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「放課後ライトノベル」第96回は『魔法少女育成計画』で増えすぎちゃった魔法少女を半分に減らします
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印刷2012/06/16 10:00

連載

「放課後ライトノベル」第96回は『魔法少女育成計画』で増えすぎちゃった魔法少女を半分に減らします



「出ーろーよー,いい加減SR島村さん出ろよー。お願いします,出てきてください……

 そんなモバマスプロデューサーの悲鳴をよく耳にした一週間ですが,皆さんいかがお過ごしでしょうか? 巷では良くも悪くもいろいろと話題のソーシャルゲームですが,ここ最近はスマートフォンの普及もあって,プレイヤーが一気に増えたような印象があります。
 パズルゲームの要素を追加し,ゲーム性を向上させた「パズル&ドラゴンズ」や,『とある魔術の禁書目録』の鎌池和馬がシナリオを手がける「拡散性ミリオンアーサー」など話題作も次々と登場し,コンシューマ機では大作志向が強まる一方で,今後ソーシャルゲームがどのように発展するかは気になるところです。

 そんなわけで,今回の「放課後ライトノベル」はソーシャルゲームを題材にした『魔法少女育成計画』を紹介しよう。可愛らしい表紙に,“育成計画”というほのぼのとした響き。これはきっと萌え萌えな女の子たちと,ほんわかできるお話なんじゃないかな? かな? ……あれ返事がない。

「放課後ライトノベル」第96回は『魔法少女育成計画』で増えすぎちゃった魔法少女を半分に減らします
『魔法少女育成計画』

著者:遠藤浅蜊
イラストレーター:マルイノ
出版社/レーベル:宝島社/このライトノベルがすごい!文庫
価格:690円(税込)
ISBN:978-4-7966-8039-4

→この書籍をAmazon.co.jpで購入する


●人気ゲームと都市伝説の関係


 スマートフォンの低価格化に伴い,ソーシャルゲームが爆発的に増加していく中で,ひときわ人気のゲームがあった。それが「魔法少女育成計画」だ。可愛らしい魔法少女のアバターと,徹底した無課金というゲームデザインが人気の要因だが,世間ではこのゲームに関する,ある噂が流れていた。魔法少女育成計画をプレイすると,何万人かに一人が本当に魔法少女になれる。ネットのまとめサイトでは,ゲームで使われるアバターとよく似たコスチュームを着た魔法少女たちの目撃証言が集められていた。

 そして,その噂話は本当だった。魔法少女育成計画をプレイしていた人々の一部は,ゲームのマスコットキャラ・ファブによって力を与えられ,現実の世界でも魔法少女となるのだ。人々を助け善行を積むと,アイテムのマジカルキャンディーが手に入る。元々,魔法少女に憧れていたということもあり,彼女たちは,外れた自転車のチェーンを直すというちょっとしたものから,マフィアの拠点を壊滅させるというド派手なものまで,各自さまざまなところで活躍していた。

 しかし,そんな楽しい時間も長くは続かない。ある日,ファブから彼女たちに重大な発表がもたらされる。魔法少女の数が16人と増えすぎてしまい,充分な魔力の供給ができなくなったので,半分の8人になるまで,これからは毎週一人ずつマジカルキャンディーの数が少なかった魔法少女に脱落していってもらうというのだ。

 一週間後,その言葉どおり一人の魔法少女が脱落してしまう。そこでファブは魔法少女の一人・クラムベリーから,脱落した魔法少女はどうなってしまうのかと質問を受ける。

 ファブ:資格を奪われた魔法少女は死んじゃうぽん
 クラムべリー:魔法少女として死ぬ、という比喩的な意味でですか?
 ファブ:生物として息の根が止まるってことぽん

 かくして,魔法少女たちの命がけの戦いが幕を開ける――。


●16人の怒れる魔法少女+1


 最初はまじめに,人助けによるキャンディー集めで勝ち残ろうとしていた魔法少女たち。しかし,やがてほかの魔法少女を襲ってキャンディーを奪えばいいと考える者が現れ,ついにはそれが互いの命を狙った戦いに発展していく。本作は,それぞれの魔法少女の視点を行き来する群像劇的なスタイルとなっているのだが,参戦する16人全員のキャラが見事に立っているのが凄い。

