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インディーズゲームの小部屋:Room#189「Cthulhu Saves the World」
久しぶりに,心の底から「これはヒドイ!(いい意味で)」と思えるネタに遭遇したので,「インディーズゲームの小部屋」の第189回は,Zeboyd GamesのRPG「Cthulhu Saves the World」を紹介する。直訳すると「クトゥルフは世界を救う」。どう考えても,完全に一発ネタである。そう,これは邪悪の化身クトゥルフが,真のヒーローとなるべく世界を旅する物語なのだ。
そもそも,なぜこんなことになったのか? それは,気が遠くなるほどの永い眠りから覚めたクトゥルフが,そろそろ地上を狂気に陥れてやろうかなと海底都市ルルイエから意気揚々と上陸しようとした矢先,何者かによって力を封じられてしまったからだ。
憐れクトゥルフが力を失い,水揚げされたタコのように浜辺に打ち上げられたところでナレーションが流れ,力を取り戻すには真のヒーローになるしか方法がないと明かされる。それを聞き,ムワハハハハ! と高笑いするクトゥルフ。力を取り戻す方法が分かればこっちのもの。こうして,クトゥルフのヒーローになるための旅が始まるのだった……。
本作は,「ドラゴンクエストIII」あたりの,昔懐かしい国産ゲームを彷彿とさせるオーソドックスなRPGで,ドット絵で描かれたグラフィックスが今となってはかえって新鮮にも感じられる作品だ。戦闘はターン制のコマンド選択方式で,仲間のキャラクターをぞろぞろ引き連れて歩くあたりも,実にドラクエチック。筆者がまさにそうだが,ファミコン世代のゲーマーならば,この見た目だけで思わず興味を引かれてしまうのではないだろうか。
そんな本作で特徴的なのは,クトゥルフらしく戦闘時に“相手を狂気に陥れる”特殊な攻撃が使えること。狂気状態になった敵はスタンして1ターン動けなくなったり,より大きなダメージを与えられるようになったりするので,積極的に狙っていきたい。ただし,中には狂気状態になるとパワーアップする敵もいるので注意が必要だ。本作では,戦闘終了時に体力が全快し,戦闘にかかったターン数に応じてマジックポイントも回復する(短いターンほど多く回復する)。
また,クトゥルフといえば忘れてはならない,ミスカトニック大学やダンウィッチ,インスマスといった,クトゥルフゆかりの名称がたくさん登場するのもファンにとっては嬉しいところ。しかし,展開されるストーリーはこれっぽちもコズミックホラーという感じではなく,最初の町であるミスカトニアでまずやることといったら,迷子になった犬探しだ。というか,それ以前に,仲間をぞろぞろと引き連れて町中を歩き回るクトゥルフの姿は,もはや悪い冗談としか言いようがない。なぜか,町の人もそんなクトゥルフを平然と受け入れてるし……。
明らかに,“全編これ,突っ込み待ち”といった風情の本作だが,RPGとしての基本要素はしっかりと押さえられており,ゲームの雰囲気を大いに盛り上げる,耳に残る爽やかなBGMも個人的にお気に入りだ。そんな本作はSteamで,同じくZeboyd Gamesが開発した「Breath of Death VII」というRPGと,2本セットで2.99ドルという格安の値段で発売中。こちらも本作と同様,クラシックスタイルのドラクエ風RPGとなっている。最後に両タイトルのムービーを掲載しておくので,興味を持った人はぜひこの機会に,まとめて手に入れてほしい。値段の割に,なかなか楽しめますよ。
■Zeboyd Games公式サイト
http://zeboyd.com/- この記事のURL:
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