― レビュー ―
ゲーマーの視点で見る,画質向上機能「Avivo Technology」の価値
Avivo Technology
Text by 坪山博貴
2006年2月23日

 

 「Avivo Technology」(アヴィヴォテクノロジー,以下Avivo)は,Radeon X1000シリーズに例外なく搭載される,総合的な画質向上技術/機能の総称である。ATI Technologies(以下ATI)は,Radeon X1000シリーズよりも数日早く,2005年9月20日に発表するなど,この技術には並々ならぬ気合いと自信を持っていたようだ。
 ただし,Radeonシリーズ用グラフィックスドライバ「Catalyst」から制御できるこの機能は,大々的な発表にもかかわらず,主要機能のほとんどが,Radeon X1000シリーズの発表に間に合わなかった。結果として,Radeon X1000シリーズの発表と同時に飛びついた熱心なファンからは「まるで使えない」と評され,そのマイナスイメージは,2006年2月を迎えた今も,完全には払拭されていないように見受けられる。

 

 一方で既報のとおり,Catalystは特別版に当たるCatalyst 5.13以降で,Avivoに関する大幅な機能向上を果たしたとされている。先ほどの評を受けるなら「使えるようになりました」というわけだ。もちろん,2006年2月下旬時点の最新版であるCatalyst 6.2でも,機能向上はそのまま引き継がれている。
 では,この画質向上機能というものは,ゲーマーにとって何らかの意味があるのだろうか。Radeon X1000シリーズ搭載のグラフィックスカードを購入すると“もれなく付いてくる”Avivoというものの価値を,本稿では明らかにしてみたい。

 

 

■Avivoはゲームで意味があるのか

 

 Avivoの正体そのものについては,2005年9月20日の記事で一度解説しているが,ここで改めて簡単にまとめておこう。Avivoは,グラフィックスカードのビデオ入出力周りをハードウェアで総合的に支援する機能だ。付け加えるなら,ビデオエンコード/デコード支援機能や,ビデオ出力時の品質/使い勝手向上機能が,Radeon X1000シリーズでは標準で用意されており,その総称がAvivoというわけである。
 しかも,これらの機能は常時有効。何かパッチや追加ソフトを導入したり,英文のマニュアルと格闘したりせずとも,あらゆるRadeon X1000搭載グラフィックスカードで,例外なく利用できる。

 

 では,ビデオエンコードなどといった,どう考えてもゲームとは直接関係なさそうな機能の総称は,ゲーマーにとって何かメリットがあるのだろうかというと,実はある。
 いきなり結論から述べれば,ゲーマーにとって直接的なメリットとなるAvivoの機能は,主に以下の2点だ。

  • (1)大型テレビなどにゲーム画面を出力するとき,D/コンポーネント端子を利用して接続しても,オーバースキャンやアンダースキャンのない,効率的かつ正確な表示を行える
  • (2)出力先のデバイスごとに,それぞれ色調などの細かな設定が可能なので,デュアルディスプレイでゲームをプレイするとき,ディスプレイ同士の画調を合わせやすい

 どちらもかなり地味と思うかもしれない。実際,地味か地味でないかといえば,間違いなく地味な機能だ。ただ,ゲーム画面を大型の高解像度テレビ(HDTV,あるいはハイビジョンテレビともいう)へ出力したり,デュアルディスプレイでフライトシミュレータを楽しんだりといった場合に,Avivoが明らかなメリットとなるのも,確かである。

 

XIAiX1600XT-DV256
ブランド:XIAi
問い合わせ先:お問い合わせ窓口

 結論が先に来たので順序は逆になるが,確認してみよう。
 テスト環境は下記ののとおり。今回はXIAi(エクシア)のRadeon X1600 XT搭載グラフィックスカード「XIAiX1600XT-DV256」(以下Radeon X1600)が用意できたので,これを利用する。また必要に応じて,筆者手持ちのAlbatron Technology製GeForce 6600搭載製品「PC6600」(以下GeForce 6600)と比較してみる。

 

 

 今回はグラフィックスカードからの出力を,日本ビクター製の高解像度テレビ「LT26-LC60」にコンポーネント入力してみることにした。

 

