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  • 発表日:2007/02/28
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AMD,グラフィックス統合チップセット「AMD 690」シリーズを発表
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印刷2007/02/28 14:01

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AMD,グラフィックス統合チップセット「AMD 690」シリーズを発表

 2007年2月28日,AMDは新しいデスクトップPC向けチップセット「AMD 690シリーズ・チップセット」(以下AMD 690)を発表した。遙か忘却の彼方か,そもそも聞いたことがないという読者も多いだろうが,AMDが「AMDブランド」の一般ユーザー向けチップセットをリリースするのは,2001年の「AMD-761」以来,実に6年ぶりとなる。そして,グラフィックス機能を内蔵するチップセットとしては,AMDの歴史上初めての製品だ。今回は,日本AMDが開催した報道関係者向け事前発表会の内容を中心に,この新しいチップセットについて詳細をお伝えしたい。

左:初のグラフィックス機能内蔵チップセットということで,「AMDの歴史に残る発表になる」と紹介した日本AMDの吉沢俊介氏(取締役 マーケティング本部 本部長)
右:AMD 690シリーズの製品説明を行った,日本AMDの信垣育司氏(マーケティング本部 GPUプロダクトマーケティング担当 シニアマネージャー)


■「AMD」と「ATI Radeon」
■ダブルブランドを持つAMD 690シリーズ


AMD 690G。開発コードネームであるRS690の刻印が見える
 グラフィックス機能を内蔵することから想像がつくように,AMD 690シリーズはブランド名こそAMDだが,“中身”はATI Technologies(以下ATI)の技術によるチップセットだ。

 これはもともとATI時代に「RS690」という開発コードネームで呼ばれていたもの。RS690をベースとした製品としては,Intel製CPU向けの「ATI Radeon Xpress 1250(for Intel)」というIGP(Integrated Graphics Processor≒グラフィックス機能統合ノースブリッジ)がすでに発表されているが,AMDによると,AMD 690シリーズにおいてIGPという呼称は用いられず,あくまでチップセットという扱いになるとのことである。
 ちなみにATI Radeon Xpress 1250(for Intel)とAMD 690Gの違いは,メモリコントローラとHyperTransportの有無で,グラフィックス機能自体は変わらない。UMAの処理に当たってCPUを介さないぶんだけ,前者のほうがパフォーマンスは高いようだが。

 さてAMD 690シリーズには,デジタルYCbCr&RGB出力(HDMI,最大1920×1080ドット)およびデジタル/アナログRGB出力(DVI-I,最大2560×1600ドット)をサポートする「AMD 690G」と,デジタルディスプレイ/ビデオ出力をサポートしないローコスト版「AMD 690V」の,2モデルが用意される。両者の違いはこの1点のみで,そのほかの性能や機能はまったく同じである。
 というわけで,AMD 690シリーズのブロックダイアグラムを見てみよう。

AMD 690シリーズのブロックダイアグラム


マザーボードの製品ボックスには,二つのロゴが貼られることになるようだ。グラフィックスの正式名称は「ATI Radeon X1250グラフィックス(チップセットに内蔵)」という呼称になるという
 AMD 690シリーズが内蔵するグラフィックス機能は,「ATI Radeon X700」をベースに,ATI Radeon X1000ファミリーが持つディスプレイパイプラインを組み合わせたものだ。ユニークなのは,チップセットの一部分にすぎないグラフィックス機能に名前が付いている点で,HDMI&DVI-IをサポートするAMD 690G内蔵のものが「ATI Radeon X1250」,AMD 690Vが内蔵するHDMI&DVI-I非サポートのものが「ATI Radeon X1200」となっている。AMDとATIのダブルブランドを持つわけである。
 先ほど述べたとおり,GPUとしての仕様は共通で,ピクセルシェーダユニット数が4基,頂点シェーダユニット数は0基という構成。動作クロックは400MHzである。ATI Radeon X700は順番に8基,6基,400MHzだったので,動作クロック以外はずいぶんとグレードダウンした印象を受ける。

 組み合わせられるディスプレイパイプラインは,ATIブランドの動画再生変換プラットフォーム「Avivo Technology」用。詳細は同技術のレビュー記事を参照してほしいが,簡単にまとめるなら,動画のデコードやエンコード,動画表示のためのいわゆるポストプロセスをGPU側で行い,CPU負荷を低減すると同時に,品質の高い動作再生環境を提供しようというものだ。
 また,ディスプレイコントローラを2組内蔵し,標準でデュアルディスプレイ出力をサポートするのも,AMD 690シリーズの特徴だ。さらに,外部PCI Express x16スロットなどにグラフィックスカードを別途用意すれば,クアッドディスプレイ出力もサポートできるという。ただし,4画面同時出力にはBIOS側の対応が必要とのことで,換言すれば,マザーボード側のサポートが必須となる。

