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幼女と温泉の村へようこそ! 「放課後ライトノベル」第37回は『伝説兄妹3! 妹湯けむり編』で仁義なき選挙バトルに
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印刷2011/04/09 10:00

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幼女と温泉の村へようこそ! 「放課後ライトノベル」第37回は『伝説兄妹3! 妹湯けむり編』で仁義なき選挙バトルに



 アニメやゲーム,マンガなどを見ていると,実在の都市や,それをモデルにした街が舞台になっていることがしばしばある。近年では作品のファンが,舞台となった場所を実際に訪れる,いわゆる「聖地巡礼」も盛んになっている。筆者も横須賀をモデルにした街を舞台とする某ゲームにハマり,実際に横須賀に行って戦艦三笠を見学したり海軍カレーを食べたりした経験がある。いやあ懐かしいなあ。

 もっとも一口に「モデルにした」と言っても,風景だけを参考にしたものから,きちんとその街の特徴や名物を作中に取り入れたものまでさまざま。もちろんその街に関わりのある人にとっては,後者のほうがより嬉しいのは間違いないだろう。というわけで今回の「放課後ライトノベル」では『伝説兄妹!』をご紹介。

 このシリーズ,北海道は小樽が舞台となっているのだが,そのフィーチャーぶりがとにかく半端ないのだ。小樽在住の人もそうでない人も,読めばたちまちオタリスト(※小樽に詳しい人。筆者命名)になれること請け合いの作品なのである。今回はそんな『伝説兄妹!』の,最新第3巻をクローズアップしてみたい。
 ……え? 3巻は小樽が舞台じゃない? そんなぁ。

幼女と温泉の村へようこそ! 「放課後ライトノベル」第37回は『伝説兄妹3! 妹湯けむり編』で仁義なき選挙バトルに
『伝説兄妹3! 妹湯けむり編』

著者:おかもと(仮)
イラストレーター:YAZA
出版社/レーベル:宝島社/このライトノベルがすごい!文庫
価格:620円(税込)
ISBN:978-4-7966-8234-3

→この書籍をAmazon.co.jpで購入する


●始まりは,ダメ大学生と天才幼女の出会い in 小樽


 主人公は小樽に実在する小樽商科大学に通う大学生,柏木絆(かしわぎきずな)。ライトノベルで大学生が主人公というだけでも珍しいが,この柏木,とにかく主人公とは思えないほどのダメ人間。講義はサボるし,友人から借りた金は返さないし,趣味で作る詩の内容はとにかくヒドい。そのくせ妙に自信家で態度だけはデカかったりする。そんな柏木が,手持ちの金が尽きたため食料を求めて山に入り,川に流されてある洞窟にたどり着いたところから物語は始まる。

 洞窟の中で,柏木は一人の幼女と出会う。幼女は自分の名前もどこから来たのかも分かっていなかったが,人をとてつもなく感動させるほどの詩才を持っていた。柏木は彼女を連れて帰り,自分の弟子として(表向きは妹として)家に住まわせることにする。デシ子と名づけた彼女の,その才能を使ってひと儲けするために……。

 と,そこから柏木とデシ子との奇妙な日常が始まるわけだが,主人公の設定が設定だけに行動範囲はほぼ小樽周辺に限られている。ということで必然的に小樽の描写が増えてくるのだが,驚くなかれ,小樽運河を始めとする世間的に有名な場所はほとんど出てこない。代わりに登場するのは,ビクトリア(北海道ローカルのファミレス)やルタオ(小樽ローカルの洋菓子店)といった地域生活に密着した場所ばかり。駅前の長崎屋(デパート)やウイングベイ小樽(ショッピングモール)といった超々ローカルな場所まで登場する,まさに小樽市民歓喜の一作なのだ。

 ちなみに小樽はアニメや実写映画にもなったマンガ『最終兵器彼女』(高橋しん/小学館)の舞台でもある。同作に出てくる地獄坂や展望台などは当然『伝説兄妹!』にも出てくるので,サイカノファンもぜひ手に取ってみてほしい。


●ローカルからグローバルへ! 圧倒的なスケール感に驚嘆せよ


 と,ローカルな見どころばかりを取り上げてしまったが,ストーリーの内容はそうではない。むしろ逆に,舞台がほぼ小樽で完結しているとは思えないほど,毎回大スケールの物語が展開される。
 読めばすぐに読者も察することと思うので明かしてしまうのだが,デシ子は実は人ではなく,ある強大な力を持っている。そんなデシ子やその同類たちの持つ力によって,毎回とんでもない事態が引き起こされるのだ。

