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  • 発表日:2009/09/23
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扱いやすさは上位モデル以上。「ATI Radeon HD 5850」レビューを掲載
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印刷2009/10/01 13:44

レビュー

サイズと消費電力はHD 4870から変わらないまま,3D性能が大幅に向上

SAPPHIRE HD 5850 1GB GDDR5 PCIE

Text by 宮崎真一

»  最短では2009年10月初旬に搭載グラフィックスカードの販売が始まると見込まれる,DirectX 11世代のGPU第2弾を,宮崎真一氏が速攻で検証する。これまた期待に応える製品に仕上がっているので,ハイエンド志向の人は要チェックだ。


SAPPHIRE HD 5850 1GB GDDR5 PCIE
メーカー:Sapphire Technology
問い合わせ先:アスク(販売代理店) info@ask-corp.co.jp
予想実売価格:3万3000円前後(※2009年10月1日現在)
画像集#002のサムネイル/扱いやすさは上位モデル以上。「ATI Radeon HD 5850」レビューを掲載
 DirectX 11世代の幕開けを華々しく告げた「ATI Radeon HD 5870」(以下,HD 5870)のデビューから1週間後となる2009年9月30日。AMDは,全世界のレビュワーに対し,この日をレビュー解禁日と設定していたが,それと同じタイミングで,4Gamerではその下位モデルとなる「ATI Radeon HD 5850」(以下,HD 5850)搭載のSapphire Technology製グラフィックスカード「SAPPHIRE HD 5850 1GB GDDR5 PCIE」(以下,SAPPHIRE HD 5850)を,同社の販売代理店であるアスクの協力で入手することができた。
 「GeForce GTX 285」(以下,GTX 285)より平均して30%高速とされるHD 5850だが,果たしてその実力はどれほどのものか。さっそく,テストを行っていきたい。


HD 4890&4870と同じ長さ

HD 5870比で40mm短いカードデザインを採用


SAPPHIRE HD 5850の外部インタフェースはDVI-I×2,HDMI×1,DisplayPort×1。これはHD 5870リファレンスカードと同じである
画像集#003のサムネイル/扱いやすさは上位モデル以上。「ATI Radeon HD 5850」レビューを掲載
 HD 5850の製品概要については9月23日掲載の紹介記事が詳しいが,簡単にまとめると,HD 5850は,シェーダプロセッサがHD 5870の1600基から1440基へと11%削減され,コアクロックは850MHzから725MHzへ,メモリクロックは4.8GHz相当(実クロック1.2GHz)から4GHz相当(同1GHz)へと,順に約17%,20%引き下げられたGPUだ。
 表1は,両GPUと,本稿で比較対象としたDirectX 10.x世代のGPUで,主なスペックを比較したもの。いま挙げた部分以外は基本的にHD 5870と同じなので,これら11〜20%のスペックダウンが,パフォーマンスにどれだけ影響するかが,本稿の焦点となるわけである。

画像集#020のサムネイル/扱いやすさは上位モデル以上。「ATI Radeon HD 5850」レビューを掲載

 テストに先立って,SAPPHIRE HD 5850を概観しておこう。
 本製品はAMDのリファレンスデザインを踏襲したモデルで,搭載するクーラーも,リファレンスカードと同一。Sapphire Technology以外の各カードベンダーも,当初はこのリファレンス仕様に準じた製品を市場投入することになるはずである。

SAPPHIRE HD 5850を別の角度から撮影したカット(左,中央)と,HD 5850リファレンスカードのカード背面(右)。カードデザインは見る限り完全に同じだが,リファレンスカードには,テスト用と思われるDIPスイッチがいくつか用意されていた
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GPUクーラーがカードからはみ出していたりはしないが,電源コネクタの向きが向きなので,PCケース側にスペースの余裕は必要となる
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 カード長は実測で241mm(※突起部除く)。「ATI Radeon HD 4890」(以下,HD 4890)や「ATI Radeon HD 4870」(以下,HD 4870)のリファレンスデザインと同じサイズだ。HD 5870では,カード全体を覆うGPUクーラーが,マザーボードと水平方向に少しはみ出していたが,HD 5850でそういうことはない。
 ただし,6ピン×2という仕様のPCI Express外部給電コネクタが,マザーボードと平行に取り付けられているのも,HD 4890&HD 4870から変わっていないため,PCI Express外部給電ケーブルを取り回すための空きスペースは,PCケース内に必要だ。

