
レビュー
アスペクト比21:9の変則型ワイドディスプレイはゲームに向くのか
LG 29EA93-P
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今回4GamerではLGエレクトロニクス・ジャパンから製品版サンプルの貸し出しを受けられたので,応答速度や体感を交えつつ,気になる超ワイドディスプレイをチェックしてみたい。
本体とスタンド,2ピース構成となる29EA93-P
液晶パネルは視野角の広いAH-IPS
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リングの一部が引っ張られたような形状のスタンドは,ネジ2本で留める仕様。ぱっと見はデザイン重視で強度が不安になるのだが,実際に取り付けてみると,安定感は上々だった。
なお,スタンドの形状から想像できると思うが,高さ調整は不可。左右方向の角度(スイーベル)調整も行えない。唯一可能な上下方向の角度(チルト)調整は,下5度,上20度となる。
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製品ボックスから取り出したところ(左)。本体とスタンドが分かれているので,開梱後にはまず,両者を2本のネジで留める必要がある(右) | |
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下方向(左)と上方向(右)の傾きはご覧のとおり。下方向はほとんど下げられないという理解でいいだろう。上方向は最大傾斜が20度。もう少し後ろに倒せたほうがよかったかもしれない |
また,2つのデバイスを同時に接続して,両方の画面を同時に表示させるといった,超ワイドディスプレイならではの使い方も可能だ。
インタフェース部にはこのほか,USB 3.0×3のハブ機能と,3.5mmミニピンのアナログサウンドライン入力,アナログ2chヘッドフォン出力が用意される。7W+7W構成のステレオスピーカーも用意されるので,音質にこだわらなければ29EA93-Pにサウンド出力を担当させることもできる。
気になったのは各種端子の向きで,本体の薄さを実現するためなのだろうが,すべて設置面に対して平行に用意されている。ケーブルが本体後方へかなり出っ張るため,奥まった場所へ配置する場合は,ケーブルの干渉を計算に入れる必要があるわけだ。
また,29EA93-P自体は100×100mm仕様のVESAマウンタに対応しているのだが,こういった事情により,壁掛けは現実的な選択肢といえない。VESAマウンタはディスプレイアーム前提ということになるだろう。
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なお,色域はsRGBカバー率100%。ゲーム用途では,ゲーム画面の色合いを開発者の意図どおりに見られる可能性が上がるだけでなく,ビデオ鑑賞や写真編集時もメリットが得られるだろう。そういった用途も想定しているためか,29EA93-Pはハードウェアキャリブレーションに対応しており,市販の測色センサーを別途用意すれば,本体付属のキャリブレーションソフト「True Color Finder」から調整も行える。
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タッチの反応はやや微妙で,いまいち思うように操作できないのは減点対象だが,「明るさ」「コントラスト」「音量」「入力」「画面サイズ」「Func.」「PIP」「画質」「カラー」「設定」と,メニューは充実している。前述した「画面を2分割して,それぞれ異なる映像を表示する」設定はPIP(PinP)から可能だ。
「画質」ではシャープネスとブラックレベル,応答速度の調整が可能。応答速度については後述するとして,シャープネスとブラックレベルは,デフォルトのままでいいように思われた。とくにブラックレベルは,設定値を高めても「黒が黒らしくなったかな?」程度で,好みの世界の話という印象である。
タイトルによっては3D酔いするかも
3Dゲーム世界の臨場感はかなり高い
製品概要を押さえたところで,ここからは実際にゲームで使ってみた印象から,ゲームへの適応度を見ていくことにしよう。
今回,プレイ感覚のテストで主に用いたタイトルは「ファンタシースターオンライン2」(以下,PSO2)と「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下,Skyrim),そして「DiRT Showdown」の3タイトルだ。
まずはPSO2から。フルスクリーン表示は21:9アスペクトに非対応ながら,「仮想スクリーン」を選択したところ,解像度2560×1080ドットでのゲームプレイが可能だった。通常よりも左右がよく見通せるため,近接クラスは立ち回りが楽になる印象。また大型の敵が複数いる場合も,確認しながら攻撃といったことがやりやすい。
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ただ,カメラを左右に振った場合,ブラー処理を有効にしていると,いわゆる3D酔いを起こす可能性があることは指摘しておく必要があるだろう。PSO2のブラー処理は緩めだが,筆者の場合は,しばらくまじめにプレイしていたところ,3D酔いの初期症状が確認された。酔いやすい人はブラー処理をオフにしておくのがよさそうだ。