1360×768ドットと同じく,液晶ディスプレイ解像度の定番である,1280×768ドットの設定も,当然のように用意されている

 Avivoが利用可能なRadeon X1600では,Radeonシリーズ用グラフィックスドライバ「Catalyst」のコントロールパネル「Catalyst Control Center」から「ディスプレイマネージャ」を開き,液晶テレビ側のディスプレイ解像度を選択するだけで,あっさりとPCのデスクトップを表示できた。もう少し具体的にいうと,ディスプレイマネージャから,今回のテスト環境ではセカンダリ(=2台め)ディスプレイになっているテレビを選択。液晶テレビのパネル解像度である1366×768ドットに合わせて,「デスクトップ領域」のプルダウンリストから,最も近い「1360×768ドット」を選択するだけだ。コンポーネント接続はアナログ信号の送受信になるうえ,ドット数が微妙に合っていないこともあってか,デジタル信号のDVIと比べるとさすがにぼやけた印象だが,視認性は十分といえる。

 

本文で言及したとおりに設定し,Webブラウザを液晶テレビにフルスクリーン表示し,それをデジタルカメラで撮影してみた。上下左右ともに情報は欠落していないのが分かるだろう。右は一部の拡大だが,解像度も十分実用レベルであることが分かる

 

 続けて,ゲームを出力してみる。今回は,Catalyst Control Centerから,プライマリ(1台め)に指定した液晶ディスプレイと,セカンダリの液晶テレビに同じ画面を表示するクローンモードを選び,「Quake 4」を解像度1024×768ドットの16:9ワイド設定で表示させてみた。 下がその結果だ。右が液晶テレビだが,プライマリとなる,解像度1680×1050ドットの20インチワイド液晶ディスプレイと比べて,ほぼ同じ画面が表示されている。拡大してみても,画面情報が一切欠けていないのが分かるはずだ。

 

PC用液晶ディスプレイと液晶テレビへ同時に出力したQuake 4の一シーン。もちろん,上で述べた条件以外の表示調整などはいっさい行っていない

 

画面右上の拡大を並べてみた。左が液晶ディスプレイ,右が液晶テレビだ。まったく同時に撮影したわけではないため,キャラクターの動きの影響で表示は若干ズレているが,情報量自体はまったく欠けていないことが分かる

 

Quake 4には,1280×768ドットなど,ワイド画面に対応した解像度設定が用意されていない。一方で,1024×768ドットの実解像度で16:9(や15:9)表示を実現するような高解像度テレビに向けたアスペクト比設定は用意されている。そこで,今回はこのような設定になっているというわけだ。ちなみに,解像度が1024×768ドットに留まっているのは,Radeon X1600で快適にプレイできる最高解像度だったからである。

 

 これがどれだけのメリットなのかは,一度でもテレビにゲーム画面を出力しようとしたことがある人には,分かってもらえるだろう。これまでのグラフィックスカードだと,たいていの場合は,オーバースキャンだのアンダースキャンだのいろいろ入り組んだ設定を行って,しかも設定値の考え方に信号解像度と(1125iや1080iなどといった)表示解像度が混在していたりして,なかなか100%期待どおりの画面は得られなかった。この点,Avivoであれば,そういった心配をせずとも,スパっと表示できるというわけだ。

 

 同じ検証をGeForce 6600で行うとどうなるだろうか。プライマリ,セカンダリの設定と接続インタフェースをRadeon X1600と共通にして試してみる。
 まず,GeForce用グラフィックスドライバであるForceWareには,1360×768/1280×768ドットや,それと数ドット違いの解像度といった設定項目が標準では用意されていない。このため,液晶テレビのパネル解像度に最も近い1280×720ドット,いわゆる「720P」を選択。その状態でWebブラウザを液晶テレビに表示させると,下の画面が得られた。上下左右が少しずつカットされてしまう,典型的な「オーバースキャン」表示となった。

 

グラフィックスカードのビデオ出力でよく見られるオーバースキャン。ビデオ出力を試みた読者の多くが,一度はこういう画面を見ることになったのではなかろうか

 

 続いて,Quake 4をプレイしてみるが,まず,Radeon X1600と同じ設定では,液晶テレビ側で画面の一部しか表示されず,全体をスクロールして表示する「パンモード」といわれる状態になってしまった。このため,いろいろ試行錯誤することになったのだが,1時間ほど格闘して,ようやくゲームをプレイできるような設定になったときには,800×600ドットの,4:3設定となっていた。
 細かいことを書いていくとキリがないのでやめておくが,ForceWareのクローンモード設定には制限が多く,設定変更時にPCディスプレイ側がブラックアウトしたり,液晶テレビ側の表示がおかしくなったりと,相当苦労させられたことは付記しておきたい。そして,苦労しても,下に挙げるような状態がせいぜいだったのである。