9.5インチ(約241mm)長のリファレンスデザインを採用したFORCE3D製のHD 4890搭載カード「Force3D HD 4890 GDDR5」を比較用リファレンスに,SAPPHIRE HD 5850(左)とHD 5870リファレンスカードのカード長を比較したところ。HD 5870と比べると,ずいぶん短くなっているのが分かる
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 銅製のベースと,2本のヒートパイプを採用した2スロット仕様の外排気クーラーを取り外すと,基板全体が見渡せるようになる。HD 5870と比べると,最大消費電力が下がった影響もあって,VRM部の面積が大きく減少しているが,基本的にはHD 5870のそれを踏襲しているような印象を受ける。

GPUクーラーを取り外したところ
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クーラーを覗き込むと,太いヒートパイプが2本走っているのを確認できる(左)。電源部はHD 5870と同じくデジタルPWM仕様。カードの背面に搭載するVolterra製のPWMコントローラ「VT1165MF」×1で制御しているようだ(中央,右)
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GPU-Z実行結果(※サムネイルをクリックすると,別ウインドウで全体を表示します)
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 搭載するメモリチップは,Samsung Electronics製の「K4G10325FE-HC04」(0.4ns品)で,これはHD 5870のリファレンスカードとまったく同じ。AMDのHD 5850リファレンスカードも,このメモリチップを搭載していた。TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.3.5)でクロックを確認すると,コアクロックが725MHz,メモリクロックが4GHz相当(実クロック1GHz)と,見事にリファレンスどおりだったので,SAPPHIRE HD 5850が搭載するメモリチップには,実クロックで250MHzと,かなり大きなマージンがある計算になる。

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HD 5850 GPU。先のレビューで用いたHD 5870リファレンスカードは「ENG」刻印入りだったが,さすがに今回は製品版だ
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大量発注のおかげ……だろうか。搭載するメモリチップはHD 5870リファレンスカードと同じ仕様のものだった

ATI Catalyst Control Centerから,アイドル時の動作クロックを確認したところ(※サムネイルをクリックすると,別ウインドウで全体を表示します)
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 ちなみに,「ATI Catalyst Control Center」から,アイドル時のクロックを見てみると,コアは157MHz,メモリは600MHz相当(実クロック300MHz)。HD 5870と同じ値だ。アイドル時の公称消費電力は,HD 5850とHD 5870で共通して27Wとされているが,これは,「ATI PowerPlay」の動作に違いがないからなのだろう。


HD 5870のレビュー時から環境を完全に流用し

可能な限りスコアも流用


 冒頭でお伝えしたとおり,筆者がSAPPHIRE HD 5850を入手したのは9月30日(昨日!)のこと。この状態から,とにかく早くテスト結果をお伝えすべく,比較対象のGPUについては,HD 5870レビュー時のスコアを――比較する必要性の低い「GeForce GTX 295」を除き――すべて流用することにした。そのため,テストに用いるグラフィックスドライバも,HD 5870のレビューに当たってAMDから提供された「8.66-090910a-088431E」となるほか,テストに用いたCPU「Core i7-975 Extreme Edition/3.33GHz」の「Intel Turbo Boost Technology」を無効化している点は,あらかじめお断りしておきたい。
 念のため,テスト環境は表2にまとめたので,目を通しておいてもらえれば幸いだ。