 小さな頃から魔法少女に憧れていた,ちょっと夢見がちな少女・姫河小雪(ひめかわこゆき)は,困っている人の心の声を聞くことができるスノーホワイトに変身する。しかし,人助けは得意でも戦闘用の能力を持たない彼女は,バトルロイヤルのような状況では圧倒的に不利。そのスノーホワイトの一番の味方が,魔法騎士ラ・ピュセルだ。スノーホワイトを守ろうとする彼女の正体は,小雪の元同級生の岸辺颯太(きしべそうた)。名前のとおり男の子だが,変身中はしっかり美少女になってしまう。

 ほかにもウェスタンスタイルな服装で,ヤクザから奪ったトカレフを撃ちまくる,無法者のカラミティ・メアリ。魔法の箒で空を飛べる,いかにも魔女といった感じのトップスピード。仲間を集め,弱い者から狙っていこうとたくらむルーラ。これに対して皆で話し合い,戦いを避けようとするシスターナナなど,実に個性豊かな面々が揃っている。
 16人というのは数が多すぎて把握しづらいかもしれないが,カラーページの見開きで全員ずらりと紹介されているので,そちらを見れば分かりやすい。ただ能力のネタバレもされてしまっているので,ネタバレがイヤだという人は,公式ブログの「こちら」の紹介を見てもらうと良いかもしれない。

 そして,これらの魔法少女以上に強烈な個性を振りまいているのが,ゲームのマスコットキャラであり,戦いの進行役でもあるファブ。邪悪なマスコットキャラといえば,今や/人◕‿‿◕人\←こいつの代名詞だが,本作に登場するファブにはもう一つ,ソーシャルゲームの運営という,さらに邪悪な属性がプラスされているのだ。「みんなに迷惑をかけることになってホントにホントにごめんなさいぽん」と,表向きは下手に出つつ魔法少女たちを地獄に叩き落としていくし,中盤では戦いが有利になるアイテムの購入チャンスを設けて,戦いの激化を煽っていく。しかも魔法少女育成計画は無課金だからといって,アイテムの代償として金の代わりに××を要求するのだから,タチが悪い。


●血で血を洗う超高密度の魔法少女バトル!


 そんな曲者や色物揃いの本作だが,何より注目すべきは物語の密度と展開の速さだ。一人につき一つの能力という異能バトルのお約束を守りつつ,魔法少女たちがあの手この手で互いを騙し,欺き,裏切って,わずか300ページにも満たない本編で二桁の数の魔法少女が次々と死んでいく。

 しかもこの作者,殺す時は情け容赦なくズバっと殺す。こいつはもうちょっと活躍するだろうと思っていた人物もあっさりと死ぬ。愛する人に最後の言葉を言い残す暇すら与えてもらえないほどあっけなく。しかも戦闘シーンは魔法少女ものでよくある「不思議な力でどっかーん!」みたいな感じではなく,刃物でぶっ刺したり,臓物がでろ〜んだったりと,とことん残酷である。

 ライトノベルはキャラクター小説とも呼ばれている。物語の中心となるのは魅力的なキャラクターであり,人気の出るキャラクターをたくさん登場させて大切に扱い,続刊やスピンオフなどでシリーズを展開させていくというのが昨今のトレンドだが,こうした流れに背を向けたかのごとき殺戮の大盤振る舞いは,山田風太郎の忍法帖シリーズを想起させるものがある。