 

かなりの試行錯誤を経て辿り着いた“ベター”な表示。Radeon X1600とは比べるまでもない

 

 細かい話になるが,PC起動時のBIOS画面出力品質も,Radeon X1600のほうが優秀だ。最近では標準でビデオ出力機能を持つグラフィックスカードが少なくないが,Radeon X1600ではBIOS画面においても解像度的に正確なコンポーネント出力を行えている。これは,かなり大きなメリットになるだろう。

 

左はRadeon X1600,右はGeForce 6600で出力したPCのBIOS設定画面の写真。一見,どちらも正しくコンポーネント出力できているようだが,よく見ると,GeForce 6600では,上下左右に非表示の隙間ができてしまう「アンダースキャン」状態になってしまっており,隣の液晶ディスプレイと比べると,明らかに文字のシャープさが落ちている

 

 次に(2)の「出力先のデバイスごとに細かな設定が可能」な点だが,こちらは「できる」ということが十分にメリットなので,検証ではなく,その方法を簡単に説明しておこう。

 

 Catalyst Control Center内で「Avivo Color」と「Avivo色」と,微妙に名前が異なる(というか,片方だけ翻訳されている)ので分かりづらいのだが,Avivoでは,接続したディスプレイデバイスごとに,色の傾向を調整できる「色調」と,色の強弱を調整できる「彩度」を調整可能だ。この2項目は,動画再生やゲームプレイに用いられるオーバーレイ表示部には影響せず,一般的なWindows操作時における色の傾向を調整できる。
 ほぼ常時,動画を表示し続けることになる液晶テレビでは,一般に,動画再生にチューニングされているのがほとんどで,PC用ディスプレイ代わりに利用しようとすると,全体に発色が派手すぎて目が疲れたり,同時に利用しているPCディスプレイと色の傾向がまるで違っていたりといった,問題の生じる可能性が高い。この点,Avivo ColorとAvivo色を利用すれば,こういった問題を簡単に回避できるというわけだ。

 

2台のディスプレイデバイスを接続した場合,2台の出力デバイスに同じ画面を表示する「クローン」や,2台を横長,あるいは縦長な一つのデスクトップとして扱う「拡張デスクトップ」が選択可能だ。位置関係の入れ替えなども行える PC用の液晶ディスプレイ(設定画面では「モニタのプロパティ0」)と液晶テレビ(設定画面では「コンポーネントビデオプロパティ」)にそれぞれ「Avivo Color」と「Avivo色」の調整結果がリアルタイムで反映されるため,調整は容易だ

 

 なお,AvivoのメリットとしてATIでは,Radeon X1000シリーズで,出力段のすべてにおいて10bit処理されることを挙げている。
 一般的なグラフィックスカードでは,ディスプレイへの出力信号生成は8bit処理される。PCディスプレイの色はRGB(赤/緑/青)の3原色の組み合わせによって表現されているのだが,8bitというのは,このRGB各色が8bit階調――1bitあたり,0/1の2階調を持つので,2の8乗で256階調――を持つということと,ほぼイコール。RGB各色が8bitだから,色全体としては,256×256×256で1677万7216階調を表現可能となっている。

 

 では,これが10bit処理になるとどうなるか。各色が2の10乗で1024階調になり,RGBの合計では,10億7374万1824階調を表現可能になる。当然,10bitのほうが,より細かな階調表現が可能になるので,理論上は,色や明るさなどの表現が,8bit処理よりも細かく滑らかになる。
 そしてAvivoでは,ディスプレイの出力段,もっと具体的にいうと,ガンマ補正や色補正,スケーリング,ディザリングといった段階のすべてにおいて,完全なる10bit処理を行っているのだ。

 

 となれば,当然そのメリットはゲームプレイ時にも,ゲーム画面の美しさという形で享受できそうなのだが,残念ながら,今回はゲームプレイ中の画面や,3DMarkのように高精細な描画を行う3Dベンチマークの画面で目に見える形では体感できなかった。ディスプレイも含めてグラフィックスカードのみが異なる環境を二つ用意し,同時に比較すれば違いを感じられる可能性もあるのだが,さすがにそこまでの環境を準備できなかったというのが,理由の一つ。もちろん「1677万7216色表示と10億7374万1824色表示の違いを目視で見分けられるのか」という,見る側の識別能力の問題も考えられる。
 加えていうなら,デジタルRGB(DVI-D)では最終出力はRGBがそれぞれ8bitずつになる(DVI-Dの場合オプションで8bit以上での伝送も可能だが,受信して表示できるのは一部の特殊な機材しかない)。信号伝送そのものは各色無段階のアナログRGB(D-Sub)でも,ディスプレイ側の信号分解能力は各色8bitが上限だ。

