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印刷2009/05/08 14:03

業界動向

奥谷海人のAccess Accepted / 第217回:苦戦を続けるEAの再起はなるか?

奥谷海人のAccess Accepted

 北米ゲーム業界の雄,Electronic Artsが,2009会計年度(2008年4月〜2009年3月)の収支報告を行った。それによると,2008年のクリスマス商戦で苦戦したため,なんと約1000億円もの損失を計上したという。2年連続での赤字という苦しい状況にあるEAだが,今回は,この巨大ブランドEAの業績や将来展望から,欧米ゲーム業界のトレンドを読み取ってみよう。

第217回:苦戦を続けるEAの再起はなるか?

 

1年間で1000億円もの損失を計上
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カリフォルニア州レッドウッドシティに広大なキャンパスを持つElectronic Arts。最近,この本社で「Dead Space」などを開発してきたチームが「EA Redwood Shores」から「Visceral Games」にブランド名の変更を行っている。2008年は相当な苦戦を強いられたが,さまざまな改革を断行して経営改善に乗り出している

 アメリカ時間の2009年5月5日,カリフォルニアに本拠を置くElectronic Artsが株主向けのカンファレンスを行い,同社の2009会計年度収支報告や今後の見通しなどを発表した。それによれば,EAは前年度より15%も多い4億2100万ドル(約416億円)の収益を得たにも関わらず,通年で10億1000万ドル(約990億円)に達する損失を計上したという。この損失は,昨年発表された4億5400万ドル(約445億円)の倍以上にも達する。

 アメリカのゲームメーカーの多くは,3月末日をもって「会計年度」の最終日とし,1月から3月までの期間を「第4四半期」としているが,この時期は年末セールスの直後でもあるためにタイトルの売り上げは相対的に少ない。そもそも各メーカーも,注目されるようなタイトルをリリースしないのが常だったりするのだ。ところが,EAは意外にもこの時期,例年よりも健闘しており,第4四半期のロスは4200万ドル(約41億円)ほどに抑えられている。これは昨年度の半分以下の数字だ。

 EAのCEO,John Riccitiello氏は,この第4四半期にリリースした「Skate 2」や「The Lord of the Rings: Conquest」といった新タイトルだけでなく,「Rock Band 2」や「Left 4 Dead」「Need for Speed: Undercover」など,ダウンロードコンテンツによる継続的なセールスを見込めるゲームが売り上げを牽引したと分析している。「Warhammer Online: Age of Reckoning」も30万アカウントほどで,採算ベースには乗っているとのこと。
 EAにとって悪夢だったのは,ショッピングシーズンにあたる第3四半期で,この期間だけで損失全体の3分の2を出した。「Dead Space」や「Mirror's Edge」など,コアゲーマー向けのオリジナルタイトルに偏りすぎた年末ラインナップが裏目に出て,期待した結果を出せなかったのだ。ここ数年,50ドル前後で推移していた株価も,昨年9月頃から急速に下降し,現在では20ドルほどになっている。

 興味深いのは,「第4四半期の向上」を支えたソフトの中に,「Spore」が含まれていないことだろう。この株主向けカンファレンスでは,Sporeが200万本のセールスを記録したことが発表されており,PCオンリーのタイトルとしては非常に良い成績を残しているのだが,NPD Groupの公開した3月のPCゲームセールスリストによると,第8位でかろうじてトップ10圏内に留まっている状況だ。
 この意外と短かかったSporeの製品寿命については,初動の数か月間で熱狂的なファンが購入し終わってそれっきりという,コアゲーマー型のセールスカーブになっていたと分析されている。当初,EA側はSporeが「The Sims」シリーズのような長寿タイトルになることを期待していたはずだが,このあたりは誤算だったと見るべきだろう。
 ちなみに,SporeとThe Simsシリーズを統括する部門は,2009年度の収益の15%を稼ぎ出しており,同社において依然として重要な地位を占めているのは間違いない。

 

なんとElectronic Arts買収のウワサまで!?
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Appleによる買収のウワサまで飛び出したEA。シリコンバレーの北と南に1970年代から存在する両社の間には,Apple II時代から現在のiPhoneに至る長い付き合いがある。ただ,今後のEAには「The Sims 3」(画像)のようなタイトルも控えており,その資産価値から考えても買収は現実的ではないと思われる

 ともかく,EAは,すでに昨年(2008年)12月の時点で大幅なリストラを行い,経営の立て直しを図ると発表しており,その手始めとしてSkate 2をリリースしたばかりのEA Black Boxから人員200名を解雇したほか,「Madden NFL」シリーズで名高いEA Tiburonでさえ,その余波を受けて人員削減が行われている。今後,同社の11%にあたる1100人ほどの社員を,引き続きリストラしていく予定だというから厳しい。
 EA Maxisを牽引してきた看板クリエイターのWill Wright(ウィル・ライト)氏も,4月になって同社から離れている。今後ライト氏は,以前からロボットの開発などを一緒に行ってきたクリエイター集団「Stupid Fun Club」を,エンターテイメント関係のシンクタンクとして本格的に立ち上げるとのことで,そこから生まれたアイデアをEAに提供していくことになるようだ。

