,葉介はクラスメイトの無愛想女子・花菱(はなびし)カロンに助けを求めるのだが,カロンはカロンでカロリーメイトやドーナツに,激辛デスソースをかけて食べる超辛党。しかも基本的に一切家事をする気がないダメ人間。
 さらに葉介には,カブトムシの幼虫やゲンゴロウなどを調理して食べさせようとする,ゲテモノ好きな妹まで存在する。メシマズの世界は二重三重に奥が深い……!


●メシマズという珍味な題材。その味やいかに?


 こうして書くと,本作には想像を絶する恐ろしい料理が次々と登場するように思うかもしれないが,正確にはそうではない。本作で描かれる料理は,どれも普段の食卓において身近な食材が使われており,想像を絶するのではなく,味が想像できてしまう種類のマズさなのだ。スパロボでいうとスーパー系ではなくリアル系。その気になればご家庭でも簡単に再現可能である!

 そうしたマズい料理を作る彼女たちの姿を見て,近頃流行している残念系ヒロインを連想する人も多いだろう。表面上は完璧に見える美少女ヒロインだけど,実は人格に問題があったり,致命的な欠点が隠されていたり……というアレだ。しかし,本作のヒロインたちは人格に問題があるわけでもなければ,欠点を隠しているわけでもない。

 どの娘も,好きな人においしい料理を食べてもらいたいと心の底から願っている。女の子同士が集まっても,修羅場が展開されるわけでもなし。みんないい娘ばかり。今時これだけ真っ当な性格のヒロインが揃っているのも珍しいぐらいだ。問題は,彼女たちの作る料理が死ぬほどマズいことだけなのである。

 そして本作は,その“メシマズ”というネタを武器に見事新人賞を射止めた。新人賞受賞作といえば,普通はある程度完結した形になっているのだが,本作は受賞後に改稿が加わったことで,続刊を期待させる強烈な引きで終わっている。

 次回は,どのようなメシマズな刺客が姿を見せるのかというのも気になるところだが,それ以外にも,「ヒロインたちがおいしい料理を作れる日は来るのか?」や「ハーレム系作品にお約束の主人公争奪戦は勃発するのか?」など,正統派なラブコメ的視点からも続きが気になる作品である。興味を持った人は,ぜひご賞味あれ。

■読むと思わず空腹になる“メシウマ”なライトノベル

『ベン・トー サバの味噌煮290円』(著者:アサウラ,イラスト:柴乃櫂人/スーパーダッシュ文庫)
→Amazon.co.jpで購入する
男ならこの戦い,負けられぬ……。「放課後ライトノベル」第109回は『彼女たちのメシがマズい100の理由』で食欲の秋!?
 メシマズな小説を紹介していたら,何だか無性にひもじい気持ちになってしまったので,今回は口直しに食事の描写がおいしそうなライトノベルを紹介しよう。
 まず最初に取り上げたいのが,半額弁当の奪い合いという,このうえなくみみっちいはずの話をアクション小説にまで昇華した『ベン・トー』。半額弁当をめぐる熱いバトルや,主人公・佐藤洋の変態性,必要以上にフィーチャーされているセガの話などに目を奪われがちだが,タイトルにもなっている弁当の描写も実に凝っている。冷静に考えると,たかが弁当でそこまで必死になるなよと言いたくなるのだが,勝利の末,手にした弁当をうまそうに食べる登場人物の姿を見ると,殴り合いが起こるのも仕方がないと感じてしまうから不思議である。
 次に紹介するのが,米澤穂信の〈小市民〉シリーズ(創元推理文庫)。平穏に日々を過ごしたいはずの小鳩くんと小山内さんが,あれよあれよと身の回りの事件に巻き込まれていくミステリー。もちろんミステリーとしても素晴らしいのだが,この作品で注目したいのは,作中に登場するスイーツの数々。作品のタイトルに入っている「いちごタルト」や「栗きんとん」はもちろん,ミルフィーユやシャルロットやクレームブリュレなど,数々のスイーツの味や見た目を丹念に描写し,読者の食欲をかきたてる。しかし,そんな甘いデザートばかりが登場するにも関わらず,物語の結末はなぜかいつも苦々しい。
 食べるだけでなく,きっちりと料理もしている作品として紹介しておきたいのが,似鳥航一の『白奈さん、おいしくいただちゃいます』(電撃文庫)。城之内白奈のおいしい料理を食べれば,どんな問題も解決するという発想によって結成された「料理事件部」。そこに所属する部員たちが,吸血鬼の噂や,謎の白い液体を飲ませる宇宙人など,校内や町内で起こるさまざまな謎に挑む。オカルト風な謎を,料理や食べ物の知識で紐解いていく展開が面白い。こちらの面々はちゃんとおいしい料理を作っています。
 今回の執筆にあたって調べてみたら,予想外に少なかった料理系ライトノベル。もしかすると,次なるヒット作の可能性はここに眠っているのかもしれない。

■■柿崎憲(ライター/孤独のグルメ)■■
『このライトノベルがすごい!』(宝島社)などで活動中のライター。駆け込みで入った下町の定食屋で豚肉いためライスをかき込みながら,「男の誰もが一度は憧れる料理といえばやはり女体盛りですが,あれを実際にやると刺身に体温が移ってぬるくなってしまうので,あんまりおいしくないらしいですよ」と,どこかで仕入れてきた受け売りの知識を得意げに披露する柿崎氏。余計な心配しなくても,そんなこととは一生縁がないから黙って食え。
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