お気に入りタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

最近記事を読んだタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

LINEで4Gamerアカウントを登録
悪役プレイが格好いい。「放課後ライトノベル」第50回は『ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・デザイア』で,たまにはTRPGリプレイなんてどうでしょう
特集記事一覧
注目のレビュー
注目のムービー

メディアパートナー

印刷2011/07/16 10:00

連載

悪役プレイが格好いい。「放課後ライトノベル」第50回は『ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・デザイア』で,たまにはTRPGリプレイなんてどうでしょう



 「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」を筆頭に多数のゲームが作られ,テレビゲームの代表的なジャンルの一つとなっているロールプレイングゲーム(RPG)。この言葉,本来は別の使われ方をしていたことをご存じだろうか。

 役割を演じる(ロールプレイ)の名のとおり,RPGとはもともと,決められたルールや世界観のもと,プレイヤーが作中人物になりきり,会話をしながら進めていくテーブルゲームを指す言葉だった。そこでは現在一般的に言うRPGにおいてコンピュータが務めているゲームの進行役もまた,ゲームマスター(GM)と呼ばれる人間が務めることになる。このような,電源を必要としない本来のRPGのことを,日本ではテーブルトークRPG(TRPG)と呼んでいる。

 コンピュータRPGに慣れ親しんだゲーマーの中には,TRPGをアナログで古臭いと感じる人もいるかもしれないが,その魅力は決してコンピュータRPGに劣るものではない。コンピュータRPGではあらかじめ用意されたイベントしか起こらないが,TRPGではプレイヤーやGMの機転次第でどんなイベントでも起こすことができる。個々のプレイヤーがキャラクターになりきり,ゼロから物語を作り上げていく面白さは,コンピュータでは決して実現できない,人同士のゲームならではの醍醐味だ。

 とはいえ,電源を入れればすぐに始められるコンピュータRPGと違って,TRPGにはあらかじめ準備がいるし,何よりもそれなりの人数がひとところに集まることが必要となる。そうしたハードルの高さがTRPGのネックだが,プレイできなくても,その楽しさを間接的に味わえるものがある。それが,TRPGのプレイ風景をテキストに起こしたもの――「リプレイ」だ。

 今回の「放課後ライトノベル」では,そんな数あるTRPGリプレイの中から,2011年6月に堂々の完結を迎えた『ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・デザイア』を紹介したい。もともとTRPGとライトノベルには浅からぬ関係があるとはいえ,記念すべき第50回にライトノベルどころか,もはや小説ですらないものを紹介することになるわけだが,果たしてこれでいいのだろうか?
 いいんです!(某キャスター風に) なぜならとっても面白いからだ!

画像集#001のサムネイル/悪役プレイが格好いい。「放課後ライトノベル」第50回は『ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・デザイア』で,たまにはTRPGリプレイなんてどうでしょう
『ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・デザイア5 面影の古都』

著者:加納正顕/F.E.A.R.
イラストレーター:片桐いくみ
出版社/レーベル:富士見書房/富士見ドラゴンブック
価格:756円(税込)
ISBN:978-4-8291-4629-3

→この書籍をAmazon.co.jpで購入する


●全員が“悪役”!? 前代未聞のプレイヤーキャラ


 一見,現実世界と変わりないように見える近未来の日本。だがその裏では,レネゲイドと呼ばれる未知のウイルスによって超常的な力を得た者たち――オーヴァードが蠢いていた。ある者はその力を己の欲望のために振るい,またある者はその力で社会の秩序を守るために戦う。かくして平穏な日常の裏側で,日夜オーヴァード同士の戦いが繰り広げられる――これがTRPG「ダブルクロス」の世界観である。

 オーヴァードの中には,組織だって活動する者たちも多く,中でも代表的なのが,オーヴァードの保護・支援を目的とするユニバーサル・ガーディアンズ・ネットワーク(UGN)と,レネゲイドの力を用いてテロ活動を行っているファルスハーツ(FH)。前者が正義の味方で,後者が悪の組織,という構図だ。今回紹介する『デザイア』最大の特徴は,プレイヤーキャラクター(PC)全員がFHに所属しているということ。つまり,全員が悪の組織の一員なのである。

