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Access Accepted第630回:2020年代に重要なコンセプトになる“キュレーション”
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印刷2019/12/09 00:00

業界動向

Access Accepted第630回:2020年代に重要なコンセプトになる“キュレーション”

画像(001)Access Accepted第630回:2020年代に重要なコンセプトになる“キュレーション”

 発売される新作が万単位になる時代,「ゲームが多すぎて,何を購入すれば良いのか分からない」というゲーマーは多いはずだ。新しいコンシューマ機も登場する2020年が目前に迫る今,これからのゲーム業界を左右する「キュレーション」というコンセプトについて,最近の動向をチェックしてみよう。

Epic Gamesストアが行う差別化


 2019年を象徴する欧米ゲーム業界の出来事を考えていたとき,筆者の頭にふと浮かんだのが,Epic Gamesの運営するオンライン配信サービス「Epic Gamesストア」の登場だ。正確には2018年12月にスタートしたこのPC向けサービスは,オンラインのゲーム配信で独占的な地位に占めるValveの「Steam」が,パブリッシャ/デベロッパとValveの利益配分が7対3だったものを,88対12に下げることで,ゲームの作り手が“より多くの利益が得られること”をアピールしてデビューした。
 この方針のおかげか,2K Games,Deep Silver,Private Division,そしてElectronic ArtsやUbisoft Entertainmentなどの大手パブリッシャも参入し,現在も少しずつだがライブラリを増やしつつある。

顧客であるユーザー以上にゲーム開発者目線を重視にしている印象のEpic Gamesストアだが,ビジネスの根底にあるのは「キュレーション」だ
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 この「少しずつ」というのがポイントかもしれない。Epic Gamesストアは,ファンレビューやフレンドシステムなどのゲーマー向けのサービス提供に対して慎重であり,加えて,半年〜1年の時限独占タイトル,いわゆる「Epicエクスクルーシブ」にファンの批判が集まることが多い。
 しかし,そうしたファンの批判に対して,Epic GamesのCEOであるティム・スウィーニー(Tim Sweeney)氏は,「デベロッパがついてくる」と答える。エクスクルーシブを認めたデベロッパには,それによって発生するであろう損失を含めた対価が支払われるなどの手篤いサポートが行われており,こうしたサポートによって「より良いゲームが揃えば,結果としてそれがファンの利益になる」というのがEpic Gamesの基本的な考え方であり,「量より質」による差別化を図ろうとしているわけだ。

この1年,Epic Gamesのティム・スウィーニー(Tim Sweeney)氏は,SNSなどで辛辣に批判するゲーマー達と正面から向き合ってきた。そのもつれは時間が解決するのだろうか,それともファン向けサービスを拡充した補うことになるのだろうか?
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 Epic Gamesストアの販売戦略ディレクターを務めるのは,Steamの動きを調査するサイト「Steam Spy」の運営で名を知られたセルゲイ・ガルヨンキン(Sergey Galyonkin)氏で,2019年7月頃までは,同氏が販売タイトルを1本1本,慎重に選んでいたという。
 現在は,メーカーの依頼を受ける形に変更されており,Epic Games社内で評価を行ったうえで,ライブラリに加えるかどうかの審査を時間をかけて行っている。これは,販売ソフトのクオリティをほとんど問うことのない「Steam」や,モバイル向けの配信サイトとはかなり異なるスタンスであり,本連載で何度か紹介した「ディスカバラビリティ」「キュレーション」を念頭に置いたサービスを進めていることが分かるだろう。

 「ディスカバラビリティ」とは,「どうやって自分達のゲームを消費者に見出してもらうか」という,開発者側から見たマーケティング用語だが,一方の「キュレーション」は,運営側のマネジメント能力とでも形容すべき要素だ。
 アメリカやイギリスで「キュレーター」という役柄は本来,博物館や美術館でどのような展覧会を行うのかという企画などを行う専門職を指し,Steamにはプロ,アマを問わず「Steam Curator」が選ばれて,それぞれのキュレーターの好みにマッチする人がそのキュレーターをフォローするという仕組みが用意されている。
 ちなみに,4Gamer.netもキュレーターとしてSteam Curatorサービスに参加しており,2万2000人ほどのファンにフォローしてもらっている。Epic Gamesストアはこれを自ら行うことにより,より自社にフォーカスしたサービスを提供しようとしているのだ。