 

 なら10bit処理は無駄なのかというと,そう短絡的な話ではない。こういった処理は一般に「オーバーサンプリング」というが,オーバーサンプリングは,映像や音声の高品質化には民生機でもごく一般的に利用されている手法。方向性としては誤っていないのだ。基本的には,後述するような動画再生向けの機能だが,今後,ATIの強力なサポートを受けるゲームが,オーバーサンプリングを利用して,画面を描画してくる可能性はあるだろう。

 

 

■充実したオーバーレイ設定を持つAvivo

 

 以上,Avivoが持つ機能のうち,ゲームに直接関係があるものを中心にチェックしてきたが,グラフィックスカードの機能として見たときに,看過できないものがある。それは動画再生支援だ。

 

 実際,Catalyst Control Center上で用意されている設定項目のほとんどは,動画再生のためのものである。とくに,デスクトップ全体ではなく,「オーバーレイ」と呼ばれる,動画表示エリアに関する設定は非常に充実しており,これは「Avivoビデオ」の項目から,細かく設定できる。

 

ATIの旗がはためくプレビューを見ながら,オーバーレイ表示部の全体的な色調を「ビデオプリセット」として設定できる「標準設定」。おそらく室内照明環境の違いに合わせたもので,「ホーム」「オフィス」「シアター」が選択可能。オフィス,ホーム,シアターの順に輝度が高い 「インターレース解除」では,アナログテレビ向けに作られた動画ファイルにつきもののインタレース(横方向の縞模様)を解除する手段を選択できる。基本的には,標準の「自動検出(推奨)」を選んでおけばOKだ。いくつか切り替えてみると,プレビューでその効果を見られるので,インタレース解除とはどういうものか感覚的に分かるかもしれない

 

各種画質の調整は一般的な5項目だが,設定を変更すると,即座にプレビューへ反映されるのが便利(左)。もちろん前述のとおり,デスクトップの色調/彩度設定を行うAvivo色(もしくはAvivo Color,右)とは競合しない

 

 

■動画の高品位化に効果あり

 

 では,実際のところ,動画の画質はどの程度向上するのだろうか?
 テスト環境は前出のとおりだが,いくつか補足しておこう。DVD-Videoなどで一般的なMPEG-2ファイルを再生するに当たって,CyberLink製のDVDプレイヤーソフト「PowerDVD 6」をインストールした。ただし,DVDプレイヤーソフトは製品独自の高画質化機能を搭載しているため,動画ファイルの再生自体には「Windows Media Player 10」を使用。PowerDVD 6のMPEG-2デコーダのみを利用することにした。画面キャプチャもWindows Media Player 10の機能を用いて行っている。

 

 また,Avivoの設定はデフォルトのまま。「ビデオプリセット」は「ホーム」,「インターレース解除」は「自動検出(推奨)」である。また,比較対象となるGeForce 6600では,NVIDIA独自の動画再生品質向上機能「PureVideo」の有効/無効それぞれでテストを行っている。PureVideoドライバのバージョンは1.02-185だ。

 

 さてまずは,国内外のオーディオビジュアル専門誌などで,高解像度テレビやDVDレコーダ/プレイヤーなどの評価によく用いられている画質テスト用DVD「HQV BENCHMARK DVD」(以下HQV)を用いてみよう。
 今回,販売代理店である伯東の協力で入手した,このSilicon Optix製品は,カラーバーやはためく旗,各種ノイズリダクションのテストなどに向いた,さまざまなムービーデータ集だ。各ムービーには「○○のように見えたら△点,××のように見えたら▲点」といったガイドが付属しており,テスターはそのガイドに従って,目視のテストで点数を付け,最終的にその合計点数をもって,ベンチマークを行うという仕組み。Catalyst 5.13の英語版リリースノートで「HQVに対応」といった表現があるなど,PC業界でも注目されているテストである。

 