 4人のPCはFH内に数ある小グループ“セル”の一つ,「神曲」に属しており,精鋭部隊「ケルベロス」を構成している。「神曲」リーダー・永石美奈子(ながいしみなこ)を母と慕い盲信する少女・大文字朱香(だいもんじしゅか)。弟を救うため,氷の剣を手に取り戦う少女剣士・青峰(あおみね)ミユキ。復讐に冷たい炎を燃やすケルベロスのリーダー・闇条晃士朗(あんじょうこうじろう)。そして,「神曲」最強と呼ばれるオーヴァード・九鬼(くき)

 彼らに与えられた任務は,「至高天(エンピレオ)」なる物体の守護。起動すればどんな願いでも叶えてくれるというこの未知の物質は,その性質ゆえに多くの人間・オーヴァードから狙われる運命にあった。ケルベロスのメンバーもまた,それぞれが「至高天」に求める強い願い(デザイア)を抱えながら,京都を舞台とする激しい戦いに身を投じていく……。


●“絆”を力に,少女たちは強くなる


 はたから見れば,まぎれもないテロ組織の一員であるPCたちだが,決して残虐非道な悪人というわけではない。彼らがFHに所属しているのは各々の目的を果たすためであって,彼らもまた,嬉しいことがあれば笑い,悲しい出来事に涙を流す一人の人間なのだ。そしてそんな彼らも,戦いの中で少しずつ変化していく。

 たとえば母を信奉し,母の道具になりたいとすら発言していた朱香は,「至高天」に隠された謎や,他人との絆を知っていくにつれ,己の過ちに気づき始める。弟を助けることだけが願いだったミユキは,そのために他者を傷つけることに疑問を感じ始め,迷いの中で答えを探し求めることになる。晃士朗や九鬼も,それぞれ戦いの中で己の道を見つけ出していく。

 その過程で描かれる4人の関係性,これが実にいい。晃士朗・九鬼ら大人側が朱香・ミユキの女子高生二人を導いたり,逆に前者が後者に感化され,熱く闘志を燃やしたり。本来は任務上の付き合いだけしかないはずの4人だが,それだけに要所要所で見せる弱さや優しさが印象的。一見バラバラに見えて,その裏には確かな強い絆が見て取れる(なおこの“絆”,「ダブルクロス」においては「ロイス」という概念として扱われ,ゲーム上,非常に重要な役割を果たしている)。

 それが顕著に現れるのが戦闘シーン。4人はそれぞれ得意な戦闘スタイルを持ち,いざバトルとなると絶妙なチームワークを見せてくれる。朱香の炎があらゆる攻撃を防ぎ,ミユキの刃が堅牢な守りをも切り裂く。晃士朗の生む黒い風が眼前の敵を一掃し,九鬼がサポートデバイス“テセウス”と共に,さまざまな形で味方を支援する……。彼らの前に立ちふさがるのは常に一筋縄ではいかない強敵ばかりだが,彼らが苦戦を強いられつつも死力を尽くし,辛くも勝利を手にしていく様に,手に汗握らずにはいられない。

 軸となるストーリーも,謎が謎を呼ぶ展開で最後まで飽きさせない。朱香たちと幾度となく関わりあうUGNエージェントの少年・真田賢人(さなだまさと)を始め,PCに負けず劣らず魅力的なノンプレイヤーキャラクターたちが展開をさらに盛り上げる。1話ごとに異なる趣向で読み手とプレイヤーを楽しませながら,きちんと「物語」を組み立てていくGMの手腕は,まさに見事というほかない。


●物語をさらに盛り上げる,プレイヤーたちの妙技に酔え!


 もっともここまでに示した魅力は,リプレイでなく小説でも十分味わえる。リプレイならではの楽しさの一つが「プレイヤーの存在」だ。GMの用意した,凶悪で意外性あふれる展開に,あるときは悲鳴を上げ,またあるときは激しく突っ込みを入れる。そうしたプレイヤーのリアクションは,読者に親しみを感じさせ,感情移入する手助けをしてくれる。

 巧みなプレイングで物語を盛り上げる4人のプレイヤーは,さまざまな分野で活躍中のクリエイターたち。朱香を演じるのは,ゲーム「アイドルマスター」などで活躍中の声優・若林直美。ミユキを担当するのは,『アクセル・ワールド』(著:川原礫/電撃文庫)のコミカライズなどを手がけるマンガ家・合鴨ひろゆき。晃士朗は「ダブルクロス」の生みの親であるゲームデザイナー・矢野俊策が担当。そして九鬼は『レンタルマギカ』(角川スニーカー文庫)などの著者であるライトノベル作家・三田誠が演じている。いずれもキャラのツボを押さえたプレイングで魅せてくれるが,中でも母の道具を自認していた朱香が,驚くべき成長を遂げる様を見事に演じきった若林直美のプレイングには「さすがは役者」と唸るばかりだ。