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 もちろんテスト方法は,HD 5870のレビュー時と同じく,4Gamerのベンチマークレギュレーション8.1準拠となるが,「Left 4 Dead」は,この間にエンジンバージョンが「1014」から「1015」へアップデートされ,スコアの流用が行えなくなったため,テストを省略することにした。
 なお,これも前回同様だが,テスト解像度は,1680×1050/1920×1200/2560×1600ドットの3パターンに絞っている。


GTX 285を凌駕する性能を発揮

HD 5870の8割ほどのパフォーマンス


 というわけで,グラフ1,2は,「3DMark06」(Build 1.1.0)の総合スコアをまとめたものだ。HD 5850のスコアは,HD 5870比で85〜95%といったところで,描画負荷が高くなればなるほど,(仕様上の差に近い)対HD 5870比85%程度にまで下がっていく。
 一方,高負荷設定でやや迫られるとはいえ,それでもGTX 285に対して7〜17%程度の差をつけている点も,見逃すわけにはいかないだろう。ATI Radeon HD 4800シリーズの上位モデル2製品と比べて,飛躍的に性能が向上していることも,グラフからは見て取れる。

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 さらに細かく分析すべく,解像度1680×1050ドット,「標準設定」における「Feature Test」の結果を見てみよう。
 グラフ3〜5は,順にFill Rate(フィルレート),Pixel Shader(ピクセルシェーダ),Vertex Shader(頂点シェーダ)のスコアをまとめたものだが,傾向そのものはHD 5870を完全に踏襲している印象だ。

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 同じくFeature Testから,汎用演算性能を見るShader Particle(シェーダパーティクル),シェーダプログラムの実行性能を見るPerlin Noiseの結果をまとめたのがグラフ6,7。ここでもHD 5850は,DirectX 10.x世代のGPUに大差を付けており,ポテンシャルの良好さが確認できる。

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 実際のゲームタイトルから,まずグラフ8,9は,FPS「Crysis Warhead」の平均フレームレートをまとめたものだ。
 3D描画負荷が非常に高いこともあって,大きな差はついていないが,GeForce有利なスコアの出やすい本タイトルで,HD 5850が,GTX 285と互角の戦いを演じている点は,立派の一言。また,HD 4890&4870からの上積みもかなり大きいといえる。

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 グラフ10,11は,同じくFPSから,「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)のテスト結果をまとめたものになる。
 標準設定のスコアは,端的に述べて3DMark06と同じ傾向。一方,4xアンチエイリアシングと16x異方性フィルタリングを適用した「高負荷設定」だと,HD 4870 X2のスコアが落ち気味で,結果,同製品とHD 5850,GTX 285がほぼ同レベルで並ぶことになった。シェーダプロセッサ数(≒テクスチャユニット数)がスコアを左右しやすいCall of Duty 4において,この結果になっていることから,HD 5850は,ATI Radeon HD 4800シリーズと比べて,高負荷環境でのスコアの落ち込みが少なくなっているといっていいだろう。

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 GeForce系に有利なスコアが出る「バイオハザード5」だと,HD 5870はGTX 285に惨敗を喫していたが,HD 5870と同じ傾向を示すHD 5850も,その流れからは逃れられない(グラフ12,13)。ただ,HD 5850のスコアが,HD 4890と同程度というのは,ほかのテスト結果と見比べるに,低すぎると言わざるを得ないだろう。ドライバの最適化によって,まだ十分な伸びしろがあるともいえるわけで,AMDドライバチームのがんばりに期待したいところだ。

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 続いてグラフ14は,RPG「ラスト レムナント」のテスト結果である。GeForce系に有利なスコアが出やすい本タイトルにおいて,HD 5870がGTX 285を上回るスコアを叩き出したのは記憶に新しいが,さすがにHD 5850だと,GTX 285の後塵を拝してしまう。
 とはいえ,「HD 4870 X2に迫り,HD 4890&4870を圧倒する」という観点では,ほかのテストと基本的に同じ傾向である。

