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印刷2008/11/21 19:04

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奥谷海人のAccess Accepted / 第196回:ゾンビとゲームの不思議な関係

奥谷海人のAccess Accepted

 ここのところ,ゾンビを扱った映画やゲームが増えている。定番のザコキャラとして登場することが多かったゾンビが,最近では「Left 4 Dead」のように,まさにメインキャラの座を獲得した例もあるのだ。今回は,映画,音楽,コスプレといったアメリカのサブカルチャー文化を紹介しつつ,なぜ今ゾンビにスポットが当たることが多くなっているのかを考えてみたい。

ゾンビとゲームの不思議な関係
アメリカのゲーム産業をゾンビブームが駆け抜ける

 あくまでも個人的にだが,ゾンビとゲームは切っても切れない関係だと思っている。スケルトンやスパイダーと並ぶ,“三大ザコキャラ”ではないだろうか。だが,2005年に発売された「Stubbs the Zombie in Rebel Without a Pulse」では,ゾンビが主人公になるなど,その扱い方が変わりつつある。さらに最近では,ゾンビをたんなるザコキャラ以上の存在として扱うゲームが増えているのだ。

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ゾンビが主人公のアクションゲーム「Stubbs the Zombie in Rebel Without a Pulse」では,ジェームス・ディーンの映画「理由なき反抗」をパロった「脈拍なき反抗」というサブタイトルが笑いを誘う。ちなみに,本作を開発したWideload Gamesは,オリジナル「Halo」のプロデューサーが起業した開発メーカーだ

 ゾンビとは何かをいまさら説明する必要はないだろうが,「剣と魔法の博物館 〜 モンスター編」の第13回に記述されているとおり,1968年に公開されたジョージ・A・ロメロ監督の映画「Night of the Living Dead」に出てきたゾンビが“現代型ゾンビの原型”と言える。

 そののち,マイケル・ジャクソンが1982年に発売したアルバム「スリラー」が,世界で1億枚というとんでもない売り上げ枚数記録を打ち立てた。その同名シングル曲のミュージックビデオに登場したゾンビは,一気に有名キャラクターとなったのである。

 ゲームでは,1982年にZX Spectrumというゲーム機向けに発売された「Zombie Zombie」という作品が,最初のゾンビゲームと言われている。残念ながらヨーロッパ以外では発売されず,詳細は分からないのだが,擬似3Dでクォータービューを採用するなど,なかなか斬新なゲームだったようだ。

 Zombie Zombieのリリース後も,ゾンビはさまざまなゲームに登場するようになり,1992年の「Alone in the Dark」,1993年の「DOOM」はいうまでもなく,「Diablo」(1997年),「Half-Life」(1998年),さらには「The Elder Scrolls IV: Oblivion」(2006年)に至るまで,人気作品にゾンビの出ないゲームはなかった。……というのはさすがに言いすぎだが,かなりの頻度でゾンビが登場していたことは間違いない。

 日本に目を向けても,「魔界村」(1985年)「悪魔城ドラキュラ」(1986年),ザ・ハウス・オブ・ザ・デッドシリーズやザ・タイピング・オブ・ザ・デッドシリーズなど,ゾンビはかなり多くのゲームに登場している。欧米では「Resident Evil」と命名されているバイオハザードシリーズとその映画は,それ以降のゾンビの描き方に,大きな影響を与えただろう。

 

CoD,WoW,GTAまでもが,ゾンビ,ゾンビ,ゾンビ!

 2008年に入ってからは,ゾンビどもに勢いがついてきた。Electronic Artsの「Dead Space」とBethesda Softworksの「Fallout 3」に登場するのは“ゾンビもどき”と表現したほうがいいかもしれないが,今年はゾンビ愛好家には大注目のゲームがかなり発売されている。さらに,ゾンビゲームの決定版といえる「Left 4 Dead」までが登場したのである。

 ゾンビブームは,ゾンビとはおよそ無縁なゲームにも影響を与えており,なんと第2次世界大戦FPS「Call of Duty: World at War」にもゾンビが登場するのだ。もちろん,ストーリーに出てくるわけではないが,シングルプレイキャンペーンクリアすると,ゾンビ達の来襲を食い止める,協力プレイ向けのボーナスレベルがアンロックされるのである。

 また,ついにアカウント総数が1100万を超えた「World of Warcraft」では,拡張パックである「World of Warcraft: Wrath of the Lich King」のプロモーションとして,大量のゾンビが押し寄せる「Zombie Infection」というイベントが10月末に行われた。「Grand Theft Auto IV」では,“Let Sleeping Rockstars Lie”というアチーブメントを達成すれば,プレイヤーキャラクターがゾンビに変化する。これは,見た目がゾンビになるだけでなく,ほかのキャラクターに伝染までするというのだから,芸が細かい。

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Valveの「Left 4 Dead」は,最大4人で協力してゾンビで溢れかえる街から脱出するというゲームだ。ゾンビ側でプレイできるモードもあり,決してザコキャラ扱いはされていない

 このように,欧米のゲームはゾンビで溢れかえっているのだ。ではなぜ,これほどまでにゾンビがやたらと登場するのかは,アメリカの流行に関係がある。実はここ数年,アメリカではゲームに限らず,さまざまなメディアでゾンビが流行っているのだ。

 その典型的な例といえるのが,「Zombie March」とも「Zombie Lurch」とも呼ばれる,20代を中心にした人達の間に広がっているイベントだろう。これは,アイオワ州のアイオワシティという田舎町で3年前に始まったらしいイベントで,参加者達が,団体でゾンビのコスプレをして街を練り歩くのである。

 今では,ワシントンDCやピッツバーグ,シアトルといった都市にまで広がっており,数百人が集まるイベントに成長し,ニュースに取り上げられるほどにまでなった。ちなみに,YouTubeなどで検索すれば,その様子が収められた動画も見つかるだろう。

 そんなゾンビブームを分析したのが,「io9」というSF情報サイトを運営するAnnalee Newitz(アナリー・ネウィッツ)氏だ。彼女は,1910年以降に公開されたゾンビ映画をリスト化し,1960年代以降,およそ5年に一度の割合でゾンビ映画が急激に増えたことを突き止めたのである。とくに,2007年と2008年は,それまで最高だった1990年の2倍以上の,30本ものゾンビ映画が公開されたというのだ。

 ネウィッツ氏はこういった傾向が,社会情勢が不安になった数年後に起こりやすいと指摘しており,何らかの関連があると考えている。つまり,現在アメリカで起きているゾンビブームは,数年前に起きたイラク戦争やテロなどが影響しているというのだ。ネウィッツ氏の推論が正しいとすれば,現在の社会情勢から見て,このゾンビブームはしばらくは続きそうな気配である。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。最近,ロシア美女のお誘いや銀行に成りすましたスパムメールの受信量が一気に減ったという奥谷氏。さぞかし喜んでいるのかと思いきや,なぜか寂しげである。どうやら,美女のお誘いメールをこまめに読んでおり,届くのを楽しみにしていたようだ……。

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