連載
インディーズゲームの小部屋:Room#497「Last Day of June」
読み終わった文庫本400冊を売却して3000円をゲットした筆者がお届けする「インディーズゲームの小部屋」の第497回は,Ovosonicoが開発した「Last Day of June」を紹介する。本作は,交通事故で亡くした妻を助けるため,最後の1日を繰り返すというアドベンチャーゲームだ。1冊あたり,たったの7.5円だと……。
物語の中心になるのは,真ん丸眼鏡をかけた,ちょっと頼りなげな男性カールと,絵を描くのが得意な明るい女性ジューン。本作では,文字や言葉による表現は一切使われていないが,どうやら2人は新婚のようで,お互いを深く想い合っている様子が伝わってくる。しかし,そんな仲睦まじい2人に不幸が訪れる。ある日,2人のお気に入りの場所である湖を見に行った帰り,カールの運転する車が事故を起こして,ジューンが亡くなってしまうのだ。
カール自身も車椅子が必要な体となり,失意のなかで過ごしていたある夜,ジューンがアトリエに残した絵が不思議な光を放っていることに気づく。そして,その絵に触れた瞬間,カールは事故が起こったその日へとタイムスリップする……。ゲームの目的は,過去をやり直して事故を未然に防ぎ,ジューンの命を救うことだ。
とは言え,本作では過去の自分自身の行動を直接変えることはできず,事故の原因につながる4人の住人の行動を変化させていくことになる。しかし,誰かの行動を変えることで,別の誰かが事故の原因となることもあり,一筋縄にはいかない。
たとえば,ボール遊びをしていて道路に飛び出してきた男の子の行動を変え,祖父と凧揚げをするようにした場合,凧揚げのロープでトラックの荷台を固定しようとしていた別の人物がそれをできなくなり,荷崩れが原因で結局事故が起きてしまうといった具合だ。
実際のゲームプレイでは,プレイヤーは4人の村人を操作して,事故の原因を取り除くように行動していく。ときには,別の人物があとからそこを通れるように,障害物をどけたり,門を開けておいたりといった,ちょっとしたパズルもあるが,それほど難しいものではない。また,村の中には住人達の思い出の欠けら(のようなもの)が落ちており,それを集めることで彼らの思い出をかいま見られるといったコレクション要素もある。
こうして,住人達の行動を変えていくが,何度やっても事故を防ぐことはできず,いらだちを募らせていくカール。どれほど過去をやり直してもまゆしぃを助けられなかったオカリンの苦悩を,こんな形でまた味わうことになるなんて……。果たして,カールはジューンを救うことができるのか。ぜひ,自分の目で確かめてみてほしい。
本作は,プログレッシブ・ロックバンドPorcupine Treeでの活動などで知られるミュージシャン,Steven Wilsonの曲「Drive Home」にインスパイアされたという作品で,本作の楽曲制作には当人が参加している。ゲームというよりは,3時間ほどでクリアできるインタラクティブムービーといった感じだが,感傷的なストーリーと余韻の残るラストを堪能できる作品なので,興味を持った人はぜひどうぞ。そんな本作は,Steamにて1980円で発売中だ。
■「Last Day of June」公式サイト
http://www.lastdayofjunegame.com/en/- この記事のURL:
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