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印刷2007/11/02 12:05

連載

奥谷海人のAccess Accepted

 欧米にARG(オルタネイト・リアリティ・ゲーム/Alternate Reality Game)というゲームジャンルが存在することを書いたのは,本連載の第54回「ARGという,新ジャンル」でのことだ。2001年にElectronic Artsがリリースした「Majestic」での筆者の体験をもとに,2005年当時に密かな話題となっていた「Perplex City」などのARGを説明したものだが,このところ同ジャンルが大きな発展を見せているようなので,ここで改めて説明してみたい。

Access Accepted第148回:Web 2.0時代のリアリティ・ゲーム
「Halo 2」のプロモーションに使われた
I Love Beesとは?
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いかにもシロウトっぽい作りのwww.ilovebees.comが何者かにハッキングされ,その修復を運営者が呼びかけたことから始まった「I Love Bees」。現在は,2552年11月9日にマスターチーフが覚醒するまでのカウントダウンが表示されている

 “交互に”や“代替の”といった意味を持つ「オルタイネイト」と,“現実”を表す「リアリティ」を合わせた言葉であるARGは,我々の暮らす現実世界に並行して進んでいるかも知れない「ifの世界」をテーマにしたジャンルのゲームだ。PCやコンシューマ機などを使わず,現実世界のすべてをプラットフォームにして進行させていくインタラクティブなゲームとでも表現すればいいのだろうか。WebやEメール,携帯電話などをフルに活用しながら不特定多数のプレイヤーが楽しむもので,フィクションと現実世界を交錯させることで,本来は虚構である物語にリアリティを帯びさせるというコンセプトである。

 そんなARGの初期の例として,Electronic Artsがリリースした「Majestic」を以前紹介したが,それとほぼ同時期にMicrosoftが立ち上げた「The Beast」というゲームもARGの重要な起点となっている。

 The Beastは,スティーブン・スピルバーグ監督の映画「A.I.」(2001年)のプロモーションとして2001年4月から約3か月間行なわれていたものだ。内容は,映画のクレジットやポスターの中に暗号のように書かれていた,「Evan Chanは殺された。Jeanine Sellaが鍵だ」という文章を元に,ウェブサイトを検索したり,その過程で見つけた番号に電話をかけたりして謎解きをするのである。謎といっても,もちろんすべてが架空の話ではあるのだが,つい見過ごしてしまうような情報をファン達が収集することで,より映画の世界観に没入できるという,一種のプロモーションであったわけだ。

 このThe Beastと同じ手法で行なわれたMicrosoftのプロモーションが,一部で有名な「I Love Bees」である。これは,2004年にリリースされた「Halo 2」のファン向けサービスとして行なわれたもので,当時劇場公開されたウィル・スミス主演の「アイ,ロボット」のトレーラームービーの中で奇妙な養蜂のサイトが唐突に紹介されることからストーリーが展開していくという内容だ。謎解きを通して入手した番号に電話をかけて,質問に正しく答えるたびに,26世紀に凶暴なエイリアンが地球を襲うというHaloシリーズの世界観に即した内容の短いインターネットラジオ放送が聴ける。さらにはラジオのパーソナリティ達が電話で応答したり,その電話のやり取りが次のラジオ番組で使用されたりと,参加者を熱中させるさまざまな要素が盛り込まれていた。

 

シリアスゲームとしてもARGを活用

 このI Love Beesで面白いのは,実際に電話に応答してもらうために,あらかじめ指定された公衆電話を使う必要があったり,場所と写っている人数が特定された画像を携帯電話で送らなければならなかったりと,プレイヤー達が自然にコミュニティを作って情報交換するような仕掛けがあった点だ。指定された公衆電話で特定の時刻に電話が鳴って情報が流れるなどという場合,コミュニティの代表者が人気(ひとけ)のない片田舎まで徹夜のドライブをして聴きに行くというようなことも起きたらしい。

 I Love Beesの例に見られるように,ハッキングされたサイトの修復や公衆電話での応答など,参加したプレイヤーは,テレビやPCを使って遊ぶ普通のゲームよりはるかに能動的な行動を要求される。アメリカにはあまり存在しないが,「オフ会」のようなものを,さらにゲーム的にアレンジした遊びの一種といえるのではないだろうか。

 ARGを楽しむプレイヤーにとっては,特別な秘密を共有する“選ばれたプレイヤー”達のコミュニティの存在が重要になっているようだ。また,コンシューマ機やハイスペックなグラフィックスカードもいらず,インターネットと携帯電話さえあれば誰でも参加できるというハードルの低さも,このARGの魅力の一つであるかも知れない。

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「World without Oil」では,ガソリンの枯渇で徐々に街中の雰囲気が変わっていく様子をドキュメンタリー風に仕立てたビデオなども有志によって作られた。これを“ゲーム”というカテゴリーに収めるのは難しいかもしれないが,一つのストーリーを1700人あまりで制作するというWeb 2.0的パワーもARGならではだろう

 最近,ARGはメインストリームのメディアで取り上げられつつあり,「Lost」や「Heroes」といった人気ドラマのプロモーションとしても活用されている。ARG独特のゲーム用語も誕生しており,ゲームを企画し,進行させていく人が「パペットマスター」,最初にコミュニティサイトを開く人を「ラビットホール」,ゲームを真剣にプレイする意図がないままコミュニティで口出ししてくる人を「ジャッカー」,そして運営者側とプレイヤー側の隔たりを「カーテン」などと呼ぶようになっている。

 さらには,ARGのシリアスゲームとしての可能性も追求され始めている。これは,「もし不特定多数の人間が集まってゲーム中に起きる難問を解けるのなら,実世界で起こる問題も解決できるのではないか?」という考え方に依っている。この例の一つが,今年3月2日から3か月間ほど実施されていた「World without Oil」である。

 これは,数十年後に原油資源が枯渇したとき,プレイヤー達はどのような生活をしているのかという仮定に思いを馳せてもらい,未来の自分の生活に関する日記やエッセイ,画像,ビデオレポートを一つに集めてストーリーにしていく試みだ。ドキュメンタリー風に仕立てた映像が公開されるなど,公式サイトは毎日更新され,閲覧者に来たるべき未来を考えてもらおうという意図もある。スポンサーはアメリカの公営放送局PBSで,以前当連載で紹介したこともあるJane McGonigal(ジェーン・マクゴニガル)氏らが実際の開発を手掛けた。

 オンラインゲームにおけるコミュニティが実世界に適応されたかのようなARGだが,このジャンルは大きな可能性を秘めており,今後も発展していきそうな気配がする。

 

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。最近子供にサッカーを教えたり短距離マラソンに挑戦したりと急激に筋肉を使い始めた奥谷氏。それが祟って極端な筋肉疲労を起こしていたのだろう,太もも裏が肉離れを起こしてしまい,今はかなり辛い生活を送っているという。座っているのも痛いらしいのだが,肉離れはどうやら自然治癒に任せるしかなく,奥谷氏は相当へこんでいるようだ。

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