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 最後に,ATI Radeonに有利なスコアが出やすいレースタイトル,「Race Driver: GRID」(以下,GRID)のスコアを,グラフ15,16でチェックしてみると,標準設定で,HD 5850とHD 4870 X2の差が大きくない点が目を引く。おそらくGPU負荷が低すぎて,GPU間の調停などがボトルネックとなり,後者のスコアが伸びきらないのだろう。HD 5850がシングルGPUソリューションであることの安定感を再確認できるスコアといえる。
 HD 5850がGTX 285を子供扱いしているのも,なかなか印象的だ。

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アイドル時の消費電力は折り紙付き

高負荷時もHD 4870程度のスコアを実現


 極めてインパクトの高い消費電力のスコアを示したHD 5870。HD 5850は,最大消費電力の値が,HD 5870の188Wから151Wに下がっている一方,外部給電仕様は6ピン×2で変わらないという懸念点もあるが,果たして実際のところはどうなのか。OS起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,各タイトルごとの実行時とし,HD 5870のレビュー時とまったく同じ条件で,消費電力値を測定することにした。

 その結果をまとめたのがグラフ17で,これを見る限り,アイドル時の消費電力はHD 5870とまったく同じ。AMDは,アイドル時におけるカードの消費電力がどちらも27Wであると発表しているが,それが証明されたことになる。

 一方,各アプリケーション実行時の消費電力は,多少バラつくものの,HD 5870と比べるとおおむね30W前後,GTX 285比では80W前後も低い。もっというと,HD 4870とほぼ同じだ。HD 5800シリーズが持つ,消費電力当たりの性能がいかに優秀かが,あらためて示された格好だ。

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 消費電力が低いとなると,(HD 5870と同じく)GPU温度の低さにも期待が持てる。そこで,3DMark06を30分間連続実行させた状態を「高負荷時」として,アイドル時と合わせて,GPU-ZからGPUの温度を取得することにした。その結果をまとめたのがグラフ18である。
 テスト時の室温は(HD 5870のテスト時と同じく)24℃。システムも,前回のレビュー時と変わらぬ場所に置いてあるので,横並びの比較には十分耐えるという判断をしているが,さすがにGPUクーラーが小さくなっているためか,アイドル時のGPU温度は,HD 5870よりもHD 5850のほうが多少高くなった。もっとも,GTX 285よりは低く,冷却面でこれといった心配はないだろう。
 そしてそれは,高負荷時でも変わらない。

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 なお,GPUクーラーの動作音は,筆者の主観であることをお断りした上で述べると,HD 5870比で,高負荷時に若干大きくなっている。GPU温度を70℃程度で収めるべく,ファン回転数を上げているのではなかろうか。
 「耳障り」というレベルではないが,「HD 5870比で,高負荷時の動作音が大きくなっている」とはっきり体感できる程度の違いはあることは覚えておきたい。


DirectX 11世代の人気モデルとなるか

コストパフォーマンスの高さが魅力


製品ボックス。販売代理店によるSAPPHIRE HD 5850の想定売価は2万円台後半だ。ちなみに店頭での“初値”は3万円台前半になると見られている
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 HD 5870は,新世代のハイエンドGPUとして,実に魅力的なパフォーマンスを発揮したが,実勢価格が5万円前後,かつカードサイズが大きいという点で,どうしても人を選ぶものになっていた。その点で,HD 4890を圧倒し,GTX 285と同等以上というパフォーマンスを発揮しつつも,カードサイズと消費電力でHD 4870と変わらないHD 5850が,2万円台後半〜3万円台中盤の価格で店頭に並ぶ見込みというのは,大変魅力的だ。

 HD 5870の販売状況からして,流通量に一抹の不安は残るものの,懸念材料はその程度。これから3万円前後でハイエンドクラスのGPUを手に入れたい人達の間で,HD 5850に注目が集まるのは間違いない。
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    ATI Radeon HD 5800

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