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次にSkyrimだが,本作は,標準だと解像度2560×1080ドットのフルスクリーンには非対応ながら,iniファイルを書き換えることで,2560×1080ドット表示が可能になる。
……が,画質設定を「Ultra」にした状態で起動したところ,チェックした筆者,そして立ち会った担当編集ともども,1分経たないうちに3D酔いの症状が出てきた。PSO2のテストと同じようにカメラを振っていたことと,ブラーがPSO2より強くかかっていたことが原因だろう。ブラーがきついと感じられた場合は,手動でブラーを無効化する対策が必要になるというわけである。
最後にDiRT Showdownだが,本タイトルでは,当たり前のように解像度2560×1080ドットがグラフィックス設定から設定可能になっていた。クルマ系タイトルやヒコーキ系タイトルではマルチディスプレイ構成が以前から相応に選ばれていたので,こういう変則的な解像度も標準で用意されているのだと思われる。
ゲーム世界に左右の広がりがあるためか,総じて臨場感は上々。また,PSO2やSkyrimで確認された「ブラー処理によると思われる3D酔いのしやすさ」が,画面が常に中央から左右へ流れるDiRT Showdownだと,ブラーが有効な状態でも生じなかったことは付記しておきたい。
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応答速度は公称5msで,IPSパネルとしては良好な部類
ただ,残像感はかなりある
気になる応答速度の性能チェックに入ろう。29EA93-Pの比較対象には,BenQ製のゲーマー向けディスプレイ「XL2410T」を用意。Dual-Link DVI対応のGefen製スプリッタ「1:2 DVI DL Splitter」(型番:EXT-DVI-142DL)を使ってPCの出力を分配し,29EA93-PとXL2410Tに接続する。
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なお,解像度が変則的なためか,LCD Delay Chekerのモード1(青背景でリングを点が回るテスト)では安定して60fpsを確保できなかったため,今回はモード2を用いることをあらかじめお断りしておきたい。
さて,序盤で後述するとした,29EA93-Pの「応答速度」設定だが,選択肢は「High」「Middle」「Low」の3段階。まずはこれらがどういう違いをもたらすか,下のムービーでチェックしてみてほしい。いずれも,左が29EA93-P,右がXL2410Tで,XL2410Tでは,「FPS」モードを選択のうえ,パススルーモードに相当する「Instant」を有効化して,最も遅延が小さい状態にしてある。
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一方,テスト結果を見る限り,「Middle」と「Low」をわざわざ選択する理由はない。
ところで,今回はRefresh Rate Multitoolを残像感のチェックに用いたが,下のムービーで示したとおり,29EA93-Pでは露骨に残像が残った。ムービーは240fpsでの録画データなので,もちろん通常より強調されているのだが,肉眼でも残像感は見て取れたので,動きの激しいFPS用途にはよろしくない結果ということになる。
なお,チェック中に発見したことを挙げておくと,ソースをどういった大きさで表示させるかを選択する「画面サイズ」には「ワイド」「シネマ1」「シネマ2」「オリジナル」「1:1」があり,ここまでのテストは「1:1」を設定して行っているのだが,まず,「1:1」と「オリジナル」で遅延や残像感に違いはなかった。また,写真で見比べてみると,どういうわけか「オリジナル」と「1:1」では表示サイズが若干異なり,同じ解像度で画面を表示させたとき,「オリジナル」のほうが「1:1」より若干横が短い(もしくは「1:1」のほうが「オリジナル」より若干横に長い)現象が見られた。
実使用時に困ることはほとんどないはずだが,不思議な現象として報告しておきたいと思う。
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応答速度はまずまずながら,残像感は厳しめ
コアゲーマー以外が没入感重視で選ぶならアリ
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店頭で一度チェックしてみたいという場合は,29EA93-Pの正面70cm〜1mくらいから画面を眺めてみることを勧めたい。没入感は非常に高いので,“店頭テスト”でそこに惚れたなら,購入して後悔することはないはずだ。
ただし,ブラーが有効になっているときの3D酔いしやすさは厄介なので,「違和感を覚えたらブラーを無効化する」というのは,憶えておいたほうが幸せになれるだろう。
性能面では,応答速度はまずまず頑張っている一方,残像感は露骨にあるため,FPSをメインでプレイする人にとっては厳しい。
主なジャンルのゲームタイトルをひととおり試してみた印象だと,厳しさを感じたのはFPSだけなので,FPSにこだわらないのであれば,それほど気にする必要はないかもしれない。しかし,コアゲーマーの要求水準を満たすようなディスプレイではないことも,合わせて押さえておく必要はあると思われる。
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