キュレーションから生み出されたApple ArcadeとXbox Game Pass


 Epic Gamesストアの例を挙げたが,「キュレーション」のコンセプトは,最近の欧米ゲーム市場における最大の関心事の1つとも言える。
 12月3日に掲載した記事でお伝えしたように,筆者はAppleが開催した「Best of 2019」発表のイベントに参加し,同社で「Apple Arcade」部門を率いるアン・マイ=タイ(Ann My=Thai)氏に話を聞く機会を得た。マイ=タイ氏は,Appleがどのように「Apple Arcade」をローンチすべきか,数年にわたって検討したと語っており,「ゲームアプリをどのようにキュレーションしたら,ユーザーに受け入れられるのか」を考えた末に月額制のサブスクリプションというシステムを採用したという。

我々にとって見逃せないのが,Appleが日本語を「コア言語」の1つに選んでいることだろう。これが,ほかのプラットフォームでの日本語対応ソフトが増えるという結果にもつながっているようだ
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 ローンチから2か月ほどで100タイトルものラインナップを揃えたことは誇るべきだが,マイ=タイ氏は,「Apple Arcadeの基本的アイデアは,良質のタイトルを揃えることと,メインメニューを立ち上げてちょっとした検索を行い,目に留まったアプリをダウンロードして遊んでみる」という簡易性にあると語っており,タイトルの拡充自体は副次的な目的に過ぎない。

 上記の記事の繰り返しになるが,SteamやAppleストア,そしてGoogleストアなどのゲーム販売プラットフォームは,「差別的表現」など特定の禁止項目に反しない限り,クオリティを問わず,かなり自由にゲームを販売できた。その結果,Thatgamecompanyのジェノヴァ・チェン(Jenova Chen)氏が述べたように,Pay-to-Winやガチャシステムに頼った,「ユーザーの心の弱さにつけ込むゲーム」が蔓延しただけでなく,別の作品のアセットをパクったり,マルウェアを仕込んだ悪意のあるゲームがリリースされたりしたことが,過去に何度も起きている。販売されるタイトルが何万という単位に達する中, そのようなゲームが普通に流通する状態は,早晩,多くのユーザーがゲームから離れていくことにつながるだろう。

キュレートされたサブスクリプションサービスがプラットフォームホルダーやパブリッシャの間で広がれば,結局はエクスクルーシブタイトルでサービスを選ぶことにつながる。Microsftが次々にインディーズスタジオを買収したり,Epic Gamesストアがエクスクルーシブにこだわる理由も,そのあたりにあるのだろう
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 MicrosoftのXbox部門を総括するフィル・スペンサー(Phil Spencer)氏も,PC向けの「Xbox Game Pass」を発表した2019年5月30日付けの公式Blogで,「2年前,私達はXbox OneでXbox Game Passのサービスを開始しました。それ以降,プレイヤーとゲーム開発者の双方にとって,キュレーションされた高品質なゲームのライブラリにどれほど価値があるかを認めました。(キュレーションされたXbox Game Passは)次のお気に入りのゲームを見つけてプレイするのに,最適な方法なのです」と述べており,キュレーションがゲーム業界の向かうべき方向性の1つであることを強調している。

 2020年は,Microsoftの「Xbox Scarlett」(仮称)とソニー・インタラクティブエンターテイメントの「PlayStation 5」が発売され,VRゲーム市場も「元年」と言われた2016年から4年が経過し,さらにGoogleが始めたクラウドゲーミングサービス「Stadia」の真価が問われていく年になるだろう。新しいマーケットに向けた新作タイトルが次々にリリースされていくのは間違いない。
 しかし,ゲームライブラリの充実にはディスカバラビリティの問題がつきまとい,ここにキュレーションというコンセプトが加わることで,プラットフォームホルダーの試行錯誤がしばらく続いていくと思われる。少なくとも,Epic GamesストアやApple Arcade,そしてXbox Game Passでは,すでにキュレーションの成果が出ているように見えるが,2020年代にはコアゲーマーからカジュアルゲーマーまで,異なるターゲット層にピンポイントでゲームをキュレートするような,さらに洗練されたマイクロなプラットフォームが次々に登場してくるかもしれない。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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