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[GDC07#38]Agile型開発でのゲームデザイン
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印刷2007/03/10 23:40

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[GDC07#38]Agile型開発でのゲームデザイン

 GDC最終日に行われた,「Game Design in Agile Development」と題した,High MoonのゲームデザイナーRory McGuire氏の講演を紹介する。

 「Agile」(アジャイル)というのは,Agilityなどと同じで「敏捷な」という意味の言葉である。4Gamerでは出てきたことのない単語かもしれないので,基本的なところから説明しておこう。
 その言葉どおり「俊敏な開発を」というのが主旨ではあるが,しばらく前からソフトウェア開発ではかなり注目を浴びているアプローチである。ソフト開発とはいっても,ゲーム開発ではあまり馴染みのない概念なので,ゲーム開発でもこういった話題が出てくるようになったことに,まず注目しておきたい。

 ソフトウェア開発では,まず仕様書を細部まで揃えてから開発を始めるというのが「普通」のやり方であった。このような「Waterfall」型開発は確実な手法であり,日本では今でも主流といってよいだろう。工程をきっちり管理するメリットは大きい……「仕様変更がなければ」という前提付きではあるのだが。しかし「あらゆるプログラム開発に共通しているものはなんですか?」「仕様変更」というジョーク(?)があるくらい,開発が進むにつれて仕様変更は発生するものである。

 長いスパンで,設計図どおりの完成品を一気に作っていこうというWaterfall型開発に対し,短いスパンで未完成品をその都度繰り返し作り出していくというのが,Agile型開発の特徴である。


 Agile型開発にはいくつかの流派があって,今回扱われているScrumは,アメリカではかなり使われている開発手法だ。Agile開発に興味がある人は,XP(Extreme Programing)の本を読んでみるといいだろう(Scrumでもいいのだが文献が少なめ)。プログラマでなくても,その考え方などは参考になるところがあるかもしれない。小チーム,ペアプログラミング,反復型開発などの効果は,一種,宗教的(?)でもあり,奇跡体験が多数見受けられるであろう。

 Scrumの特徴は,

・小チーム構成
・短期間での反復開発
・製品指向
・チーム指向


となっている。ほかに,各チームに「Customer」を置いたり,毎日のミーティングが設定されていることなども特徴といえるだろう。Customerは,チームが制作したプロダクトを評価して,当初の目標を達成しているかどうかを判定する役目を持っており,チームの舵取り的な存在である。
 なお,Agile型開発はいくつか種類はあっても,どれも基本的に似た要素を備えていることが多い。Scrumの特性や考え方は,ほかのAgile手法とだいたい似通っている。

 フォーカスするのは「ストーリー」「テスト」そして「アクション/リアクション」である。ストーリーはドキュメントの代わりになるもの,アクションはプレイヤーの行動,リアクションはAIやワールドの反応を意味している。テストについては話すと長くなるので割愛するが,テスト主導のアプローチはまた,重要な開発手法の話となってくる(今回のGDCでもテストにフォーカスしたセッションが見受けられた)。

左のようなチーム構成から,右のような少人数チームに再編成する


 講演では,架空の「StreetFighter Studio」なる開発会社による,Scrumでのゲーム開発の様子が示されていた。いろいろ問題があるのでスライドの大部分は掲載できないが,社名から推して察してほしい。ちなみに,プロデューサーはGDCで基調講演をしていた人に似ていた。
 StreetFighter Studioの新作ゲームの要素は,以下のとおりである。

・ジャンプしたり格闘したりできる
・ハリネズミを登場させる
・敵が必要

 こういった要件から,「ジャンプ」だけを取り出し,それをタスクに分解する。これを2〜4週間のスパンで開発していく。また,Scrumでは毎日チーム内でミーティングを行い,作業の確認を行う。
 一定期間で動作するものを制作し,それをもとに改善点や仕様変更を加え,次の開発を行っていく。ジャンプが終わったら,次はハリネズミに取りかかる。それが終わったら敵のAIを作っていくといった感じで,これの繰り返しで最終的な製品を作り上げていくわけだ。

 開発手法の話が中心で,ゲームデザイン自体とはあまり関係ないような気はするのだが,Scrumチームに必ずゲームデザイナーを入れ,短いスパンで一緒に作り上げていくので,デザインの仕方も変わってくるのであろう。仕様書(すぐに仕様が古くなる)ではなくて,実際に開発中のストーリーにフォーカスを置いたり,開発中のアイデアやプレイヤーからのフィードバックで,むしろ積極的に仕様変更を重ねていくといった姿勢は,従来のゲームデザインとは異質のものなのかもしれない。

 しかし,GDCの参加者はプログラマに比べてゲームデザイナーは人数が少ないであろうに,朝一番の講演には,立ち見が出るほどに人が集まっており,これはかなり意外であった。UMLで話ができて,Agile開発に関心がある……海外のゲームデザイナーは進んでいるなあという印象であった。(aueki)

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