 例えば1巻では,前述のように柏木がデシ子を使って金儲けをたくらむのだが,その結果世界が滅びる寸前にまでなってしまう。2巻では「モテたい」という動機から,柏木が謎のモテ薬を飲んだことによって,北海道全土を巻き込む一大事件が起こる。なぜそんなことになるのかは,ぜひ一人ひとりに確かめてもらうとして,とにかく1冊を通じて驚くほどスケールアップするのがこの作品の魅力の一つである。

 そして第3巻では,遺書らしきものを残して失踪した友人を追って,柏木たちは山奥の温泉村を訪れる。そこではなんと,幼女だらけのアイドルグループ,TKB48を中心とした幼女たちによる村おこしが行われていた! しかし村が潤う一方,その強引なやり口に反発する村人が幼女たちと対立し,来るべき次期村長選挙に向けて仁義なき抗争が勃発。柏木とデシ子はそれに巻き込まれることになる。

 1,2巻は我欲のために行動した柏木が,それによってひどい目に遭う……というのがお決まりのパターンだったが,3巻ではそれに加えてデシ子も暴走。制止役を失っていよいよ収拾がつかなくなった事態がどう決着するのかが見どころだ。


●伝説的兄妹の,騒がしくもあたたかな日々の物語


 あふれんばかりの小樽リスペクトと,規格外のスケールアップ感を兼ね備えた『伝説兄妹!』だが,タイトルにもあるように,本シリーズは柏木とデシ子という兄妹の話でもある。

 再三書いているように,主人公と呼ぶにはどうにもダメダメすぎる柏木。しかし別の見方をすれば,今までになく人間臭い主人公であるとも言える。人間誰しも欲に流されることがあるものだし,傲岸不遜な態度も,才能のない自分に対するコンプレックスの裏返し。その振る舞いに眉をひそめる人がいる一方で,少なからず共感を覚える人も(とりわけ彼と同じ男子大学生には)いるはずだ。

 そしてそんな柏木だからこそ,ときおり見せるデシ子への愛情は胸に迫るものがある。当初は打算的な考えで住まわせるようになったデシ子だが,やがて柏木の生活にとってかけがえのない存在になっていく。強がりで,本当は弱い人間の柏木と,人知を超えた力と幼子の天真爛漫さを併せ持つデシ子。これはそんな二人の,家族愛の物語でもあるのだ。興味を持った人は,レーベル公式サイトのブログに番外編が掲載されているので,まずはそちらで雰囲気をつかんでみるのもいいだろう。

■まだまだある,実在の地名をモデルにしたライトノベル

『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』(著者:西尾維新,イラスト:竹/講談社文庫)
→Amazon.co.jpで購入する
幼女と温泉の村へようこそ! 「放課後ライトノベル」第37回は『伝説兄妹3! 妹湯けむり編』で仁義なき選挙バトルに
 今回のコラムでは『伝説兄妹!』のように,実在の地名と深く関わりのあるライトノベルをご紹介。
 まずは「化物語」シリーズでアニメファンにも広く知られるようになった西尾維新のデビュー作「戯言」シリーズ(講談社文庫)。主人公の住んでいるところが京都市内で,たびたび事件の舞台にもなる。地名などもほぼ現実に忠実なので,作中の登場人物の移動経路をなぞることも可能だ。
 続いては多方面にわたってメディア展開された,橋本紡の出世作『半分の月がのぼる空』(アスキー・メディアワークス)。作品の舞台として三重県伊勢市が全面的にフィーチャーされており,実際に聖地巡礼に訪れるファンも多いようだ。2010年に刊行された完全版ではセリフが伊勢弁に改められるなど,同地への強いこだわりが感じられる。
 最後はちょっと変り種として,田中哲弥の「大久保町三部作」(ハヤカワ文庫JA)を紹介。『大久保町の決闘』『大久保町は燃えているか』『さらば愛しき大久保町』の3作からなり,いずれも「架空の」兵庫県明石市大久保町を舞台としている。もっともその描かれ方はといえば,巻ごとにガンマンの町になっていたりナチスに占領されていたりとやりたい放題。実在の地名を出しつつその実情が現実とまったく異なるという,先に挙げたほかの作品とは真逆を行く作品としてピックアップしてみた。

■■宇佐見尚也(ライター/地方妖怪マグロ)■■
『このライトノベルがすごい!』(宝島社)などで活動中のライター。「導入部で挙げた某ゲームのヒロインの中ではなごみが好きです。なんか“3学期”も出たらしいですが,どうなんですかねえ」だそうです。3学期のことはよく分かりませんが,とりあえず背の高い年下の女の子に罵倒されるのが好きだということは分かりました。
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