 作中に頻出する専門用語の意味をきちんと理解するには,ルールブックなどを併せて読むことが必要だが,読まなくても前後の文脈からなんとなく雰囲気を読み取ることで十分楽しめるレベル(経験談)。当初,全4巻予定だったのが,好評を受けて全5巻になったという本作。リプレイには馴染みがないといった理由で読まず嫌いを決め込むには,あまりにももったいなさ過ぎる。

 悪の組織の一員である朱香とミユキの二人が,いかにして最終巻の表紙に見られる,幸せそうな笑顔を得るに至ったのか。元からのTRPGファンはもちろん,そうでもない人にもぜひ自身の目で確かめてほしい,TRPGリプレイの秀作だ。

■リプレイ未体験の人でも楽しめる,TRPGリプレイガイド

『アリアンロッド・リプレイ・ルージュ ノエルと薔薇の小箱』(著者:菊池たけし/F.E.A.R.,イラスト:佐々木あかね/富士見ドラゴンブック)
→Amazon.co.jpで購入する
画像集#002のサムネイル/悪役プレイが格好いい。「放課後ライトノベル」第50回は『ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・デザイア』で,たまにはTRPGリプレイなんてどうでしょう
 「TRPGリプレイ」と一口に言っても,プレイするゲームやテーマによって内容はさまざま。そこで今回のコラムでは,『デザイア』と同じ富士見ドラゴンブックで刊行されているものの中から,リプレイ未体験の人でも楽しめる(はずの)作品をいくつか紹介しよう。
 最初に紹介するのは『アリアンロッド・リプレイ・ルージュ』(全4巻+外伝1話)。TRPG初プレイとなる声優・力丸乃りこを主人公のプレイヤーに据えた,抱腹絶倒間違いなしの一作。前半は新米冒険者である主人公を周囲のベテラン(プレイヤーとしてもPCとしても)がサポートする形で和気藹々と進むが,後半に思わぬ展開が待ち受けており,それを乗り越えた先に待つ結末は実に感動的。初心者から熟練者まで幅広くおすすめできる名作リプレイだ。
 続いては,『デザイア』と同じ「ダブルクロス」のリプレイの一つである『ダブルクロス・リプレイ・トワイライト』(著:田中天/F.E.A.R.)。1930年代の世界各地を舞台に,東邦の快男児・天花寺大吾が快刀乱麻の活躍を見せる痛快娯楽活劇。当時の著名人や出来事が物語に深く絡んでくる一方で,ナチス超人兵団をはじめとするトンデモ兵士・兵器が大暴れするという豪快さが魅力。The 2nd Edition版の本編全3巻に加え,The 3rd Edition準拠の外伝1話がある。
 最後に紹介するのは既刊2巻を数える『シノビガミ・リプレイ戦(イクサ)』(著:河嶋陶一朗/冒険企画局)。プレイヤーたちが現代に生きる忍者となって活躍するTRPG「シノビガミ」のリプレイの一つだ。この『戦』ではPCが全員学園の生徒もしくは教諭となっており,彼らの丁々発止の掛け合いが楽しい一作となっている。一方でPC同士の戦いも幾度となく起こる,殺伐としていながらドラマチックな展開も魅力だ。

■■宇佐見尚也(ライター/欲望まみれ)■■
『このライトノベルがすごい!』(宝島社)などで活動中のライター。「もし『至高天』に願いを叶えてもらえるなら,まず真っ先に願いを100個に増やしてもらうのに……」という宇佐見氏は,『デザイア』世界にいたら真っ先にジャーム(レネゲイドに侵蝕されすぎて理性を失ったオーヴァード)化するに違いないと思いました。そこでとっさに,「ギャルのパンティをくれ!」と叫ぶくらいじゃないと。
  • この記事のURL:
4Gamer.net最新情報
プラットフォーム別新着記事
総合新着記事
企画記事
トピックス
スペシャルコンテンツ
注目記事ランキング
集計:08月13日〜08月14日
タイトル評価ランキング
77
ELDEN RING (PS5)
72
ELDEN RING (PS4)
61
54
ELDEN RING (PC)
53
48
2022年02月〜2022年08月