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印刷2009/09/11 11:28

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第232回:GTAからFF XIまで 〜 訴訟社会アメリカの現状

奥谷海人のAccess Accepted

 相変わらず「訴訟社会」と呼ばれるアメリカ合衆国。確かに訴訟/裁判は多いが,中には首を傾げたくなるような主張や滑稽な事件もある。告訴される側にとっては,まさに「寝耳に水」のときもあれば,端で見ていて「自業自得かもしれない」と思えることもあり,いろいろだ。今回は,例の“反ゲーム弁護士”の近況も含め,訴訟社会アメリカのゲーム業界に起こった告訴騒ぎをいくつか紹介したい。

第232回:GTAからFF XIまで 〜 訴訟社会アメリカの現状

 

弁護士であふれるアメリカという国
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ほとんどのプレイヤーが問題のシーンに触れたわけではないのだが,Take-Two Interactiveにとっては,Hot Coffee事件は高くついたものになってしまったようだ。「DOOM III」にも,実際のゲームでは使われなかったグリッパー(鉤付きのフック)のデータが残されていたことがあり,マスター版での不要データ消し忘れはよくあることなのだが

 「I'll sue ya!」(おまえを訴えてやる!)という脅し文句が,ケンカやジョークなどに日常的(?)に使われるアメリカ。実際に暮らしてみると,だいたい4か月に一度(あくまで個人的な感想)ほどの割合で耳にするし,「轢いた相手の体で,自分のメルセデスのフロントが傷ついた」とか「酒に溺れた挙句に犯罪者として自分を刑務所に送った,自分自身を訴える」などという,ほとんど理解不能な訴訟関連のニュースを見ることも多い。
 運転中,足の間に挟んでいたコーヒーをこぼして火傷を負った高齢の女性が,コーヒーを売ったマクドナルドを相手に訴訟を起こし,邦貨で一億円近い慰謝料を受け取ったという有名な話は,読者の皆さんも聞いたことがあるかも知れない。

 古くから陪審員制度を実施してきたアメリカの弁護士の数は100万人以上になるという(日本は3万人に満たないが,これには資格の取得が難しすぎるためという意見もある)。総人口は日本の2.5〜3倍なので,アメリカの弁護士の需要の大きさがよく分かる話だろう。一口に弁護士といっても,殺人や詐欺といった刑事事件だけではなく,労使関係や移民法,不動産など,弁護士の専門が細分化されている。
 人数が多いだけあって,弁護士といえどもかなりの過当競争。不況の影響もあってか,最近では仕事がないのでアルバイトをしているという弁護士も少なくないらしい。
 そうなると,あからさまに金目当ての訴訟を起こす市民と,それに手を貸して荒稼ぎしようという弁護士が少数とはいえ出てくる。弁護士は法治国家にはなくてはならない存在だが,そうした一部のキナ臭い人々のために,弁護士に対して「正義を執行する職業」という尊敬とともに「なにか悪どい商売だな」という意識が共存しているのが,アメリカの現実なのである。

 

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まだ意気軒昂だった当時のJack Thompson氏。彼の弁護資格剥奪により,現在は「元弁護士」もしくは「反暴力ゲーム活動家」として活躍している模様だ。連発する過激な言動により,「暴力ゲームの是非」以前のところで盛り上がってしまった感じがあり,それはそれで,ゲーム業界にとってあまりいいことではないだろう

 さて,ゲーム業界で有名な弁護士というと,当連載で何度も話題にしてきたJack Thompson(ジャック・トンプソン)氏がイヤでも思い出される。
 “保守的クリスチャン”という信条を掲げるトンプソン氏は,1990年代にはIce-Tやマドンナといったアーティストの過激なラップやミュージックビデオを相手に訴訟を連発していた人物。やがて,1997年にケンタッキー州で発生した高校襲撃事件を担当し,映画やゲーム関連の企業25社に対する訴訟を起こした。「PlayStation 2は,“パールハーバー2”と呼ぶべきだ」などと過激な発言で有名になったのもこの頃だ。

