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ミニスカートの死神と4つの魂の物語。「放課後ライトノベル」第89回は『ベイビー、グッドモーニング』を紹介
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印刷2012/04/21 10:00

連載

ミニスカートの死神と4つの魂の物語。「放課後ライトノベル」第89回は『ベイビー、グッドモーニング』を紹介



 もう4月も後半を迎えましたが,皆様,新生活には慣れたでしょうか?
 新しいクラスメイトと知り合ったり,あるいは新社会人になったりと人さまざまだと思いますが,何はともあれ,まずはゴールデンウィークまで頑張りましょう!

 ちなみに僕はこれといってすることもないので,毎日朝からゲーセンに通って,「機動戦士ガンダム エクストリームバーサス フルブースト」を延々とプレイしています。まさか,15年ぶりにブルーディスティニー1号機を操れるとは……。ねえねえ知ってる? 昔,セガサターンってハードがあってだね(以下略)。

 そんな思いがけない出会いと別れがあるのが春という季節。先日は,本連載で紹介した『サクラダリセット』が全7巻で完結を迎えました。しかし,今回の「放課後ライトノベル」で紹介するのはそちらではなく,『サクラダリセット』の作者とイラストレーターのコンビが送る短編集『ベイビー、グッドモーニング』。ミニスカート姿の死神の少女と,死を目前にした4人の男女の交流をご覧ください。

ミニスカートの死神と4つの魂の物語。「放課後ライトノベル」第89回は『ベイビー、グッドモーニング』を紹介
『ベイビー、グッドモーニング』

著者:河野裕
イラストレーター:椎名優
出版社/レーベル:角川書店/角川スニーカー文庫
価格:660円(税込)
ISBN:978-4-04-100214-8-C0193

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●死神らしくない死神の少女


 本作は短編集ということもあり,毎回語り手が変わるのだが,その中で常に物語の中心にあるのが,死神の少女だ。死神といってもその外見はいたって普通。黒い服は暑いから着たくないと言って,ユニクロで買った白いTシャツとデニムのミニスカートに身を包み,普通にアイスクリームを食べるし,死神の象徴である大鎌を持っていない代わりに,携帯電話は持っている。

 一見するとどこにでもいる普通の女の子だが,中身はやはり普通ではない。彼女は自分が回収する魂を濁らせないようにするため,もうすぐ死を迎えようとする人間の前に現れ,淡々と死の宣告を行う立派な死神なのである。

 一話めの「A life-size lie」は,長い入院生活を続けている中学生の少年が主人公。7月末のある晩,激しい発作が彼を襲う。彼が静かに自分の死を受け入れようとしたところへ,一人の少女が姿を見せる。「私は死神です」と名乗ったその少女は,「誠に勝手ながら、寿命を三日ほど延長させて頂きました」と言って彼の発作を治めてしまう。

 翌日,目を覚ました彼は再び死神の少女と出会う。自称死神の話によれば,彼女が彼を助けたのは,7月に集める魂のノルマをクリアしたので,8月になるまでもう3日間だけ生き延びてもらいたいからだという。長年の闘病生活で生きることを諦めつつあった彼だが,明確に余命を宣告されたことでその心境に変化が生じる。そして彼は,毎日お見舞いに来る幼馴染の少女・佐伯春花(さえきはるか)に対してどのような別れの言葉を残すべきかを考え始める。


●死神が出会うさまざまな魂


 二話めは,スランプになった作家を主人公にした「ジョニー・トーカーの『僕が死ぬ本』」。ジョニー・トーカーという名前ではあるが,その正体は純粋な日本人。児童書の作家として次々に作品をヒットさせていった彼は,やがて自分が本当に書きたかったのは,たくさん売れて一般受けするような小説ではなく,もっと別のものだと考えるようになる。

 そして彼は『僕が死ぬ本』を書き上げることで,作家としてのジョニー・トーカーを社会的に抹殺し,かつての編集者からのメールや電話も無視して,あてもなく理想とする小説を追い求める日々を送る。そんな彼のもとへ,死神の少女が一冊の本を届けにやってくる。
 三話めの「八月の雨が降らない場所」では,人生に疲れて自殺を考える女性と,他人を幸せにするために,突拍子もないアイデアを考え出した男の出会いと別れが描かれる。

 ここまでの三話は,基本的にどれも死を迎えようとする人物の視点から物語が語られている。だが,昔サーカスでクラウンをやっていたという祖父と,血の繋がらない孫の交流を描いた四話めの「クラウン、泣かないで」は,死にゆく老人を見送る少女の視点で物語が進められ,それまでとは少し違った展開が切なさを増幅する。


●人は最期に何を残していけるだろうか?