 こうした経営再建に追われるEAだが,最近になって信じられないようなウワサがウォール街を飛び交った。なんと,あのAppleがEAの買収に動いているというのだ。もっとも,これは単なるウワサに過ぎなかったようで,直ちに双方から否定されて沈静化した。
 しかし,ついこのあいだ,Grand Theft AutoシリーズでおなじみのRockstar Gamesを傘下に収めるTake-Two Interactiveを敵対買収しようと動いていたEAだけに,こうした立場が逆転したウワサが出てくることなど,誰が想像したであろう。

 実際,EAはAppleのiPhone及びiPhone Touchのゲームアプリの開発/販売元として最大のサードパーティであるが,2年連続の赤字を記録したとはいえ,現在の株価を考慮した資産価値は約6000億円と推定される大企業だ。2009年後半からは,「The Sims 3」や「Star Wars: The Old Republic」といったタイトルのリリースが控えており,そう簡単に買収される状況ではないだろう。
 もっとも,Appleは最近になってMicrosoftのビジネスストラテジー部門でXboxを担当した元副社長や,GameCubeのプロセッサデザインを行ったチーフアーキテクトといった人物を雇用しており,Apple II以来のゲーム業界参入が濃厚になっているのは事実。EA買収とは無関係だとしても,このあたりの情勢には興味深いものがある。

 

The Sims 3やオンライン事業に期待がかかる
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2008年1月には,EAはカナダのBioWareとロサンジェルスのPandemic Studiosを6億2000万ドル(約600億円)で買収しているが,今年はそのBioWareから,写真の「Dragon Age: Origins」や「Mass Effect 2」,そしてLucas Artsも絡んだMMORPG「Star Wars: The Old Republic」が一斉にリリースされる

 今後,EAはどのような方向に進んでいくのだろうか。
 Riccitiello氏は今回のカンファレンスで公開された,2年連続赤字の状況をそれほど悲観視していないようだ。氏は,「2010年度(つまり2009年4月以降にリリースされるタイトル)には10本のヒット作が出る」と話しているが,これは「Battlefield: Bad Company 2」「Dragon Age: Origins」「FIFA」の新作,「Madden NFL 10」「Mass Effect 2」,そして「Need for Speed: Shift」などのことで,いずれもマルチプラットフォーム対応であることから,それぞれが各プラットフォームで成功することにより,例年どおり20本以上のミリオンヒットを生み出すことになる勘定だ。

 2009年6月に発売が延期されたThe Sims 3は,拡張パックを含むシリーズ累計の売り上げが一億本を超えるという大ヒットシリーズの続編だ。今回の3では,家を飛び出して自由にご近所を歩き回れることから,それなりのスペックをPCに要求するだろうが,既存のファンにアピールするだけでも相当なヒットが見込める。
 EAがリリースした最近のPCゲームには,コピープロテクトソフトの導入などに関する批判が多いが,本作は「The Sims 2」と同等のセキュリティで,オンライン認証の必要はないという。
 また,2009年度にはWii向けタイトルの収益が全体の14%に達し,前年の8%から大きく向上している。そのため,今後も同プラットフォームのサポートを強化していくのは間違いないと思われるころであり,その手始めとして,モーションプラスコントローラをフィーチャーした「EA SPORTS Grand Slam Tennis」と「Tiger Woods PGA TOUR 10」の2本が用意されている。
 また,Pogo.comを持つカジュアル部門や,iPhone向けタイトルを制作/販売するモバイル部門の成績も好調で,この分野も含めれば,本年度と同じくらいの収益になると予想されている。あとは,開発コストの削減やタイトルの見直しといった作業による,経営のスリム化がどれだけ進むかだろう。

 EAが今後強化していくであろう,もう一つのカテゴリが,オンラインゲームとダウンロードコンテンツで,EAはValveと提携したSteamでのデジタル流通の成果にも満足している様子だ。
 最近は,中国で「EA SPORTS FIFA Online 2」がローンチされたほか,「Need for Speed World Online」もテストに入るなど,アジアでのオンラインビジネスにチャンスが広がっている。6月に開催される予定のE3(Electronic Entertainment Expo)では,さらに新タイトルの発表もありそうだ。上記のようなカジュアル化,オンライン化,そして開発/経営のスリム化については,ほかの欧米メーカーも追随していくのは間違いなく,業界の雄であるEAの動きは,今後の欧米ゲーム業界のトレンドとしても,注目すべきものだろう。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
サンフランシスコ在住の4Gamer海外特派員。ゲームジャーナリストとして長いキャリアを持ち,多様な視点から欧米ゲーム業界をウォッチし続けてきた。業界に知己も多い。本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,連載開始から200回以上を数える,4Gamerの最長寿連載だ。
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