連載
【西川善司】6年モノのモバイルノートPCにSSDを搭載してみた話
西川善司 / グラフィックス技術と大画面とMAZDA RX-7を愛するジャーナリスト
(善)後不覚 |
HDMI編が終わったところで,今回は,よくあるPCアップグレード関連の話をしてみようかと思います。
2003年モデルの「LOOX T90D」を使い続けているわけ
ボクは元々,デスクトップPCをメインに考えるたちで,ノートPCは出張用という位置づけをしてきました。だから,ノートPCは「そこそこ高性能で,小型のものが1台があればそれでいい」と考え,小型ノートに興味を集中させてきたのです。逆にいうと,高性能な,でかいノートPCには興味がありませんでした。
実際,赤いトラックボールを搭載したLet'snoteシリーズや,CCDカメラ内蔵の先駆けとなったVAIO PCG-C1シリーズを使ってきたのですが,PCG-C1で,Transmeta製CPU「Crusoe」搭載モデルへ移行したときに,あんまりなパフォーマンスにおののき,小型さを最優先でノートPCを選んでしまうと,出張先や外出先で仕事をこなすのは無理だという結論に達しました。これが2003年くらいのときです。
この頃から,出張には,大型の高性能ノートPCと,小型のモバイルノートPCの2台体制で臨むようになっています。
絶対的なパフォーマンスは決して高くはありませんでしたが,LOOX-90Dはなかなかの名機だったといえます。10.6インチで,解像度1280×768ドットの液晶パネルは,モバイルノートPCとしては必要十分でしたし,光学ドライブ用のベイにセカンダリバッテリーを搭載可能で,デュアルバッテリー構成をとると,長時間のバッテリー駆動ができたのも便利でした。
外出先で本格的に原稿を執筆したり,ビデオや写真を整理したりといった作業はもっぱら大型のノートPCでやるようになった結果,メモを取ったり,Webブラウジングしたり,メールをチェックするような,今でいうNetbook的な利用であれば,2003年モデルのノートPCであるLOOX T90Dでも,性能面で,大きな不満はなくなったというのもあります。
2007年頃には,有志の間で,カタログスペック比で2倍となる,最大1GBのメモリモジュールを搭載するテクニックなども発見され,筆者手持ちのマシンも1GB化。寿命はさらに伸びて,気がつけば2009年です。なんと,6年もLOOX T90Dを使い続けていることになります。
ちなみにこの間,2006年頃だったと記憶していますが,取材先で机の上から落とされて内蔵HDDが壊れてしまい,一度,新しいHDDへ換装しました。
このHDDはつい先日まで問題なく動いていたのですが,最近になって「カチンカチン」という,ヘッドのリトライを繰り返しているような,耳障りな音がたまに聞こえてくるようになりました。
ええ,そうです。いよいよ,2代めのHDDにも死期が迫ってきたのです。
LOOX T90DのHDDをSSDに換装する
LOOX T90DのHDDインタフェースはいわゆるParallel ATA(以下,PATA)です。ご存じのように,ストレージインタフェースはSerial ATA(以下,SATA)が一般的なものになって久しく,PATA仕様の2.5インチHDDは,最近では入手しづらくなって,価格も割高になってきています。
TS64GSSD25-Mの製品ボックス。けっこう立派な化粧箱だ |
見かけは2.5インチHDDと変わらない。当たり前か |
そんなことを突然思い立って,インターネットで調べてみると,PATA接続のSSDは,種類こそ少ないものの,比較的簡単に購入できることが分かったので,今回は,Transcend製で容量64GBのMLCタイプとなる「TS64GSSD25-M」を購入しました。そのときの価格は,Amazon.co.jpで1万6995円(税込)です(※原稿執筆時点では,若干値上がりしているようですが)。
これまで使っていたのは東芝製HDDで,容量80GBの「MK8025GAS」だったため,ストレージ容量は若干少なくなりますが,もともとサブ用途なので,あまりに気にはなりませんでした。
LOOX T90DにおけるHDD/SSDの交換はとても簡単。底面のネジを4か所外すだけで,造作もなくストレージ収納スペースにアクセスできます。なお,言うまでもないですが,ストレージデバイスの交換は自己責任になりますので,(いまLOOX T90Dを使っている人がどれだけいるかはさておき)何かあっても責任は取れません。あしからず。
正真正銘,PATA接続のSSD |
交換は楽ちん |
さてさて。面倒なのはデータの転送です。
今回ボクは,LOOX T90Dから取り出した東芝製HDDをUSB接続型HDDケースに入れ,USB経由で,パーティションごとSSD上にクローンを作成する(=コピーする)ことにしました。
先ほど述べたとおり,LOOX T90Dは(基本的に)2スピンドルPCで,光学ドライブとして,DVD-RW対応のものがありますから,True Image 10はここから直接起動します。True ImageはUSB接続のHDDもきちんと認識してくれるため,USB→PATAというクローニングも問題なく行えるのです。
ただ,USB転送ということもあって,コピー速度はやたら遅い。20時間は待たされました。もっとも,問題はそれくらいで,Windows XPはOSごと転送され,クローニングしたSSDから,まったく問題なくWindows XPが起動してくれています。
50倍速くなったLOOX T90D!?
実際に使ってみると,OSの起動は明らかに速くなりました。ログオンしてから,実際にアプリケーションを利用できるようになるまでの待ち時間も,短縮されています。そしてなにより,カシャカシャという,HDDヘッドのシーク音がまったくないというのも,精神衛生上,たいへんよろしいです。
ただ,同時に複数のアプリケーションを起動したときなどは,HDDを利用していたときよりも,明らかにもたつきます。
SSDへのスワップが頻発すると,同一ページへのデータの読み書きを頻発させることになりますが,これがSSDにとっては非常に不得意なアクセスケースとなり,システムが極端に重くなるのです。いわゆるプチフリですね。
最新世代のSATA SSDだと,この問題はかなりの割合で解決していますが,そもそもLOOX T90DにはPATA接続という制約があるので,これはやむを得ません。
もっとも,意識してヘビーな使い方をしなければ,おおむね使い勝手は向上したといえます。
一応,定番のストレージベンチマーク,「Crystal Disk Mark」実行結果も示してみることにしました。
東芝製HDD,MK8025GASのテスト結果 |
Transcend製SSD,TS64GSSD25-Mのテスト結果 |
この結果を見る限り,HDDに対して,SSDは,
- シーケンシャル読み込みで4.1倍
- シーケンシャル書き込みで2.3倍
- 512KBランダム読み込みで6.3倍
- 512KBランダム書き込みで2.6倍
- 4KBランダム読み込みで51.2倍
- 4KBランダム書き込みで3.6倍
結論としてはLOOX T90DのSSD化,アップグレード施策としてはまずまずの良い結果が得られたと思います。これは,ノートPCに限った話でもないので,使っている古めのPCで,HDDが怪しくなったときは,一度,SSDに換装してみてはどうでしょうか。
■■西川善司■■ テクニカルジャーナリスト。4Gamerの連載「3Dゲームエクスタシー」をはじめ,オンライン/オフラインのさまざまなメディアに寄稿したり,バカゲーを好んでプレイしたり,大画面にときめいたり,観きれないほどBlu-rayビデオを買ったり,オヤジギャグを炸裂させたりして毎日を過ごしている。 |
- この記事のURL: