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Access Accepted第573回:北米ゲーム業界と“年齢差別”問題
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印刷2018/04/23 12:00

業界動向

Access Accepted第573回:北米ゲーム業界と“年齢差別”問題


 「年齢差別」を意識する場面にはあまり出くわさないかもしれないが,差別問題に敏感なアメリカのゲーム業界でも,年齢を理由にした差別が少なからず存在しているようだ。法的に明確な規定があるわけではないのだが,ある程度の年齢以上になると雇用人口が急激に減ってしまう傾向が今でも続いている。今回は,そうした問題にスポットライトを当ててみよう。


「学校を出たばかりの未経験者を2人雇うほうが,人件費も作業も効率がいい……」


 アメリカに住む筆者の友人の1人が最近,解雇された。彼は40代の上級システムエンジニアだったのだが,彼に言わせると「ボク1人分より,学校を出たばかりの未経験者2人を雇ったほうが,人件費も作業も効率がいいらしい」と,不満げな様子だ。
 昔の話になるが,現在も存在する独立系デベロッパの創業者兼ゲームデザイナーが,筆者のインタビューの中でこれど同じようなことを言っていたのを思い出す。その人物が独立した理由は,「ある程度のポジションの人間が,35歳を過ぎて,それ以上の地位を狙って会社に居座り続ける。これは,とくにゲーム業界では,上からも下からも嫌がられることなんだよ」と述べていた。

Game Developers Conferenceでは,若者だけでなく,実にさまざまな年齢層の人を見かけるのだが……

 筆者はもう,欧米ゲーム業界を20年にわたって見続けてきたが,2018年4月2日に掲載した本連載の第570回「GDC 2018に見る,欧米インディーズゲーム市場のレッドオーシャン化」でも書いたように,独立系デベロッパが大幅に増えた昨今は,欧米ゲーム業界の関係者が一気に若返ったように感じられる。オッサンである筆者がインタビューする開発者や広報担当者が,自分の息子や娘と同じくらいの年頃に見えることも増えてきた。
 ゲーム市場が誕生してから30〜40年,今でも現役で活躍するベテラン開発者はまだ多く存在するものの,ゲーム業界の中心にいるのは若者達であり,常に若返りが続いてきた。

 4月4日,4Gamerと提携するgamesindustry.bizの英語版に「Ageism: The issue never gets old」(決して老化しない年齢差別問題)という記事が掲載された。今週は,それ合わせる形で欧米ゲーム業界の問題の1つを紹介しておきたい。なぜゲーム業界には若い開発者達が多いのか。ベテラン達の数はどうして増えないのか,といったことだ。


 IGDN(Independent Game Developers Association)が2016年に行った開発者向けアンケートによれば,2015年のゲーム業界関係者の平均年齢は32歳だったという。3000人あまりの回答者のうち,25歳から34歳までが51%で,45歳以上となると全体の9.5%に低下する。
 IGDNの記事は,アメリカ政府の統計を見ると北米の全就労者の平均年齢は41.9歳だが,Googleは30歳,Facebookは28歳で,ゲーム業界はIT産業に近いとしている。


ベテランゲーム開発者が抱える悩み


 アメリカの政府機関EEOC(雇用機会均等委員会。US Equal Employment Opportunity Commission)の定義において,「年齢差別」とは40歳以上の求職者や雇用者,もしくは10代であるために雇用されない若者を差別することで,「年齢によって,求職者や雇用者に不公平な扱いが生じること」と規定されている。
 例えば冒頭の友人のエピソードについて言えば,上司がもし実際に「若い連中を2人雇ったほうが安くつく」と発言したのなら,それはこの規定に反すると考られる。
 アメリカでは履歴書に生年月日を記入する必要がなく,年齢が雇用の可否に関係あっても,それが表立って要求されるようなことはない。しかし友人の例を挙げるまでもなく,年齢差別はしばしば起きているようだ。

 業界の有名人を見ると,例えばシド・マイヤー(Sid Meier)氏が1954年2月24日生まれで現在64歳,ピーター・モリニュー(Peter Molyneux)氏が1959年5月5日生まれで,あと2週間ほどで59歳,すでに第一線を退いているが,ウィル・ライト(Will Wright)氏が1960年1月20日生まれで58歳,そして,リチャード・ギャリオット(Richard Garriott)氏が1961年7月4日生まれで56歳といったところ。新陳代謝を迎える時期が,欧米ゲーム業界に訪れていると言えそうだ。

現在も精力的に活動を続けるベテラン開発者のリチャード・ギャリオット氏(左端)。Portalariumを設立し,「Shroud of the Avatar: Forsaken Virtues」という新作を発表した
Access Accepted第573回:北米ゲーム業界と“年齢差別”問題

 ゲームやIT関連の産業に限ったことではないだろうが,ゲーム開発ではしばしば“バーンアウト”が起きる。2012年3月12日に掲載したGDC 2012の取材記事にもあるように,欧米のゲーム開発会社では,大企業やインディーズを問わず,「アジャイル(Agile)開発」が採用されることが多い,これは,開発の工程を2〜4週間ほどで区切り,そのつど目標(マイルストーン)を達成しながら,確実にステップを踏んでゲームを作っていくという開発手法だ。

 このやり方に従えば,「クランチ」と呼ばれる,開発の終盤に必ず訪れる過酷な労働(いわゆるデスマーチ)が細分化され,開発者の負担が軽減できるという。
 もっとも,現実は必ずしも理想どおりにはいかないようで,とくにプロジェクト完成間際や,発売直後に問題が起きたときなど,仕事に追われて家族を顧みることができず,家庭崩壊を起こしてしまったという話は,いまだに聞く。ここで燃え尽きた人の多くが,ゲーム業界から去ってしまうわけで,これが年齢の高いゲーム開発者が少ない理由の1つでもある。

 映画や音楽,小説など,クリエイティブな産業では,年齢を重ねることで経験が増え,それを次の作品に活かすことができる。しかし,欧米ゲーム産業においては,年輪を重ねた開発者が自分の居場所を見つけるのが難しくなっているようだ。とくに熟練開発者は「資格過剰」(Overqualified)という状況に陥っており,履歴書に年齢を書かないとはいえ,記載された多彩な職歴から,「これだけの経験を持っている人を雇う余裕はない」と判断されてしまうこともある。

 しかもゲーム開発における技術の進歩は著しく,例えば1つのプロジェクトに5年かかれば,確実に最新技術やトレンドの研究からは取り残されてしまう。北米では,開発を終えたばかりのスタッフに新しいツールやプログラミング方法などを学ばせる期間を設けることもあるほどで,ベテランが「過去の経験」を活かせる場面はますます減っているのだ。
 業界の礎を築いてきた第1世代が定年を迎えたあと,北米のゲーム産業は年齢差別にどう向き合うことになるのか,今はまだ見えないが,そう遠くない未来の話だ。


著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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