【ヒャダイン】とらわれのヒロインはトイレを我慢できるのかな

ヒャダイン/前山田健一 /  歌手・作詞家・作曲家・編曲家・プロデューサー

ヒャダインの「あの時俺は若かった」 ブログ：http://ameblo.jp/hyadain/

第3回「とらわれのヒロインはトイレを我慢できるのかな」

　ども。いきなりですがヒロインって，よくさらわれますよね。僕が今までやってきたゲームでざっと思い出してみたら，「FINAL FANTASY IV」のローザ，「ドラゴンクエストV　天空の花嫁」の「嫁」，「スーパーマリオブラザーズ」シリーズのピーチ姫などなど。
　まだまだいっぱいいると思うんですが，やっぱりストーリーの流れとしては，かわいこちゃんがさらわれて，とらわれる。それを主人公達が幾多の困難を乗り越えて助け出しに行くという展開は，実に分かりやすく，老若男女すべてに受け入れられやすいプロットでしょう。
　目的が明確なのは重要です。時々，大きな目的がよく分からなくて「ただの人助け」を繰り返すという，水戸黄門的な旅になってしまうRPGもありますからねえ。あれはキャラクターに共感しにくい。時々，「あれ，なんで俺このゲームしてんだろ……。何が目的だったけ……。あれれ，何で俺って生きてるんだっけ」と，悲惨な寂寞感に襲われることもしばしば。お願いです。ゲームの脚本家の皆様。ぎぶみー目的。

　それはさておき。昔からずっと疑問に思っていることがあるのです。これはまあ，ゲームに限ったことではないのですが，とらわれてグルグル巻きにされちゃうヒロイン。時にはさるぐつわまでされて，しゃべることすら禁じられちゃうヒロイン。

　……あのう。あのー……，あ，お食事中の皆様，ごめんなさい。でもね，いや，本当に気になるんですよ，トイレとか大丈夫かな？
　とらわれの身なので，食事なし，休憩なしは分かるんですよ。寝ようとしたら水ぶっかけられたり，立ちっぱなしで柱にくくりつけられたり（←これって，腰に悪いよなあ。俺もうオールスタンディングとか無理だもん）。
　だけどもだけど。こればっかりは，本人の意志だけの問題じゃないでしょう。ヒロインが飲まず食わずだろうが，悪人どもには関係ないでしょうが，こればっかりは，見て見ぬ振りもできなくないですか。
　グルグル巻きになってるんだから，当然身動き一つ出来ないわけで，御不浄なんて自由に行けるわきゃない。けど，ほったらかしにしていたら，我慢の限界がいずれ訪れるでしょ。

　そこで，いくつかパターンを考えてみました。具体的にイメージしやすいように，まずはゴルベーザにとらわれているローザを脳内再生してください。ローザごめんね。


●その1 必要なときだけ，グルグル巻きをほどいてくれる

　ローザがとらわれていたのは，ゴルベーザの部屋。しかもタイムリミット付きのギロチンが頭上に用意された状況でグルグル巻き。しかも，洗脳されたカインに四六時中監視されている。まさに極限状態ですよ。
　各種生理現象も引っ込むわ！　って話ですが，そこは人間。来るものは来る。ゴルベーザの部屋，見た感じそんな広くもありませんから，ここで粗相などされた日には，スメルが充満してしまうことでしょう。
　そこで，僕は考えた。カインは人類です。人間です。ということは，彼用の御不浄ぐらいは用意されているはずです。だからローザも，そろそろいかんというタイミングで，カインやゴルベーザに言うんじゃないでしょうか。「お花を摘みに行かせてくださーい」と。もちろんカインの監視付きで向かうことになるんでしょうね。
　丸腰で攻撃魔法も攻撃力も大したことないローザがそこで脱走する恐れもないでしょうし，まあ問題ないでしょう。カインにとって，これがラッキーなのかアンラッキーなのかは分かりませんがね。で，用を足したらまたグルグル巻きです。


●その2 その場で

　こっちのほうがリアルではあるんですよね。やはり人質として絶対逃したくない存在。一瞬たりとてグルグル巻きからリリースしたくないわけですよ。ということは，やはり，その場で。えええ。
　で，気になるのが事後処理でございますよ。まさか，ほったらかし温泉!?　いや，絶対にそれはない。ゴルベーザの神経質な性格からしてそれはあり得ない。ならどうしたか。簡単な話ですよ。