 HQVのテストは多岐にわたっているのだが,例えばノイズリダクションやディテール表現力などは,デジタルデータを絵として再現(デコード)するコーデックソフトに依存する部分が大きい。そこで本稿では,一般的にオーバーレイ表示段階における補正処理が行われる,発色やデインタレース(≒プログレッシブ)表示,ジャギーの改善能力といった部分をピックアップして見ていくことにしたい。

 

 というわけで,まずは発色であり,発色といえばカラーバーだ。下にテスト結果をまとめたが,簡単にチェック方法を説明しておこう。
 下に挙げた画像3点では,二つある矢印の上のほうで示されている部分,数字の「1」の上のところにある4本の帯に注目。この帯の中で,黒白,あるいは赤緑の帯が交互に繰り返されているのだが,ここがしっかり見えていると,デインタレース(インタレース解除=プログレッシブ化)能力が高いということになる。
 この点ではRadeon X1600とGeForce 6600で,大きな差は見られない。また下の矢印は階調表現のスムースさを見るため,白と青の帯が左から右へ徐々に輝度が高く表示されている。この部分もRadeon X1600とGeForce 6600で大きな変化はなく,どちらも輝度が変化している部分がはっきりと見えてしまっている部分はない。カラーバーで確認する限り,発色やデインターレス表示はRadeon X1600とGeForce 6600で同等と見ていいだろう。なお,液晶ディスプレイ上で見ても,コンポーネント出力で液晶テレビに出力しても,印象は変わらなかった。

 

二つの矢印のうち,上のほうが示しているのは「1」の上にある4本の帯。どれも差はない。下の矢印が示しているのはグラデーションで,こちらは階調の滑らかさを見るべきだが,やはり差は見られない
Radeon X1600  
GeForce 6600(PureVideo有効) GeForce 6600(PureVideo無効)

 

45度だとほとんど目立たないが,水平,垂直に近くなってくると,ジャギーが目立つようになる

 次に,ジャギーの改善能力を見てみよう。
 PC用ディスプレイやテレビは,(簡単に言うと)格子状に並んだ点の集まりで絵を構成する装置のため,斜めの線を正確に表現することはできない。垂直,水平の線を少しずつズラして並べることで,階段状に斜めの線を表現しているため,ズレがどうしても違和感を生み出す。このズレがジャギーだ。
 ジャギーが目立ちやすいのは,水平,もしくは垂直に近い,あまり角度のない斜線。45度では,階段状になるため,それほど目立たなくなる。

 

 一つややこしいのは「階段状になるはずの,角度の小さな斜め線を,階段状に表現すること自体は,デジタルデータを表示用のアナログ信号に変換するデコーダにとっては正しい処理」ということだ。
 このため,ジャギーの低減は,デコーダではなく,デコード後のスケーリング(拡大/縮小処理)や補正機能にかかってくる。
 階段状の部分を,グラデーションをかけながら背景と混ぜ合わせたり,拡大すると大きくなってしまう“階段”を小さな階段に加工したりして,エッジを目立たなくすること。また,「絵に連続性がある」という動画の特徴を生かし,直前のフレーム(=絵)を参照することで,全体の動きとしてスムースに見えるようにすること。こういった処理を行うことで,ジャギーを目立たないようにするのだ。

 

バーの左に“合格ライン”が示される。左下が10度の合格ラインで,これ以上ジャギーが目立つようだとアウト,というわけ

 下に挙げたのは,斜め補間精度を見るテストだ。「動き適応型」と呼ばれるテストで,バーは停止せず,動き続ける。その動いているバーが,水平に近い状態になり,10度以下の角度でも,ジャギーがそれほど出なければOKというわけだ。左にOKの例が3パターン用意されている。

 

 比較してみると,10度付近でRadeon X1600が合格点を出している一方,GeForce 6600はPureVideo有効でもアウト。ジャギーが階段状に出ていることがはっきりと分かる。Avivoにおけるスケーリング処理が優秀(あるいは,内部10bit処理の効果がある)と見ていいだろう。

 

違いは明らかだ。Radeon X1600が合格ラインを上回っているのに対し,GeForce 6600はPureVideoを有効にしても合格ラインに達していない。それどころか,PureVideo有効時のメリットがあまり感じられない
Radeon X1600  
GeForce 6600(PureVideo有効) GeForce 6600(PureVideo無効)

 

 次に,動画のテストでよく見る「はためく旗」だ。ここでは主に,右側の矢印で示している周辺を注目してほしい。ジャギーの発生しやすい,丸みを帯びた部分の表現で,Radeon X1600の優秀性を確認できる。