 2003年,トンプソン氏は「Grand Theft Auto III」を発売したTake-Two Interactiveという宿命のライバルと出会い,数々の訴訟で対戦することになる。その話題や騒動は本連載の第63回「業界の話題をさらった反ゲーム弁護士の顛末」でまとめているので,いささか古い記事だが,そちらを参照していただきたい。

 皮肉のつもりで「こんなゲームが作れるか?」と自身のWebに書き込んだ殺人シミュレーションゲームが,意外にも開発されてしまうという妙な目にも遭ったトンプソン氏だが,2005年のアラバマに続き,昨年はマイアミ州政府からも弁護士資格を剥奪されたため,今では「元弁護士」もしくは「反暴力ゲーム活動家」という肩書きになっているらしい。

 そんな彼の言動は“お上”にまで知られるほどらしく,昨年(2008年)末には連邦保安官による監査が入り,現在では連邦政府レベルでの弁護権剥奪も検討されているとのこと。これはアメリカのどの州でも弁護士活動ができなくなってしまうということで,実質的にアメリカ法曹界からの追放を意味する。
 それでもトンプソン氏は,「自分の正当性を示す書類を作成する金はない。もしテロリストとしてグアンタナモ(キューバにある米軍基地で,テロ容疑者の収容所としても使われている)に連行されるのなら,関係資料はそっちに送ってください」などという内容の手紙を連邦最高裁判所に送り付けているというから,筋金入りだ。

 もっとも,こうしたトンプソン氏の目立ちすぎるエキセントリックさのせいで,「暴力ゲームは是か非か」という真面目な議論がなされる前にある種の終息感が漂ってしまったのは,ゲーム業界にとっていいことではないとも思う。

 

ちょっと気になる三つのケース

 トンプソン氏の話はこれくらいにして,それでは以下,現在アメリカで行われているゲーム業界に関する三つの訴訟を紹介したい。訴状に正当な理由があろうがなかろうが,こうした訴訟はアメリカで日常茶飯事のデキゴトであり,ハリウッドでも「映画の評価は訴訟の数で分かる。五つの訴訟なら良作,10以上なら名作だ」というジョークがあるほどだ。
 訴訟の内容や結果がゲーマーにとって不利益になることだけは避けてもらいたいが,さて,以下のケース,読者の皆さんはどう思われるだろう?

 

訴訟ファイル001 ファイナルファンタジー XIに起こった集団訴訟

 「ファイナルファンタジーXI」への集団訴訟に関する第一報は,以前のニュースでお伝えしたので,記憶している読者も多いはず。サンフランシスコ在住の元FFプレイヤーによって起こされたものだが,その内容が次第に明らかになってきた。
 まず,提訴したEsther Leong(エスター・リョン)氏が問題にしているのが,「パッケージに,月額料を含む明確な価格が記載されていない」ということのようだ。
 また,アカウントを解約したあと3か月めに自分のキャラクターデータが消されてしまうこともビジネス上の不手際であるとしており,「プレイヤーはキャラクターを保持していたいために,毎月12.95ドル(約1150円)を支払い続けなければならない。レジストレーションコードも再利用が不可能で,まったく使えないゲームディスクなのに,一度パッケージを開封すると払い戻しもできない」という主張のようである。
 現在,Makarem & AssociatesやMichael H. Kimなどリョン氏側の訴訟団は,どのような訴状で米スクウェア・エニックスを告訴するのかは明確にしていない。

 なお,同社とファイナルファンタジーXIは,イリノイ州でも「解約の手続きを電話でしたら,2時間近くかかった」という訴訟を起こされている。
 PlayOnlineから行えば簡単にできるはずだが,米スクウェア・エニックスにとって気になるのは,この告訴をした人物が同州で暴力ゲーム規制に関する州法の制定に動いている議員の友人だということかもしれない。

 

訴訟ファイル002 オンラインゲーム中のボイスチャットは特許?