■HDMIサポートのため,AMD 690Gにサウンド機能を内蔵
■サウスブリッジは「ATI SB600」


Windows XPのデバイスマネージャから確認してみると,サウンドデバイスが二つ認識されているのが分かる。ATI Radeon X1250の下にあるのがAMD 690G内蔵のものだ
 上に示したブロック図で,AMD 690Gから「Audio」という矢印が出ていることに気づいただろうか。これはダイアグラムの誤りではなく,著作権保護技術「HDCP」に対応するため,サウンド機能がAMD 690G側に組み込まれているのだ。

 HDMIでは著作権保護されたコンテンツのビデオとサウンドを1本のケーブルで出力するようになっている。だが,これまでオンボードサウンド機能は,これまでサウスブリッジ側に用意されるのが常だったため,「ビデオはノースブリッジから,サウンドはサウスブリッジから」にしてしまうと,HDMI出力時に,ブリッジ間のバスなどへ音声データを流さざるを得ず,完全なHDCP(=著作権保護)が難しい。
 この点AMD 690Gでは,サウンド周りの機能もノースブリッジに内蔵するため,この問題を回避できるというわけだ。今のところ,競合他社でこの技術を実装したチップセットは存在しないので,(ゲームとはそれほど関係ないが)HDMI出力を利用したい場合に,ビデオとサウンドのHDCPへ完全に対応したAMD 690Gは非常に価値がある。

ATI SB600
 AMD 690シリーズと組み合わされるサウスブリッジは「ATI SB600」である。これはATI時代から「SB600」として用いられていたもので,転送速度3Gbps(Native Command Queueing対応)のSerial ATAポートを最大4サポートし,RAID 0/1/10に対応。Ultra ATA/133×1ch,USB 2.0×10ポートなど豊富なインタフェースを提供する。
 もちろんサウンド機能も持ち,High Definition Audio CODECがサポートされるが,これはAMD 690Vチップセット用ということになるだろう。

■「Windows Vista Premium Ready PC」 の基準をクリア
■NVIDIAとの関係は……?


 発表会で強調されたのは,AMD 690シリーズが,「Windows Vista Premium Ready PC」の基準を満たしているという点だ。これはMicrosoftのロゴプログラムで,簡単にいえば,AMD 690シリーズを採用したPCは,Windows Vistaがただ動作するだけでなく,Aeroデスクトップを含めて,快適に利用できるという“お墨付き”を得ていることになる。

コストを重視したシングルチャネルメモリアクセス環境のPCでもグラフィックメモリ帯域幅1.6GB/s以上という基準をクリアすると謳う
 グラフィックス機能統合型チップセットにとって,Windows Vista Premium Ready PCのロゴを取得するのにハードルとなるのが,グラフィックメモリの帯域幅だ。基準は1.6GB/s以上。単体グラフィックスカードであれば,まず何の問題もなくクリアできる水準なのだが,グラフィックスメモリをメインメモリの一部から確保する「UMA」(Unified Memory Architecture)という仕組みを採用している(AMD 690シリーズを含む)大多数のグラフィックス機能統合型チップセットにとっては,そうではない。メインメモリは,CPUだけでなく,PCI ExpressやPCIバス上のデバイスからもアクセスされるため,コンスタントに1.6GB/s以上の帯域幅を維持するのは意外に難しいのだ。
 だが,AMD 690シリーズでは,デュアルチャネルメモリアクセス時はもちろん,シングルチャネル接続時でも基準を満たしていると,AMD 690シリーズの説明に立った信垣氏は強調する。

 メインメモリにUMAで確保されるグラフィックメモリ容量は,BIOS側の設定による。もっとも,Windows Vista Premium Ready PCの要件からして,128MB未満が設定されることはまれではないだろうか。ちなみに,Gigabyte Unitedの一部製品など,最大1GB確保できるマザーボードもあるようだ。

動作デモ用PCは,ASUSTeK Computer製のAMD 690Gマザーボードを搭載していた
 このほか信垣氏は,Avivo Technologyがもたらす動画再生時の優秀性を示すべく,ビデオ再生品質チェックソフト「HQV BENCHMARK DVD」を使った3:2プルダウン処理(注:動画のフレームレートを変換する処理)でモアレが生じないなどの実例を披露した。「動画再生能力に優れ,HDMI出力もサポートするAMD 690Gは,ホームエンタテイメントPCやホームシアターPCへの応用も狙える製品。単体で利用するのはもちろん,チップセットを採用するPCメーカーにとっても魅力的」というわけだ。