　何を唱えるかは，処理するものによって代わってきます。液体であるならば蒸発させるべきなので，ファイガかエアロガでしょうか。ちょっと規模がデカすぎですか。そうですか。ファイアかエアロぐらいにしておきましょう。
　では，固体の時はどうしましょうか。ファイア？　火葬？　いや，匂いが……。って考えたら，やっぱり冷凍が一番ですね。ブリザド？　いや，ブリザラのパキーンって感じのほうが，冷凍感は出てますよね。冷凍後はカインがゴミ箱に棄ててくれるでしょうよ。
　あと，いっそ生物にしちゃえ，ということで，トードなんてどうでしょう。アレがカエルちゃんになる。あら素敵。夢がありますね。ファンシーですね。


●その3 生理現象そのものを消し去る

　はい，読者の皆様，付いてきてますかー？　まだまだいきますよ。三つめ。生理現象そのものを消してしまう。どうすればいいのか。渋滞でトイレ問題に悩んでいるドライバーさん，必読ですよー。方法は一つ！　魔法，ならぬマ法を使えばいいのです。


　1989年にナムコから発売された，「ラサール石井のチャイルズクエスト」というファミコンのゲームがあります。3人の新人アイドル「チャイルズ」を育てるマネージャーとなって，いろんな経験をしながらチャイルズをスーパーアイドルに育て上げるというRPGでしたね。
　「ドラゴンクエストIII　そして伝説へ…」をパロったネタものですが，なかなか出来がよく，しかもシュールなところもあり，僕は良ゲームだと思っているんですけどね。ちなみにチャイルズは実在し，メンバーの一人はあの磯野貴理子さんです。ゲーム冒頭の紹介文より引用しますと……。

「きりこ：オチ担当。生まれつき顔がでかく，2歳にして神童と呼ばれ，4歳にしてグレ始める。一応，グループのリーダー。年齢は19歳，ただし妹は20歳。」

　シュールだ。

　そのゲームの中で，アイドル3人には「フマンド」というゲージがあり，敵にセクハラされたり，生理現象を我慢しているとこの数値が増えていき，100％になったら事務所の地下室に逃亡してしまう，という厄介なもの。
　そこで，「にょうい」（直球ですね）を取り除く方法として，デパートのトイレを借りる，もしくはアイテム「かみおむつ」を使用するというものがあるのですが，主人公のマネージャーがあるレベルで習得するマ法「しいここ」を唱えると，あら不思議。彼女達の生理現象は瞬く間に消え去っていくのです。

　俺は思うのです。ゴルベーザもジャミもクッパも「しいここ」をマスターしているのではないのか，と。恐るべし，チャイルズクエスト。恐るべし，マ法。
　うん。だってさ。グルグル巻きにされたヒロインって，ヒーローに救出されると速攻で抱き合うじゃん。ハリウッド映画だと熱いキスまでするじゃん。そこでベチャベチャだと，ヒーロー側が「うわぁ」ってなるもんね。やっぱり「しいここ」ですよ!!!


　と，三つの可能性について考えてみました。「ゲームはフィクションでファンタジーなんだから，そういうことを考えること自体ナンセンスだ」と思われる方が多数でしょう。
　その通りではあるんですが，僕は小さい頃からゲーム世界に没入するタイプの人間なので，フィクションと知りながらもそこにリアルを求めてしまうのです。「ファンタジーだから」という言葉で，すべてを片付けてしまいたくないのです！　同様に，「マンガだから！」「アニメだから！」という言葉でも片付けたくない。自分の中で現実世界となるべく近い所でリンクさせたい，という気持ちがあるのです。

　簡単にまとめると，中二病をこじらせているわけです。いまだに空を飛べると信じているし，波動拳もかめはめ波もメラゾーマも発動できると信じています。今こうして，ヒャダインとか音楽プロデューサーとかで音楽を発信していますが，フィクションを，ファンタジーを音に詰め込んで現実世界に発動している，そんな感覚です。なのでこの仕事，大好きです。

　さて，今宵も「しいここ」修得の為，頑張って曲を作ります。ヒロインのみんな，待っててね。

■■ヒャダイン/前山田健一（歌手・作詞家・作曲家・編曲家・プロデューサー）■■ 田中公平氏との対談ではとても真面目な様子だったのに……と思われる方もいるかもしれません。が，こうした振り幅があるからこそ，前山田氏の音楽作品はバラエティに富んでいるような気がします。なお，本文中で触れている「FINAL FANTASY IV」といえば，言わずと知れたスクウェア・エニックスの作品です。そんなスクウェア・エニックスが近日リリースするiOSおよびAndroid用オンラインカードバトルRPG「拡散性ミリオンアーサー」（iOS/Android）の音楽と，主題歌「Million of Bravery」（歌 ちょうちょ）の作詞・作曲・編曲をヒャダイン氏は手がけています（英語版はヒャダイン氏が歌ってます）。少し気まずい。あと，5月9日（水）には4thシングル「Start it right away」（TVアニメ「黒子のバスケ」のEDテーマ）を発売予定だそうです。