 アメリカには「パテントトロール」という職業(?)がある。利用価値のありそうな特許を持ったつぶれかけの企業や個人を買収し,金の取れそうな企業を片っ端から訴えるのだ。もともとは企業がライバルを蹴落としたりクロスライセンス提携に持ち込むための手段として頻繁に行われていたことだが,自分で生産を行わないパテントトロールは,そのぶん,強気の提訴で訴えまくるわけだ。
 企業は,その防衛や訴訟準備のために膨大な費用を強いられ,結果としてサービスや製造能力の低下にもつながってしまうこともあるほどだが,特許内容をさまざまに解釈できるハイテク産業を中心に,パテントトロールは世界中に広がっている。
 そのターゲットになってしまったのが,あのSony Computer EntertainmentとMicrosoftだ。

 特許を持っているとされるPeter Hochstein(ピーター・ホッチシュタイン)氏とJeffrey Tenenbaum (ジェフリー・テネンバウム)氏の主張によると,PlayStation NetworkおよびXbox Liveは,彼らの保有する「別々の場所にいるプレイヤーが,ゲームをしながらライブでコミュニケーションできる」という,1994年に認められた特許を侵害しているとしている。音声はともかく,文字によるチャットなどは1994年当時にはすでに行われていたはずだと個人的には思うが,2009年4月,詳細は不明ながらSCEが「和解を承諾している」と発言しており,今回もパテントトロール達に軍配が上がってしまったようだ。

 

訴訟ファイル003 あの世紀の大合併から,さまざまな問題が噴出
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 2007年末にゲーム業界を揺るがせた,Vivendi GamesとActivisionの大型合併だが,さまざまな所に軋みが生じていたようだ。
 合併直後,新たに誕生したActivision Blizzardは,Vivendi Gamesの持っていた開発中のゲーム資産を再検討し,その結果,アクションゲームの「Prototype」の開発継続にはゴーサインが点ったものの,「50 Cent: Blood on Sand」や「The Ghostbusters: The Video Game」などの作品は,すべてキャンセル扱いとなり,デベロッパは独自で新たな販売元を探すことになった(ちなみに,以上の3タイトルはすでに発売されている)。

 Electronic Artsから10月にリリースされることとなった「Brutal Legend」も,そんなタイトルの一つだ。「Psychonauts」など,ジョーク満載のアドベンチャーゲームで定評のあるDouble Fine Studiosが開発しており,有名コメディアンのジャック・ブラック氏をデジタル化したキャラクターが話題を集めていた。早い段階でElectronic Artsに拾われた形になっていたが,今年2月に「本作については,最終処置を協議中の段階」として,Activision Blizzardが完全に手放したわけではないことを匂わせていた。
 それに対するように,EAは2009年6月に開催されたE3においてBrutal Legendの大々的な宣伝を行い,同月,Activision Blizzardは訴訟を起こした。
 この件については裁判所も「Double Fine Studiosに言い分がある」として,反訴の準備をDouble Fine Studios側に認めていたが,結果として,8月には双方の歩み寄りが見られ,Brutal Legendは時期を遅らせることなくリリースにこぎつけられそうな状況になっている。
 同じ8月にドイツで開催されたGamescomのEAプレスカンファレンスにおいて,Brutal Legendが「巨大なモンスターを打ち破ったDouble Fine Studiosの作品」と紹介され,詰めかけたメディアの笑いを誘ったことも記憶に新しい。

 ちなみに,Activision Blizzardは,Vivendi Games時代の契約による2億円近い支払い義務を怠っているとして,Steamを通じてVivendi Gamesのタイトルを販売していたValveから告訴されている。このあたり,訴訟社会アメリカのゲーム企業らしいジャブの打ち合いが続いているといった雰囲気だ。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けてきた。業界に知己も多い。本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,連載開始から200回以上を数える,4Gamerの最長寿連載だ。
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