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Access Accepted第621回:人気ゲーム実況者“ニンジャ”の移籍
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印刷2019/08/19 00:00

業界動向

Access Accepted第621回:人気ゲーム実況者“ニンジャ”の移籍

画像集 No.001のサムネイル画像 / Access Accepted第621回:人気ゲーム実況者“ニンジャ”の移籍

 Twitchのフォロワー数や視聴時間でほかのストリーマーを圧倒していた,「Fortnite」のゲーム実況者「ニンジャ」が,Microsoft傘下のMixerへ移籍することが発表され,ファンの話題になっている。「Halo」シリーズのプロゲーマーだった自分の原点に戻りたいというのが移籍の理由だが,人気ストリーマーをめぐる大手メーカーの引き抜きの動きも見え隠れする今回の出来事を紹介したい。


「Fortnite」実況で,
セレブの仲間入りした「ニンジャ」とは


 今や「ゲーム実況」は,新しいゲーム文化の発信地としてゲーマーに認知され,パブリッシャや開発者は,自分のゲームを宣伝するための「媒体」(メディア)として熱い視線を送っている。多くのゲーマーが,ストリーマーと呼ばれるゲーム実況者の「映像を見る」という体験を共有することでコミュニティを形作り,実況されたゲームを自分でプレイすることで,より深くコミュニティに参加するという,既存のメディアでは行えない一体感をゲーマー達に与えているのだ。

短期間のうちに世界最多のフォロワーを誇るストリーマーに成長したブレヴィンスさん。新たな活躍の場として選んだのは,市場占有率が3%しかないMicrosoft傘下の「Mixer」だった
画像集 No.002のサムネイル画像 / Access Accepted第621回:人気ゲーム実況者“ニンジャ”の移籍
 そんなゲーム実況の世界で,注目を浴びているのが「ニンジャ」(Ninja)というニックネームで知られた28歳のアメリカ人ストリーマー,リチャード・タイラー・ブレヴィンス(Richard Tyler Blevins)さんだ。もともとはプロゲーマーで,2011年にゲームに特化したライブストリーミングプラットフォームとして「Twitch」が立ち上がった当初からゲーム実況を行ってきた,ベテランストリーマーでもある。
 2017年に「PLAYERUNKNOWN‘S BATTLEGROUNDS」のゲーム実況を開始して,50万人ほどのフォロワーを集めたが,同年9月に「Fortnite」がバトルロイヤルモードを公開すると,ブレヴィンスさんもFortniteに力を入れるようになる。2018年3月には人気ラッパーのドレイクさんと一緒にプレイするというイベントを成功させ,それまで39万人ほどだったTwitchの最多同時視聴者数を大きく上回る,62万8000人の新記録を達成した。

 2019年8月の時点でブレヴィンスさんのフォロワー数は1470万人,視聴総数は4億8000万ビューに達し,ゲーム実況の第一人者と呼べる存在に成長した。コンテンツはほとんどFortniteが占めており,同作の人気向上の底上げに大きく貢献したのは間違いない。2018年春には,スポンサーからの収入を含めてゲーム配信の収入が月に50万ドル(約5300万円)を超えていたという。

 2019年2月にリリースされた「APEX Legends」のプロモーションに際しては,ブレヴィンスさんにプレイしてもらうためにElectronic Artsが100万ドルを支払ったことが報道されており,最近のゲームメーカーがどれほどストリーマーの価値を認め,大きな資金が動くのかが分かる。


 そんな,押しも押されぬゲーム実況界の人気者であるブレヴィンスさんが8月1日,突如としてTwitchから「Mixer」へプラットフォームを移すと発表したのだ。
 ご存じのように,TwitchはAmazon.comが運営するサービスで,一方のMixerは2016年にMicrosoftがサービスを開始した後発のライバルだ。ゲーム実況の市場シェアは,Twitchが78%であるのに対して,Mixerはわずか3%に過ぎない。Microsoftはブレヴィンスさん移籍から5日間で,Mixerの登録者数が初めて100万人に達したと発表しており,移籍の効果はさっそく現れているようだ。


大きな賭けとなるニンジャの移籍


 ゲーム実況者がそれまでとは違う配信サービスを利用することは,それほどの事件ではない。YouTubeで9900万フォロワーという圧倒的な存在感を示すピューディパイ(PewDiePie)こと,フェリックス・アルヴィッド・ウルフ・ チェルベリ(Felix Arvid Ulf Kjellberg)さんは2017年,週に1回に限ってTwitchでゲーム実況を開始し,たちまち100万フォロワーを獲得しているし,ブレヴィンスさんも,映像の保管やアナウンスの場として2018年4月にYouTubeの公式チャンネルをオープンし,9日間で100万アカウント,現在までに2200万アカウントの登録者を集めている。