 

ここはサムネイルを拡大して,比較してみよう。斜線部や,白地と赤地の境目などで,ジャギーの多寡がはっきりと見て取れるはずだ
Radeon X1600  
GeForce 6600(PureVideo有効) GeForce 6600(PureVideo無効)

 

 続いて,実際にテレビ番組をPC上でMPEG-2録画した動画で比較してみよう。
 サムネイルでは分かりにくいと思うので,ここもぜひ拡大して見比べてみてほしい。Avivoが有効なRadeon X1600が,鮮やかな,「はっきりくっきり」した傾向を見せているのが分かるだろう。とくに,黒がしっかり沈んでいるのが印象的。それでいて誇張もなく,テレビが持つ映像エンジンに近い働きをしているのが分かる。
 PureVideo有効時も悪くない。白が強調されすぎの感もあるが,気にならない人は気にならないだろう。ただし,PureVideo無効時は,キャプションの文字がくすんでおり,明らかに一段落ちる印象だ。

 

ディスプレイの色設定が正確であればあるほど,Radeon X1600で黒が“締まった”絵になっているのが分かると思う。それと比べると,PureVideo有効時のGeForce 6600は,一歩譲る印象だ。PureVideo無効時は,キャプションの白がくすんでしまっている
Radeon X1600  
GeForce 6600(PureVideo有効) GeForce 6600(PureVideo無効)
画像は,スカイパーフェクTV!/スカパー!110/ケーブルテレビで放送中のディスカバリーチャンネルより「スペース・サイエンス・スペシャル スペースシャトル 復活へのカウントダウン」(C)2006 Discovery Communications Inc. 問い合わせ先:0120-777-362

 

 また,全体的なシャープさという意味で,画面右上のロゴで比較してみると,PureVideo無効時のGeForce 6600は「CHANNEL」という文字の部分のエッジが明らかに甘い。

 

ここは一目瞭然だろう。PureVideo無効時のGeForce 6600は,明らかにシャープさが足りていない
Radeon X1600  
GeForce 6600(PureVideo有効) GeForce 6600(PureVideo無効)

 

 

■使い方次第では大きなメリット

 

 Avivoにはこのほかにもさまざまな機能が用意されているが,今回は,(少々拡大解釈をしつつも)ゲーマーにとって意味のありそうな部分について,実際の利用価値を考察してきた。

 

 ポイントは2点。一つめは,すべてのゲーマーが求めているとは限らないので,万人向けのメリットとは言えないものの,Avivoによって,高解像度テレビでも簡単にゲームをプレイできるようになることだ。コンポーネント/D端子出力時にも,ほとんど手間をかけずに,期待どおりの絵が得られるので「PCと接続したいから,アナログRGBのD-Sub端子がないテレビは買えない」などといった制約から,ゲーマーを解き放ってくれるだろう。
 二つめは,PCでDVD-Videoを見たりするときに,Avivoが画質の向上をもたらしてくれること。動画再生支援機能としては,NVIDIAがPureVideoで大きく先行しているが,今回の比較結果を見る限り,スケーリング機能はAvivoのほうが優秀である。また,なによりもAvivoは,Radeon X1000シリーズを購入するだけで,無条件で利用可能なのに対し,PureVideoを有効にするためには,有償の「NVIDIA DVD Decoder」が必要だ。今後のことは分からないが,「InterVideo製プレイヤーはアップデートでPureVideoを完全にサポートする」というNVIDIAの主張も,未だ実現には至っていない。

 

 本誌のレビューで明らかになっているように,Radeon X1600は同価格帯のNVIDIA製グラフィックスチップより3Dパフォーマンスで下回る。Radeon X1800も同じ傾向であり,コストパフォーマンスの高い3Dパフォーマンスを得られるのはRadeon X1900くらいという現状があるため,Avivoだけを理由にRadeon X1000シリーズを強く勧めることはしない。だが,嬉しいオマケと考えるなら,Avivoが実に魅力的な機能なのも確か。Radeon X1000シリーズを購入すると,こういったオマケがあるくらいに捉えておくと,きっと幸せになれるだろう。

 

タイトル Catalyst
開発元 ATI Technologies 発売元 ATI Technologies
発売日 - 価格 無料
 
動作環境 N/A

(C)Copyright 2006 ATI Technologies Inc.

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http://www.4gamer.net/review/avivo/avivo.shtml


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