 死神の少女に死を宣告された人々の運命に例外はない。そこには奇跡など存在せず,老いも若きもみんな死んでいく。では,これが救いようのない残酷な話なのかというと,決してそんなことはない。突然,もうすぐ自分が死ぬという事実を突きつけられたら,人はどうするだろう? やけっぱちになってしまったり,ひたすら遊んで過ごしたりするかもしれない。

 だが本作で描かれる人物が,残された時間をそのように使うことはない。彼らは残りわずかな時間を,あとに残される者たちのために使おうとする。それが優しく,そして強くなければできない行為だからこそ,彼らの最期は読む者の心を打つ。そして,4つの人生を読み終えたあと,最後の最後でこれまでまったく無関係に思われていたタイトルの意味が明らかになってしまうと,もう落涙必至である。思わずズルいと言ってしまいたくなる。

 毎日の生活を前向きに生きているか,ダラダラ過ごしているかは人それぞれだが,どのように生きても,いつかは死を迎える時が来る。だからこそ,たまには本作のような作品を通じて,死というものに向きあってみる機会は必要なのかもしれない。
 ちなみに,Web上の読み切り短編として,本作の番外編である『グンナイ、ダディ――死神のスタンス』(※要Adobe Flash Player)が公開されている。こちらは狂言回し的な役割だった死神の少女の内面に焦点を当てた内容になっている。本編を読み終わった人が読めば,死神の少女に対する印象がまた微妙に変わってくるだろう。

■さまざまな死神が登場する作品を合わせてチェック

『死神の精度』(著者:伊坂幸太郎/文春文庫)
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ミニスカートの死神と4つの魂の物語。「放課後ライトノベル」第89回は『ベイビー、グッドモーニング』を紹介
 ライトノベルで死神といえば,真っ先に思い浮かぶのがアニメ化や実写化もされたハセガワケイスケの『しにがみのバラッド。』(電撃文庫)だろう。こちらも『ベイビー、グッドモーニング』と同じ短編集。おせっかいな死神の少女モモと仕え魔のダニエルが,死の間際にある,少年少女の願いを叶えようとする物語だ。詩的な文章と優しいモモの性格が,読む者の涙を搾り取ろうとします。
 一方,青少年から別のものを搾り取ろうとするのが,橘ぱんの『だから僕は、Hができない。』(富士見ファンタジア文庫)。こちらに登場する死神は,契約すると快適な人生をサポートしてくれるという大変フレンドリーな仕様。主人公の良介は,偶然出会った死神の少女リサラと契約して同居することに。可愛い女の子と一つ屋根の下という大変羨ましい状況ながら,性欲が湧きあがるたびにそれを吸収されてしまうという,生殺しな寸止めエロが心地よい。
 また,ライトノベルではないが,『サクラダリセット』や『ベイビー、グッドモーニング』が好きだという人にぜひ読んでもらいたいのが,伊坂幸太郎の作品。多少ひねくれたキャラクター達の軽快な会話や,ユーモラスな比喩表現,散りばめられた伏線を綺麗に回収していく手腕など,河野裕と共通する部分が多い。その中でも文春文庫から出ている『死神の精度』は,こちらも死神を主人公にした短編集。『ベイビー、グッドモーニング』との大きな違いは,語り手を務めるのが死神の男・千葉という点。死神ならではのドライな視点から語られる物語は,死を扱っているにも関わらずサッパリとしており,OLから殺人犯に至るまで,さまざまな人生を楽しませてくれる。

■■柿崎憲(ライター/蒼を受け継ぐ者)■■
『このライトノベルがすごい!』(宝島社)などで活動中のライター。とくに生活に変化はないのに,4月に入ってから異様に忙しいらしい柿崎氏。録画したアニメは溜まってるわ,「魔法使いの夜」は積んでるわ,アイドルのプロデュースは滞ってるわで散々だそうだ。「一体何が原因なんでしょう? じゃあ,ちょっくらゲーセン行ってきます」と言い残して,いそいそと戦場に出撃していきました。蚊トンボのように撃ち落とされるといいと思います。
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