 しかし今回ブレヴィンスさんは,「Mixer専属の配信者になる」ことを表明しており,フォロワーを含めて多くの関係者に驚きをもって迎えられた。なにしろ,ブレヴィンスさんの1470万フォロワーは,2番手のストリーマーの倍以上という圧倒的な数字であり,それを捨て去ることになるからだ。

ブレヴィンスさんの著作「Ninja: Get Good: My Ultimate Guide to Gaming」が8月20日にRandom Houseから出版される予定だ。ゲーム上達のための指南から,マウスなどの周辺機器の選び方まで,プロゲーマーらしい説明が行われている
画像集 No.003のサムネイル画像 / Access Accepted第621回:人気ゲーム実況者“ニンジャ”の移籍

 この移籍についてブレヴィンスさんは,「自分のルーツに戻り,ストリーミングを始めた頃の自分を思い出したい」と述べており,これまでFortnite専門だったことによるマンネリ化を避けて,フレッシュな気分を保ちたいという意思があるようだ。先に述べたとおり,ブレヴィンスさんはもともと「Halo」シリーズのプロゲーマーで,最近は「Haloの初期作品からプレイし直してみたい」といった発言を繰り返していた。
 したがって彼の心の中には,Microsoftが2020年にリリースする予定の「Halo Infinite」の実況を行うという未来の姿があるはずだ。また,Fortniteを含めて,どんな人気タイトルでもいずれは人気に陰りが出てくるはずで,その前に先手を打っておこうという考えもあるかもしれない。

 そんな中,YouTuberのピューディパイことチェルベリさんは「(彼の移籍について)本当の理由を知っている」という映像を公開した。
 チェルベリさんは映像で,以前からMicrosoftが大きな報酬と共に移籍を持ちかけてきていたが,最近,急にそのアプローチがなくなったことから,「その資金がどこに流れたのか理解した」と述べている。Twitchではドクター・ディスリスペクト(Dr.Disrespect)として人気のハーシェル・ビーム4世(Hershel Beahm IV)さんも,移籍の内情を知っているという映像を公開し,その中で,Twitchのライバルがいなくなったことは嬉しいと,皮肉っぽく語っている。

 Mixerへの完全な移籍は,ブレヴィンスさんにとっても大きな賭けになるはずだ。Mixerはブレヴィンスさんの移籍に合わせて,「2か月間無料」というキャンペーンを実施しているが,優待サービスの基本料金はTwitchよりも3ドルほど高い。Xbox Oneのユーザーなら,ダッシュボードから配信を簡単に見られるという利点はあるものの,キャンペーン期間終了後にブレヴィンスさんのフォロワーがどれくらいMixerに残るかは未知数だ。ちなみに,本稿執筆時点でブレヴィンスさんのフォロワー数は約160万人だという。

 ゲーマーはより多くのゲーマーが集まるコミュニティに惹かれる傾向があるため,Mixerのコミュニティが十分に大きくならない状態が続けば,ファン達はやがてほかのTwitchストリーマーに流れていくだろう。
 Google傘下のYouTubeは,ゲーム実況アプリ「YouTube Gaming」を約4年であきらめており,視聴者や配信者の人気を獲得するのは簡単ではない。しかもブレヴィンスさんのファンは青少年が多く,ゲーム実況に注ぎ込める資金は限られている。「Halo Infinite」のローンチまでファンをつなぎ留めておくのはなかなか難しいことだろう。

 もちろん,Xbox OneでもFortniteは人気だし,ルーツである「Halo」シリーズへ軸足を移すため,自分の映像チームの存続を賭けて移籍を決意したのだから,ブレヴィンスさん自身,そうしたリスクは織り込みずみのはずだ。

Mixerで,Twitchのときのようなセレブリティとして活躍できるのかは,ファンの動向に大きく左右される。Microsoftとニンジャに秘策はあるのだろうか?
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 1人の人気ストリーマーの移籍がゲーム業界の話題になること自体,ゲーム実況の重要性を物語っているようで興味深いことだ。ブレヴィンスさんの参加がMixer成長のきっかけになれば,今以上に多くのゲームメーカーが人気ストリーマーに頼ることになるし,ブレヴィンスさんが抜けた穴を埋めるべく,Twitchでもいろいろな動きは起こってくるはずだ。今後,ブレヴィンスさんがMixerでどのような活躍を見せるのか,そしてゲーム実況がどのように変わっていくのか,注視し続ける必要がある。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。

来週8月26日の「奥谷海人のAccess Accepted」は,筆者取材のため休載となります。
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