 なお,ゲーマーが期待する3D性能に関してこれといったデモは行われなかったが,その代わりに会場で日本AMDは「Half-Life 2: Lost Coast」を用いて水の表現を比較するデモを実施。「競合他社の内蔵グラフィックス機能では描画がおかしくなるところも,AMD 690Gでは問題ない」とアピールしていた。

 ところで,実際のデモはIntel製チップセット「Intel G965 Express」搭載PCを相手に行われたのだが,AMDが示したスライドには,NVIDIAの「MCP61」の名も刻まれていた。そこで,パートナーであるはずのNVIDIAを競合として紹介する点について確認すると,吉沢氏からは「ユーザーに選択肢を用意することが大切だ。スライドは,ラボで得られた客観的なデータを判断材料として提供しているだけなので問題ない」という回答が得られた。理に適っている一方で,NVIDIAとの微妙な関係を窺わせる発言ともいえそうだ。

上段は,ビデオ再生デモの様子と,ビデオ再生におけるAMD 690Gの優位性を示したスライド。下段は3Dグラフィックスの描画能力における優位性を示したデモの様子とスライドだ。二つのディスプレイはいずれも左がIntel G965 Express,右がAMD 690G。比較デモは対Intelだが,スライドになるとNVIDIAの製品が登場する点に注目してほしい。なお,細かいことをいうと,MCP61は「GeForce 6100」の下位モデルなので,AMD 690Gの比較対象として適切かどうかはやや疑問も残る


■PCメーカーにとっては魅力的なチップセット
■だがゲーマーにとっては?


情報筋によれば,AMDはAMD 690GをベースとしたノートPC向けのチップセット「AMD M690G」も用意しているという
 発表会には,Albatron Technology(アスク),ASUSTeK ComputerやECS(日本エリートグループ),Gigabyte United(日本ギガ・バイト),MSI(エムエスアイコンピュータージャパン)といったマザーボードメーカーが搭載製品を並べ,新製品の紹介を行っていた。Mini-ITXサイズでHDMI出力をサポートする製品などもあり,応用次第では面白いチップセットになりそうな予感だ。
 PCメーカーにとっても魅力的なチップセットだろう。日本AMDによると,AMD 690シリーズを用いれば80ドルで「Windows Vista Premium Ready」なマザーボードが構築できるという(80ドルの根拠は明らかではないが,AMDが予定しているチップセットの単価から算出したものと思われる)。Athlon 64ファミリーの価格も2007年に入って大幅に下がっているので,コストを重視した「Windows Vista Home Premium」搭載PCの屋台骨として,ATI Radeon Xpress 1250(for Intel)ともども,国内PCメーカーの注目を集めそうだ。

 AMD 690シリーズは,高機能なチップセットを戦略的な価格で供給し,AMD64プラットフォームを広げようという,AMDの強いメッセージを感じられる製品であり,AMDがチップセットを含めた形でAMD64プラットフォームの価値を高めようとする方向に動きだしたことは注目に値する。ATIを買収した成果が,目に見える形で現れたといえそうだ。

 だが,それと「ゲームに向くか」は,また別の話である。発表に合わせて,4Gamerでは検証を行っているので,そちらもぜひ併せてチェックしてほしい。(米田 聡)

上段左,中央Albatron Technology製のAMD 690G搭載製品「KI690-AM2」。HDMI&DVI-I,D-Sub,コンポーネントビデオ出力端子を装備する。Serial ATAポートは4。メモリスロットはSO-DIMM専用だ
上段右ASUSTeK Computer製のAMD 690G搭載製品「M2A-VM/HDMI」。HDMIおよびコンポーネント/S/コンポジットビデオ出力に対応した拡張カードが付属し,マザーボード単体で最大4画面出力が可能という。IEEE 1394と拡張カードを省いた「M2A-VM」もラインナップされている
下段左:ECS製のAMD 690G搭載製品「AMD690GM-M2」。ECS初のDVI-I搭載マザーボードとのことだ。2007年3月発売予定で,「ECSらしく,戦略的な価格で投入したい」とは日本エリートグループの弁
下段中央:Gigabyte United製のAMD 690V搭載製品「GA-MA69VM-S2」。下位モデルのチップセットを搭載しながらDIMMスロットを4本用意する拡張性の高さが特徴だ。2007年3月上旬発売予定
下段右MSI製のAMD 690G搭載製品「K9AGM2-FIH」。HDMI接続のデモが行われていた。AMD 690V搭載の「K9AGM2-L」と合わせて近日登場の見込み
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