 そして,これだけ好き勝手やってるように見えて,ところどころに張った伏線で読者を驚かせ,ラストでは物語を見事に完結してみせるのだから恐ろしい。「可愛らしいイラストの魔法少女たちに萌えたい!」「正義の主人公が邪悪な敵を倒すときの爽快な気分を味わいたい!」という人にはまったくお勧めできないが,理不尽な状況に追い詰められた少女たちが苦しんだりする様子や,次に誰が死ぬか分からないという独特の緊張感が好きな人は必読である。

 ちなみに,本作にも魔法少女に変身する少年が登場するが,作者の前作『美少女を嫌いなこれだけの理由』は,外見は金髪美少女,中身は中年のおっさんのサブさんを始め,奇妙な美少女ばかりが登場する怪作であった。この時は明るく楽しいコメディを書いていたはずなのに,どうしてこうなった……!?

■リア充が爆発して邪気眼を発症した新シリーズも同時発売

『しずまれ! 俺の左腕』(著者:おかもと(仮),イラスト:NOCO/このライトノベルがすごい!文庫)
→Amazon.co.jpで購入する
「放課後ライトノベル」第96回は『魔法少女育成計画』で増えすぎちゃった魔法少女を半分に減らします
 今回のコラムは,このラノ文庫の新シリーズつながりということで,今月同時に発売された『しずまれ! 俺の左腕』を紹介しよう。
 高校生・篠中紳士は友人も多く,誕生日には放課後にサプライズパーティーを開いてもらえるほどのリア充っぷり。しかし,好事魔多し。友人に呼び出された紳士に向かって謎の物質が飛来→激突→爆発し,紳士に病院送りに。死の淵の一歩手前で目を覚ました彼が病室で目にしたのは,とんでもない美少女だった。
 美少女曰く,彼女の正体は異世界の魔王。彼女が封印されていた石が紳士に激突したことで,今度は紳士の中に封印されてしまったらしい。魔王なので,当然その目的は世界を滅ぼすこと。けれど,しばらく紳士の体から出られそうにないし,とりあえずネトゲもしたいので,紳士の左腕だけでも使わせてほしいという。こうして紳士は,その左腕に魔王を宿す身となった。
 しかし,魔王がただ大人しくしているわけがなく,彼女が何かしようとするたびに紳士は左腕を押さえつけ,周りの人間に「僕に近寄るな!!」などと口走るはめに。そのせいで周囲からは,すっかり典型的な邪気眼扱いされてしまうのが笑える。いや,本当に左腕に魔王がいるんですよ。たまに触手とか出すんですよ。そんな魔王と紳士が奇妙な共同生活を送るうち,やがて2人の感情にわずかな変化が訪れ,その一方で魔王を捜す勇者や謎の組織も現れて……。
 メインキャラの魔王と紳士だけでなく,邪気眼扱いされる彼を見捨てない友人たち,勇者だけど受験のストレスで精神状態がちょっとアレな赤井川さんなど,登場人物は好感の持てる者ばかり。基本は楽しく読めるギャグメインのラブコメだが,後半には決めるべきところでしっかり決める,熱いバトル展開も盛り込まれたステキな一作だ。
 ちなみに前作の『伝説兄妹』では,主人公がかなり捻くれたダメ人間だったのに,今回は普通にナイスガイ。どうしてこうなった……!?

■■柿崎憲(ライター/しっぽもふもふ)■■
『このライトノベルがすごい!』(宝島社)などで活動中のライター。「アイテム課金は収入の30%まで! リボ払いダメ絶対!」を貫きたい健康優良不良プロデューサー。今回の原稿を送ってくるや否や,「それじゃあ,僕はアイドルサバイバルを勝ち抜いて赤城みりあちゃんをお迎えしないといけないので,しばらく旅に出ます。ここで上位に入らないと……!」と言い残して消息を絶った柿崎氏。その後,彼の姿を見た者はいない……が,いつものことなので心配する者もいないのであった。
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